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2020年4月17日金曜日

国が「休業補償」を実施しても財政破綻の心配などない カネケチらず国民の命守れ! ―【私の論評】財務省の緊縮病に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊される(゚д゚)!

国が「休業補償」を実施しても財政破綻の心配などない カネケチらず国民の命守れ! 
高橋洋一 日本の解き方

新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴う休業要請の補償について、東京都は独自に行う方針だが、国は実施に消極的だ。東京以外の道府県は必ずしも財政事情が良くないので、国が出てきてくれないと大規模な補償は難しいのが実情だ。

 これについて安倍晋三政権で首相補佐官をしていた磯崎陽輔参院議員は、ツイッターで「全額休業補償をすれば、国は、財政破綻します。国名を挙げれば失礼ですが、イタリアと同じような状況になります。それは、医療崩壊へとつながるのです」と書いていた。


 これに対し、筆者は「もしこのような間違った財政破綻論にとりつかれていたら確実に『Z(財務省)緊縮病』患者。全額休業補償に必要なのはせいぜい数兆円レベル。これで財政破綻といいきるのは、1、2、…9、10、『たくさん』という人笑笑。その程度の財源作りなら教えますよ笑」と書いた。

 一般論だが、事業が厳しくなると、事業主は経費を減らそうとする。これが人件費にまで及ぶと休業や従業員の解雇となる。解雇の場合、労働者には失業保険が手当てされ、休業の場合には事業主には手当てに要した費用が雇用調整助成金として支給される。ともに、雇用を守るためのセーフティーネットだ。どちらも不正受給はいけないが、法律に基づくものは大いに活用すべきだ。

 国は、休業補償には及び腰であるが、雇用調整助成金の枠組みの中ではある程度の対応をしようとしている。

 ということは、経費のうち人件費以外の固定費などについては補償したくないという意思表示がうかがえる。ここでも、「Z緊縮病」のケチケチ根性丸出しなのだ。

 一体どれくらいの金額が必要なのか。大ざっぱな計算であるが、緊急事態宣言の区域である7都府県の国内総生産(GDP)合計はほぼ250兆円。休業要請するのは、経済活動別分類でいえば、宿泊・飲食サービス業、教育、その他のサービスが中心だ。それらの付加価値額は全体の10%程度として、経費と利益を全て補償したとすれば年間ベースで25兆円となる。

 仮に補償期間を3カ月(0・25年)として経費率8割とすれば、経費全てを補償する場合、25×0・25×0・8=5兆円。補償期間1カ月で全額でなく8割補償とすれば、必要金額は1・3兆円にしかならない。この程度であれば、国債を発行し、日銀が買いオペ対象にするだけで、インフレを起こすこともなく、簡単に捻出できる。

 一方、地方公共団体には、日銀の通貨発行益という奥の手はない。財政余裕度を示す財政調整基金(2018年度末)について、東京都は8428億円だが、大阪府は1489億円、神奈川県が591億円、千葉県が465億円という状況で、1兆円を超す支出を地方公共団体に求めることはできない。

 新型コロナウイルスに対しては、人と人との接触率を減らすのが当面の課題だ。早く打ち勝つためにもカネをケチってはいけない。国民の命を守るのは国の責務だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省の緊縮病に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊される(゚д゚)!

私達は今、二つの危機に直面しています。一つは、新型コロナウイルス感染拡大の危機です。この危機に対して安倍首相は4月7日、7都府県を対象に「緊急事態」を宣言し、外出自粛によって感染拡大を抑制する方針を示しました。経済的損失を覚悟のうえで国民の大半は「政府の要請」に協力するでしょう。

もう一つは、「日本経済は戦後最大の危機に直面している」(安倍首相)ことです。この危機を乗り切るため、同じ日に、安倍首相はGDPの2割に相当する「108兆円」の緊急経済対策を発表しました。


それでなくとも昨年10月の消費増税で景気は悪化していました。そこに新型コロナの影響で日本経済は本年度GDPでマイナス10%、実に55兆円もマイナスになるのではないかと言われています。

その穴埋めを政府の財政出動でしておかないと、国民経済は致命的な打撃を受ける。このため政府は今回、108兆円もの緊急経済対策(補正予算)を打ち出したのです。

ただしこの数字はこのブログでも以前述べたように、「事業規模」です。多くの経済学者が指摘しているように「真水」、つまりGDPを押し上げる効果がある政府の財政支出がいくらかが重要なのです。

実はこの108兆円には昨年12月に閣議決定された26兆円の経済対策の未執行分が入っています。よって、新規対策は82兆円。しかも中小企業向けに実施する納税や、社会保険料の支払い猶予のための26兆円は「財政支出」ではありません。

実際の「真水」に相当するのは「大変困難な状況に直面している家庭(一世帯30万円)、児童手当の上乗せ、中小・小規模事業者に対する現金給付と地方税減免」8兆円、「医療体制の整備と治療薬の開発」2.5兆円、「観光や農林水産業への補助金」8.5兆円などで、総計で20兆円に満たないと言われています。

現に、この補正予算に伴う新規国債発行額は16.8兆円です。量としては不十分です。この財政出動の出し渋りをした事務方のトップは、財務省の岡本薫明事務次官です。

財務省の岡本薫明事務次官

しかもこの財政出動の恩恵を直に受けることができるのは、一部の人に限られます。今回の2つの危機は、国民すべてに襲いかかってきています。よって、「給付金を一律10万円配布すべきだ」という案が与党や野党の一部からも出されていたのだが、これを否定したのが麻生太郎財務大臣でした。

公明党代表山口氏の要請もあり、政府・与党は4月16日、減収世帯限定の30万円給付を取り下げ、「国民1人あたり一律10万円給付」という異例の決定をしました。これは、当然といえば当然です。

緊急経済対策をめぐって、公明党は来週から審議予定の今年度の補正予算案を組み替えて現金10万円を一律に給付するよう求め、15日に自民党幹部と協議し、また山口代表が16日朝、安倍総理に電話で実現を改めて求めました。

これを受け安倍総理は、麻生副総理兼財務大臣と会談したほか、自民党の二階幹事長、岸田政調会長らを呼び、公明党との協議内容の報告を受けた上で、引き続き調整に努めるよう指示しました。山口氏としては、減額世帯限定の30万円給付だけでは、与党支持者の不興を買うのは必至であるとみたのでしょう。正しい判断でした。

一方、「日本の尊厳と国益を護る会」など自民党の若手議員約100人が消費税を一時的に減税すべきだと主張しましたが、これを却下したのが甘利明・自民党税制調査会会長でした。

甘利明・自民党税制調査会会長

ところが、今回の危機は簡単に収まりそうもないです。よって改めて真水の追加、つまり「一律給付」だけではなく、「消費減税」に踏み切ることで、国民一丸となって2つの危機に立ち向かう態勢を整えるべきではないでしょうか。自民党若手と野党の一部の奮闘を期待したいです。

一律給付が実現したのですが、消費税減税もしくは撤廃も実現すべきです。復興税もやめるべきです。コロナ禍は長期戦なので、給付金は必要とあれば何度でも実施すべきです。消費税減税も絶対必要です。一度の給付金では低所得層が持ち堪えられません。今後必要があれば、何度か実施すべきです。

財務省の緊縮に愛想よく付き合っていれば、日本経済は確実に破壊されることになります。

【関連記事】

コロナ禍で「増税」主張する学者…GDP減らして失業を増やす 東日本大震災でも失敗の“悪手” ―【私の論評】中国ウイルス恐慌で地獄が始まるのに、それでも安倍政権は消費減税だけはしたくないのか(゚д゚)!





2020年1月23日木曜日

「健全財政」にこだわる不健全 財務省に飼い慣らされている「諮問会議」は専門家の仕事をせよ ―【私の論評】財政破綻は夜迷いごと、南海トラフ大地震があっても日本は財政破綻しない(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

経済財政諮問会議であいさつする安倍首相(右から2人目)=17日午前、首相官邸

 内閣府が経済財政諮問会議で、国と地方の基礎的財政収支が2025年度に3・6兆円程度の赤字になるという中期財政試算を示した。消費税率を引き上げても財政の悪化が続き、目標とする25年度の黒字化は遠のいたと報じられている。

 最近の指標は軒並み悪化しており、結局昨年10~12月の日本経済はかなり悪かったという結果となった。一応、補正予算を打ったが、東京五輪・パラリンピック後の秋口にも再び景気対策の必要性が出てくるのではないか。そのときに、財務省の「緊縮病」が気になるところだが、これは中期財政試算にも垣間見える。

 政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を25年度に黒字転換する目標を掲げるが、実現はさらに厳しくなったと強調する。試算の成長実現ケースで、25年度のPBは3・6兆円の赤字。昨年7月時点の試算(2・3兆円の赤字)より悪化したとし、麻生太郎財務相も17日の閣議後の記者会見で「歳出改革の取り組みをさらに進めなければならない」と語った。

        政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を
        25年度に黒字転換する目標を掲げる

 なぜ、PBを目標としているかといえば、PBの動きが、ネット債務残高対国内総生産(GDP)比の動きを規定するからだ。ネット債務残高対GDPがどんどん大きくなれば(数学的な表現では「発散」すれば)、財政破綻とも言えるような状況になるわけで、そのためにPBを管理しなければいけない。

 試算では、成長率の高い「成長実現ケース」と成長率の低い「ベースラインケース」がある。PB対GDPは、成長実現ケースで25年度均衡化は無理だが、27年度均衡化するくらいに改善するが、ベースラインケースでは、1・3%程度の赤字を続ける。その結果、グロス債務残高対GDPは成長実現ケースで低下傾向になるが、ベースラインケースでは高止まりするとされている。

 この結果を、ネット債務残高対GDPでみれば、成長実現ケースで現在のゼロ程度がマイナス、つまり純資産がプラス状態になるが、ベースラインケースでもゼロ程度を維持できるとなる。

 はっきり言えば、国の場合、ネット債務残高が多少のプラス、つまり債務超過でも問題なく、ネット債務残高をマイナスにする必要はない。例えば、日本でPB対GDPが2%程度の赤字を10年間継続しても、せいぜいドイツと同じ程度になるだけで、財政状況は悪いわけではない。こうした状況にもかかわらず、目標とする25年度の黒字化ができなくなったのは問題だというのは、おかしな議論である。

 特に、今のマイナス金利を生かして、将来投資をするのは、ネット債務残高対GDPを悪化させない意味でも優れている。今の状態で、PB黒字化はほとんど意味がないにもかかわらず、教条的に「目標順守」というのは、健全な経済政策ではない。経済財政諮問会議の専門家は、財務省の走狗(そうく)になるのではなく、もっとしっかりすべきだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】財政破綻は夜迷いごと、南海トラフ大地震があっても日本は財政破綻しない(゚д゚)!
日本の財政を考えるときに、良く出てくる言葉が「財政破綻」です。日本が財政破綻しないことはこのブログでも何度か述べてきました。それについては、過去のこのブログの記事か、まともなエコノミストである高橋洋一氏や田中秀臣氏の記事などを読んでいただきたいと思います。

日本では、大手新聞も財務省の走狗に成り果て、「財政破綻」を煽っている

本日は、今後数百年もしかすると、数千年の間には、「日本政府が破産する」と投資家たちが信じて国債を投げ売りし、国債が暴落して日本政府の資金調達が困難になる場面があるかもしれませんが、しかし、それでも大丈夫であることを掲載しようと思います。

日本政府が破産すると信じる投資家は、国債を売るだけではなく、円をドルに替えるはずです。政府の子会社が発行した日本銀行券が紙屑になることを恐るからです。それにより、超ドル高になるでしょう。

そうなると政府は、外貨準備として保有している巨額のドルを高値で売却し、受け取った資金で暴落した国債を買い戻すことができます。1兆ドルの外貨準備を1ドル300円で売却し、300兆円の資金を得て、それを用いて額面の3割に暴落した日本国債を買い戻すと、発行済み国債1000兆円がすべて買い戻せることになるのです。

発行済み国債をすべて買い戻した日本政府は、破綻するどころか、無借金の超優良財務体質を手にするわけです。

こうして考えると、元々統合政府(政府+日銀)の借金ということでは、米国や英国、フランスよりも借金が少ない上に、日本の投資家らが、万が一日本が財政破綻すると信じて、日本国債を投げ売りするようなことが起こっても、日本の財政が破綻する可能性は非常に小さいことがわかります。

もちろん、南海トラフ大地震で日本経済が破綻してしまうケースなどを考えれば、財政も実質的に破綻するのかもしれませんが、しかし、そうなったらそうなったで、政府は膨大な建設国債などを発行して、インフラの復旧などを数十年という長い年月かけて行うでしょう。

さすがの財務省も、このような大地震が起こったときには、「赤字国債は将来世代へのつけとなる」などという、世迷言はいってはおられなくなって、膨大な国債を発行するはすです。もし、それでも世迷言をいうなら、財務省などこの世からなくしてでも、政府は国債発行に踏み切るてしょう。

そうなれば、このブログにも掲載したように、日本は外国からお金を借りているわけでもなく、完全雇用でもないので(関連記事:   消費増税の「悲惨すぎる結果」が判明…日本の景気、打つ手はあるのか―【私の論評】令和年間には、日本の潜在能力を極限まで使い、超大国への道を歩むべき(゚д゚)!)参照)将来世代へのつけということもなく、復興に成功して、全く新しい国に生まれ変わることになるだけです。財政は破綻しないでしょう。

財政赤字は巨額だから、早急に緊縮財政を実施しないと、将来の財政破綻が防げなくなるという人がいますが、そうではない、ということは、はっきりしています。

そのため、性急に増税して景気を悪化させるリスクを負うくらいなら、増税を急がず、増税しても失業が増えないようなタイミングを狙って増税をすれば良かったと思います。



まあ、それでも増税してしまったのですから、マイナス金利の現状では国債を100兆円くらいは、大量に発行しても、うまくいけばゼロ金利かほんのわずかプラスになるだけですから、政府は発行で2兆円儲けて、残りは基金として様々な経済対策を行えば良いのです。

こう考えると、日本が財政破綻するというのは、ほんとに杞憂もしくは世迷言としか考えられません。


2019年9月5日木曜日

長期金利マイナスの明と暗 金融機関の経営に悪影響も…インフラ整備の絶好のチャンスに―【私の論評】日本は財政破綻するとされマイナス金利なのに、なぜ日本の投資家は日本国債を買い続けるのか?

長期金利マイナスの明と暗 金融機関の経営に悪影響も…インフラ整備の絶好のチャンスに

国債市場で8月29日、長期金利の指標となる新発10年債の終値利回りが、マイナス0・290%となった。2016年7月下旬以来、約3年1カ月ぶりの低水準で、過去最低のマイナス0・300%に迫った。その後はややマイナス幅を縮小しているが、長期金利のマイナスが拡大した背景は何か、経済にどのような影響を与えるのか。

 イールドカーブ(期間別の金利)を見てみよう。8月30日の国債利回りは6カ月がマイナス0・280%、1年がマイナス0・263%、2年がマイナス0・304%、7年がマイナス0・375%、10年がマイナス0・273%だった。



 これに対し、1年前は6カ月がマイナス0・140%、1年がマイナス0・111%、2年がマイナス0・108%、7年が0・019%、10年が0・114%。

 つまり、1年前は順イールド(長期金利が短期金利を上回る)だったのが、今や7年までは逆イールドになっている。

 米国では、2年と10年の金利が逆転すると、景気の先行きが怪しい兆候といわれている。日本でみると、形式的には、2年と10年とで金利逆転はないが、2年と7年とではかなりの金利逆転になっている。

 一般論として、長期金利は将来の短期金利の積み合わせになっている。2年金利は1年金利と1年後の1年金利、3年金利は2年金利と2年後の1年金利によって決まる。つまり、10年金利は、今の1年金利、1年後の1年金利、2年後の1年金利…9年後の1年金利によって決まる。10年金利が今の1年金利より低いというのは、これからの1年金利が今より低いと予想されることを意味する。

 日本経済に当てはめると、今後7年間は景気の先行きが明るくないとなる。少なくとも1年前は、そこまで先行きの不安はなかったが、不透明感がかなり増しているというわけだ。

 その原因は、(1)米中貿易戦争の激化(2)10月末の英国の合意なき欧州連合(EU)離脱(3)ホルムズ海峡の不安(4)日韓関係の泥沼化(5)日本の10月からの消費増税-が考えられる。

 長期金利のマイナスそれ自体は、金融機関経営にとっては、利ざやが取れないので悪影響がある。しかし、実体経済にとっては、金利負担なしで長期資金が借りられるので設備投資の絶好のチャンスだ。不動産投資や住宅投資はかなり良好である。

 政府は、この機会にインフラ整備をどんどん行ったほうがいい。長期金利がマイナスというのは、ほぼ全てのインフラ投資について、費用対効果を算定すれば、投資が正当化できることを意味する。

 具体的にみると、南海トラフ巨大地震や首都直下地震は確実にやってくるので、今の時期に防災対策投資を行うべきだ。さらに、教育、研究開発や国防等でも、政府は国債をもっと多く発行し、それらの施策の費用とすべきである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本は財政破綻するとされマイナス金利なのに、なぜ日本の投資家は日本国債を買い続けるのか?

上の記事は、高橋洋一氏の解説は、理解しやすく、かつ必要十分であり、これに対して何か付け加えることなどおこがましくてできません。

そこで、このブログでは、もっと根源的というか、基礎的なことを掲載しようと思います。そもそも、日本国債はマイナス金利なのになぜ購入されるかということを掲載します。日本の国債がマイナス金利でも購入されるということがなければ、当然のことながら上の高橋洋一の主張も成り立ちません。

一般に日本政府は巨額の財政赤字を毎年計上しているとされています。これは、このブログでは過去に何度も解説してきたので、このブログの読者なら、財務省の嘘であることはご存知だと思います。

その理屈は、財務省が指摘する国の借金とは、政府の負債のみを言っているだけであって、そのため、借金が1103兆円という莫大な金額に膨れ上がっているとされています。現在税収等が62兆円程度ですから、その18倍の借金を抱えている計算になるとされています。

昨年の新聞記事より。まるで、財務省の広告塔のよう。

ところが、世界で一番資産を持っている、日本政府の資産を計算に入れる相殺すると、政府の借金はトータルでかなり少なくなり、これであると米国や英国などより、良いということになります。さらに、日本政府と日本銀行(日本の中央銀行)をトータルした統合政府ベースでいうと、すでに財政再建は終了したと言っても良いような状況です。

統合政府ベースで比較しても、無論日本政府の財務状況は、米国や英国、その他諸外国の財務状況と比較してもかなり良い水準にあります。このあたりは、ここで解説していると長くなってしまうので、過去のこのブログの記事を参照していただきたいと思います。

しかし、財務省が嘘を吐きつづけ、何が何でも増税しようとしているので、そのことをはっきり認識している人は金融関係の人でも少ないようです。一般の人ではなおさらです。

そこで、投資家や金融機関の中にも「借金が返済できそうな気がしないので、日本政府は、将来いつかは破産するのだろう」と考えている人は多いはずです。にもかかわらず、投資家や金融機関は喜んで日本国債を買っているのです。ゼロ金利や、マイナス金利ても買っているのです。
それはなぜかといえば、結論から言ってしまえば、「他の選択肢よりはマシだから」「長期的には不安だけれど短期的には安心だから」ということだからなのです。

民間企業が売上高の18倍の借金を抱えていたら、直ちに倒産しそうですが、なぜ政府は倒産しないのでしょうか。それは、皆が喜んで政府に金を貸している(日本国債を購入している)からです。

黒字倒産という言葉があるように、黒字赤字と倒産とが直接関係しているわけではありません。銀行の取り付け騒ぎもそうですね。銀行が赤字だろうと黒字だろうと「あの銀行は倒産しそうだ」という噂が流れて預金者たちが一斉に預金を引き出しに走ると、本当に資金繰りがつかなくなって破産しかねないわけです。

つまり、企業も銀行も政府も、資金繰りがつかなくなった時に倒産するのです。これを反対から見れば、どれほど巨額の赤字を続けていても、あるいは巨額の赤字あると思われ続けても、資金繰りが付いている間は倒産しないのです。

そこで疑問がわいてきます。なぜ投資家や金融機関は「売上高の18倍の借金のある民間企業には金を貸さない」一方で「税収の18倍の借金あると彼らが信じて疑わない日本政府には金を貸す」のか、ということです。

しかも、強制されたわけでもないのに、マイナス金利の長期国債を自発的に買っているのです。これって、普通に考えれば異常としか言いようない行為ではありませんか?

しかし、日本政府に関しては、他に選択肢が乏しいのです。日本政府が破産する時は、日本政府の子会社である日本銀行も、日本国内のメガバンクも、破産を免れないはずです。

「日本政府が破産するといけないから、日本政府には貸さない(日本国債は購入しない)と」なると、手元の資金を日銀に預けても、日本銀行券を大量に持っていたとしても、安全性が増すわけではありません。メガバンクに預金しても、日本政府が破産する時はアウトになるでしょう。

そうなると、円をドルに替えてドルを持つしかありませんが、その場合には為替リスクを抱えることになります。


「とりあえず、今日から明日までの運用を考えよう。明日以降のことは明日考えよう」と投資家が考えたとします。「明日までに日本政府が破綻する可能性は非常に小さい」一方で「明日までに円高ドル安で損するリスクは小さくない」ということならば、「とりあえず明日までは国債で運用しよう」ということになりそうです。

明日以降も全く同じことが繰り返されれば、日本人投資家はずっと日本国債を持ち続けることになるでしょう。「長期的には不安だけれど、短期的には安心だ」ということで短期の投資が繰り返され、結果として長期間にわたって投資が続くことになります。

日本人投資家にとって心強いのは、「他の日本人投資家も同様の投資行動を採るとすれば、少なくとも当分の間は日本政府が破綻することはなさそうだ」と思えることでしょう。そうしてお互いに「意図せざる励まし合い」が行われているわけです。

この点も、社債と異なるところです。社債については、他の投資家が当該社債を買うとは限りません(というか多分買わないでしょう)から。

もちろん、日本人投資家が米国債を全く持たないわけではありません。「為替リスクはあるけれど、ドル高で儲かるチャンスもあるし、そもそも米国債は日本国際より金利が高いので魅力的だ」と言えるからです。

そこで、分散投資として資産の一部を米国債等で持っている投資家は多いのですが、それでも比較的多くの部分は日本国債で持っている投資家が多いです。

日本人投資家から見ると、日本国債は「信用リスクはあるが、為替リスクがないので、相対的に安全な資産だ」と言えるわけですが、外国人から見ると違います。彼らにとっては日本国債は「信用リスクも為替リスクもある、相対的にリスクの大きい資産だ。しかも金利も低い」ということになるからです。

そのため、外国人投資家は、あまり日本国債を持っていません。分散投資として持っている場合や、資金繰り上の理由で短期国債を持っている場合などもありますが、いずれも積極的に持っているというわけではありません。

日本は経常収支が黒字で、対外債権国(海外にお金を貸している国)ですから、政府は外国人から借金をする必要を感じていないわけですが、仮に経常収支が赤字で外国人から借金をしようと思ったら、結構大変です。

彼らは円建ての日本国債を持ちたいとは思わないので、外貨建てで借りることになるわけですが、たとえばドル建であれば、米国債と競合するので、米国債より高い金利を支払う必要があります。最無償が喧伝しているように、本当はそうではないのに、日本政府のような巨額の借金をしている相手には、よほど高い金利でないと貸したくないと考えるのが普通です。

それだけではありません。彼らが不安になって資金を引き揚げると大変なことが起きかねないのです。

政府は、最初に満期が来た国債を償還するためにドルを買いますが、そのドル買いでドルが値上がりします。次に満期が来た国債を償還するためのドル買いが、さらにドルを値上がりさせます。次々と償還のたびにドルが高くなり、最後には天文学的な値段になってしまうかもしれません。

そうなると、ますます日本政府は破産するという思惑が投資家の間で広がるでしょう。それが日本人投資家のドル買いを招くようなことになったら大変です。日本政府の子会社が発行している日本銀行券が紙屑になる前にドルに替えておこう、というわけですね。

日本の経常収支が黒字で、日本が対外純金融資産(外国に貸し付けているお金)が世界一であることが、たとえ、財務省が消費税増税のために、日本が大借金国だとアピールしたにしても、日本政府の破産を防いでくれているのだ、ということをしっかり認識したいものです。

 テレビで報道されるように、日本は海外純資産が世界一というのではなく、
 対外純金融資産(外国に貸し付けているお金もしくはお金にすぐ変えられる資産)
 が世界一である。
無論対外純金融資産が世界一だからといって、世界一裕福とは必ずしもいえません。たとえば、米国は対外純金融資産がマイナス300兆円ですが、これは米国が基軸通貨国であり、もともとこれがマイナスになりやすい体質があるからです。

そうして、日本がなぜこのように対外純金融資産を抱えるようになったかといえば、国内が長い間デフレで、めぼしい投資先がなかったので、海外に投資したということもあります。

ただし、基軸通貨国でもないし、特別な理由もないのに、対外純金融資産がマイナスすなわち、対外純金融負債を抱えている国は、確かに借金国ということができます。しかし、日本はその真逆であり、どう考えても少なくとも借金国ではありません。

もし、日本の経常収支が赤字で、日本が対外負債国(外国からお金を借りている国)であり、かつ財務省が日本は借金大国であると喧伝していたとしたら、とうの昔に日本政府は破産していたことでしょう。

そうではないからこそ、財務省がいくら日本は大借金国であると喧伝し続けても、日本は未だに財政破綻もせず、マイナス金利であってさえ、多くの投資家が日本国債を買い続けているのです。

ただし、賢明な投資家の中に、このことをはっきり認識して、投資を行っている人もいるとは思います。そういう人は、理解していない人よりは、投資効率の良い取引をしているのではないかと思います。

ただし、金融機関の中にはこれを理解しない人が幹部の中にも多いようです。そういう人に限って、現状の低金利、マイナス金利に文句たらたらで、将来の金融機関はどうあるべきかなどの明確なビジョンも持っていないようです。

ちなみに、かつてある金融機関の幹部の人何人かに、なぜ「おたくの会社は日本が財政破綻するのに、国債を購入し続けるのか?」とか「本当に日本が財政破綻するというのなら、それで儲けること(クレジット・デフォルト・スワップ等)ができるはずなのに、なぜをそれをやらないのか?」などと質問したこともありますが、満足に答えられませんでした。無論金融機関の人全部がこのような有様ではないとは思いますが、それにしても困ったものです。

【関連記事】

2019年5月30日木曜日

財政破綻論が、降水確率0%で「外出を控えろ」と言う理由―【私の論評】確率論でなくても、日本国を家族にたとえれば、財政破綻するはずがないことがわかるが・・・(゚д゚)!

財政破綻論が、降水確率0%で「外出を控えろ」と言う理由

高橋洋一:嘉悦大学教授

「長期停滞」脱却に
財政赤字拡大を主張


 日本は悪性の『長期停滞』、つまり民間需要の不足に直面している。完全雇用を維持するには、金融政策は可能なことをすべて行った今、財政政策の役割が求められている――。

 国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏が、公債発行額とその元利払いの公債費を除いた財政の基礎的収支(プライマリーバランス)の赤字を維持し、さらに拡大すべきだというツイートを日本語で行ったことが話題になっている。

 日本では相変わらずの「財政再建至上主義」の財務省や、財政健全化を唱える学者も多い。ブランジャール氏の一連のツイートでの主張との違いはどうして起きているのか。

 ツイートのもとになっているのは、ブランシャール氏と田代毅氏が、二人が席を置くピーターソン国際経済研究所で5月に出したペーパーだ。それは日本語でも読める

 田代氏については、筆者は面識がないが経産官僚のようだ。そのペーパーでは、結論にこう書かれている。

 「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています」

 「プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。 要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」との結論が書かれている。

 ペーパーは、政府と中央銀行(日銀)の負債・資産を一体で見る「統合政府」論による分析がされており、「(政府の債務は)総債務ではなく純債務が正しい概念です(少なくとも良い概念です)」という前提だ。

 こうした考え方による主張は、財政省が、狭義の政府で見た総債務の分析から導き出す情緒的な結論よりは、筆者にとっては信頼できる。

 その内容も、筆者が本コラムなどでかねて主張しているおおよその方向性と同じだ。財政政策と金融政策の一体運用に基づいて、まだ財政政策の余地があるという主張に異論はない。

インフレ目標は
財政規律維持の枠組み


 つまり、今の日本は、「2%インフレ目標」に達していないという現実から考えても、金融政策で物価を上げる余地がまだあるとともに、財政政策で需要を喚起する余地がある。

 財政赤字拡大を問題視する論者がいるが、「統合政府」で見れば、政府が発行した国債を中央銀行が購入するのは、統合政府の負債としての国債と、日銀の供給するマネタリーベースの交換にしかならない。

 ここで、マネタリーベースは基本的には無利息無償還である。

 この場合、国債発行がやり過ぎかどうかはインフレ率に出てくる。

 つまり、インフレ率がインフレ目標を上回ることになれば、財政赤字は過大ということになる。インフレ目標は、財政規律を維持するものとしても意味があり、財政規律維持の枠組みになり得るのだ。

 日本では、こうした政府と中央銀行の連携を「財政ファイナンス」として禁じ手のように言う論者がいるが、インフレ目標の範囲であれば実体経済に弊害はなく、日銀の国債購入を否定する理由はない。

 また、現状の日本経済を考えると、プライマリー赤字を過度に恐れる必要はなく、それによる成長を目指したほうが、結果としての経済やその一部である財政にとっても好影響になると思う。

財政健全化は
成長の後からついてくる


 こうしてみると、財務省がマスコミや一般国民に垂れ流している考え方は、財政再建至上主義といえることがわかる。

 財政が経済を動かすという世界観で、プライマリーバランスの均衡化が最優先になる。

 一方、ブランシャール氏らの考え方の背景にあるのは、財政は経済の一部であり、マクロ経済学の基本通りに政策運営をすれば、経済成長で税収も増え財政(健全化)はおのずと後からついてくるという経済主義だ。

 この考え方では、日本経済には一時的なプライマリーバランス赤字は問題でなく、経済再建のほうが優先される。

 日本での議論を見ていくと、日本では財政再建至上主義の裏側に、「財政破綻論」が根強いのに気がつく。

 筆者が考えるその一例は、東大金融教育センター内にある、すごい名称の研究会である。その名前は、“「財政破綻後の日本経済の姿」に関する研究会”だ。

 代表は、井堀利宏(東京大学大学院経済学研究科教授)、貝塚啓明(東京大学名誉教授)、三輪芳朗(大阪学院大学教授)という日本の経済学会を代表する学者らだ。

井堀利宏氏

 活動内容はホームページに記載されており、2012年6月22日が第1回会合で、2014年10月3日まで22回も開催されていた。

 ホームページには、研究会発足にあたり、「われわれは日本の財政破綻は『想定外の事態』ではないと考える。参加メンバーには、破綻は遠い将来のことではないと考える者も少なくない」と書かれている。

 第1回会合では、三輪氏が「もはや『このままでは日本の財政は破綻する』などと言っている悠長な状況ではない?」という論点整理メモを出して、勇ましい議論をしている。

 要するに、財政破綻は当然起こるので、破綻後のことを考えようというわけだ。

 はじめのうちは、財務省、日銀らの実務家を呼んで議論をしていたようだが、その後、安倍政権が誕生し、アベノミクスに研究会の関心も移った。

 2013年4月12日の第11回では、インフレ激化、財政破綻が顕在化する問題が指摘され、アベノミクスにかなり懐疑的な様子だ。ところが、長期金利は一向に上がらず、歴史やテクニカルな金融分析を行うようになる。

 2014年8月27日の第21回会合では、〈8月末時点の長期債の最終利回りは0.5%を下回っている。ある意味、不可解な現象である。われわれは過去2年間「現状の日本でなぜ国債価格の大幅下落、急激なインフレを伴う「財政破綻」は現実化しない、その予兆も見えないのはなぜか…?」という問題意識を抱き、研究会を続けてきた〉と、もどかしさを隠しきれない様子だ。

 彼らの本音は、自分たちは正しいのに、世間の現実が間違っているということだろう。
 こうした研究がおかしいとは思わない。学者というのはどこか浮世離れしているもので、そこに存在意義があるともいえるからだ。
曖昧な政府債務の定義
「財政破綻本」の警鐘当たらず


 ただし、この研究会の危機感は、債務残高対GDP比が発散すると考えているようだ。

 日本の数字をいえば、「借金1000兆円でGDP500兆円の200%」というのが財務省の常套句だが、いつも疑問に思うのは、どうして資産を引いてネットで考えないのだろうか、ということだ。

 政府単体だけでも資産を相殺したネットで考えれば、対GDP比100%にはならない。ちなみにネットでアメリカと比較すれば、日本のほうが低い。

 政府単体ではなく、政府子会社(日銀は政府子会社である)も含めた連結ベースで見たらどうか。

 ブランシャール氏のように「統合政府」というのでもいい。

 その上でネットで見ると、債務は0%に近い。こうなると、先進国の中でトップクラスの出来である。

研究会で勉強をするのは結構なことだが、そもそも議論のスタートである「財政破綻があるはず」という認識がかなり怪しかったのだろう。

結局、研究会自体も今から4年半前の2014年10月3日の22回で終わり、現在は休止になっているようだ。

こうした議論の根本的な問題は、日本の財政状況をしっかりと数量的に把握していなかったことだ。

財政破綻というのは、債務残高対GDP比率が発散するということだとは認識していたと思うが、この場合の債務残高について、グロスなのか、ネットなのかさえ明確でない。

筆者にはなんとなくグロスと思い込んでいるように思える。

参加している経済学者は、会計的な知識が乏しく、国のバランスシートさえ頭に浮かばなかったようだ。

経済学者によるいわゆる「財政破綻本」もかなり出ている。

例えば『2020年、日本が破綻する日』(2010年8月)、『日本経済「余命3年」』(2010年11月)、『金融緩和で日本は破綻する』(2013年2月)などなどだ。

しかしこれらの本が“警鐘”を鳴らした「財政破綻」は現実に起こらなかった。財政破綻は面白い材料なのか、これらの本以外にも、それに類する本は少なくない。

ある国会議員は、財政破綻の問題を国会質疑で20年近くも主張しており、筆者が、予言は当たっていないと指摘すると、当たっていないことは認めるが、言わざるを得ないと言っていた。

実現したら困るので、根拠なしでも言う必要があるというものだ。この意味では、ノストラダムスの予言と大差ない。

一方で、財務省はこうした「財政破綻本」は増税の根拠にできるので、放置している。むしろ、財政破綻論を書きたい著者には財政資料をレクチャーするなどして後押しすることもある。

『絶対に受けたい授業「国家財政破綻」』(2010年6月)は興味深い本だ。財政破綻論が書かれている。

その本の筆者は、私にも見解を求めてきて、まず財政は破綻しないという私の意見も掲載されている希有な本だ。

破綻のリスク試算
「5年以内では確率1%未満」


筆者が日本財政はまず破綻しない、と言ってきたのには理由がある。

各国国債の信用度は、それらの関わる「保険料」(CDSレート、債券などの債務不履行のリスクを対象にした金融派生商品の取引レート)から算出される。

危ない国債に対する「保険料」は高くなるはずだからだ。

しかも、この「保険料」がもっともらしいのは、それがネット債務比率対GDPと、かなり(逆)相関の関係を持つことだ(下図)。



 これは、ファイナンス理論と整合的な結果である。

 これをもとに考えれば、筆者の試算では、今後5年間以内における日本の財政破綻の確率は1%未満だ。

 日本の財政破綻について言及する人について不思議に思うのは、財政破綻のリスクがあるという言い方をしている人が多いことだ。

 「財政破綻本」の中には、財政破綻までの期間を明示したものもなくはないが、リスクという表現は、もともと確率を表現できるものをいう。

 それにもかかわらず、ほとんどの財政破綻論者は確率表現を用いることができず、感覚的に使っている。

 天気予報の降水確率でも、「今日の降水確率○%」という言い方をし、地震でも「今後○年間以内に発生確率は○%」と言うのに、なぜか、財政破綻のリスクについては“雰囲気”でしか論じない。

 その割に、財政破綻がいかにもすぐに起こり得るかのようにいって、緊縮財政を目論むのが財務省であり、それをうのみにしているのがマスコミである。

 確率表現できないのに、財政破綻リスクを言うのは、筆者には考えられないことだ。

 今の財政破綻に関する議論の状況を例えれば、降水確率0%なのに、万が一天候が急変するかもしれないので、外出を控えましょうと言っているようなものだ。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

【私の論評】確率論でなくても、日本国を家族にたとえれば、財政破綻するはずがないことがわかるが・・・(゚д゚)!

日本政府が財政破綻しないことは、確率論でなくても説明はできます。本日はそのような説明をします。

政府の財政を家計にたとえて、「給料等の収入が631万円しかないのに975万円も使っていて、不足分の344万円は銀行から借りているような家計は、早晩破産するでしょう」と言う人がいますが、これは大変ミスリーディングなたとえです。全くの誤りです。

財政を家計のように捉えるのは全くの間違い

家族が倹約した場合、家族の赤字は減ります。家族旅行を我慢すれば、ホテルや交通機関の収入が減る一方で、家族の家計は改善します。収入が減って困るのは、赤の他人(ホテルや交通機関の従業員等)ですから、気にする必要はありませんし、自分の収入に跳ね返ってくることもありません。したがって、「家計が赤字なら倹約しろ」というのは正しいのです。

これは、政府の財政とは全く状況が異なります。実際の経済では、政府が歳出を削減すれば、民間部門の収入が減ります。それにより、国民が貧しくなり、失業が増えたり、政府の税収が減ったり失業対策で歳出が膨らんだりするわけです。

政府にとっては、国民は赤の他人ではありません。国民が失業しようと貧しくなろうと、自分の財布が潤えば良い、というものではありません。そこを無視した議論は、現実的ではありません。

一方、日本国を4人家族(構成員はサラリーマンである夫、専業主婦である妻、夫の親、夫婦間の子)とすれば、上手に説明ができます。日本政府を夫、民間部門を親と妻と子にたとえるわけです。

日本国を四人家族にたとえると・・・・・

日本政府の一般会計予算の歳出(平成31年度)を見ると、社会保障が34兆587億円、国債費が223兆5082億円、地方交付税交付金等が15兆9850億円、となっています。

社会保障は主に高齢者への給付ですから、家計で言えば夫から親への小遣いに相当します。地方交付税交付金は、収入の多い人から少ない人への移転ですから、家計で言えば夫から妻と子への小遣いに相当します。国債費は、過去の借金の元利払いです。夫は親や妻や子から借金をしているので、その分の元利払いが必要なのです。公共投資等々は、電気ガス水道代、妻への家事担当の対価(後述)、等々に相当しますが、金額的には妻に支払う家事労働の対価が主です。

親は多額の預貯金を持っていますが、生活費を負担する気はありません。夫が給料の範囲で暮らせないことは知っていますが、不足分を親が貸すことはあっても、負担はお断り、というわけです。小遣いも、多額に要求します。「嫁が家事を担当していることで、それに対する対価を要求される。その分は預貯金を取り崩すのは嫌だから、その分くらいは小遣いをよこせ」というわけです。

妻は、家事労働の対価を要求します。それが相当高いので、夫の公共投資等々の支出の多くは、妻の手に渡ります。親や子からも、家事を担当していることの対価をもらうので、ますます妻は潤います。一方で妻は倹約家なので、収入はあってもあまり消費はせず、残りを夫に貸し出します。夫が借りない分は、銀行に貯金します。

子は、小遣いをもらいますが、倹約家なので、あまり使いません。妻に家事の対価を支払い、残りは夫に貸すか、銀行に貯金します。

夫は、稼いだ給料以上に金を使っているので、赤字です。その分は親や妻や子から借りています。借金の残高は膨大で、元利払い額も巨額です。

妻は、家事一切を担当し、夫や親や子から対価を得ていますが、電気ガス水道は全額夫が負担しているので、妻は家事労働の対価として得た収入を夫に貸しています。夫は、妻などからの借金に対し、元利払いを行なっています。

上記をよく見ると容易に理解できるように、給料として外部から得てきた金は、家庭内で動き回っているだけで、外部にはあまり出ていっていません。せいぜい電気ガス水道代と、家族の趣味の費用(皆が倹約するので、少額)くらいです。

夫は、親や子に小遣いをやりすぎているのかもしれません。妻に家事担当の対価を払い過ぎているのかもしれません。人気取りのためだとすれば、やめましょう。というわけで、ある時「借金が嫌だから、親と子の小遣いを半分にする」と宣言したとします。

親と子は妻に「家事は半分で良いから謝礼も半分にしてくれ」と言うでしょう。妻がそれを飲めば、妻の収入が減りますから、妻が夫に貸し出せる金額が減ります。夫としては、「借りる必要のある金額」と「借りることができる金額」が同時に減るだけなので、家計は何も変わりません。

もっとも、妻が仕事と収入を半分失い、親と子が手抜きの料理で我慢させられることになる分だけ、家族の生活水準は落ちます。場合によっては、親と子の栄養失調を気にして夫が親と子に御馳走してあげる必要が生じるかもしれませんね。そうなると、その分だけ家計が悪化する可能性さえ、あるわけです。

これは、夫にとっては由々しき事態です。夫にとっては、自分が破産しないことと同じくらい、妻や親や子の生活を守ることが重要で、家族を犠牲にして自分の財布を豊かにすることが重要なわけではないのです。

強いていえば、親も妻も子も貧しくなるので、家の外で使う金が一層減るかもしれません。その分は家計が改善されるでしょう。もっとも、もともと家の外での出費が収入に占める割合は大きくありませんから、これは無視しても良いでしょう。

家族の仲が悪くなれば、様々な問題が生じるでしょう。妻は夫に「金は貸さない」と言い、夫は親と子に「小遣いを払わない」と言い、家族は崩壊するかもしれませんが、各人がそれを知っているので、無茶は言いません。夫が不足している分は妻(および親および子)が借りたいだけ貸してあげます。夫もそれを知っているので、赤字を気にする必要もありません。

日本国債の見本

つまり、民間部門が喜んで国債を買い続けることを前提とすれば、政府の赤字は気にする必要が無いのです。

上記のように、政府の財政を夫の財布にたとえれば、夫が倹約した場合(親や子への小遣いを減らした場合)、親や子の収入が減ります。上の例では、妻が半分失業したり、親や子が手抜き料理で我慢させられたり、夫が親や子に御馳走したりする必要が出てくるかもしれないわけです。

それが望ましいことなのか否かは、「将来、家族の仲が悪くなり、もう貸さない、といった最悪の事態」が起きるか否かにかかっています。この最悪の自体が起これば、確かに政府の財政は破綻するかもしれません。

最悪の事態を避けるためならば、家族の生活水準を落としてでも、夫は親などへの小遣いを減らすべきでしょう。しかし、そうした必要性は今の日本では全くありません。

「将来、家族の仲が悪くなり、もう貸さない」という状況は現実にはどういう現象でしょうか。それは、政府の発行する国債の金利が高騰して大暴落してしまった状態です。しかし、多くの方もご存知のとおり、日本の国債は暴落するどころか、低金利の状態が続いています。

この状況では、どう考えてみても、財政が破綻することはほんどありえないのです。現実の世界でみても、国債の金利が突然大幅にあがった場合には、注意が必要ですが、現実にはそのようなことはありませんでした。これからも、そうなる見込みはほとんどありません。

無論、短期で0.5%とか、0.数%あがったとか、下がったとかで、大騒ぎしている人もいたようですが、そんなことで一喜一憂する必要もありまません。やはり、長期でみていくべきでしょう。

しかし、国債の金利の動きを見ていれば、どう考えても、現在の日本政府が近い将来に破綻するとは考えられません。

ほとんどの財政破綻論者は、財政を単純に家計のように考えているか、あるいは何かの目的のためにそのように見せかけているということなのでしょう。

ただし、政策論的にはやはり確率で語ることができないのは、問題であるとは思います。数%にすぎないのか、50%を超えているかでは、対処方法も大きく変わるはずです。そもそも、数値で語れば、危険か危険でないか誰にでもすぐにわかります。

これが、自然災害か地震予知のように、不確定要素が多すぎるならまだしも、財政破綻に関してはかなり容易に正確に計算できます。

確率抜きで財政破綻を語る人は、信用すべぎないです。

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2018年1月12日金曜日

謝った「ノストラダムス」作家 財政破綻の予言も外れっぱなし、そろそろ謝罪していいのでは―【私の論評】財政破綻派は謝罪しないというなら破綻して無害な存在になれ(゚д゚)!

謝った「ノストラダムス」作家 財政破綻の予言も外れっぱなし、そろそろ謝罪していいのでは

ノストラダムスの肖像画 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 1970年代に『ノストラダムスの大予言』がベストセラーになった作家、五島勉氏のインタビューが話題になっている。「1999年7月に人類が滅亡する」と信じた子供や若者は多かったが、現実にはならず、五島氏は「当時の子供たちには謝りたい」と述べたという。

五島勉さん。昨年88歳になった
 一方、経済分野での有名な「予言」といえば、「日本の財政は破綻する」というものだ。これもノストラダムスと同様、現実にはなっていないのだが、謝罪した人がいるとは聞いたことがない。

 財政破綻の問題は、一部の好事家だけの対象ではなく、経済学者の間でも心配する声は大きい。東京大学金融教育研究センターでは、主要な国内経済学者をメンバーとして「『財政破綻後の日本経済の姿』に関する研究会」を2012年6月から14年10月まで開催していた。その問題意識は「もはや『このままでは日本の財政は破綻する』などと言っている悠長な状況ではない」とし、「財政破綻後の状況や破綻後に直面する国民的課題・政策課題に焦点を合わせた議論・研究を開始する必要がある」というものだった。

『財政破綻後の日本経済の姿』に関する研究会のメンバーリスト
 経済学者による「財政破綻本」もかなり出ている。10年11月には『日本経済「余命3年」』、13年2月には『金融緩和で日本は破綻する』という書名の本も出版されたが、破綻は現実には起こらなかった。財政破綻は面白い材料なのか、ほかにも類書は少なくない。



 財政破綻を20年近くも主張している国会議員もいる。筆者が国会に参考人として呼ばれた際、「予言は当たっていない」と指摘すると、「当たっていないことは認めるが、言わざるを得ない」と述べていた。実現したら困るので、根拠がなくても言う必要があるというのでは、ノストラダムスの予言と大差ない。

 元財務官僚の筆者の経験からいっても、財政当局は、国内では財政破綻論は増税の根拠にできるので、放置している。むしろ、財政破綻論を書きたい著者には財政資料をレクチャーするなどして後押しすることもある。10年6月の『絶対に受けたい授業「国家財政破綻」』はその典型例だが、一方で「財政破綻しない」という筆者の意見も掲載されている希有な本だ。


 財政破綻を信じる人はさまざまだ。財務当局やマスコミが訴える「財政危機論」を信じているだけの人も多い。

 東大の研究会の場合、債務残高対国内総生産(GDP)比が他国に比べて大きく、財政が維持できないことが数式で示されている。しかし、その式が成立するには、単なる債務残高ではなく「ネット債務残高」である必要がある。

 バランスシート(貸借対照表)の右側(負債)だけでなく、左側(資産)を含めた両方を見る必要があるのに、東大の研究会では誤解しており、その誤解が直されないままその後の議論が行われている。

 間違った前提から正しい結論は導かれないので、予測が外れるのはある意味当然だ。東大の研究会は活動を停止したらしいが、関係者は謝罪してもいいのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財政破綻派は潔く謝罪せよ(゚д゚)!

ブロク冒頭の記事にでてくる、五島勉氏のインタビューでの謝罪とは、週刊文春のインタビュー記事にでてくるものです。その記事は文春オンラインでも読むことができます。以下のそのリンクを掲載します。


作家・五島勉インタビュー #1

以下に文春オンラインのインタビュー記事から、五島氏の謝罪の部分だけ掲載します。

五島 弁解するわけではないんだけど、私は「大予言」シリーズの初巻の最後に、「残された望みとは?」という章を書いていて、予言を回避できる方法がないか考えようと言ってるんです。もちろん、米ソの対立とか核戦争の恐怖とかがあって、ノストラダムスが警告した状況が来ることは間違いない。それは破滅的なことかもしれないけど、みんながそれを回避する努力を重ねれば、部分的な破滅で済むんだということを書いたんです。だからこの本は、実は部分的な破滅の予言の本なんです。 
 だけど、私がこの本を書くとき、ノンフィクション・ミステリーという手法に挑戦したことで誤解を生んでしまった。ミステリーが最後にどんでん返しをするように、初めに全滅するんだと書いておいて、最後になって人類が考え直して逆転して、部分的な破滅で済むんだと、それに向かって努力しなければならないと書いたんです。だけど、ここのところをみんな読まないんです。 
―― たしかに多くの人が、1999年7月に全滅するんだと信じていましたね。 
五島 ただ、私はそのことをちゃんと主張できるけど、当時の子どもたちがね。まさかこんなに子どもたちが読むとは思わなかった。なんと小学生まで読んで、そのまま信じ込んじゃった。ノイローゼになったり、やけっぱちになったりした人もいて、そんな手紙をもらったり、詰問されたりしたこともずいぶんありました。それは本当に申し訳ない。当時の子どもたちには謝りたい。
私は、「ノストラダムスの大予言」と、その続編の「続ノストラダムスの大予言Ⅱ(五島氏著)」も読みました。そのため、五島氏の主張は理解していました。

その当時の理解は、確かに世界の破滅はあり得るが、努力すればそれは回避できるだろうというものでした。



そうして、成年に達ししばらくすると、この書籍のことはほとんど忘れてしまいました。特に経営学の大家ドラッカーの書籍を読むようになってからは、ほとんど忘れてしまいました。

特にドラッカー氏が著書の中で未来予測について、以下のように語っていることを知り、未来予測は全く無意味であることを納得しました。

「未来を予測しようとすることは、夜中にライトをつけず、リアウィンドウを見ながら田舎道を運転するようなものだ。」

日本が滅多なことで財政破綻しないことはこのブログでも何度か掲載してきました。以下に新たにその根拠を掲載します。日本が財政破綻しないことなど、1分もあれば論破できます。

その意味では、この書籍は今の私にとっては、何の影響力もありません。おそらく、多くの人がこのような状況にあるものと思います。

それでも、五島氏は謝罪と、あの書籍の意図したことをはっきりとインタビューで応えています。これは、なかなかできないことなのかもしれません。

実際、多くの「財政破綻論者」が今でも謝罪などしていません。しかし、「日本が財政破綻しないこと」はあまりにもはっきりしており、このブログでも何度かその理由を掲載してきました。本当にこれは、1分もあれば論破できることです。以下に再度論破してみせまょう。

細かな数字は脇に置いて、日本の借金は1000兆円とされます。一人当たり800万円となり、一般家庭に置き換えて、給料が40万円なのに90万円の使っていて、1000万円の借金がある。だから破綻する。こう脅す説明では「日本の資産」について触れません。

無駄な支出は減らすべきですが、日本には大雑把にいって700〜800兆円の「資産」があります。こういうと、財政破綻論者は「ドヤ顔」で、資産はすぐ売れるとは限らないからやっぱり危ないといいます。しかし、それも論破できます。「資産」といった場合様々なものがありますが、日本政府の資産で一番大きいの純金融資産です。すぐに換金できるものがほとんとです。

金融資産とは、政策投資銀行(旧日本開発銀行)やUR都市機構(旧住都公団)などの特殊法人、独立行政法人に対する貸付金、出資金です。

もしそれらを回収したらどうなるかといえば、仮にこれらを民営化か廃止すれば回収ということになりますが、政府が破綻するということはまったくなく、役人の天下り先がなくなるだけの話です。

つまり、日本の借金なるものは200〜300兆円で、これはかなり大きいと見る人もいるかもしれませんが、世界水準でGDP比で見れば、決して突出した数字(割合)ではありません。このような見方をすれば、米英よりも少ないです。

財政破綻派が、1000兆円の借金と切り出した時点で「嘘」と思って間違いないです。

さらに、借金といえばサラ金や銀行からの借り入れをイメージしますが、日本国の借金の大半は「国債」によります。日本国債を買うのは国民や国内企業・金融機関です。外国の機関投資家などが購入するのはほんの数%にすぎません。これをわかりやすく例えれば、親が子どもから金を借りているようなものです。

つまり家庭内でお金が循環しているということで、これで家計が破綻した事例などありません。

「財政破綻論」を主張していた方々は、高橋洋一氏が主張しているようにやはり謝罪すべきと思います。そうでないと、主張していた方々自身が次のステップに進むことができないでしょうし、何よりも多くの人々に誤解を与えたままになってしまいます。

私の経験でいうと、私の母がなくなってから少ししてから、もう使わなくなった母のお茶の道具類を、古物商に引き取りにきていただいたのですが、その時の鑑定士が女性でしたが、その女性が「円が心配、無価値になるのでは」と語っていました。この女性は日本の財政破綻を心配しているようでした。

その、女性はそのような心配は全くないことを、上記のような説明も加えながら話をしました。このような無用な心配を多くの人々にさせるのは、本当に良くないことだと思います。財政破綻派があくまで謝罪しないというのなら、ご自身が破綻すべきと思います。

破綻して、発言力も何もなくなり、無害な存在になっていただきたいです。

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財務省の補正予算編成が日本のためにならない理由―【私の論評】日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てた財務省はこの世から消せ(゚д゚)!





2016年1月5日火曜日

いまだはびこる国債暴落説と財務省の説明を妄信する人たち ―【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!


財政破綻本は飽きられている?

 財政破綻や国債暴落を唱える論説はいまだに散見される。日本国債が今後暴落する懸念はあるのか、暴落論が十年一日のごとく語られる背景は何だろうか。

 2014年9月の本コラムで「財政破綻後の日本」をテーマした研究会が東大に実在することを書いた。その東大研究会の代表は、井堀利宏氏(東大大学院教授)、貝塚啓明氏(東大名誉教授)、三輪芳朗氏(大阪学院大教授・東大名誉教授)という日本の経済学会を代表する学者だ。

 3年半前の第1回会合では、財政破綻は当然で、破綻後のことを考えようとしていた。ところが、これらの学者の予想に反して、財政破綻の気配は一向にない。研究会のウェブサイトを見る限り、本コラムを掲載した当時は2カ月に1度程度開催されていたが、15年は6月に1度開かれたという活動記録が残っているだけだ。

井堀利宏氏(東大大学院教授)

 東大研究会の根本的な問題は、日本の財政状況をしっかりと数量的に把握していないことだ。財政破綻は、債務残高の対国内総生産(GDP)比率が発散(無限に拡大)するという経済学の常識くらいはつかんでいるが、債務残高がグロス(債務総額)かネット(政府資産を差し引いた純債務)かも明確ではなく、なんとなくグロスと思っているように見受けられる。会計的な知識や国の貸借対照表(バランスシート)が念頭にないとは考えにくいのだが。

 日本の現状をいえば、グロスの債務残高は1100兆円程度であるが、ネットでみれば500兆円で、GDP比で100%程度。さらに、日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)の債務は200兆円、GDP比では40%程度である。この程度であれば、先進各国と比較しても、それほど悪い数字ではない。

 ちなみに米国ではネットでみてGDP比80%程度、統合政府ベースでみれば65%程度。英国ではネットで見てGDP比80%程度、統合政府ベースで見て60%程度である。

 こうした基礎データが頭に入っていないとしたら、高度な議論をしているようにみえても上滑りになってしまう。研究会の議論では、「現状の日本でなぜ国債価格の大幅下落、急激なインフレを伴う財政破綻は現実化せず、その予兆も見えないのはなぜか」と自問自答し、自分たちは正しいのに、現実が間違っていると言わんばかりだった。

 財政破綻の文献をみれば、国債の投資家が国内か海外かは、破綻するかどうかと基本的には無関係である。日本国債の外国人保有比率が上昇したことで、金利の振れ幅が大きいとの指摘も破綻問題とは関係がない。国債残高をネットや統合政府でみれば、たいした数字ではないので、暴落の可能性はさほど高くないだろう。

 破綻論者は、現状認識が不十分なまま、財政危機だという官僚の説明にだまされていただけではないか。暴落論が後を絶たないのは、自分でデータを確認せずに財務省を妄信する人が、学者やマスコミにいかに多いかを示している。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事、国家規模で考えるのと、金額が天文学的でありあまりピンと来ない人も多いかもしれません。しかし、これを日常生活に置き換えて、考えると本当に簡単なことです。

日本政府を一人の中年サラリーマンにたとえます。そのサラリーマンの右ポケットには、1,100万円の借用書が入っています。これを指して、マスコミや経済学者などが、このサラリーマンは、1,100万円も借金していると、騒ぎ立てています。

ところが、この中年サラリーマンの左ポケットには、600万円の現金が入っています。このとき、この中年サラリーマンは、本当に1,100万円借金しているといえるでしょうか。違いますね、1,100万円−600万円=500万円と見るのが妥当だと思います。

右ポケットと左ポケット

さらに、この中年サラリーマンには、孝行息子(日銀)がいて、その孝行息子は父親である、中年サラリーマンと同じ世帯(日本国)に住んでいます。そうして、この孝行息子は、家にお金を入れていて、その合計が300万円になっています。

では世帯ということで、借金を見てみるといくらになるかといえば、1,100万円−600万円−300万円=200万円です。この世帯の年間の稼ぎ高が500万円であるとすると、この世帯の借金は年間稼ぎ高の40%ということで、確かに借金がないとはいいませんが、これではあれば、さほど大騒ぎするほどではないです。

なんとかすれば、借金を返済することは十分可能です。上の高橋洋一氏の話は、これと同じことです。何も、難しい経済理論など理解しなくても、誰にでも理解できることです。

さらに、これは日本国政府を中年サラリーマン、日銀を孝行息子、日本国を中年サラリーマンと息子の住む世帯にたとえました。ところが、中年サラリーマンや、孝行息子は人間ですから、人間は時間とともに年をとります。そうして、いずれは亡くなります。

しかし、日本国政府や日銀は人ではありません。これは、システムです。よほどのことがない限り、人は時代とともに入れ替わるのですが、システム自体が消えてなくなるということはありません。

であれば、何事にも永遠ということはないので、日本国政府もいずれは消滅する時が来ることは全く否定できないにしても、現在この日本に住む私達からみれば、当面不死身の存在であると見て良いでしょう。

この不死身の政府と、生身の人間とでは、当然借金に関しても、考え方を変えなければなりません。政府は不死身なので、金利とは別に毎年1円ずつ元本を返せれば1000兆年後には政府債務は完済できます。国債の金利などの支払いを除いた国の収支をプライマリーバランスといいます。つまり、プライマリーバランスが黒字転換した状態とは、金利を払ったうえで少しずつ元本を返済していることを意味します。このように、政府の借金はその金額の多寡より、債務の維持可能性の方が重要なのです。

これが人であれば、中年サラリーマンが、それも収入がごく普通の1兆円も個人で借りてしまえば、もうそれだけで、生きているうちに返済できないことは誰にでもわかります。だから、銀行でも個人に対して1兆円ものお金を貸したりしません。

しかし、このサラリーマンが不死身であれば、話は別です。金利を払ってもらったうえで、毎年10円ずつでも返却してもらえれば、いつかは元手は戻り、それ以上になります。

個人とシステムでは借金も考え方を変えなければなりません。個人であれば、1兆円を貸さない銀行でも、企業であれば、その企業が大企業で手広く事業をやっている企業であれば、貸すかもしれません。なぜなら、企業も人ではなくシステムであり、生身の人よりも長生きする可能性がはるかに高いからです。

確かに、昔は企業の寿命30年ともいわれたことがありましたが、ドラッカー氏もそれに近いことを言っていました。しかし、これは企業の寿命が30年というよりは、一事業の寿命が30年ということだと思います。

一事業を運営するカンパニーの寿命は30年ということであり、同じ企業でも、そのようなカンパニーをいくつかもつ、コーポレートの場合は違います。あるカンパニーが消えても、他のカンパニーが生き残り、さらには新たなカンパニーを創造したりして、コーポレート全体では不死身のように長生きします。

実際にそのようなコーポレートは世界中に存在します。

さらに、人とシステムの違いがあります。孝行息子はお札を刷ることができませんが、日銀はお札を刷ることができます。お札を際限なく刷れば、いずれハイパーインフレになってしまう可能性もありますが、日本の場合はまだデフレ傾向ですから、お札を刷ったにしてもすぐにハイパーインフレになるわけではありません。

国債だって、同じことです。日本政府が本当に借金まみれで、人間の比較的短い間に死んでしまうのであれば、国債を擦り増せば大暴落ということになりかねませんが、政府は不死身なのでそんなこともありません。

こんなことを考えれば、特に難しいマクロ経済学など知らなくても、国債暴落が起こりそうもないことが良く理解できます。

それにしても、こんなことが理解できない人が、日本の経済学会を代表する学者に多数存在するというのですから、唖然としてしまいます。

マーティン・フェドシュタイン

マーティン・フェルドシュタインが指摘したように、経済的要因以外にも地政学的リスクに世界が振り回されそうです。一方で日本は、消費増税どころの話ではないと思います。財務省とその既得権益グループ主導で経済をこの不安定な環境の中で低迷させる政策を打ってどうなるというのでしょうか。

消費増税もそうですが、それを支える「税と社会保障の一体改革」路線を放棄する必要があると思います。これが日本の政治・社会・経済を駄目にしている政策の元凶です。

今年は、増税見送りなど当たり前のこととして、さらに「税と社会保障の一体改革」そのものを放棄できるように、安倍政権には頑張っていただきたいものです。

本当に、多くの経済学者やマスコミだけではなく「税と社会保障の一体改革」など無邪気に心の底から信じこむ人もいます。経営者の中にも、そういう人がいるので驚いてしまいます。ネット上でもそういう人は多数存在します。そういう人に限って、いわゆる"真面目"な人が多いです。

ホリエモンの真面目な人に対する評価は厳しい
"真面目"というと聞こえが良いですが、結局融通が効かないということの代名詞でもあります。とにかく、頑なにグロスの1100兆円の政府借金を盲目的に信じて、大変だ、大変だと騒いだり、上から目線で、アドバイスしたりします。

"真面目"な人には困ったものです。私は、この"真面目"という言葉があまり好きではありません。特に自分が他の人、特に若い女性などから、「あなたは"真面目"ですね」などと言われたら、がっかりして「自分の人生はもう終わった」と感じてしまうことと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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