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2019年11月16日土曜日

文在寅、北の亡命希望者を「強制送還」で地獄送りに―【私の論評】GSOMIA破棄と人権問題で、米国は超党派で韓国を制裁するようになる(゚д゚)!


金正恩への阿りか?秘密裏の強制送還が露見し内外から非難囂々

11月4日、ASEAN首脳会議・関連会合での文在寅大統領

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は11月7日、海上で拿捕していた北朝鮮船員2人を北朝鮮に強制送還した。この韓国政府の対応について今、韓国内からはもちろん、国際社会からの非難が殺到している。

 7日、韓国統一部がある発表を行った。

 「11月2日、東海(日本海)上でNLLを越えて南下した北朝鮮住民2人を拿捕した。関係機関合同調査の結果、彼らが同僚の船員らを殺害して逃走したことが分かった」

 「開城工業連絡事務所を通じて2人を北朝鮮へ追放する意思を伝え、北朝鮮側が受け入れる意思を明らかにしたので、本日午後3時10分ごろ、板門店を通じて彼らを北朝鮮に追放した」

 というものだ。ちなみにNLLとは「北方限界線」の略称で、海洋上の韓国と北朝鮮の境界線のことだ。


偶然によって発覚した「強制送還」

 この日の発表によると、追放された2人の乗組員はともに20代の男性。2人はイカ釣漁船の乗組員だったが、もう1名の同僚と共謀して日本海での操業中に洋上で16人の同僚を殺害、逃走資金を調達するためいったん北朝鮮の金策港に戻った後、NLL付近まで逃走していたが、そこで韓国海軍によって拿捕されたという。韓国政府は、彼らが殺人など重大な非政治的犯罪によって「北朝鮮離脱住民法」上の保護対象ではない点、韓国国民の生命と安全に脅威となる凶悪犯罪者であり国際法上の難民として認められない点などから判断し、関連省庁間の協議結果によって追放を決定したのだという。

 ところが、この追放過程における数々の疑惑がメディアの取材によって浮かび上がり、文在寅政権が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の機嫌を取るために、脱北者の人権を蹂躙したのではないかと、韓国中が騒然となっているのだ。


 韓国メディアが疑いを向ける第一点目は、韓国政府が今回の事件を隠蔽しようとしていたことだ。

 「強制送還」が発覚したのは、7日午前、国会予算決算委員会全体会議に出席していた金有根(キム・ユグン)国家安保室第1次長が共同警備区域(JSA)の大隊長である某中佐から受け取った文字メッセージを、報道機関のカメラに撮られたことがきっかけだった。「本日15時、北朝鮮住民2人を板門店で送還する」という内容だった。記事が公開され、国会でこの事件をめぐって大きな騒ぎが起きると、統一部が急いでブリーフィングを準備、当日午後3時40分に「強制送還」の事実を公表したのだった。

 その一方で、鄭京斗(チョン・キョンドゥ)国防部長官が国会で「報道を見て追放を知った」と証言したことで、大統領府が国防長官をスルーして報告を受けている実態も明らかになり、職権乱用の問題も指摘されている。


統一部長官による「死んでも北朝鮮に戻る」の説明は虚偽?

 疑惑の第二点は金錬鐵(キム・ヨンチョル)統一部長官の「うそ疑惑」だ。国会に出席した金長官は、事件の経緯を説明する中、「(彼らは)調査を受ける過程で様々な相反する供述をしていたが、確かに『死んでも(北朝鮮に)戻る』と陳述した」「これらの行動などを総合的に判断し、亡命の意思はないという最終結論を下した」と答えていた。

 しかしその後、韓国メディアが匿名の統一部担当者の証言をもとに、「『死んでも北朝鮮に戻る』という発言は、海上殺人事件後にいったん(北朝鮮の)金策港へ戻る途中で出た言葉で、逃避資金を用意するために金策港に戻るという意味だった」と暴露。さらに、2人が合同調査における供述書に自筆で「亡命する」という明白な意思を示していたことも明らかになった。

 そして最大の疑惑は、全長15mほどの17t級の小型木造船の上で、わずか3人(統一部によると共犯のもう1人はすでに北朝鮮で逮捕されたという)で16人もの同僚乗組員を殺害することが可能かという点だ。しかも殺害の道具は斧とハンマーだけというから、犯行の規模と釣り合いがとれない。

 韓国政府は、事件の実相をこう説明している。

「船長の過酷行為に不満を抱いた彼らは斧1本とハンマー2本だけで16人を殺した。まず、共犯の1人が40分間隔で就寝中の船員を2人ずつ起こして甲板の上に誘導する。すると船頭と船尾で待っていた2人の共犯が、甲板に上がってくる船員の頭をハンマーなどで殴り殺す。殺害後は死体を海に遺棄し、40分後、再び2人ずつ起こして甲板上に誘導した。結局、4時間で16人が殺害された」

 しかし、いくら就寝時間だったとしても、小さな船の中で長時間にわたり殺人が繰り返されていることを同僚の船員が全く気づかなかった点、「特殊要員」でもない一般の船員が「虐殺」に近い犯行をたった4時間で実行したという点、虐殺現場である船を血痕鑑識もせずに急いで消毒してしまった点など、不可解な点がいくつも残されているのだ。


目隠しされ縛られたまま板門店に連れていかれた漁船員

 また送還過程における問題点も提起されている。東亜日報は送還過程について、政府関係者から聞いた話を次のように報じた。

 「呉某氏(22)と金某氏(23)の北朝鮮住民2人は7日、中央合同調査本部で目隠しをされ、縛られたまま車に乗せられて、板門店の自由の家に直行した。彼らが強制送還の事実を知ると自害などの突発行動を起こす恐れがあるので、目的地を隠して、警察特攻隊が車両を護衛した。彼らの抵抗に備え、猿ぐつわも準備していた。

 彼らは、板門店の軍事境界線に到達して目隠しを取られて、初めて自分たちが北朝鮮に追放されることを知った。送還は、まず呉氏が軍事境界線から北朝鮮軍に引き渡され、次いで待機室で隔離されていた金氏が引き渡される形で進められた。目隠しを外した呉氏は、境界線の向こう側に北朝鮮軍3人が立っているのを見て、思わず腰を抜かして座り込んでしまった。その後に外へ出てきた金氏は、北朝鮮軍兵士を見るや愕然とし、軍事境界線を越えていった」

 北朝鮮に強制送還された脱北者は、その後、想像を絶する拷問を受けることになる。例外はない。板門店で北朝鮮軍の兵士に引き渡された彼らの絶望は察するに余りある。

批判浴びる「人権派弁護士」の人権感覚

 韓国の主要メディアは、韓国憲法3条に基づき、「北朝鮮住民も韓国国民の範囲に属する」と強調している。つまり、亡命意思を表明した北朝鮮住民に対しては、彼らがたとえ凶悪な殺人犯としても、韓国司法当局の裁判によって処罰を受けるべきだと主張しているのだ。さらに、文在寅政権がたったの5日間の調査によって、亡命を希望した北朝鮮住民を、残酷な拷問や極刑が予想される北朝鮮に送り返したことは「国際人権法違反」と非難している。

 国際社会からも非難が絶えない。英BBC放送は、「デービッド・アルトン英国上院議員が自身のホームページに、『韓国は一体どういう考えで、難民を北朝鮮に送ったのか』というタイトルの文章を掲載して、韓国政府が難民に対する義務を果たしていないと批判した」と伝えた。

 国際人権団体のアムネスティは、「今回の事件を国際人権規範違反と見なす」という立場を示した。米国の人権監視機関のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)も声明を発表し、「韓国政府の措置に違法の素地がある」「(韓国政府の)迅速な送還措置は、拷問等禁止条約を黙殺(disregard)した」と批判した。

 国連の人権業務を総括する国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)も「2人が、送還によって拷問と処刑をうける深刻な危険に直面していることを懸念する」と明らかにした。朝鮮日報は、「今月末に訪韓予定のトマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権特別報告官は、『(今後の)措置について、関連(南北)政府と接触中』と明らかにした」と伝え、国連が近々韓国外交部に今回の送還事件についての懸念メッセージを伝え、事実関係を問い合わせる見通しだと解説した。まさに国際社会や人権団体から非難囂々なのだ。

 「人権ファースト」を掲げた公約で政権を握った「人権弁護士」出身の文在寅大統領、OHCHR副代表の経歴を自慢する康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は、「反人権的な送還」という国際社会の非難をどう受け止めるだろうか。


【私の論評】GSOMIA破棄と人権問題で、米国は超党派で韓国を制裁するようになる(゚д゚)!

韓国政府が、北の亡命希望者を「強制送還」したことは、完全な違法行為です。そもそも、韓国は北朝鮮と犯罪者引き渡し条約を結んでいません。

引き渡し条約がなくても、引き渡しできる場合もありますが、それには幾つかの手続きが定められています。

まず、相手国から韓国に逃避してきた犯罪者の引き渡し要請があった場合、外交部からの要請によりソウル高等検察が、ソウル高等法院において審理します。この手続きが完全に抜け落ちていたのです。

教戦争缶された二人北朝鮮籍の男らが乗船していた船

韓国の脱北者に対する、人権侵害は今に始まったことではありません。米国はこれに対してすでに警告を発していました。

トランプ米政権が、「従北」の文在寅(ムン・ジェイン)大統領率いる韓国の「人権侵害」問題に警告を発していました。米国務省が発表した人権報告書で、「脱北者への圧力」を明記していました。米国では、韓国の政権与党による米記者への非難を、リベラル系の有力紙まで問題視し始めました。米国全体が韓国に厳しい目を向けているとの指摘もあります。

「われわれの友好国、同盟国、パートナー諸国ですら、人権侵害を行っている」

マイク・ポンペオ国務長官は今年3月月13日、こう述べました。国務省が公表した2018年の「各国の人権報告書」に関する記者会見での発言でした。

マイク・ポンペオ長官

報告書では、同盟国の1つである韓国・文政権による脱北者への圧力を取り上げ、「北朝鮮との対話に乗り出すと、北朝鮮への批判を抑制するよう求める直接的、間接的な圧力が脱北者組織にかけられたとの報告があった」と指摘しました。

具体的圧力としては、20年続いていた脱北者団体への資金援助打ち切りや、風船を使った北朝鮮へのビラ散布阻止、警察が団体を訪れて財務情報などを出すよう要請した-ことが挙げられました。

2月にベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談が決裂し、米朝の「仲介者」を自任していた文政権へのトランプ政権の不信は高まっていました。そのなかで、人権侵害までが問題となったのです。

外国メディアの視線も厳しくなっていました。

文大統領を「金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の首席報道官」と報じた米ブルームバーグ通信の記者を、与党「共に民主党」の報道官が非難したことに、各国メディアが猛反発したのです。

報道官が同月13日、記者を名指しして「米国国籍の通信社を隠れみのにして国家元首を侮辱した売国に近い内容」との論評を出したところ、批判が相次ぎました。同党は同月19日、論評から実名を削除すると発表しました。


まさに、ポンペオ長官の警告を正鵠を射たものになったようです。今回の、北の亡命希望者を「強制送還」するようなことは、起こるべくして起こったのかもしれません。

米国の保守系メディアには以前から、文政権を懐疑的にみる報道がありましたが、ブルームバーグの問題では、ワシントン・ポストや、ニューヨーク・タイムズといったリベラル系の主流メディアも「言論弾圧ではないか」と批判しました。米国では「韓国が民主国家といえるのか?」という議論になってきており、オールアメリカで文政権への問題意識が高まっています。


いずれ、韓国も米国内で中国等と同列の扱いを受ける日が刻々と近づいているような気がします。

文大統領は15日、マーク・エスパー米国防長官とソウルの大統領府(青瓦台)で会談し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の維持を拒否しました。23日午前0時の失効期限を前に、同盟国・米国の要請を拒んだのは、事実上、共産党独裁の中国寄りの姿勢(=レッドチーム入り)を宣言したも同然といえます。

5日午後、青瓦台本館接見室でマーク・エスパー米国防長官(左)と握手する文在寅(右)

このまま、文政権がGSOMIAを破棄すれば、政府高官や軍幹部を大量に送り込んで説得したトランプ大統領はバカにされたことになります。今後、トランプ氏の逆襲が注目されることになるでしょう。

韓国は日米にとっては、かつて中国・北朝鮮に対する反共の砦でした。しかし、韓国がGSOMIAを破棄したとなると、もう反共の砦をやめてしまったと観るのは当然のことです。

韓国がGSOMIAを破棄した場合、人権問題ともあいまって、米国内では韓国に対する批判、それも超党派による批判がかなり高まることでしょう。いずれ、中国等と同列の扱いを受けることになるかもしれません。

韓国が中国寄りの政策を鮮明にとるようになったにしても、これはうまくいかない可能性がかなり高いです。そもそも、金正恩は中国の干渉を極度に嫌っています。結果として、北朝鮮とその核が中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。

韓国が中国寄りの姿勢を顕にすれば、北朝鮮もこれを黙って見過ごすことはないでしょう。中国と韓国に挟まれた北朝鮮は、危機感を募らせることになります。

中国は、米国と冷戦の真っ最中です。先日もこのブログに掲載したように、今後米国は対中国貿易戦争から、中国共産党そのものを弱体化させる方向に軸足を移していくことになるでしょう。

そのような最中に、韓国が中国にすり寄ってきたところで、地政学的にも韓国の前に、核武装をした北朝鮮が立ちはだかっていて、文は北に親和的でもあります。このような状況で、自己保身に必死な中国が韓国にどれだけのことをできるのか、疑問です。あからさまに、中国が韓国を取り込むような姿勢をみせれば、米国の対中国冷戦はますます苛烈なものになることでしょう。

韓国は、日米は無論のこと、北からも中国からも疎まれる存在になるだけです。そうして、米国からは超党派で批判され、直接制裁にさらされることになります。そのことを文は全く認識していないようです。愚かだとしか言いようがありません。

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2019年5月11日土曜日

絶望的な日本。自民・二階幹事長を反米媚中にした中国の浸透工作―【私の論評】日本も、米国のように超党派で中国に対抗する体制を整えるべき(゚д゚)!

絶望的な日本。自民・二階幹事長を反米媚中にした中国の浸透工作

二階氏

これまでも「中国の浸透工作に豪が陥落寸前。日本にも伸びる習政権の魔の手」等で、強大な影響力を手に入れるためには手段をいとわない「中国という国のやり口」を紹介した、AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さん。その矛先は、当然ながら日本にも向いているようです。山岡さんは今回、無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』で「自民親中派筆頭」とも揶揄される二階幹事長の習近平政権への見事な絡め取られ振りを批判的に伝えるとともに、二階氏にはもはや政治家を続ける資格もない理由を記しています。

二階さん、拉致被害者救出は眼中になさそうですね?

全世界のアメ通読者の皆様、山岡鉄秀です。

アメリカで中国人産業スパイが捕まったようですね。日テレNEWS24(4月24日)では次のように報じられました。「アメリカの司法省は23日、GE(=ゼネラル・エレクトリック)の企業秘密を中国側に渡した産業スパイの罪で、中国系アメリカ人と中国人の男2人を起訴したと発表した。中国政府が支援したと主張している」

GEと言えば、有名なジャック・ウェルチさんの時代に家電製品から完全撤退し、ハイテク分野に特化したアメリカ有数の企業です。

容疑者のうち、中国系アメリカ人はGEの元技術者で、GEから企業秘密のタービン技術を盗み出し、おいの中国人実業家に渡した疑いが持たれているとのこと。

二人は「中国企業を通じて中国政府から経済的支援などを受け、中国の当局者と連携していた」ことが疑われているそうです。

アメリカから留学生や産業スパイ経由でハイテク技術を吸い出し、ついには自国のハイテク産業を世界No1にしようと目論む中国に警戒を強めるアメリカ。両国の対立は決定的なものとなりました。

一方、その23日、自民党の二階幹事長は翌日からの訪中を前に記者会見を開き、次のように語りました。

「日中関係は双方の努力によって、だんだん良い方向に進展しつつある。さらに強力に取り組んでいけるように努力していこうということを、中国側と十分話合いたい」

そして、中国が進める「一帯一路」のフォーラムにも出席することを明らかにし、こう言い放ちました。

「米国の機嫌をうかがいながら日中関係をやっていくのではない。日本は日本として、独自の考えで中国と対応していく。米国から特別な意見があれば承るがそれに従うつもりはない」

二階さん、ここまで言ったら、もはや親中のみならず、反米と見做されても仕方がないですね。

きっと忘れているか、まったく関心がないんでしょうね。日本が北朝鮮による拉致問題を自力では解決できず、トランプ大統領のアメリカにすがっている事実を。

拉致された自国民を自国の軍隊で取り返しに行けない日本は、同盟国で超大国のアメリカに泣きついています。これ、はっきり言って恥ずかしい状態ですが、憲法の制約もあり、仕方ありません。

トランプさん、安倍首相のお願いを聞き入れて、シンガポールでもハノイでも金正恩委員長に日本の拉致問題解決の必要性を強調してくれました。

安倍首相も気を使って、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦しました。
これも情けない感じがしますが、はっきりいって、これが日本の置かれた立場であり、実力なわけです。

アメリカを筆頭とする自由主義陣営が共産主義独裁国家に敗れることがあれば、日本という国も消滅し、倭人自治区となるでしょう。

そのアメリカが、中国の覇権主義とスパイ行為に警戒して対立姿勢を強め、世界中で「一帯一路」がその露になった体質ゆえに警戒されているときに、「アメリカの意見に従うつもりはない」と啖呵を切る二階さん。

習近平主席にお願いして拉致問題を解決する秘策をお持ちなんですか?それとも、拉致問題なんて眼中にないのでしょうか?

そして、二階さんが中国へ渡った24日、尖閣諸島の接続水域で中国海警局の船4隻が航行しているのが海上保安庁の巡視船により確認されました。これで13日連続となりました。

二階さん、これを止めろと要求するどころか、6月に大阪で開催されるG20に習近平主席来日の確約をもらって大喜びのようです。「正常な関係に戻った!」と。

私は、中国がオーストラリアやニュージーランドで今なお繰り広げている浸透工作(サイレント・インベージョン)の凄まじさを知っているので、中国が「中華帝国再興の夢」というスローガンの元に進める覇権主義をあきらめない限り「正常な関係」などあり得ないことを確信しています。

二階幹事長のこのような言動を許しながら、安倍首相はまたトランプ大統領に拉致問題で支援してくれるように頼むつもりなのでしょうか?

あからさまな二股外交が破綻するとき、塗炭の苦しみを味わうのは日本国民です。

今回の二階幹事長の言動に違和感と危機感を感じない国民が大多数を占めるのであれば、オーストラリアやニュージーランドの心配をしている場合ではなく、日本に対する工作はすでに完了していると判断すべきでしょう。

これだけははっきり言っておきましょう。

「拉致された自国民を救い出す決意がない人間に政治家を続ける資格はない」と。

山岡鉄秀 Twitter:https://twitter.com/jcn92977110

【私の論評】日本も、米国のように超党派で中国に対抗する体制を整えるべき(゚д゚)!

それにしても、なぜ二階氏はこのようにすり寄るのでしょうか。ヒントになりそうなことが過去にありました。

以下に過去のZAKZAKの記事から一部を引用します。詳細は元記事をご覧になってください。
二階俊博・自民党幹事長が中国人ビジネスマンに脅されていた
 事件が弾けたのは2017年9月26日、折しも衆院解散の2日前で、小池百合子・東京都知事の「希望の党」結党宣言で政界に激震が走り、国民もメディアに視線を釘付けにされていたタイミングだった。 
 その日、警視庁捜査一課の捜査員10数人が中国籍の会社経営者・王俊彦氏の自宅や関係先に捜査に入り、王氏を逮捕した。
 王氏は上海出身で1988年に来日。不動産コンサルティング会社などを経営し、中国政府が関わる日中間の大規模ビジネスを展開、中国国営企業の日本法人や大手投資会社の顧問などを務めている。在日中国人社会では名の通った“大物”だ。「駐日中国大使館とも太いパイプを持つ」(公安関係者)とみられている。 
 事件のカギを握るのは王氏の会社が買収した静岡県小山町のセミナーハウス「東富士リサーチハウス」の倉庫から押収された段ボール約40箱分の資料だった。捜査一課の「押収品目録」にはこんな記載がある。 
〈段ボール箱(「衆議院議員二階俊博」等と記載のある封筒在中のもの) 2箱〉
〈段ボール箱(「新しい波」の契約書類等在中のもの) 1箱〉
〈段ボール箱(「金銭出納帳」等と記載のある書類等在中のもの) 1箱〉
 --など。「新しい波」とは旧伊吹派と合併する前の二階派の正式名称であり、派閥の経理資料などが保管されていたことが読み取れる。この段ボール資料が強要未遂事件の“材料”になった。
 捜査令状(勾留状)に添付された被疑事実の要旨に事件の概略が書かれている。
 〈被疑者は、株式会社〇〇の取締役であるが、自由民主党幹事長二階俊博が同派閥事務所の閉鎖に伴い、同事務所の書類等を△△株式会社が管理していた倉庫であるMother Village東富士リサーチハウス内に保管依頼していたところ、平成26年10月17日、株式会社〇〇が同倉庫の所有権を取得し、前記書類等も同時に入手したことを奇貨として、平成28年11月4日午後1時頃、二階俊博の二男である二階直哉(当時44歳)を被疑者が顧問を務める××に呼び出し、「東富士リサーチパークを買い取った。そこにあった荷物は大変なものだった。これを流せば大変なことになる。」「まだまだ大変なものがある。」などと同派閥「新しい波」名義の通帳の写しや事務連絡メモ等を示して、同人の父である二階俊博の名誉に害を加える旨を告知して脅迫し、(中略)政治家である同人の父親に働きかけさせて義務のないことを行わせようとしたが、同人がこれを拒否したためその目的を遂げなかったものである〉(要旨内では〇〇、△△、××は実名が記されている) 
 王氏が段ボール箱の書類を「奇貨」として二階氏に何らかの“口利き”してもらおうとした。それが強要未遂にあたる--とする内容なのである。 
 要旨の中には、王氏が二階氏サイドに求めた具体的なビジネス案件として、都内ターミナル駅周辺の大規模再開発事業が記されていた。運輸大臣(現国土交通大臣)を務め、国交族の大物として知られる二階氏の影響力を期待した形跡がうかがえる。
私は、これは中国政府も関与した工作であると認識しています。このようなことが、一度ならず過去にも何度か行われていたとしたら、二階氏の行動もある程度理解できなくもありません。

さらには、二階氏のこの事件はたまたま表に出ただけであって、他の政治にも同じような工作が行なわれていても、表に出ていない可能性もあります。野党の政治家の中にも、かなり工作をされている者も多いでしょう。

なぜこのようになるかといえば、やはり日本は他国のスパイなどを取り締まるスパイ防止法などがないため、政治家に対する他国からの籠絡に対して無防備なところがあるからでしょう。ただし、政治家が籠絡されることを防止するということは、籠絡ずみの政治家も厳しく罰するということになります。


ただし、政治家のほうにも問題がないとはいえません。たとえば、イスラエルとパレスチナの度重なる衝突について、日本の国会で議論されたという話を聞くことはまずないです。

「シリアのアサド政権はどうして化学兵器を使うのか。被爆国の日本は化学兵器の使用を容認していいのか」と発言する日本の政治家もほぼ見掛けないです。

遠いアラブ世界について勉強する意欲もないし、ユダヤ教やらイスラム教やら、ましてやイスラム教の宗派などを区別するのも面倒くさい、と思っているのでしょう。日本の国会議員は世界的に高い報酬を国から保障されていますが、野党議員の最大の関心事は現政権を打倒するのにあらゆるスキャンダルを探すことのみのようです。

当時「もりかけ問題」で窮地に追い込まれた安倍政権に助け舟を出すかのように、中国の王毅外相が昨年4月15日、約8年ぶりの日中経済対話のために日本を訪問しました。同年3月の全国人民代表大会で晴れて国務委員に昇格して出世を果たした後の再訪でした。

04~07年に駐日大使を務めていた頃は、王は日本の政財界の有力者らを低姿勢でゴルフに誘い、日本人以上に深々と頭を下げていました。今や、その彼自身が日本風のお辞儀も「中国人のくず」がやる行動で、「精日(精神的日本人)」だ、と激しい言葉で批判しています。

昨年3月8日,北京で記者会見後、「精日」に関するメディアの質問答える王毅

王は同年5月の日中韓首脳会談について、日本側と李克強首相訪日の詰めの調整を行ったといいます。日程で注目すべきは李が東京で首脳会談を終えた後、北海道を訪れ、高橋はるみ北海道知事との面談や経済視察をしたことでした。

一国の首相がどこを訪問しようととやかく言う筋合いはないかもしれないです。しかし中国は日本や米国と異なり、独裁体制を敷く専制主義国家で、日米の共通の脅威でもあります。李は沖縄にも足を運びたかったでしょう。尖閣諸島を中国領と主張しており、沖縄県への介入も諦めていません。

故翁長雄志知事を北京に誘っては「中国と琉球王朝との伝統的な絆」を持ち出し、親中派に期待を寄せてきました。沖縄県もかつて琉球が中国帝国に恭順を誓った印である龍柱を建ててまで、中国人観光客を歓迎しています。ところが結局、李は日本を刺激する沖縄県ではなく、北海道を訪問しました。

北海道はリベラル派が強く、道南を中心に人口の少ない各地の土地が知らぬ間に中国資本に買収されていても、特に警戒する姿勢を見せていません。沖縄では国境地帯の自衛隊施設付近に外国資本が進出している昨今、北海道は無防備だとみていいです。

また米国で複数の孔子学院がスパイ活動容疑でFBIから捜査を受ける一方、釧路では孔子学院を誘致する話も出るなど米同盟国の日本は鈍感で、国際的な潮流と逆行しています。

程永華駐日大使(当時)

昨年5月21日、中国の程永華駐日大使が釧路市を訪問、7カ月後の12月9日には張小平1等書記官(経済担当)も足を運びました。大使は蝦名大也釧路市長との会談で、「釧路市が民間・地方外交を積極的に進め、中日関係の改善と発展を後押しするためにさらなる努力をされるよう期待している」とラブコールを送りました。

その後、中国大使としては初めて、中国人らの研修生を受け入れている石炭生産会社、釧路コールマイン本社(釧路市興津)を訪問。「交流を強化し、両国の経済協力に力を注ぎ続けてほしい」と要望しました。

市長には大使館関係者から直接、中国政府系の文化機関「孔子学院」開設の打診があり、開設計画が現実的に検討されています。

道東は自衛隊の基地も密集する、国防上の要衝でもあります。釧路市は「中国が北極海航路に関心を持っているのは聞いているが、中国資本が急に活発化したという実感はない」と悠長に構えていますが、防衛省関係者らは、「国防面でも経済面でも海洋進出をもくろむ中国がまず、中央突破しなければいけないのは、太平洋に出ることでありその拠点として釧路を押さえるのが狙いだ」と分析、「すべて習主席の指示を受けた国家戦略なのは間違いない」と危機感を隠していません。

日本は、この頃の甘い対中国認識が現状でもほとんど変わっていないようです。それは、二階幹事長の行動をみても良く理解できます

このブロクでも以前も述べたように、安倍政権自体は、政府調達からファーウェイを排除したり、中国にサイバーセキュリティの基準の遵守を求めるなどして、リスクの高い5G企業を移動通信インフラから排除しようとしていますし、中国に一定の厳しい措置をしています。

これは、二階幹事長などの古いタイプの政治家や勉強しない政治家には理解ができない分野なので、このようなこともできるのかもしれませんが、それにしても、その二階氏が安倍内閣の幹事長というのが、現状の日本の政治状況を象徴しています。

日本も、他国と同じように、スパイ防止法を成立させて、国民は無論のこと、政治家を守る体制も整えた上で、米国のように、国会内で中国問題を議論する委員会などを設置するなどして、超党派で中国に対抗する体制を整えるべきです。

米国と同じように超党派で自国の国益のために、中国と対抗しなければならないという使命感を、政治家に持たせるべきです。

しかし、そのようなことは不可能と思う方々もいらっしゃると思いますが、トランプ政権誕生前の米国の絶望的状況を考えると、日本でもできると私は思います。

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2018年10月7日日曜日

沖縄県知事選の結果は「民主主義国家」の皮肉!? 今後は中国の「間接侵略」が一段と進行するだろう ―【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!



玉城氏は、普天間飛行場の危険を放置するのか?
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

沖縄県知事選は、元自由党衆院議員の玉城(たまき)デニー氏が、約8万票の大差で圧勝した。玉城氏は、名護市辺野古にある米軍キャンプ・シュワブを拡張して、米軍普天間飛行場(宜野湾市)を移設する計画について「断固阻止する」と公約している。

 以前も指摘したが、「国防は国の専権事項」というのが世界の常識だ。自治体の首長や住民が国防問題を左右できる日本の現状は、法制度に不備があるという意味だ。国会は怠慢過ぎないか。

 そもそも、市街地にある普天間飛行場は危険だからと、沖縄県民が移設を望んだのだ。日米両政府はその希望を聞き入れて移設を推進してきた。

 今回の選挙結果は「沖縄県民が普天間移設の希望を撤回し、固定化を望んだ」と解釈することも可能だが、本当にそれで良いのだろうか。

 実は、辺野古よりも普天間の方が、米軍にとって使い勝手がいい。例えば、標高75メートルの高台にある普天間は、辺野古と比べて津波や高波の影響を受けにくい。さらに、V字型に配置される辺野古の2本の滑走路は、いずれも1200メートルと短いが、普天間はボーイング747も離着陸可能な2700メートルである。

 普天間飛行場は市街地の真ん中にあり、「世界一危険」だと言われてきた。私も長年そう信じていたが、詳しく調べてみると、1945年の設置から現在まで、普天間に関わる航空機事故で死傷した日本人は1人もいない。

ちなみに、2015年に東京都調布飛行場近くで発生した小型機墜落事故では、搭乗者5人のうち2人死亡、3人が負傷し、地上でも1人死亡、2人が負傷した。普天間が世界一危険であれば、調布は宇宙一危険なのか?

2015年に東京都調布飛行場近くで発生した小型機墜落事故

 04年、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したときも、乗員3人が負傷したが、日本人の死傷者は1人も出ていない。

 もちろん過去に、普天間飛行場を拠点とする米軍機の事故が何度も発生し、多数の米兵が死亡・行方不明になったことは事実だ。彼らは日米安保条約に基づく任務中の事故により、日米両国のために命を落とした英雄である。基地反対派だけでなく、日本はこの事実を軽視していないか。

 先週のコラムで私は「沖縄県知事選の本質は、米中代理戦争だ」と指摘した。結果的に、米国が敗北し、中華人民共和国(PRC)が勝利した。

 共産主義国として国民に参政権を認めない国が、民主主義国の選挙制度を利用して勝負に勝つとは皮肉な話だ。今後、PRCの「間接侵略」が一段と進行するだろう。もし、「琉球独立」が実現したら、協力した沖縄県民は、参政権に加えて人権まで失う「究極の皮肉」が実現する。 

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!

ケント・ギルバート氏は、PRCの「間接侵略」が一段と進行するだろうと警告していますが、これについては米国ですでに警告を発していました。それも、オバマ政権末期の時点で発していました。

沖縄では中国が米軍基地反対運動をあおり、米軍へのスパイ活動を展開している。このようなショッキングな警告が米国議会の政策諮問の有力機関からすでに二年前に、発せられていました。中国は長期戦略として日米同盟を骨抜きにすることを図り、その具体策として沖縄での米軍基地反対運動へのひそかな支援や米軍の活動への秘密裡の軍事諜報工作を展開しているのだそうです。

沖縄基地反対運動

米国側の政府や議会の関連機関が日米同盟の光や影、虚や実について論じ、内外への注意を喚起するという作業は長年、続いてきました。ところが沖縄での米軍基地問題に関して中国の干渉を正面から指摘したという実例はきわめて珍しいです。米国側としてはそれだけ沖縄での中国の動きを危険視するにいたったということでしょう。日本側としては日米同盟の堅固な保持を望む限り、その警告を真剣に受けとめざるを得ないでしょう

日米同盟はこのところ全体として一段と堅固になりながらも、なお沖縄での在日米軍基地への反対運動は複雑な振動を広げています。まるで強壮な人間のノドに刺さったトゲのように、全身の機能こそ低下させないまでも、中枢部につながる神経を悩ませ、痛みをさらに拡大させかねない危険な兆候をみせているといえるでしょう。

沖縄の米軍基地の基盤が揺らげば揺らぐほど、日米同盟の平時有事の効用が減ることになります。日本への侵略や攻撃を未然に抑えるための抑止力が減ることになるからです。また朝鮮半島や台湾海峡という東アジアの不安定地域への米軍の出動能力を落とし、中国に対する力の均衡を崩すことにもつながるわけです。

沖縄あるいは日本全体を拠点とする米国の軍事力が弱くなることを最も歓迎するのは誰でしょうか。いまや東アジア、西太平洋の全域で米国の軍事的な存在を後退させようとする中国が米軍弱化の最大の受益者であることは明白です。

中国がそのためにソフト、ハード両面での多様な措置をとっていることは歴然ですが、二年前までは沖縄での反米軍基地運動への中国の関与は提起されることはまずありませんでした。しかも中国の対沖縄工作の最終目的は日米同盟分断だというのです。

「沖縄と中国」というこの重大な結びつきを新たに提起したのは米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関です。この委員会は2000年に新たな法律により、「米中両国間の経済と貿易の関係が米国の国家安全保障にどう影響するかを調査して、議会と政府に政策上の勧告をする」ことを目的に常設されました。議会の上下両院の有力議員たちが選ぶ12人の委員(コミッショナー)が主体となり、米中関係を背景に中国側の軍事や外交の実態を調査するわけです。

各委員は中国の軍事、経済、外交などに詳しい専門家のほか、諜報活動や安保政策の研究者、実務家が主になります。最近まで政府や軍の枢要部に就いていた前官僚や前軍人、さらには上下両院で長年、活躍してきた前議員たちも委員を務めます。そしてそのときそのときの実際の中国の動き、米中関係の変動に合わせて、テーマをしぼり、さらなる専門家を証人として招いて、公聴会を開くのです。

同委員会は毎年、その活動成果をまとめて、年次報告書を発表する。その内容は詳細かつ膨大となります。最終的には米国の政府と議会に対中政策に関する提言をするわけです。同委員会の事務局も中国や軍事、諜報に関する知識の抱負なスタッフで固められ、特定テーマについての報告書を委員たちとの共同作業で定期的に発表しています。

米国の中国研究はこのように国政レベルできわめて広範かつ具体的なアプローチが多いです。中国の多様な動向のなかでも米国側が最も真剣な注意を向けるのはやはり軍事動向だといえます。この米中経済安保委員会はまさに中国の軍事動向と経済動向の関連を継続的に調べているのです。



米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が沖縄と中国のからみに関しての調査結果をこのほど明らかにしたのは 「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」 と題する報告書の中でした。

合計16ページのこの報告書が警告する沖縄での中国の動きを米国の戦略全体の中で位置づけるために、まずこの報告書の主眼についての記述を紹介します。
中国は東アジア、西太平洋地域でもし軍事衝突が起きた場合の中国人民解放軍の米軍に対する脆弱性を減らすために、その種の衝突への米国側の軍事対応を抑える、あるいは遅らせるための『接近阻止』または『領域否定』の能力を構築することを継続している。 中国側は同時に軍事衝突が起きる前の非軍事的選択肢を含むその他の措置も推進している。それらの措置とは米国側の戦略的な地位、行動の自由、作戦の余地を侵食することを意図する試みである。
要するに中国はアジアでの米軍の軍事能力を削ぐことに最大の努力を傾けているというのです。その米軍能力の削減のための工作とは必ずしも軍事手段には限らないです。一連の非軍事的な措置もあるというのです。同報告書がその非軍事的措置としてあげるのが以下の三種類の動きでした。
・関与
・威圧
・同盟分断
以上、三種の中国側の戦術はみなアジアでの米軍の弱体化、同時に中国軍の強化を狙いとしています。その戦術の標的は米国と同時に日本などその同盟諸国により鋭く照準が絞られていまなす。本稿の主題である沖縄に対する中国の工作はその中の「同盟分断」の戦術に含まれていました。

では中国はなぜアジアでの米軍の能力の弱化にこれほど必死になるのでしょうか。その点については同報告書は以下の骨子の理由をあげていました。
中国人民解放軍幹部が軍科学院の刊行物などに発表した論文類は中国がアジア、西太平洋で 『歴史上の正当な傑出した立場』 に戻るためには、米国がアジアの同盟諸国とともに、有事に中国の軍事能力を抑えこもうとする態勢を崩す必要がある、と主張している。
以上の記述での中国にとっての「歴史上の正当な傑出した立場」というのは明らかに 「屈辱の世紀」 前の清朝以前の中華帝国王朝時代のグローバルな威勢、ということでしょう。その過去の栄光の復活というわけです。

この概念は習近平国家主席が唱える「中国の夢」とか「中華民族の偉大な復興」というような政治標語とも一致しています。「平和的台頭」という表面は穏やかなスローガンの背後にはいまの中華人民共和国を過去の王朝時代のような世界帝國ふうに復活させようというギラギラした野望が存在している、と米国側の専門家集団による同報告書はみているのです。

この「野望」は2016年、南シナ海での中国の海洋覇権追求に関して国際仲裁裁判所が「根拠なし」と裁定した「九段線」にもあらわとなっていました。「南シナ海は古代から九段線の区画により歴史的に中国の領海だった」という時代錯誤の中国政府の主張は、「歴史上の正当な傑出した立場」の反映なのです。ただし現代の世界ではその正当性はないのです。ちなみに、この「九段線」なるものはルトワックの『中国4.0』という書籍によれば、中華民国の将官が酔っ払って何の根拠もなく地図に描いたものとされています。

中国が主張する九段線

しかし中国側からすれば、その「正当な傑出した立場」の構築や達成には米国、とくにアジア駐留の前方展開の米軍の存在が最大の障害となります。

この点の中国側の軍事的な認識を米中経済安保調査委員会の同報告書は以下のように総括していました。
中国軍幹部たちは、米国が中国の正当な進出を阻もうとして、その中国封じ込めのためにアジアの北地域では日本と韓国、南地域ではオーストラリアとフィリピンを拠点とする軍事基地システムを築き、グアム島をその中核とし、中国深部を長距離の戦略兵器で攻撃ができるようにしている、とみている。
だからこそ中国にとっては米国がアジアで構築してきた一連の同盟関係とその軍事態勢は有事平時を問わず、敵視や反発の主対象となるわけです。

同報告書は中国側のそのアジアでの米軍の能力を弱めるための対米、反米そして対米国同盟諸国への非軍事的手段の基本的な特徴について以下のように解説していました。
中国人民解放軍の最高幹部たちは各種の論文で『戦争は単に軍事力の競合ではなく、政治、経済、外交、文化などを含めての総合的な競い合いだ』と繰り返し主張している。 つまり政治、経済、外交、文化などの非軍事的要因が軍事作戦を直接、間接に支えなければ勝利は得られないという考え方なのだ。
だから米軍のアジアでの中国のかかわる紛争への介入を阻むためには単に軍事力だけでなく、米国の政治システムや同盟相手の諸国の対米依存や対米信頼を弱めるための外交、情報、経済などのテコが必要となる。その種のテコには貿易協定や友好外交などから賄賂的な経済利権の付与も含まれてくる。
つまりは非常に広範で多様な手段による米軍の能力削減、そして同盟の骨抜きという意図なのです。中国側のその種の意図による具体的な活動が前述の三戦術「関与」「威圧」 「同盟分断」だというわけなのです。

その三戦術のうち対沖縄工作が含まれた「同盟分断」を詳述する前に「関与」と「威圧」について報告書の概略を紹介しておきます。
【関与】 
中国はタイやパキスタンとの経済協力を深め、軍事協力へと発展させ、中国海軍の現地での港湾使用などで、米軍に対する軍事能力を高めている。オーストラリアやタイとの合同軍事演習を実施して、両国の米国との安全保障協力を複雑にする。 韓国との経済のきずなを強めて、安保面でも韓国の米国との密着を緩める。
  【威圧】
中国はフィリピンとのスカーボロ環礁での衝突の際、フィリピン産バナナの輸入を規制した。日本との尖閣諸島近海での衝突の際はレアアース(希土類)の対日輸出を規制した。いずれも経済的懲罰という威圧行動だった。尖閣付近では海警の艦艇の背後に海軍艦艇を配備し、軍事力行使の威圧をかける。中国はベトナムの排他的経済水域(EEZ)での一方的な石油掘削作業でも軍事的な威圧をした。この種の威圧はいずれも米軍の抑止力を減らす意図を持つ。
「米中経済安保調査委員会」の同報告書はそのうえで3戦術の最後の【同盟分断】に触れて、そのなかの主要項目として「沖縄」をあげていました。

注目されるのは、同じ「同盟分断」の章では米国の同盟諸国の国名をあげて、国別の実態を報告しているのに対し、日本の場合は、日本という国名ではなく「沖縄」だけを特記している点でした。中国の日本に対する同盟分断戦術はいまのところ沖縄に集中しているという認識の反映のようなのです。その記述は以下のような趣旨でした。
【同盟分断】
中国は日本を日米同盟から離反させ、中国に譲歩させるための戦術として経済的威圧を試みたが、ほとんど成功しなかった。日本へのレアアースの輸出禁止や中国市場での日本製品ボイコットなどは効果をあげず、日本は尖閣諸島問題でも譲歩をせず、逆に他のアジア諸国との安保協力を強め、米国からは尖閣防衛への支援の言明を得た。
中国はだから沖縄への工作に対日戦術の重点をおくようになったというわけです。
中国軍部はとくに沖縄駐留の米軍が有する遠隔地への兵力投入能力を深刻に懸念しており、その弱体化を多角的な方法で図っている。
沖縄には周知のように米軍の海兵隊の精鋭が駐留しています。第3海兵遠征軍と呼ばれる部隊は海兵空陸機動部隊とも称され、空と海の両方から遠隔地での紛争や危機にも対応て、展開できます。多様な軍事作戦任務や地域の安全保障協力活動が可能であり、有事や緊急事態へスピーディーに出動できます。米軍全体でも最も実践的な遠征即応部隊としての自立作戦能力を備えているともいわれます。

沖縄の米海兵隊

まさに中国側からすれば大きな脅威というわけです。だからその戦力、能力をあらゆる手段を使って削ぐことは中国にとっての重要な戦略目標ということになります。

同報告書は次のようにも述べていました。
中国は沖縄米軍の弱体化の一端として特定の機関や投資家を使い、沖縄の米軍基地の近くに不動産を購入している。
報告書はこの中国側による沖縄の不動産購入について脚注で「中国工作員が米軍基地近くに米軍関係者居住用のビルを買い、管理して、管理者用のカギで米軍関係者世帯宅に侵入して、軍事機密を盗もうとしている」という日本側の一部で報道された情報を引用していました。

米国の政府や議会の報告書では米側独自の秘密情報を公開することはまずないですが、一般のマスコミ情報の引用とか確認という形で同種の情報を出すことがよくあります。つまり米側の独自の判断でも事実と認めた場合の「引用」となるわけです。

そして報告書はこんどは引用ではなく、同報告作成者側の自主的な記述としてさらに以下の諸点を述べていました。
中国は沖縄に米軍の軍事情報を集めるための中国軍の諜報工作員と日本側の米軍基地反対運動をあおるための政治工作員を送りこみ、日米両国の離反を企図している。
沖縄での中国の諜報工作員たちは米軍基地を常時ひそかに監視して、米軍の軍事活動の詳細をモニターするほか、米軍の自衛隊との連携の実態をも調べている。
中国の政治工作員は沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動することに努める。そのために中国側関係者が沖縄の米軍基地反対の集会やデモに実際に参加することもよくある。その結果、沖縄住民の反米感情をあおり、日米同盟への懐疑を強め、日米間の安保協力をこじれさせることを企図している。
同報告書は中国側の沖縄でのこうした動きをはっきりと 「スパイ活(Espionage)」とか「扇動(Agitation)」と呼び、そうした行動が将来も続けられるという見通しを明言していました。このへんはこの記述以上に詳細で具体的な情報こそ示されないものの、明らかに米国当局独自の事実関係把握に基づく報告であり、警告だといえます。

米中経済安保調査委員会の同報告書はさらに中国側の沖縄領有権の主張や沖縄内部での独立運動についても衝撃的な指摘をしていました。

要するに中国は自国の主権は尖閣諸島だけでなく、沖縄全体に及ぶと主張し、その領土拡張の野望は沖縄にも向けられている、というのです。報告書の記述を以下に掲載します。
中国はまた沖縄の独立運動をも地元の親中国勢力をあおって支援するだけでなく、中国側工作員自身が運動に参加し、推進している。
中国の学者や軍人たちは『日本は沖縄の主権を有していない』という主張を各種論文などで表明してきた。同時に中国は日本側の沖縄県の尖閣諸島の施政権をも実際の侵入行動で否定し続けてきた。この動きも日本側の懸念や不安を増し、沖縄独立運動が勢いを増す効果を発揮する。
確かに中国政府は日本の沖縄に対する主権を公式に認めたことがないです。中国が沖縄の領有権を有すると政府が公式に言明することもないですが、中国政府の代表である学者や軍人が対外的に「沖縄中国領」論を発信している事実はあまりに歴然としているのです。同報告書はこうした点での中国側のトリックの実例として以下のようなことも述べていました。
中国の官営ニュースメディアは『琉球での2006年の住民投票では住民の75%が日本からの独立を望むという結果が出た』という報道を流した。しかし現実にはその種の住民投票は実施されてはいない。沖縄住民の多数派は日本領に留まることを欲している。
中国側の官営メディアがこの種の虚報を流すことは年来の中国のプロパガンダ工作ではよくある事例です。この虚報の背後にすけてみえるのは、中国がやがては沖縄も自国領土だと宣言するようになる展望だといえます。

米中経済安保調査委員会の「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」という題の同報告書は中国の沖縄に対する活動について以上のように述べて、中国側のその目的はすべて日米同盟にくさびを打ちこみ、日米の離反を図って、米軍の沖縄などでの軍事能力を骨抜きにすることだと分析していました。

とくに中国側の領土拡張の狙いが単に尖閣諸島だけでなく沖縄本島などにも及んでいるという指摘、さらには中国側がすでに沖縄の内部に工作員を送りこんで、軍事、政治の両面で日米の連携をかき乱しているという警告は日本側としても重大に受けとめねばならないでしょう。

中国による日米同盟への揺さぶり工作では同報告書が日韓関係についても警鐘を鳴らしている点をも最後に付記しておきます。中国がアジアでの米国の存在を後退させる戦術の一環として日本と韓国との対立をもあおっている、というのです

日本も韓国もいうまでもなく、ともに米国の同盟国です。米国を中心に日韓両国が安保面で緊密な連携を保てば、米軍の抑止力は効果を発揮します。日韓両国が逆に対立し、距離をおいていれば、米軍の効用も減ってしまいます。中国にとっては東アジアでの米軍の能力の減殺という目的の下に、日本と韓国との間の摩擦や対立を広げる戦略をも進めてきたというのはごく自然です。同報告書は以下の諸点を指摘していました。
中国は日韓両国間の対立の原因となっている竹島問題に関して同島を軍事占領する韓国の立場を支持して、日本側の領有権主張を『日本の危険なナショナリズムの高揚』などとして非難してきた。
中国は日韓両国間の慰安婦問題のような第二次大戦にかかわる歴史認識問題に対して韓国側の主張を支持し、日本側の態度を非難する形の言動を示して、日韓間の歴史問題解決を遅らせてきた。
中国は日本の自衛隊の能力向上や役割拡大への韓国側の懸念に同調を示して、韓国側の対日不信をあおり、米国が期待するような米韓両国間の安全保障協力の推進を阻もうとしてきた。
米国の議会機関が指摘する中国の日韓離反工作も中国の沖縄への介入と目的を一致させる反日、反米のしたたかな謀略活動だともいえるでしょう。日本側としても硬軟両面でのそれ以上にしたたかな反撃が欠かせないでしょう。

安倍総理は、総理に着任する直前に、「安全保障のダイヤモンド」という論文を国際NPO団体PROJECT SYNDICATEに発表しました。この内容は、単純に言ってしまうと多国間の連携による中国封じ込め政策です。

そうして、安倍総理はこの論文の内容を実現するため全方位外交を展開し、安全保障のダイヤモンド構想を現実のものとしてきました。これは、中国にとって大きな脅威だと思います。

ただし、この内容は、未だにほとんどのマスコミで報道されることはありません。沖縄の危機についても、産経新聞などは例外としてほとんど報道されません。テレビ局ではどこも報道しません。

この状況は何としても打開しなければなりません。これを打開するには、まずは日本でも米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関と同じような機関をつくるべきです。

中国に親和的なリベラル・左派が多数派を占める米国のマスコミや共和党が大きな力を持っていたオバマ政権末期にこの委員会は設立されています。

そうして、このブログでも以前掲載したように、米国議会のこの「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、今年の8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書が公開されていますが、これを期に米国議会では中国をあからさまに擁護する議員は、ほとんどいなくなりました。

その記事のリンクを以下に掲載します。
【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに―【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみを引用します。
中国共産党の正体を暴いた同報告書はトランプ政権の大きな実績です。中国共産党の各種不道徳な行為は、トランプ政権によって次々と暴露され始めています。これからも、さらに中国の異形のおぞましい姿が次々に晒されていくと思います。 
なお、この『中国共産党の海外における統一戦線工作』に書かれていことは、以前から知られていることです。多くの筋からそのような内容は、多くの人々に知られていました。その一旦は、このブログにも過去にも数多く掲載しています。 
とはいいながら、このような内容が、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書によって正式に公表されたという事実は大きいです。 
これで、中国に対して面と向かって擁護する人は少なくとも米国ではいなくなりました。そうして、これはトランプ大統領ならび米国議会が中共との対立もじさないという並々ならぬ決意を示すものです。 
そうして、このような中国の統一戦線工作は無論米国にだけではなく、日本を含む他の先進国にも様々な工作をかけています。 
日本も、米国のように中国の化けの皮を剥がし、白日のもとに晒すべきです。
日本でも、このような委員会を超党派で設立して、中国の沖縄での工作活動を表沙汰にして、中共の化けの皮をはがせば、日本でも中国を擁護するような国会議員などいなくなります。それでも、産経新聞などの一部を除いては、それを報道しないでしょうが、政府が積極的にSNSなどで公表するようにすれば、いずれ日本も米国と同じようになり、マスコミも政治家も中国をあからさに擁護する者はいなくなるでしょう。

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2014年11月25日火曜日

米国防長官が辞任 シリア政策で大統領と対立―【私の論評】レームダック化したオバマの振る舞いは危険ではあるが、アメリカ議会が超党派で動き出しているし、日本にとってはアジアでの存在感を高め「戦後体制から脱却」を推進する良いきっかけになると心得よ(゚д゚)!

米国防長官が辞任 シリア政策で大統領と対立

オバマ大統領とヘーゲル国防長官
【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領は24日、ヘーゲル米国防長官の辞任を発表した。イラク情勢やシリア政策を巡るオバマ氏側との意見の対立が背景にある。オバマ政権で国防長官の辞任は3人目となる異例の事態だ。政権に打撃を及ぼすのは必至で、日米の同盟関係や北朝鮮情勢への対応など米国内外の外交・安全保障政策への影響も避けられない。

4日の米中間選挙で大敗した後の閣僚辞任は初めて。ヘーゲル氏は後任決まるまで職務を続ける。人事には米上院の承認が必要で政策の停滞を招く恐れもある。

ヘーゲル氏は共和党出身で昨年2月、2期目の目玉閣僚として迎えられた。ブッシュ政権下の共和に所属しながらイラク戦争に反対したヘーゲル氏をテコに超党派の政策を進める狙いだった。

オバマ氏は昨年、ヘーゲル氏が進言したシリアへの軍事介入を土壇場で見送る一方で、今年に入りライス大統領補佐官(国家安全保障担当)らの求めに応じてシリア領の過激派「イスラム国」への空爆を決断した。こうした経緯にヘーゲル氏は不満を強め、ホワイトハウスとの不協和音が伝えられていた。

エボラ出血熱への対応や「イスラム国」との戦いなど課題が山積するなか、司令塔となる重要閣僚の辞任は世界の安保体制にも波紋を広げる。

この記事は、要約です。詳細はこちらから!

【私の論評】レームダック化したオバマの振る舞いは危険ではあるが、アメリカ議会が超党派で動き出しているし、日本にとってはアジアでの存在感を高め「戦後体制から脱却」を推進する良いきっかけになると心得よ(゚д゚)!

シリア、ウクライナ、対中国等、オバマ大統領の外交には、かなりの疑問符がつきます。オバマの煮え切らない態度が、問題をかえって大きくしてしまっています。このようなことが、今回のヘーゲル国防長官の辞任劇に結びついているのは間違いないと思います。

日本では、マスコミなどがほとんど報道しないものの、尖閣の問題をこじらせたのは、オバマの責任でもあります。もし、オバマが早い段階で、「尖閣諸島は、日本固有の領土であり、日中間に領土問題はない」とはっきり声明を発表していれば、こじらすことはありませんでした。

さらに、中国がこのような声明を出しても、尖閣付近での領海・領空侵犯をやめなければ、尖閣付近で、日米両国による協同大軍事演習を実行するなどの実力行使にでるべきでした。無論、キーンソードなどの軍事演習は実行していますが、尖閣付近で実行するということに大きな意味と意義があります。それは、未だに実行していません。

このようなオバマの及び腰が、日中関係を複雑化させています。中国としては、このブログにも以前から何回か掲載してるように、尖閣問題や反日デモは憤怒のマグマが煮えたぎっている中国の人民の目を中国共産党政府から、日本にそらすため、意図して、意識して実行されたものです。

しかし、反日デモに関しては、それを許容していると、反日デモが政府追求デモに変わってしまうため、最近は官製主導のデモはやらなくなっただけです。

そうして、中国側には、その他の意図もあります。それは、日本にちょっかいを出してみて、アメリカがどう出るかを見ているというところもあります。早い時点で、アメリカが本気で怒りだしたら、尖閣問題はあそこまで、長期化しませんでした。

これについては、以前のこのブログでも掲載しました。そのブログのURLを以下に掲載します。
オバマ大統領が尖閣は安保条約の対象と明言、中国にも配慮―【私の論評】お花畑オバマは、尖閣衝突を誘発するだけ!!ブッシュなら中国に配慮するリバランスなど表明しなかっただろう(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の締めくくりの部分のみを以下に掲載させていただきます。
オバマ、最近外交はまるで駄目です。シリアでも、ウクラナイでも大失敗です。今回の尖閣問題に関しての発言は、時期を逸したということと、中国に配慮したリバランスしたということで全く意味のないものになったどころか、中国尖閣挑発の格好の裏付けを与えたようなものです。 
これは、オバマのシリア問題での大失敗、ウクラナイ問題での大失敗によっても十分証明されたと思います。 
このままだと、尖閣も第二のシリア、第二のウクラナイになってしまうおそれも十分あります。日本としては、中国が尖閣で挑発するなら、毅然たる態度で臨むべきでしょう。尖閣には、一兵たりとも上陸させない。上陸すれば、全員殲滅。寸土の土地も譲らないという態度でのぞむべきです。 
しかし、これほど米国大統領の来日が一般国民に軽視されることは過去69年間の戦後の日米関係の歴史でなかったことです。 
オバマ以前の大統領であれば、もっと歓迎されていました。 
たとえば、あのブッシュでさえ、もっと歓迎されていたと思います。
アメリカは超大国的な動きができなくなった?
オバマとブッシュの差異は、はっきりしています。たとえば、中国問題一つとっても、ブッシュまでは少なくとも年に一回くらいは大統領自らが、中国は、民主化されていないこと、政治と経済が分離されていないこと、法治国家化もされていないことなどに対して、苦言を呈していました。 
オバマも発言はするのですが、シリア、ウクラナイなどの例を見てもわかるように、すっかりタイミングを逸してから発言するなどの不手際が目立ちすぎです。最近の、プーチンのウクライナ対策などをみていると、オバマは超大国の大統領としての動きがとれていません。 
ロシアは、今や経済的にも軍事的にもとるに足りない国になりましたが、それでもロシアのプーチンは、超大国なみの動きをしていて、小国ロシアの国益のために努力しています。 
米国は、今や世界で唯一の超大国なのですが、オバマはとても超大国の大統領とは思えないような行動ばかりしています。 
このオバマの外交オンチ、いかんともしがたいです。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
オバマの外交オンチは、ごく最近のAPECでも露わにされました。それについては、以下の動画をご覧いただくと良くご理解いただけるものと思います。


この動画では、独立総合研究所の青山繁晴氏は、中国の習近平国家主席が言っている「新型の大国関係」とは、ハワイまでアメリカから奪い取る意味だと指摘しました。青山繁治氏は、それに同意しているオバマ大統領の外交姿勢をぶれぶれで困ったものだと批判しています。

ただし、上の動画で、日米関係がどうの言っているバカがいますが、この発言は明らかな間違いです。この発言は無視してください。

それにしても、オバマはハワイより西を中国にやるつもりなのでしょうか。とんでもないです。

そうして、上の動画では、習近平と安倍総理の会談がわずか、25分に過ぎなかったのですが、オバマとの会談ではかなり長時間を費やしかなりの厚遇をしたことも伝えています。

これは、何をあらわしているかといえば、中国の故事そのままです。

その故事とは、一言で言ってしまえば、「無能な敵将は厚遇し有能な敵将は冷遇する」というものです。

これは、著名な兵法書『六韜』が出典です。

第十五 文伐篇武力を使わず征伐(文伐)する方法を文王が呂尚(太公望)に尋ねる場面です。以下にそれを引用します。

呂尚図
文王が呂尚にたずねた。 
文王「武力を使わないで目的を達するには、どうすればよいか」 
呂尚「それには次の12の方法が考えられます。 
第一は、相手の欲するままに要求を聞き入れてやれば、やがて驕りの心が生じ、必ずや墓穴を掘るようなことをしでかします。 
第二は、敵国の寵臣を手なずけて、君主と権力を二分させるのです。 
第三は、側近の者に賄賂を贈って、しっかりとかれらの心をとらえるのです。 
第四は、相手国の君主に珠玉を贈り美人を献じ、女に溺れて政治を忘れるように仕向けたうえ、下手に出て、相手の言いなりになって調子を合わせるのです。 
第五は、相手国の忠臣を厚遇し、君主への贈物は減らして、相手の結束に楔を打ち込むのです。 
第六は、相手国の内臣を懐柔し、外臣を離間するのです。 
第七は、相手国の野心を封じこめるために、厚く賄賂を贈って寵臣を買収し、利益で釣って職責を怠るように仕向けるのです。 
第八は、相手国の君主に重宝を贈って、わが方を信頼するようにさせ、わが方に協力させるように仕向けるのです 
第九は、相手国の君主を褒め上げていい気持ちにさせ、手も足も出ないふりをして安心させ、政治を怠るように仕向けます。 
第十は、謙虚な態度で相手国の君主に仕えて心をつかみ、頼りになる味方だと思わせるのです。 
第十一は、相手国の有能な臣下に、内密に高い地位を約束し、重宝を贈って手なずけ、わが方に肩入れする人間を増やすのです。 
第十二は、相手国の乱臣を手なずけて君主の心を惑わし、美女や歌舞団を送って関心をそちらに向けさせるのです。 
以上の12の策をすべて試みてから武力を行使するのです。つまり、天の時、地の利を考え、これなら勝てると見極めてから、はじめて軍事行動を起すのです」
さて、オバマはこの策の九、十によって、半分籠絡され、習近平の言うことに生返事をしてしまったということです。安倍総理は、この手には全くのらなかったし、習近平の大負けであったということです。

習近平が大負けであったことを、象徴的に示す、ツイートを以下に掲載しておきます。
やはり、これから、日本をそうして、世界をリードしていこうという気概のある安倍総理と、もう中間選挙でも敗れて、レームダック化しているオバマとの違いは明らかです。

しかし、このようなオバマの体たらくですが、アメリカ議会は、こうしたオバマのレームダック化に業を煮やして超党派で、動きはじめています。

それに関しては、このブログでも掲載したばかりですので、その記事を以下に掲載します。
「米国の抑止力、とりわけ日本に対するそれを低下させる」中国軍の戦力増強に危機感-米委員会が年次報告書―【私の論評】国内の増税見送り、解散総選挙で見逃され勝ちな世界の動き、アメリカ議会の動きを見逃すな!アメリカは、日本の改憲を望んでいることを忘れるな(゚д゚)!
海岸防衛から大洋海軍を目指す中国海軍

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
米連邦議会の超党派の諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」は20日、中国の軍事力増強に強く警鐘を鳴らす年次報告書を発表した。 
報告書は、米国に「新型大国関係」の構築を呼びかける中国が、現実には東シナ海上空に防空識別圏を設定し、南シナ海で軍事用滑走路を建設するなど、着々と覇権を拡大している事実を直視。「習近平国家主席には、高いレベルの緊張を引き起こす意思があることは明らかだ」と非難した。 
さらに、中国の行動パターンは「対中関係を和らげるために東アジアの同盟国を見捨てるのか、あるいは中国の侵略から同盟国を守って中国との潜在的な対立に直面するのか」を米国に迫ることが特徴だとし、強い警戒感を示している。
報告書は、こうした中国の脅威に対処するため、米国の地域におけるリバランス(再均衡)戦略を維持し、その進(しん)捗(ちょく)状況を検証することや、日本の集団的自衛権行使を後押しすることなどを提言している。 
オバマに関しては、もうレームダック化しており、特に外交においては、能力がどうのこうのという次元ではなく、もうやる気そのものがないようです。しかし、このようなオバマの投げやりな態度をそのまま、許容するわけにもいかず、アメリカ議会が超党派で動き出しているわけです。

そうして、このブログ記事では、このようにアメリカ議会は、日本の集団的自衛権行使を後押しすることなどを提言しています。そうして、ここで、多くの日本人が知っておかなければならないのは、このブログにも掲載したように、もう数年前から、「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派になっているということです。

オバマのレームダック化は、ある一面では、脅威でもありますし、実際にオバマの優柔不断で、日本も被害を受け、尖閣問題が複雑化しています。

しかし、これはまた別の側面から見れば、日本にとってのチャンスになるかもしれません。アメリカは従来のように超大国でありつづけることは難しいかもしれません。しかしそれでも、ここ当面は世界唯一の超大国でありつづけるでしょう。

反面中国は、超大国とはなり得ず、直近では経済も落ち込み、もう富裕層からも見離されています。おそらく、現体制が長続きすることはありません。

そうなると、安倍総理が進めようとしている、「戦後体制からの脱却」が進めやすい環境が整いつつあるともいえます。

オバマの時代はもうすぐ、終わります、その次の大統領は、アジア、特に中国に対してどのような対応をするのか、いまのところ見えていませんが、オバマのようなやる気のない外交ということはあり得ないと思います。

年次記者ホワイトハウス晩餐会、レームダックを露呈したオバマ

オバマのやる気のなさは、中国を配慮したリバランスなどという矛盾を生み出し、中国近隣の諸国に混乱をもたらしました。しかし、こうした混乱があったらこそ、中国の海洋進出などの意図がはっきりして、それに対する脅威や、警戒感を生み出しました。

アメリカ議会もそれをはっきり理解して、今日では日本はアジアの平和に貢献して欲しいと考えるようになりました。日本国内でも、オバマのレームダック化ぶりは、安全保障を見直す、良いきっかけになると考えられます。

安倍総理は、このブログでも何回か掲載している「安全保障のダイヤモンド」をさらに推進して、アジアにおける日本の存在感をさらに高め、ゆくゆくは「戦後体制から脱却」を目指していただきたいものです。オバマのおかげで、そのような条件が、整いつつあるように思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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