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2019年3月8日金曜日

米朝首脳会談は「大成功」。金正恩と北朝鮮に残された3つの道―【私の論評】トランプ大統領「大勝利」の背後に何が(゚д゚)!

米朝首脳会談は「大成功」。金正恩と北朝鮮に残された3つの道

米朝会談は米国にとっては「大成功」だった

米国が北朝鮮から「核戦力廃棄の確約を得られなかった」ことを主な理由として、「失敗」との報道がなされがちな第2回米朝首脳会談ですが、米大統領補佐官は「成功」だと反論しました。これに同調するのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で北朝鮮の今後を予測した上で、米の対北政策が日本にも有益な点を詳しく解説しています。

ボルトンさん「米朝首脳会談」は【大成功】

先日行われた米朝首脳会談について、「大失敗だ!」という意見が多いです。しかし、皆さんご存知のように、REPは「大成功だ!」という立場。それで、3月1日に、こんな記事を出しました。

金正恩の姑息な作戦に乗らず。米朝首脳会談が成功と言える理由

ところで、私と同じ意見の人がいました。ボルトンさん(アメリカ大統領補佐官)です。トランプ政権中枢にいる人が、「大成功!」というのは、当たり前ですが…。
米朝首脳会談は「成功」 米大統領補佐官が擁護
3/4(月)6:32配信 
【AFP=時事】米国のジョン・ボルトン(John Bolton)大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は3日、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長とドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領との間で先週行われた米朝首脳会談について、双方で合意に至らず会談が失敗だったとの見方を否定した。
「失敗だったとの見方を否定した」そうです。
ボルトン氏はCBSの報道番組「フェイス・ザ・ネーション(Face the Nation)」で、トランプ氏が北朝鮮から核戦力を廃棄するとの確約を得られなかったことは、「大統領が米国の国益を守り、高めたという意味で成功」と見なされるべきだと語った。
「トランプ氏が核戦力を廃棄するとの確約を得られなかったこと」=「大統領が国益を守って成功」だそうです。どういう意味でしょうか?
ボルトン氏は、争点はトランプ氏の言う「大事業」すなわち完全な非核化を北朝鮮が受け入れるかまたはそれ以下の「われわれには受け入れ難い」ことのどちらかだったと説明。「大統領は自分の考えを断固として貫いた。大統領は金正恩氏との関係を深めた。米国の国益は守られており、私はこれを失敗だとは全く見ていない」と述べた。
同感です。トランプさんは、「完全な非核化」を要求しました。その見返りは、「体制保証」「経済制裁解除」です。

まあ、アメリカはこれでカダフィを03年にだまし、丸裸にした。結果、彼は11年、アメリカが支援する反体制派に捕まり殺されました。だから金正恩がアメリカを信用しないのは当然。

一方、金正恩は、「一部非核化して、制裁解除」を狙ってきました。これは、過去の「成功体験」を繰り返したのです。1994年、北朝鮮は「核開発凍結」を確約し、見返りに軽水炉、食料、毎年50万トンの重油を受け取った。しかし、彼らは密かに核開発を継続していた。2005年9月、金正恩の父・正日は、「6ヵ国共同宣言」で「核兵器放棄」を宣言。しかし、現状を見れば、それもウソだったことは明らか。今回も「これでいける!」と思ったのですね。

このように、アメリカは北をだまそうとしている。いえ、ひょっとしたらトランプさんは、だまそうとしていないのかもしれない。しかし、カダフィの例があるので、金正恩からは「だまそうとしている」ように見える(それに、トランプ後の大統領が政策を変更するかもしれない)。そして、北はアメリカをだまそうとしている。で、結果、「トランプさんは、金正恩にだまされなかった」。だから、RPEも、ボルトンさんも「成功だ」というのです。

これが、「少し非核化して、制裁解除」となったらどうです?金は、「核兵器保有」と「経済発展」の二つを同時に成し遂げた。まさに「偉大な指導者」になることでしょう。

トランプ、金正恩の交渉決裂でどうなるのでしょう?
  • 金は、核実験、ミサイル実験を再開できません。再開したら、アメリカは、「金は交渉を断念したようだ。しかたない…」といって、北を大攻撃するでしょう
  • 北朝鮮は、豊かになりません。現状、中国、ロシアが北支援をつづけている。しかし、これは「国連制裁違反」なので、大々的に、大っぴらにできない。せいぜい「体制が細々と存続していく程度」にしか支援できない
金はこれから、
  • トランプを信じるか?つまり、「完全非核化して、体制保証、制裁解除を勝ち取る」か?(繰り返しますが、アメリカがだますリスクはあります)
  • 核実験、ミサイル実験を凍結したまま、細々と生きていくか?
  • 核実験、ミサイル実験を再開して、アメリカに殺されるか?
いずれかを選ばなければならない。現状、もっとも可能性が高いのは、
  • 核実験、ミサイル実験を凍結したまま、細々と生きていく
でしょう。そして、中国、ロシア、韓国に、「制裁違反の支援をもっと増やしてください!」と懇願するかもしれない。もしそれで中国が支援を増やせば、米中覇権戦争中なので、アメリカは、「中国は国連安保理の制裁に違反して、北を助けている!」と非難する。そして、対中制裁を強化することでしょう。中国としても悩ましいところなのです。

こう考えると、アメリカの対北政策は、実にうまくできています。アメリカも困らないし、日本も困りません。そのように見る人は、あまりいないのですが。

【私の論評】トランプ大統領「大勝利」の背景に何が(゚д゚)!

私自身は、米朝会談は米国にとっては大勝利だったと思っています。上の記事は、その私の考えをさらに補強するものでした。特に、ボルトン氏が「大成功」としていることで、私の考えは裏付けされたものと思いました。

さて、この大勝利について、「大勝利」とは掲載していないものの、失敗ではないことをこのブログも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
韓国・文大統領大誤算!米朝決裂で韓国『三・一』に冷や水で… 政権の求心力低下は確実 識者「米は韓国にも締め付け強める」 ―【私の論評】米国にとって現状維持は、中国と対峙するには好都合(゚д゚)!
米朝決裂であてのはずれた文在寅
詳細は、この記事をご覧いただくものとして以下に一部を引用します。 
北朝鮮は、外見は中国を後ろ盾にしてはいますが、その実中国の干渉されることをかなり嫌っています。金正男の暗殺や、叔父で後見役、張成沢氏の粛清はその現れです。 
韓国は、中国に従属する姿勢を前からみせていましたが、米国が中国に冷戦を挑んでいる現在もその姿勢は変えていません。 
この状態で、北朝鮮が核をあっさり全部手放ばなすことになれば、朝鮮半島全体が中国の覇権の及ぶ地域となることは明らかです。これは、米国にとってみれば、最悪です。そうして、38度線が、対馬になる日本にとっても最悪です。
もし今回北朝鮮が米国の言うとおりに、全面的な核廃棄を合意した場合、米国は、米国の管理のもとに北朝鮮手放させるつもりだった思います。まずは、米国に到達するICBMを廃棄させ、冷戦で中国が弱った頃合いをみはからい、中距離を廃棄させ、最終的に中国が体制を変えるか、他国に影響を及ぼせないくらいに経済が弱体化すれば、短距離も廃棄させたかもしれません。
しかし、これを米国が北朝鮮に実施させた場合、多くの国々から非難されることになったことでしょう。特に、日本は危機にさらされ続けるということで日米関係は悪くなったかもしれません。さらに、多くの先進国から米国が北朝鮮の言いなりになっていると印象を持たれかなり非難されることになったかもしれません。 
しかし、今回の交渉決裂により、悪いのは北朝鮮ということになりました。米国は、他国から非難されることなく、北朝鮮の意思で北の核を温存させ、中国の朝鮮半島への浸透を防ぐことに成功したのです。まさに、「バッド・ディール(悪い合意)よりは、ノー・ディール(無合意)の方が良い」という結果になったのです。
この記事にも掲載したように、本来「北朝鮮の核が結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいる」という点を抜きに、今回の米朝首脳会談が大成功であったと認識するのは困難でしょう。

大方のメディアにはこのような認識がないので、「失敗」と報道するしかなかったのでしょう。

今回の首脳会談後についての金正恩 選ぶ道について、ブログ冒頭の記事では、
  • 核実験、ミサイル実験を凍結したまま、細々と生きていく
これは、米国にとっては、当面北が核実験、ミサイル実験を凍結したまま、細々と生きていくにしても、核が存在すること自体には変わりはなく、それは中国の脅威となり、中国の朝鮮半島への浸透が防止されることになることには変わりありません。

これについては、米国が北を屈服させて、そこに米国が中距離核を配備すればよいではないかと考える人もいるかもしれませんが、それをやってしまえば、米国と中国、ロシアとの対立がかなり深まることになります。さらには、国際的に非難されることにもなります。

そうではなく、北の意思によって、核か北朝鮮に存在するといことが重要なのです。

現状を保てたことは、まさに米国にとって大勝利です。ただし、米国としては北朝鮮に核があることが米国にとって有利などということは、口が裂けても公言することはできません。

だから、ボルトン氏もそのことについては、特に言及しないのでしょう。そのことが、米国の大勝利を一般からは理解しにくいものにしています。

トランプ大統領は6日、北朝鮮がミサイル発射施設の復旧を進めているとの情報について、「本当なら非常に失望する」と述べました。
ボルトン補佐官は5日、非核化をめぐる今後の協議について「ボールは北朝鮮にある」と指摘、北朝鮮が本当に核計画を放棄する意思があるかどうか見極めていく考えを示した。

その上で、完全な非核化に応じなければ「経済制裁の強化を検討する」とけん制した。

これらによって、トランプ大統領もボルトン氏も、現所維持を確固なものにするとともに、「ボールを北」に投げたのです。



そうして、米朝会談は今後の中国の動向により、方向付けられるでしょう。現在米国による対中冷戦が繰り広げられています。

この冷戦は、中国が体制を変えるか、さもなくば、中国の経済力が弱体化して他国に影響をおよぽせなくなるまで、継続します。

そうして、私の見立てでは、中国は体制を変えることはしません。体制を変えるといことは、中国共産党1党独裁でなくなるのは無論のこと、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめるということです。

そうなれば、中国共産党の統治の正当性が崩れ、中国共産党は崩壊します。そのような道を中国共産党は選ぶことはないでしょう。

では、残された道は、経済を弱体化され、体制を維持したまま細々と生きていくという道です。

そのようになれば、中国は図体が大きいだけの凡庸な、アジアの独裁国家になりはて、自国のことだけで精一杯になり、朝鮮半島に影響力を及ぼす余力もなくなります。

その時に、次の本格的な米朝会談が始まることになります。というより、中国が弱体化してしまえば、朝鮮半島問題もおのずと、解決することになり、かなり楽に交渉ができるようになると思います。アジアの問題は、やはり中国が最大のものであり、その他は従属関数であるに過ぎないとみるべきなのです。

金正恩

そのことを理解したのか、金正恩は、米朝会談の帰路に、先回の会談後には帰路に習近平と会談したのですが、今回は習近平とは会談せずに北朝鮮に戻りました。一般の報道では、これについて金正恩は「会談に失敗してあわせる顔がない」からなどと報道していますが、それは上で示したような文脈を理解していないからだと思います。

金正恩としては、中国に対峙する米国に対して、当面どちら側につくかを意思表示したのでしょう。

金正恩としては、冷戦においていずれ中国が敗北すると踏んでいるのでしょう。であれば、残された道は、冷戦で中国が弱体化するまで、核実験、ミサイル実験を凍結したまま、細々と生きのび、頃合いをみはからって、核を放棄し制裁解除をしてもらい、経済発展の道を模索するということしかありません。

今回の米朝首脳会談でのトランプ大統領「大勝利」の背景に何があったのかを理解することは、今後の世界情勢を理解する上でかなり重要なことだと思います。

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2019年1月26日土曜日

韓国「救助」主張の北漁船は『特殊部隊用』か レーダー問題で軍事専門家が衝撃解析 ―【私の論評】なぜ米国はレーダー照射問題に無関心なのか、その背後に何が?

韓国「救助」主張の北漁船は『特殊部隊用』か レーダー問題で軍事専門家が衝撃解析 

韓国“暴挙”海自機にレーダー照射

軍事アナリストの西村金一氏

 韓国による「理不尽な言いがかり」の背景として、韓国海軍の駆逐艦による火器管制用レーダー照射問題の「論点ずらし」を狙っている可能性が高い。こうしたなか、韓国側が救助活動をしていたという“北朝鮮漁船”への疑問が強まっている。アンテナの形状などから、軍事専門家は「軍や特殊部隊が使用する船舶」との疑いを強める。日米情報当局も「北朝鮮工作船と酷似している」と分析。文在寅(ムン・ジェイン)政権は、一体何を隠しているのか。

 衝撃の解析をしたのは、元防衛省の情報分析官だった軍事アナリストの西村金一氏。夕刊フジで「北朝鮮漁船は、朝鮮人民軍や工作機関所属の可能性がある」と語っていた(10日発行)が、さらに解析を進めて、新たな事実を発見した。

 北朝鮮船には、前方と後方にそれぞれ3~4メートルのマストがあり、イカ釣り用とみられる電球が並んでブラ下がっていた。実は、その上に「モールス通信用とみられるケーブル」が架かっていたのだ。漁船の装備を偽装した“特殊アンテナ”といえる。

TV番組で「モールス通信用とみられるケーブル」を指摘する西村氏のボールペンのペン先

 西村氏は「こうしたアンテナは、普通の北朝鮮漁船には見られない。一般の音声通信だと50~70キロ先までしか届かないが、『トントン、ツーツー』と長さが違う符号を組み合わせたモールス通信を使えば、少なくとも1000キロ先まで届く。北朝鮮船が、軍や特殊部隊が使用する工作船の可能性がさらに高まった」と語った。

 北朝鮮は2001年12月、鹿児島県・奄美大島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内に、中国漁船を偽装した不審船を侵入させ、海上保安庁の巡視船に発見された。銃撃戦の末、不審船は自爆沈没した。日本が船を引き揚げて調べたところ、「北朝鮮の工作船」と判明した。

 西村氏は「あの事件以来、北朝鮮はより本物の漁船のように偽装した工作船を出してきている。今回が、まさにそうだろう。工作機関の司令部がある、北朝鮮北東部の清津(チョンジン)か、東部の元山(ウォンサン)の所属ではないか」と語った。

 救難信号(SOS)の疑問もある。

 日本のEEZ内でありながら、自衛隊も海保も北朝鮮船のSOSを受信していない。それなのに、北朝鮮や韓国から約500キロも離れた現場海域に、韓国海洋警察の警備艇と、韓国海軍駆逐艦が集合していた。

 西村氏は「普通の漁船なら、SOSに音声や有線通信を使うはずだが、使用した形跡がない。加えて、あれだけ広い海域で、レーダーにも映らない北朝鮮船の位置がピンポイントで分かり、所属が異なる海洋警察と海軍の船が同時に集まったのも尋常ではない。北朝鮮船が、暗号化されたモールス通信で本国に救助要請し、ハイレベルのルートから韓国側に救助依頼した可能性が高いのではないか」と分析した。

 工作船とみられる北朝鮮船は、日本のEEZ内で何をしていたのか。韓国がもし、北朝鮮の工作船をひそかに救助したとすれば、同盟国・米国や、国際社会に対する説明責任を果たさなければならない。


【私の論評】なぜ米国はレーダー照射問題に無関心なのか、その背後に何が?

工作船とみられる北朝鮮船が、日本のEEZ内で不穏な動きをみせ、それに韓国海軍が何らかの関わりを持っているかもしれないこと自体については、十分にあり得ることだと思います。

最近のなりふり構わない韓国の北朝鮮への擦り寄り姿勢をみていれば、何らかの形で韓国が北に恒常的に支援をしていて、それが今回たまたま露見しそうになったのでレーダー照射という事態になったことは十分にあり得ることです。

それよりも、私が気になるのは、これだけ徴用工問題やレーダー照射で日韓関係がかなり悪いのに、それに対していまのところ米国が何の動きも見せていないことです。

過去においては日韓関係が大きくこじれると、米国が調停役として振る舞ってきました。記憶に新しいところでは2014年。歴史問題をめぐる軋轢から両国首脳が1年以上も会談していないことを見かねたオバマ政権が仲介し、安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領の会談を実現させました。翌15年末には、いわゆる慰安婦問題をめぐり深刻化した日韓対立の仲裁に入り、慰安婦合意を締結させました。

安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領の会談を実現させた米国オバマ大統領

米国が日韓の外交問題に介入してきたのは北朝鮮問題があったからです。中国(とロシア)を支援国とする北朝鮮と対峙するために、米国は日韓とスクラムを組む必要があったのです。91年にアジアを外遊したベーカー国務長官は、チェイニー国防長官に宛てた外電で「対北朝鮮政策において米国と同じ方向性を維持させるために、日本と韓国を仲介するという重要な役割がある」と述べています。

ところが、トランプ政権が従来の外交路線を一転させてから潮目が変わりました。北朝鮮の金正恩党(キム・ジョンウン)委員長と直接対話するなど自己流の外交を進めるトランプは、かつての米政権ほど日米韓の同盟を重要視していないようです。特に韓国は、重要視していないようです。

実際、徴用工やレーダー照射問題で日韓対立が深まってもトランプ政権から表立って懸念の声は聴かれていません。歴史問題ならまだしも、軍事問題でもだんまりを決め込むあたり、無関心ぶりは本物かもしれないです。

この無関心ぶりは一体どこから来ているのでしょうか。私は、やはり最近の米国の対中国冷戦に関係していると思います。

米国からすれば、北朝鮮問題など中国との対峙と比較すれば、小さなものであり、大きな枠組みでの問題を解決するにおいては小さな従属関数にすぎないのでしょう。

中国との対峙に勝利を収めれば、北朝鮮問題などすぐに解決すると踏んでいるのでしょう。さらに、日韓の問題などとるに足りない些細な出来事と見ているのでしょう。

それと、以前からこのブログに掲載しているように、トランプ政権自体が北朝鮮や韓国の見方を変えたのだと思います。

かねてから、中国に従属しよう、北朝鮮に擦り寄ろうとする韓国については、トランプ政権は最早米韓同盟は形骸化したとみなしているのでしょう。

一方北朝鮮に関しては、従来は核で米国を脅かす存在と考えていたのでしょうが、ある事実に気づいたのでしょう。

それは、以前からこのブログに掲載してきたように、北の核が中国の朝鮮半島への浸透を防いできたという事実です。このブログにも掲載してきましたが、韓国とは異なり北は反中もしくは嫌中であり、中国から完全独立することを希求しています。

韓国は日米にとって安全保障上は空地としてか意味をなさなくなった

もし、北が核開発をしていなければ、いくら反中嫌中であったにしても、ずいぶん前に完璧に中国に浸透され、金ファミリーは中国のいいなりなっていたか、最悪滅ぼされて中国の傀儡政権が権力を握っていたかもしれません。

この傀儡政権は、やがて韓国を飲み込んだかもしれません。そうなると、半島全体が中国の覇権の及ぶ地域となり、半島全体が日本や台湾などの周辺地域に浸透するための前進基地になったかもしれません。

ところが、この事態を北朝鮮が事実上回避しているのです。北朝鮮の核は、中国にとっても大きな脅威なのです。中国が北に本格的に侵攻する構えを見せたり、北に本格的に傀儡政権を作ろうという動きをみせれば、北は核兵器によって中国に報復することができます。

ただし、北が中国に報復ということにでもなれば、北は確実に中国によって葬り去られることになるでしょうから、北としては、ありったけの核を中国に打ち込むことになるでしょう。中国の主要都市である重慶市、上海市、北京市、成都市、天津市、広州市、保定市、、蘇州市、深セン市などは標的になるでしょう。北京は火の海になるでしょう。中国はこれを恐れているため、北は中国から独立していられるのです。

この事実に気づいたトランプ政権は、現状の半島の状況を中国に対峙するには、ベストであるという考えに変わったのでしょう。

米国にとっては、韓国については何も期待していませんが、ただ中国に対峙するためには、朝鮮半島の南半分が中国にかなり浸透されているとはいえ、それでも一応独立国として安全保障上の空き地のような状態になっていることは望ましいです。

そうして、その空き地のすぐ北には、北朝鮮が控えているわけです。これでは、韓国があからさまに完璧に中国に従属しようと望んでも、中国はなかなかそれを実行に移すことは難しいでしょう。

そもそも、軍隊を送り込もうにも、陸続きではないので、軍隊は船で送らなければなりません。そうなると、遅れた現在の中国海軍は、米国などに簡単に駆逐されてしまいます。

トランプ政権がこのような見方をしているとすれば、韓国が北に制裁破りをするような行為は、余程のことがなければ、それは大局からみれば、どうでも良い些細なことに過ぎないのでしょう。

北は、韓国のように中国に従属することはしません。その意味では、現在の韓国は北の都合の良いように利用されているだけです。韓国がかなり大掛かりな支援をしない限り、米国はこれを放置するかもしれません。

ただし、北の核は米国も狙っていることは事実ですし、北は拉致問題や人権問題もあるのは事実です。また、金正恩は、叔父や血のつながった兄を殺した、人物でもあります。だからこそ、米国も未だ表立っては、北朝鮮を認めるようなことはできないのです。だからこそ、現在でも制裁を継続しているのです。

おそらく、次の米朝会談で、米国がどのような条件で北を認めるのかはっきりさせることでしょう。核の扱いについても、北の望む通りにはさせないでしょう。かといってすぐに核廃棄といえば、中国が喜ぶだけです。このあたりのバランスが難しいところです。

下手をすると、朝鮮半島は中国のものになってしまいます。中国を睨みつつ、核の廃棄方法や時期を明確にするでしょう。その内容により、トランプ政権はどのくらいの期間でどの程度中国を叩くつもりなのか、知ることができるかもしれません。その意味でも、次の米朝会談に注目です。

ただし、日本としては、将来的に空地の韓国が中国にそそのかされて、対馬に侵攻するなどということもあり得るかもしれないと覚悟すべきです。韓国が対馬奪取に成功することでもあれば、中国は尖閣や沖縄などに侵攻可能とみて、これらを本格的に奪取しにやってくるかもしれません。これらは、日本が独自に迅速に阻止しなければなりません。

そうでなければ、米国は日本も韓国と同じく安全保障上の空地とみなすようになるかもしれません。

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2019年1月8日火曜日

レーダー照射:国際法違反を知られたくなかった韓国―【私の論評】海自哨戒機レーダー照射の背後に北朝鮮あり(゚д゚)!

レーダー照射:国際法違反を知られたくなかった韓国

韓国軍が海自哨戒機にレーダー照射、日本に難癖つける本当の理由




日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)で韓国海軍が
行った上陸訓練の様子(2013年10月25日撮影、資料写真)

2018年12月20日、韓国海軍軍艦が海上自衛隊の「P1」対潜哨戒機に射撃管制レーダー(射撃レーダー)を照射した。

この事実は、海自哨戒機の飛行員の緊迫した会話や撮影映像から、明白である。

にもかかわらず、韓国国防省は認めようとはせず、そればかりか、日本の海上自衛隊機が異常な接近飛行を行ったと難癖をつけ、「陳謝せよ」と抗議している。

■ 韓国はなぜすぐばれる嘘をつくのか

これまでの韓国の主張には、一貫性がなく、論理矛盾がある。

韓国が、海自哨戒機が韓国軍艦に異常接近したとする映像を公開した。その映像には哨戒機が遠方に写っており、どう見ても異常接近しているようには見えない。

航空機を真上に見上げれば、その腹底が見えるはずだが、そうではない。戦闘機であれば、急降下や急上昇できるが、哨戒機は、そのようなことはできない。

韓国海軍軍人には当然分かっていることだし、軍事常識でもある。

韓国は、それを認めようとはせず、発表していることが論理矛盾を起こしていながらも、頑なに日本を非難している。

軍事知識がない人は騙すことができても、軍事知識がある人を騙すことはできない。

韓国軍人も国防省の幼稚な発表に恥ずかしい思いをしているに違いない。

支離滅裂で論理矛盾を起こしてまでも、なぜそのようなことを発表するのか――。

■ 日本の経済水域内で北朝鮮と何をしていたか

そこには、多くの謎があると考えるべきだろう。

韓国軍艦がレーダーを照射したことは重大な事態であり、日本としては非難しなければならない。

だが、もっと重要なことは、レーダーを照射すれば、日韓関係に重大な影響を及ぼすことが分かっていながら、行ったということだ。

当然、そこには、重大な意図が隠されていると見るべきだ。

そして、韓国はその意図を読まれないように、「日本は馬鹿げたことを言って」と、論点をすり替えている。

この事案で、私が最も注目しているのは、防衛省公表の映像だ。

韓国軍艦が射撃レーダーを照射した時、韓国の海軍軍艦と海洋警察警備艇がほぼ同じ海域で海上警備活動(救助? )を行い、その近くに、北朝鮮の漁船(軍や工作機関が漁業に使用している船か)が存在したことだ。

防衛省が発表した動画「韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について」より

その海域は、韓国の近海ではなく、日本の経済水域に深く入り込んだ海域だ。その海域で、偶然にしても、これら3つの船が1か所に集まることは、全く考えられないのだ。

韓国は救助活動だと発表しているのに、戦闘艦艇である駆逐艦までもが、そこにいたことは不自然極まりない。

■ 南北朝鮮の密接な行動は国際法違反の可能性

この3つが集まっている理由を考察すると、上記の漁船が、燃料不足になり漂流、その船から北朝鮮の本国に救助依頼を行った(漁民が乗る漁船は、連絡できる通信機を積載していない)。

その連絡を受けた北朝鮮の機関が金正恩政権に報告し、北朝鮮と韓国のパイプを使って、韓国の文政権に連絡、そこから国防省や海洋警察に連絡、それにより、2隻の艦艇が出動したものと考えられる。

北朝鮮漁船、北朝鮮工作機関、北朝鮮政府、韓国政府、韓国国防省、韓国海軍、韓国海洋警察の連携がないと、3隻が海上の同一ポイントに集合することはできない。

つまり、南北がかなり密接に行動していることがうかがえる。

さらに、映像から判断すると北朝鮮の漁船は沈没しそうな状況ではなく、エンジン故障か、燃料不足で浮遊していたように見える。

おそらく、燃料切れになっていた北朝鮮の漁船に、燃料を提供していた可能性がある。

このことを海自哨戒機に接近して見られたくなかったために、射撃レーダーを照射して、嫌がらせを行い、海自哨戒機を追い払ったのではないだろうか。

韓国がレーダー照射を否定し、海上自衛隊の哨戒機の行動を非難しているのは、これらの南北の動きを知られないために、韓国による問題のすり替えにほかならないと、私は考えている。

■ 韓国と北朝鮮の間にある密約

私は、北朝鮮と韓国の間に、密約がいくつか存在していると考えている。

文大統領が北朝鮮への制裁解除を求めるために、世界中を使い走りしていることからもうなずける。

密約の一つとして、日本海の中央付近で漁業活動する北朝鮮の漁船を、遭難した場合に韓国が守る。

さらに、北朝鮮の漁船に燃料を補給する。つまり、南北が、国連制裁決議破りを日本海の海上で行っていると見てもおかしくはない。

この事案を契機に、日本国がこれから行動すべきことは、日本の国益を守ることだ。

具体的には日本の経済水域を守ること、海上自衛隊は、北朝鮮の漁船を不法に入れないことだ。

また、韓国艦艇が救助と称して、北朝鮮の漁船に燃料を提供するという国連制裁決議違反をしていないかどうかを監視すべきだ。

韓国が何を言おうが、日本海の警戒監視を、引き続き実施することが必要である。

文在寅政権の韓国は、南北融和と軍事的合意事項の履行、反日活動の活発化、今回の事案などにより、日本や米国との友好国の立場から離脱し始めていると見てよい。

日本人や日本のメディアは、目の前の事象だけにとらわれずに、朝鮮半島で起きていることが、日本に脅威になりつつあることを改めて認識すべきだ。

日本と南北朝鮮との安全保障関係は、重大な変換点に来ていると言っても過言ではない。

【私の論評】海自哨戒機レーダー照射の背後に北朝鮮あり(゚д゚)!

レーダー照射に関しては、このブログでもその理由について解説したこともありますし、他のメディアでもいろいろといわれています。しかし、冒頭の記事のように、韓国による北朝鮮制裁破りというのが、最も核心をついているように思います。

そもそも過去には、韓国による制裁破りが実際に行われていました。

このブロクではすべてを網羅はしませんが、目立ったものだけを以下に掲載します。

極めつけは大統領専用機の制裁破り

極めつけはなんと言っても文大統領の専用機の制裁破りでしょう。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【コラム】文大統領専用機はなぜ米国で給油できなかったのか―【私の論評】文在寅は、米国による北朝鮮制裁の韓国への厳格な適用の事実を隠蔽しようとした?
チェコを訪問した文大統領

詳細は、この記事をご覧いただくものとてして、文大統領が乗る大韓民国空軍1号機は言葉こそ「空軍1号機」だが、実際には軍用機ではなく、民間から賃借したチャーター機ですが、その「空軍1号機」が制裁を受けている可能性があるのです。その可能性に関わる部分を以下に引用します。

"
昨年9月に文大統領は、北朝鮮の平壌に行ったときにこの民間航空機である「空軍1号機」を用いているのです。

そこで、米国の北朝鮮に対する独自制裁について調べてみました。米国版のWikipediaを調べると、以下の記事がありました。
Sanctions against North Korea
この記事の中に以下のような文書がありました。
Also any aircraft or ship upon entering North Korea is banned for 180 days from entering the United States.
これを訳すと、「北朝鮮に入ったいかなる航空機も船舶も、180日間米国に入国できない」です。これによれば、民間であろうが、軍用機であろうが、北朝鮮に入った航空機は、180日間米国に入国できないことになります。確かに、このような制裁が存在するのです。
"
この条文の通りに解釈すると、文大統領の「空軍1号機」は確かにこの条文に抵触しており、90日間は米国に入国できないことになっていました。

ちなみに、この可能性は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が昨年チェコ・アルゼンチン・ニュージーランドの3カ国を訪問したときに。当初は米国に立ち寄るという予定だったにもかかわらず、それを直線になって変更して、チェコに寄ると発表したのです。

この変更が韓国内で「文大統領はなぜチェコに行ったのだろうか」という疑惑を生むことになったのです。

その疑惑は、簡単にまとめると、文大統領は当初米国に立ち寄り、給油してアルゼンチンに向かおうとしたのですが、文大統領の専用機「空軍1号機」は、昨年の9月に北朝鮮に入っているため、米国に制裁を適用されてその後90日間米国にできなかったため、米国ではなくチェコに寄ったのではないかというものです。

おそらく、米国としては昨年9月の文大統領の平城訪問は、米国に意図に反したものであり、厳格に米国による北朝鮮制裁の一環として、文大統領の「空軍第1号機」米国への寄港を認めなかったのでしょう。

石炭の北から韓国への事実上の輸出

VOAによると、シエラレオネ船籍の「リーチ・グローリー」が昨年7月4日、釜山港に入港した。全世界の船舶の出入りや位置情報を表示する「マリントラフィック」によると、韓国時間の4日午前11時58分、同船の船舶自動識別装置(AIS)の信号が釜山港で感知されました。

「リーチ・グローリー」は一昨年10月11日、北朝鮮産の石炭を浦項港に降ろし、その1ヶ月後にも浦項港に入港。11月16日には墨湖港に停泊しました。その10日後の26日には蔚山港、12月8日・15日・20日には釜山港に入港しました。

さらに、昨年1月1日と2月2日に平沢、1月27日に釜山、2月18日に仁川に入港、停泊しました。その後の4月1日、4日に平沢、4月10日と5月22日に釜山、4月18日に仁川に入港し、今月4日以降は日本に向かいました。

「リーチ・グローリー」は昨年10月から9ヶ月間に16回にわたり韓国に入港しましたが、韓国政府からは何の制裁も受けていません。国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁委員会の専門家パネルは、この船舶を違法船舶だと指摘していました。

国連安全保障理事会は一昨年12月、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けて採択した制裁決議2397号で、違法行為に加担したり違法な品目を運搬したりしたことを示す合理的な根拠がある船舶に対して、国連加盟国が押収・検査・凍結の措置を取ることができると定めています。

ただし、ロシアのハサン港、北朝鮮の羅津(ラジン)港を利用、または鉄道を利用してロシア産石炭を他国に輸送することについては適用を除外しています。

一方でパナマ船籍の「スカイ・エンジェル」も、一昨年10月2日に北朝鮮産石炭を仁川に降ろして以降、昨年6月14日に蔚山港に入港するまでの間、釜山、玉浦、蔚山、平沢の各港に出入りしている記録が残っています。

VOAは昨年7月16日、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが最近公開した「年次報告書修正版」によれば、北朝鮮産の石炭を積んだ複数の船舶が一昨年7月から9月の間に6回、北朝鮮の港からロシアのホルムスク港に向かいました。そこで石炭が「リーチ・グローリー」と「スカイ・エンジェル」に積み替えられ、韓国に向かったと指摘しています。

これに対して韓国外務省のノ・ギュドク報道官は昨年7月の19日の記者会見で「安保理決議に違反する違法行為と関連のある船舶は、合理的な根拠がある場合に押収できる」とし、関係当局の調査が行われており、適切な措置の検討が行われると述べました。同時に「総合的な判断は調査が行われてから可能だ」とも述べましたが、制裁破りの石炭輸出に何の制裁も加えなかった韓国に対する批判が高まりました。

韓国政府が北朝鮮へ石油80トンを搬入

韓国政府が開城工業団地の南北共同連絡事務所の開設のために、国連安全保障理事会が禁輸品目に指定した精油製品約80トンを北朝鮮に搬出していたことが分かっています。昨年8月22日付の韓国・中央日報が伝えました。 

21日、国会外交統一委員会幹事で自由韓国党の鄭亮碩(チャン・ヤンソク)議員が関税庁などから入手した資料によると、6~7月に石油と軽油8万2918キログラムが北朝鮮に搬出されたといいます。金額は約1億300万ウォン(約1010万円)相当です。このうち、再び韓国側に搬入された量は1095キログラムで100万ウォン(約9万8000円)相当でした。

韓国政府当局者はこれに対して、「開城に送られた物資は、北朝鮮に滞在するわれわれ韓国側の人員が使用するので制裁対象ではない。北朝鮮へ経済的利益は与えない」と説明しました。しかし、鄭亮碩議員は「韓国側の人員が使うとしても、連絡事務所が北朝鮮にあるので問題だ」とし、「制裁関連の協議が終わる前に、執行を先走ったものだ」と指摘しました。

米国務省も19日、「南北関係の改善は、必ず非核化の進展と正確に歩調を合わせて行わなければならない」と警告しました。

一方の北朝鮮は、開城共同連絡事務所の開設を口実に制裁を解除するよう韓国政府に迫っていました。北朝鮮の対韓国宣伝媒体「わが民族同士」は(昨年8月12日、「(板門店宣言が履行されない原因は)米国の対朝鮮(北朝鮮)制裁策動とそれに便乗した南側の不当な仕打ちにある」とし、「共同連絡事務所の作業に必要な数キロワット容量の発電機の持ち込みさえ思うように決心できずにいる」と主張しました。 

昨年9月14日、北朝鮮の開城で行われた南北共同事務所の開所式で、握手する
韓国の趙明均統一相(左から2人目)と北朝鮮の李善権?祖国平和統一委員長

今回の事件の背後には北と韓国の密約が存在する

欧米各国は「文大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と、国連主導の経済制裁の緩和=制裁破りの密約を交わしているのではないか」と分析しているようです。正恩氏による年内のソウル訪問が延期されたのは、「北朝鮮が、韓国の約束違反に激怒した結果で、今も文氏を責めている」という情報があります。

米CIA(中央情報局)は昨年末、「ソウル拘置所に収監中の朴槿恵(パク・クネ)前大統領が12月30日にも保釈される」という未確認情報を入手し、慌てました。北朝鮮が「正恩氏暗殺計画の首謀者」として、朴氏の身柄の引き渡しを韓国に要求していて、文氏が北朝鮮のご機嫌取りで実行する懸念があったというのです

トランプ政権内では、文政権への不信感、警戒感が爆発し、「北朝鮮への制裁破り」で、韓国へのセカンダリー・ボイコット(二次的制裁)の検討が始まっています。今回のレーダー照射問題は異常過ぎます。米国は「韓国駆逐艦は本当に救助活動中だったのか?」「北朝鮮漁船の目的は何か?」「なぜ、韓国は非を認めることができないのか」と、重大な関心を持って調査に乗り出したのです。

海自哨戒機などの情報収集によって、日本は決定的証拠を握っています。

トランプ大統領は文政権を、北朝鮮と一体の「反米・反日レッド政権」「敵性国家」と見て、本気で「在韓米軍の撤退」「米韓同盟の破棄」を考えています。それを唯一止めていたのはマティス氏でした。ところが、昨年12月31日付で退任しました。

今回の海自哨戒機へのレーダー照射も、背後に北朝鮮がいるものと考えるのが妥当です。韓国艦艇は、おそらく北朝鮮の漁船に対して、恒常的に給油を行っているのです。そうして、それはおそらく北と韓国のと密約によって行われているのでしょう。

そうでないと、制裁で疲弊したはずの、北朝鮮から大和堆まで大量の北朝鮮漁船が虎の子の燃料を使ってまで押し寄せたり、日本各地に北朝鮮の漂流船が多数漂着するはずもありません。日米としては、さらに物証を集めて分析したうえで、韓国にだけではなく、北に対しても抗議をすべきです。

さらに、抗議するだけではなく、北にはさらに制裁を強化し、韓国に対しては、本格的に二次的制裁を課すべきです。

韓国については、いわゆる「元徴用工」判決や、慰安婦合意の事実上破棄、竹島問題もあります。日本はこれ以上、「無法国家」の横暴は断固許してはならないです。

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2018年7月14日土曜日

ユーチューブの異変と現代版の「検閲」 背後に外国勢力の意向か…―【私の論評】我が国はスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしている(゚д゚)!

ユーチューブの異変と現代版の「検閲」 背後に外国勢力の意向か…

ケント・ギルバート ニッポンの新常識

竹田恒泰氏

 ドナルド・トランプ米大統領が大統領予備選のときから、ツイッターを駆使して支持者を増やしたことは記憶に新しい。CNNやニューヨーク・タイムズなどの既存メディアを「フェイクニュース」と断罪し、歯に衣(きぬ)着せぬ言動で、対立候補の政策や経歴、容姿までこき下ろした。何度も物議を醸したが、そのたびに支持者は増えた。

 結局、選挙予測では常に優勢だったヒラリー・クリントン元国務長官が惨敗した。世論誘導をもくろむ既存メディアが、ネット民のメディアリテラシーに完敗した選挙だった。

 英国のEU(欧州連合)離脱の国民投票でも、SNS発信のネット情報が大きく影響した。今やツイッターやフェイスブック、ユーチューブなど、SNS発信のネット情報が社会に与える影響は計り知れない。

 ネット時代の到来で、メディアが報じない情報を入手しやすくなった。自由と民主主義を重視する人間にはうれしいが、世の中には都合の悪い情報を隠したい連中が必ずいる。ヤツらの「工作活動」はいつも卑怯(ひきょう)でしつこい。

 最近、ユーチューブに異変が起きていることを、ご存じの人も多いだろう。明治天皇の玄孫で、作家の竹田恒泰氏の公式アカウントなど、「保守系チャンネル」が相次いで利用できなくなった。約200件のアカウントが凍結され、動画は閲覧不能になっているとの情報もある。

 凍結されたチャンネルの共通点は、中華人民共和国(PRC)や韓国、北朝鮮に不都合な事実を発信していたことだ。

 私もいくつかのチャンネルは見たことがあるが、過激な差別表現を含む動画より、「日本軍の慰安婦強制連行はなかった」などの歴史的事実を伝える、普通の動画の方が多かったように思う。

 検閲とは本来、「公権力」が情報統制のために、出版物や放送、映画、郵便物などの内容を強制的に調べるものだ。

 しかし、現代版の検閲は違う。一般人を装った組織的クレーマーが、情報発信者本人とSNSサービスに大量のメールを送るなど、執拗(しつよう)な攻撃を仕掛けて屈服させているようだ。テレビ局の多くは同様の方法で20世紀にクレーマーに屈服し、今はSNSが標的になった。

 その背後に、外国勢力の意向がある可能性は高い。私はツイッターで、日本語が微妙に怪しい外国工作員らしき人間にいつも絡まれている。

 メディアが報じないPRCの内情を教えてくれる評論家、宮崎正弘氏のメルマガは、某ウイルスソフトが必ず「迷惑メール」に分類する。

 日本には憲法9条改正とともに、スパイ防止法が必要だと、経験から心底思う。

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】我が国はスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしている(゚д゚)!

私自身は、動画を見るより、文字を読んだほうが圧倒的にはやく情報を入手できるので、「保守系チャンネル」は以前はかなり見たこともあるのですが、最近はほとんど見ていません。しかし、文字を読むことが苦手とか、保守系の文章はあまり読んだことのない人には、かなり有益なツールだと思います。

竹田恒泰氏のYouTubeチャンネルの凍結されたのは、今年の5月のことでした。竹田氏は、チャンネルを通報して潰した人達に宣戦布告しました。

竹田氏は公式ツイッターで「左翼活動家たちに狙い撃ちされ、竹田恒泰チャンネルのYouTube版が閉鎖に追い込まれました」と述べ、今回の攻撃は左翼活動家だと断定しました。

その上で、今夜20時から反撃を開始すると言及し、「これは戦争です。一日も早く回復し不当な攻撃が無意味であることを示しましょう」と呼び掛けていました。以下にそのツイートを掲載します。
これを受けて竹田氏のチャンネルを通報した5ちゃんねるユーザーからは、「やんのか?」「判断したのはYouTubeなんですけど」「サブチャンネルも潰せ」「玉音放送はよ」などとコメントが相次いでいました。

竹田氏と5ちゃんねる(なんJ民&嫌儲民ら)の全面戦争になってきたと言え、ツイッター掲示板の方も大盛り上がりになっていました。

結局、竹田氏のYouTubeチャンネルは再開されました。


ご覧になりたい方は、以下のリンクから入ることができます。
https://www.youtube.com/channel/UCTxDz8sXbnpYAfulQMRFNEQ
これは、当然の措置でしょう。竹田氏のYouTubeの動画上の発言は、以前何度か視聴したことがありますが、その内容のほとんどは過激なものでもなんでもなく、事実に基づいたことを淡々と話しているという内容のものです。

ただし、その内容は普段テレビや新聞などでは報道されていないことなどが多いので、テレビなどが主な情報源の人がみると、最初は、結構ショックを覚えるかもしれません。ただし、私のように保守系の文章などを読み慣れている人間にとっては、そのようなことはなく、ごく当然のことを語っているとしか思えません。

一度チャンネルが凍結されると、再開したとしても、登録者数は凍結前のカウントではなく、ゼロからはじまるようになっているようです。現状の登録数を確認してみると、4.6万人でした。これは、凍結以前を回復したか、それ以上になっていると思います。

なぜこのようなことが起こったかといえば、ブログ冒頭のケント・ギルバート氏の記事にもあるように、一般人を装った組織的クレーマーが、情報発信者本人とSNSサービスに大量のメールを送るなど、執拗(しつよう)な攻撃を仕掛けて屈服させているのでしょう。

今回、竹田恒泰氏のアカウントはすぐに再開されたので、あまり大きな被害はなかったとは思います。そうして、なぜすぐに再開されたかといえば、竹田氏が著名人だからだと思います。

竹田氏の普段の発言など、さほど過激ではないし、多くの発言が文献を丁寧に読んだ事による情報に裏打ちされていることなど、はっきりしているので、はやく回復されたのだと思います。

著名人ではない人のアカウントの場合はすぐには回復されないことも多いようです。私自身は、自分の意見が異なる人が動画を発信していたとしても、ときには参考のために見ることもありますし、普段はあまりみないです。

朝日新聞なども、わざわざ購入してまでは読みませんが、時々朝日新聞がどのような主張をしているのかを見るため、デジタル版を時々見ることがあります。

やはり、普通の人ならその程度であり、たまたま見ていたら過激な内容であれば、YouTubeに報告することもあるかもしれません。

ちなみに、すべてのYouTubeの動画には、動画の内容をYouTubeに報告することができるようになっていて、「報告」というリンクがついています。これをクリックすると以下のような画面がポップアップして、さらに詳細を報告できるようになっています。


竹田氏のアカウントはおそらくこの報告システムを悪用して行われたのでしょう。人によって同じ動画を見ても、反応は違います。大勢の人が不快とは思わないような内容でも、不快と感じて報告する人がいるかもしれません。しかし、一般の人が個人で報告する程度では、竹田氏のアカウントを凍結に追い込むようなことはできなかったでしょう。

やはり、クレーマーの背後に、外国勢力の意向がある可能性は高いと考えられます。そうして、これから外国勢力が日本国内で好き勝手ができないように、スパイ防止法が本当は必要なのです。

国家の安全保障を脅かすスパイにほ日本に限らず、どこにでも潜んでいます。そうして日本以外の国々では、どの国も厳罰で臨んでいます。

にもかかわらず、わが国はスパイ罪すら設けていません。スパイ行為そのもので逮捕できないのは、世界で日本一国だけなのです。

自衛権は国際法(国連憲章第51条)で認められた独立国の固有の権利で、国家機密や防衛機密を守り、他国の諜報活動を防ぐのは自衛権の行使として当然の行為です。それで世界ではどの国もスパイ行為を取り締まる法整備(スパイ防止法や国家機密法、あるいは刑法など形態は様々)を行っています。それが諜報対策の基本です。

ところが、わが国にはスパイ行為を取り締まる法律そのものがありません。それで他国ではスパイ事件であっても日本ではそうならないのです。

初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行氏は、警視庁公安部や大阪府警警備部などで北朝鮮やソ連、中国の対日スパイ工作の防止に当たってきましたが、次のように述べています。
我々は精一杯、北朝鮮をはじめとする共産圏スパイと闘い、摘発などを日夜やってきたのです。でも、いくら北朝鮮を始めとするスパイを逮捕・起訴しても、せいぜい懲役一年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していくのが実体でした。なぜ、刑罰がそんなに軽いのか――。 
どこの国でも制定されているスパイ防止法がこの国には与えられていなかったからです。…もしあの時、ちゃんとしたスパイ防止法が制定されていれば、今回のような悲惨な拉致事件も起こらずにすんだのではないか。罰則を伴う法規は抑止力として効果があるからです。(『諸君』2002年12月号)
佐々氏は「他の国では死刑まである重大犯罪であるスパイ活動などを出入国管理法、外国為替管理法、旅券法、外国人登録法違反、窃盗罪、建造物(住居)進入などの刑の軽い特別法や一般刑法で取締らされ、事実上、野放し状態だった」と言います。

佐々淳行氏

世界各国では、CIA(米中央情報局)やFBI(米連邦捜査局)、SIS(英情報局秘密情報部)などの諜報機関を設けて取り締まるのが常識です。ところが、わが国にはそうした法律や諜報機関が存在しないのです。

オバマ前米国大統領は、「戦略的忍耐」で中国を増長させてしまいましたが、トランプ政権に変わってから、果敢に中国に対して貿易戦争を挑み、中国に対して民主化、政治と経済の分離、法治国家化を迫っています。

一方我が国は現在に至るもスパイ防止法もない有様で、中国や北朝鮮を増長させ放題にしているといっても過言ではありません。

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2017年11月1日水曜日

小泉進次郎氏「総理養成ギプス」装着され安倍氏も恐れる男に―【私の論評】総理は進次郎ではなくその背後の財務官僚を恐れている(゚д゚)!


小泉進次郎氏
 霞が関の若手官僚たちが1人の若手政治家を“促成栽培”している。総選挙で安倍首相以上の動員力を見せつけ、「自民党の新しい顔」となった小泉進次郎・筆頭副幹事長だ。

 進次郎氏を囲む勉強会ではとくにこの数か月、熱気あふれる議論が交わされてきた。「進次郎内閣」の政権構想をつくるためのブレーンストーミングである。この動きに神経を尖らせて情報収集している内閣官房の官僚が語る。

 「進次郎は1年ほど前から将来の首相の座を意識して官僚を集めた勉強会を立ちあげている。先行しているのは財務省の中堅官僚グループで、超高齢化社会をテーマに進次郎政権の柱となる政策づくりをしてきた。

 それに対抗しているのが経産省の若手女性キャリアを中心とする勉強会。高齢化社会の産業構造や自動運転技術などの無人化社会、移民政策など分野ごとに各省の若手に積極的に声をかけて参加者が増えている。最近では進次郎も同じ年代の官僚が多いこっちの勉強会が気に入って、“経済が停滞する時代にはどんなメッセージが共感を得るのか?”など、質問も多いと聞いている」

 官僚の指導は政治家としての立ち居振る舞いにも及ぶ。その振り付け指導は勉強会が立ち上がった昨年から始まった。

 進次郎氏が地元・横須賀にある防衛大学校の開校記念祭(昨年11月)に当時の稲田朋美・防衛相とともに出席したときのことだ。

 「このとき、ブレーンの官僚たちは進次郎に“稲田と並んで歩くときは半歩でもいいから前を行くこと”を強くアドバイスしていた。メディアは総理のお気に入りだった稲田大臣を中心にカメラを回すから、決して後ろに従う姿を見せずに、前を行く構図で報道されることが総理・総裁候補として有利な位取りにつながるという判断です」(同前)

 驚くのは、安倍首相に対しても、その「位取り」を意識していることだ。応援演説ではアベノミクスの成果といった政策には一切言及せず、「社会保障の負担を次の世代に残すべきではない」と持論を展開。“オレは安倍さんとは政策が違う”とアピールし、

 「安倍総理だっていつまでも総理じゃない」

 と、巧みな弁舌で聴衆を笑わせる。

 かと思うと、街頭演説で枝野幸男・立憲民主党代表とぶつかれば、10分間、沈黙して演説を“拝聴”してみせる。どんな行動をとれば自分の価値を高く見せることができるかをしたたかに計算している。すぐにキレてしまう安倍首相には真似できない芸当だ。

 官僚たちに“総理大臣養成ギプス”をつけられて訓練を受けてきた進次郎氏は、総理・総裁候補としての存在感をどんどん増し、いまや間違いなく「総理が最も恐れる男」となった。

 ※週刊ポスト2017年11月10日号

【私の論評】総理は進次郎ではなくその背後の財務官僚を恐れている(゚д゚)!

安倍総理は、小泉進次郎氏個人を恐れることは全くないでしょう。そうではなくて、その背後にいる官僚、特に財務省主計局の官僚を恐れているのです。

小泉進次郎氏に関しては、以前もこのブログに掲載したことがあります。これをご覧いただければ、なぜ安倍総理が小泉進次郎氏の背後に存在する、財務省官僚をおそれるのか、その理由がおわかりいただけると思います。その記事のリンクを以下に掲載します。
小泉進次郎が「こども保険」にこだわるホントの理由はアレしかない―【私の論評】経済における清貧思想が生み出した緊縮脳こそが社会の害悪(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の元記事となった田中秀臣氏の記事をそのまま全部引用します。
 毎年、3月11日になると、2011年3月にどんなことが起きたのか、当時の記録が掲載されている自分のブログを見て思い出すことがある。もちろん東日本大震災の悲惨な被害、そして失われた多くの命、さらには「人間的価値の毀損(きそん)」という事態の前では、いまだ復興への道のりが遠いことに思いを強くしている。だが、今日書きたいのは、当時の「非人道的」ともいえる動きである。
2011年6月、党首討論で発言する自民党の谷垣禎一総裁(左)と、菅直人首相

 それは2011年3月13日、当時の民主党政権の菅直人首相と自民党の谷垣禎一総裁の会談において、復興政策の一番手として増税政策があげられたことだ。その時点では、被害の実態も把握できず、復興自体よりも人命救助に努力を傾注すべきときだった。もちろん福島第二原発の状況は予断を一切許さない緊迫したものであった。 
 さらにこの増税政策は、後に設置された政府の「復興構想会議」などでも最初の具体的提案として、議長や委員から提起されている。実際に復興政策として何を行うかさえもはっきりしない段階において、である。 
 この復興構想会議では、事実上、後に「復興特別税」となる増税構想だけが具体的に決まったといっていい。当時、複数の復興構想会議の委員に会ったが、いまでも印象に残るのは、「僕らは経済のことはわからないから」という発言だった。経済のことを理解していない人たちが、なぜか増税だけを最優先にかつ具体的に決めたというのはどういったことなんだろうか。 
 さらに時間が経過していくにつれてわかったことだが、この復興特別税での当時の与野党の連携は、民主党・自民党・公明党による「社会保障と税の一体改革」、つまりは今日の消費税増税のための「政治的架け橋」になっていたことだ。
 つまりは、大震災で救命対策が必要とされる中、消費増税にむけた動きが震災後わずか2日後には本格化していたことになる。つまりは震災を人質にしたかのような増税シフトである。これが冒頭で書いた「非人道的な動き」の内実である。
  実際、民主党政権はその政治公約(マニフェスト)の中には、消費増税のことは一切書かれていなかった。だが、この震災以降の増税シフトが本格化する中で、当時の野田佳彦首相(民主党、現在の民進党幹事長)は、自民党と公明党とともに消費増税を決定した。日本では社会と経済の低迷と混乱が続いていたにもかかわらず、ともかく消費増税だけは異様ともいえるスピードと与野党の連携で決まったのである。この消費増税は後に法制化され、第2次安倍政権のもと、日本経済を再び引きずり下ろす役割を果たした。その意味でも本当に「非人道的」であった。 






















 さてこの動きと類似した消費増税シフトをいまの政治の世界でも見ることができる。自民党の小泉進次郎議員が主導する「2020年以降の経済財政構想小委員会」が発表した、いわゆる「こども保険」だ。現在の社会保険料に定率の増加分をのせて、それで教育の無償化を狙うスキームである。「こども保険」と呼ばれているが、実体はただの「こども増税」である。以下でも詐称を控えるためにも、「こども保険」ではなく、正しく「こども増税」と表記する。
 小泉議員らの主張によれば、高齢者に偏重する社会保障体系を、若年層向けに正す効果があるという。この一見するとあらがうことが難しいようなスローガンではある。だが、これがくせ者であることは、冒頭のエピソードを読まれた読者はピンとくるはずだ。 
 消費増税シフトは、そもそも震災復興を契機に仕込まれ、そして社会保障の充実という名目で選挙公約を無視してまで導入された。この経緯を踏まえると、小泉議員らの「こども増税」は、消費税増税シフトを狙う政治勢力の思惑ではないか、と推察することは可能だろう。 
 もちろん「こども増税」自体が消費増税ではない。「こども増税」は、消費増税をより実現しやすくするための、政治勢力の結集に使われる可能性があるのだ。小泉議員は国民の人気が高い。いわば「ポスト安倍」候補の一人であろう。
 現在の安倍政権は、首相の決断によって過去2回消費増税が先送りされた。さまざまな情報を総合すると、安倍首相の財務省への懐疑心はいまも根深いとみられる。なぜなら財務省は2013年の消費増税の決定時期において、「消費増税は経済に悪影響はない。むしろ将来不安が解消されて景気は上向く」と説明していたからだ。もちろんそのようなトンデモ経済論は見事に外れた。日本経済がいま一段の安定経路に入れないのは、この消費増税の悪影響である、と首相は固く信じているようだ。そのための二度の消費増税延期である。
 このような首相の決断は、財務省を中心とする消費増税派からすれば脅威に思えるだろう。今後の消費増税は本当に実施されるのか、また10%引き上げ後も財務省が現段階で狙っていると噂される15%以上への引き上げの道筋が早期にめどがつくのかどうか、彼らは不安であろう。 
 ある意味で、ポスト安倍の有力候補としての力の結集、または現段階で安倍首相を与党の中で牽制(けんせい)する「消費増税勢力」が誕生した方が得策である、と消費増税派は踏んでいるのかもしれない。もちろん「こども増税は、消費増税を確実にするための前ふりですよね」と、小泉議員らにいっても即座に否定するだろう。だが、同時に思い出されるのは、数年前に復興構想会議のメンバーに「この増税路線は消費増税路線の一環ではないか」とただしたとき、「そんなことはない」と一笑にふされたことだ。今回はだまされたくはないものである。
これをご覧いただければ、なぜ安倍首相が小泉進次郎氏個人ではなく、その背後に存在する、財務省主計局を恐れるかが良くおわかりになると思います。

まさに安倍総理は、財務省主計局主導による、ポスト安倍の有力候補としての力の結集、または現段階で安倍首相を与党の中で牽制する強力な「消費増税勢力」の構築を恐れていのです。

財務官僚は小泉進次郎氏を将来の増税勢力の要として、小泉進次郎氏を“促成栽培”しているのです。

今回の衆院選で応援演説をする小泉進次郎氏
与野党問わずに、現状の「ポスト安倍」と目される政治家や政治勢力は、財務省の消費増税路線の走狗に過ぎません。消費増税は財政再建のための「手段」でしかないのですが、しばしば「手段が自己目的化」しています。

まさに消費増税ありきの財務省の走狗のような政治家が日本の圧倒的大多数です。むしろ財務省的な経済政策観をもたない政治家を数える方が容易なくらいです。アベノミクス(の金融政策中心)的政策観をもつ国会議員は、その数は二桁にも満たないでしょう。

財務省は、消費増税が自己目的化しているので、それに貢献する政治家たちもすべて消費増税のための道具にしか過ぎません。そもそも、財務省的な経済政策観をもつ政治家は腐るほど存在しているのです。

自民党の中の「ポスト安倍」と目されている人たち―稲田朋美元防衛大臣、小泉進次郎衆議院議員、石破茂衆議院議員らーの過去の発言をみれば、消費増税ありきの財政再建主義か、もしくは金融政策中心のデフレ脱却への懐疑や批判が明瞭です。

稲田大臣は、先の再延期の前には「消費税をまず1%引き上げる」案をだしていましたが、これも「なぜそもそも消費増税を経済が低迷しているときに増税そのものにこだわるのか?」という疑問に一切答えていません。

消費税引き上げが自己目的化したものです。そうして、小泉議員はさらに深刻です。先の再延期のときの報道を読むかぎりでは、消費増税先送りへの懐疑的な態度にくわえて、親譲りなのでしょうか。とにかく経済的な倹約(社会保障の見直し)という視点しかありません。

むしろ消費増税は積極的に先送りすることで、経済成長を安定化させ、そこで財政再建(社会保障制度の積極的な拡充)も実現していくべきなのでしょうが、その手の発想は過去の発言をみるかぎり希薄です。

石破議員は、デフレ脱却を金融政策中心で行うと高いインフレに帰結するなど副作用の可能性を指摘してきました。いずれも財務省の消費増税路線やその背景にある財政再建主義に親和的です。とりあえず代表的な三者をあげましたが、他の政治家もごく少数を抜かして同じ考えです。

財政再建は大事かもしれません。しかし、経済が十分に復活しないときに、増税や財政支出の緊縮を行えば、それは国民の経済生活を困難なものに陥れることになります。財政再建は経済のまともな発展の副産物にすぎないものです。

国民の多く特に市場関係者は、この財務省的な政策観が「狂ったもの」であることにうすうす気づいているのではないでしょうか。

しかしこれは、現状では安倍政権以外に、まともな経済政策観を抱く有力な政治勢力がないことを示しており、そのことが日本の潜在的なリスクといえると思います。

このリスクを避けるためには、やはり政党の近代化は避けて通れません。

政党の近代化については、昨日のこのブログにも掲載したばかりですが、これは聞きなれない言葉だと思います。

毎年のように、年末になると政党助成金を目当てに新党が結成されます。そもそも政党助成金は金権政治の温床となる無理な資金集めを解消するとともに、政党を近代化する条件で導入された制度です。ところが、「政党の近代化」という言葉はとっくに死語になっています。

近代政党には、三つの要素があります。

綱領、組織、議員です。

明確な理念をまとめた綱領がある。綱領に基づいて全国組織が形成される。全国の政党支部が議員を当選させる。その議員たちは政策の内容で競い合い、自由で民主的な議論で党首を決める。選ばれた党首は直属のシンクタンクとスタッフを有し、全国組織に指令を下す。

この条件に当てはめると、自民党(別名・自分党)は近代政党ではありません。議員に個人後援会や圧力団体がくっついて、派閥の談合によって党首を選んでいるだけです。

自民党が有する最大のシンクタンクは官僚機構(つまりは予算を握る財務省主計局)ですが、ヨーロッパの政党は官僚機構に対抗できるシンクタンクを自前で揃えています。

確かに自民党の議員も早朝から「朝食会」などと称し、熱心に勉強しているといわれています。しかし、問題はその中身です。実態は官僚を呼んで情報をもらっているにすぎませんから、そもそも官僚に都合の悪い情報が入ってくる余地がありません。政治家たる者、官僚と会う前に勉強をしておくべきなのに、官僚から勉強を教えてもらっているのです。

小泉進次郎氏も、「朝食会」に出席し、日々官僚から勉強を教えてもらっています。それだけではなく、霞が関の若手官僚たちに“促成栽培"してもらっているわけですから、1〜10まで官僚に都合の良い情報しか頭にはいらないでしょう。これでは、まともな政治家にはなれず、官僚の道具になるだけです。

"反アベノミクスの勉強会"講師は、財務省寄りの大学教授
イギリスなどでは、無論シンクタンクは存在しますが、それ以外にも自前でブレーンを用意して勉強した政治家だけが、党の出世階段を上ります。というより、自前である程度勉強しないと、高度な能力を持つシンクタンクの政策提言も理解できません。

政治の世界において、政党と官僚は化かし合いです。官僚の言うことばかり聴いていては、本来政治家は勤まりません。かといつて、かつての民主党のように「政治主導」などといいながら、その実は表向き官僚に仕事をさせないようするだけでは、政府が機能しなくなります。

かつて民主党の事業仕分けは財務省のシナリオにもとづき行われた
近代政党の政治家は、まずは自分でも勉強し、シンクタンクの力も借りて、官僚を従えて、自分の方針通りに仕事を十分にさせ、その上で失敗すれば自分が責任を取るのです。

日本でも、まともな近代政党をつくらなければ、官僚自己目的的なふるまいは永遠に是正されないでしょう。しかし、いますぐには不可能です。であれば、小泉議員のような議員こそ、自前でブレーンを用意し、勉強する以外にありません。

しかし、ブレーン選択に失敗し、官僚寄りのブレーンを選択してしまえば、やはり官僚のいいなりで、官僚の都合の良い道具にされるだけです。というより、今は安倍首相とその一部の側近等一部を除いたほとんどすべての政治家が財務省の道具です。マスコミもそうです。政党の近代化をないがしろにしてきたつけが、これです。
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2017年8月22日火曜日

【〝キレる〟高齢者】暴行摘発10年で4倍 つえで殴る、小1男児首絞め…… 識者「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある」―【私の論評】背後にあるメディアの大問題(゚д゚)!



傷害や暴行などでの高齢者(65歳以上)の摘発人数が、人口増加を上回るペースで急増していることが20日、国の統計から分かった。特に暴行の摘発は10年前から4倍超に激増。些細(ささい)なトラブルから他人に手を出すケースが多発し、火炎瓶や爆弾などで無差別に他人を傷つける重大事件も起きている。専門家は、“キレる”高齢者が増えている背景に、社会の変化に伴う高齢者の「孤立」があると指摘する。

昨年3月、兵庫県加古川市の公園で、たばこのポイ捨てをとがめられた70代の男が「カッとした」として当時小学1年の男児の首を絞め、暴行容疑で逮捕された。京都府舞鶴市でも同年10月、電話を借りるため市民センターを訪れた70代の男が申し出を断られて激高、つえで男性職員を殴る暴行事件があった。

さらに同年8月に東京都杉並区の夏祭り会場に火炎瓶が投げ込まれた事件では、当時1歳の子供を含む男女16人が負傷。犯行後に自殺した当時68歳の男は、以前から知人に「サンバの音がうるさい」などと不満を漏らしていた。2カ月後の10月にも、宇都宮市の公園で元自衛官の男=当時(72)=が爆発物で自殺し、巻き込まれた無関係の3人が重軽傷を負った。

同年8月に東京都杉並区の夏祭り会場に火炎瓶が投げ込まれた事件
 攻撃的な高齢者の増加傾向は統計にも表れている。

28年版犯罪白書によると、刑法犯全体の認知件数が減少傾向にある一方、高齢者の刑法犯の摘発人数は高水準で推移。特に傷害や暴行などの粗暴犯は右肩上がりで、27年の摘発人数は傷害1715人、暴行3808人と10年前からそれぞれ約1・6倍、約4・3倍に増加した。これは同期間の高齢者の人口増加の割合(約1・3倍)を上回る。

新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は「加齢によるパーソナリティーの変化は大きく分けて、思慮深く優しくなる『円熟化』と、感情の抑制が利かなくなる『先鋭化』の2つがある。先鋭化では、感情を制御できずに些細なトラブルが暴力につながる」と説明する。

高齢者が先鋭化する背景には、核家族化や雇用の流動化、年長者を慕い敬う伝統の消失など社会構造の変化があるとされる。激高などの行動は孤立した状況で起こりやすく、女性に比べて変化への順応が苦手な男性で顕著になるという。

碓井教授は「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある。高齢者より若い世代にも同傾向が出始めており、日本の中高年は危機的状況だ」と指摘した。

【私の論評】背後にあるメディアの大問題(゚д゚)!

高齢者の感情の抑制が利かなくなる『先鋭化』がなぜおこるのかということに関して、上の記事では、社会心理学の専門家が「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある」とあります。確かに、そういう側面もあるのでしょうが、私はそれだけではないと思います。

高齢者と聴いて、まず頭に浮かぶのが、高齢者の情報源のほとんどが、テレビや新聞であるということが、若い世代との顕著な差であるということです。

私自身は、近所の65歳以上の高齢者とも付き合いがあり、これは本当に顕著に感じるところです。最近の高齢者は携帯電話を持っている人も多いのですが、まだまだガラケーが多いですし、仮にスマホを持っていたにしても、主に使用するのはメールと電話であり、スマホでネットを参照したり動画を見たりする人は少ないです。

パソコンを持っている人もいるにはいるのですが、それで動画を見たり、ニュースを検索する人は滅多にいません。

この状況については、ガベージニュースの以下の記事をご覧いただくと良くご理解いただけるものと思います。
これは気になる、高齢者の日常生活上の情報源とは!?(最新)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事からグラフを引用します。


他の多数のメディア関連の調査の結果同様、高齢者における常用情報取得源のトップはテレビ、次いで新聞。この2メディアの絶対優位性は疑う余地もないです。

そうして、この記事は以下のように締めくくっています。
先行する記事では「普段の楽しみ」としてテレビや新聞を挙げる高齢者が多いとの結果を確認したが、今件では普段の情報源として両者が圧倒的な支持を集めていることがつかみ取れる。しかもテレビに限れば、どの年齢階層でも変わるところが無い。高齢層がテレビ好きで大きな影響を受けるのも、納得がいくというものだ。 
なお今調査は5年毎に実施されているため、次の調査は2019年に行われる。その頃には高齢者が使える情報源はどのような変化を示し、そして高齢者は何を選択しているのか。特にインターネット・携帯電話の利用状況がどの程度変化するのか、調査結果が楽しみではある。
ガベージニュースには、以下のような記事もありました。
テレビはシニア、ネットは若者…主要メディアの利用時間をグラフ化してみる(最新)
この記事からも以下にグラフを引用します。


このグラフが、10代と60代ではテレビの生放送の視聴時間が2.9倍も違うことがわかります。無論60代のほうが2.9倍もテレビを視聴しているということです。
2016年の時点では10代と20代でインターネットの利用時間がテレビ(生放送)を抜いている。つまり「20代以下においてはテレビ<<ネットの時代」である。多分にスマートフォンの普及浸透によるところが大きく、この傾向は今後も続くものと考えられる(今件は各年齢階層毎の平均値であり、該当メディアを利用していない=利用時間ゼロの人も含めているため、普及率が高いほど平均値も底上げされる)。 
スマートフォンの普及がさらに進めば、将来は30代、そして40代でもテレビの利用時間をインターネットが抜くようになるかもしれない。
ここで、テレビの視聴率、新聞の購読率の高い視聴者の立場にたって見て下さい。 テレビ・新聞といえば、最近でいうと、いわゆる「もり・かけ」の偏向報道が顕著でした。

このブログにも以前掲載したことがあるのですが、「もり・かけ問題」に関しては、ネットなどの情報源があれば、いずれの問題も最初から全く安倍総理やそのご夫人には問題はなく、これで追求する野党やマスコミは、愚かという以外に何もありません。結局その目的は倒閣運動以外の何ものでもないということです。

実際、その後テレビや新聞のネガティブキャンペーンがある程度功を奏して自民党政権の支持率は落ちましたが、かといってこの問題で安倍総理が辞任するとか、安倍政権が崩壊するとか、しそうとであるなどのことも全くありません。

これをテレビ・新聞を主な情報源としている高齢者にとっては、「悪の安倍」が全く何のおとがめも受けず、結局世の中は何も変わらなかったと見ているのではないでしょうか。

実際、私の近所の高齢者らも、最初はテレビにかじりついて「もり・かけ」の顛末をみていたようですが、それも最初の一月くらいであり、それをすぎると視聴するのはやめたようです。

その理由を聴いていみると、ほとんどの人が「飽きた」というものでした。確かに、なにやらマスコミや野党はいかにも何かおこりそうな雰囲気でいろいろ御託を並べて追求したのですが、結局何も変えられませんでした。

高齢者の側からすると、野党やマスコミがいくら大騒ぎしても、世の中は変えられないんだという諦めムードになり、どうせ何も変わらないなのだから、見ても無駄と思い見なくなったのだと思います。

そうして、このようなことは何も「もり・かけ」問題ばかりではありません。2015年の集団的自衛権を含む安保法制の審議のときにも、これらを戦争法案として、野党は国会で乱闘騒ぎを起こし、国会前では日々デモ隊が反対デモを挙行しました。テレビも新聞も連日連夜これを報道しました。

このときも高齢者は「悪の安倍」が「戦争法案」を通過させようとしている、これが通過すれば戦争になると息巻いてテレビを見ていたことでしょう。

しかし、法案は通過し、この時は安倍政権の支持率が落ちることもありませんでした。これでは、高齢者はどうせ世の中なんて、みんなでさわいでも何も変わらないのだという考えを深めたことでしょう。

さらに、高齢者のほとんどは、本当は増税してもらいたくはないが、増税しなければ日本は大変なことになるから、増税せざるを得ないと考えている人が多いです。そうして、増税すればどのようなことになるかは、何となくは知っているようです。それでも、増税しなければならないと思い込んだ人はどうなるでしょう。

さらに直近では、北朝鮮がグァムにむけてミサイルを打つという考えを表明したことが、かなりあおり気味で、報道されています。これは自衛隊の退職したある元幹部の人が語っていたのですが、自分自身はそのようなことはないと思っているので、テレビなどの番組で、「北朝鮮のグァムへのミサイル発射はあり得るのか?」と聴かれて「ないと思います」というと、もう後が続かなくなってしまうので、その番組にはもう使われなくなってしまうと語っています。その発言の動画を以下に掲載します。(7:57あたりにその発言があります)



しかし、テレビではミサイル発射があり得るというということを前提して、報道をしないと話が続かなくなるので、あくまであり得るという前提する放送局がほとんどです。

そうなると、いつ日本にも火の粉が飛んでこないとも限らないということで、高齢者はかなり煽られるわけです。

以上は、最近の事例を出しただけで、高齢者は昔からテレビや新聞で日々煽られてきており、さらには政治家やマスコミが悪を暴いても悪いものが成敗されることもなく、この世にのさばっていると考えざるを得ない状況に追い込まれています。

このような状態が数十年も続いたとして、自らその情報の真偽を確かめる術を持たない高齢者がどうなってしまうのか、容易に想像がつきます。それは、モラルの低下です。彼らかられば、悪の安倍政権が滅びることも何もなく、そのまま続いているのですから、この世の中は巨悪がまかり通っていると考えるようになるのも無理はありません。

そうして、最近では高齢者の体力が昔と比較してかなり向上しています。昔だとたとえ、切れても体力的にどうにもできなかったものが、今の高齢者は、実力行使に訴えることもできます。

最近の〝キレる〟高齢者が増える背景には、このような背景もあると思います。これを防ぐには、高齢者に対して直接考え方を変えるように説得してもほとんど効果がありません。さらに、インターネットで検索せよと説いてもほとんど効果はありません。

グーグルクロムキャストやアップルTVなどで既存のテレビで動画を見る方法を教えてあげると良いと思います。

私は、何人かの高齢者にそれを教えてあげましたが、教えたほとんどの人が「虎ノ門ニュース」などをみるようになって、人生観が随分変わったと言っていました。

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2017年7月24日月曜日

稲田問題のリーク源から、安倍内閣「倒閣運動」の深刻度が見えてくる―【私の論評】森・加計・日報問題の背後に財務省(゚д゚)!

稲田問題のリーク源から、安倍内閣「倒閣運動」の深刻度が見えてくる

稲田防衛大臣
   面白い資料が出てきた

森友学園問題、加計学園問題については、本コラムでそれぞれの問題の本質を明らかにしてきた。

森友学園問題では、当初の段階で公開入札手続きをとらなかったという近畿財務局のチョンボ(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51362)であり、加計学園問題では、50年以上獣医学部の新設を拒否してきた文科省告示の存在とそれを巡る既得権派と規制緩和派の争いである(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)、というものだ。

その問題本質の理解を妨げたのが、役所における公文書管理である。筆者にとっては、各種資料から、森友学園問題、加計学園問題について結論を出しているが、一般からみてそれらが分かりにくいのは事実だ。

森友学園問題では、「森友学園側の不正補助金授受」という形で事件化されて、ことが終わろうとしている。もちろん、この問題についてももろもろ論点はあるのだが、なにしろ「財務省の文書は破棄した」という言い方に終始したのは、政府への信頼を大きく損ねただろう。

実際、筆者は森友学園問題の構図を探るためにいろいろと資料をさがしたのだが、結局、鴻池議員の事務所のメモ(これは、各種資料と照らし合わせても信憑性が高いものである)に頼らざるを得なかった。本来であれば、財務省に管理されているしかるべき公文書をみれば直ぐわかることなのに、それがないゆえに解明に難渋した。

一方、加計学園問題では、その点かなり楽だった、当事者である文科省と内閣府双方の合意済みの特区諮問会議、ワーキンググループの議事録が残されており、それらと前川氏の記者会見や文科省からリークされたメモが齟齬していたからだ。筆者が本コラムで書いてきた問題の本質は、10日の閉会中審査での加戸守行前愛媛県知事の国会証言、14日に行われた京都産業大の記者会見で、結局明らかになった。

その後、週刊誌が、昨年11月17日、山本幸三行革大臣は蔵内勇夫日本獣医師会会長らと面談した際、「新設校は加計学園で決定した」という、抵抗勢力であった獣医師会側からのリークメモを報じた(ただし、これについて、蔵内氏自身が、その面談の際には、京都産業大学の名前も出ていたと、山本大臣に軍配を上げ、週刊誌報道を否定した→https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170720-00000004-tncv-l40)。

いずれにしても、加計学園問題は、森友学園問題に比べて公開されている議事録や資料が多いので、その解明は難しくなかった。

筆者は、加計問題でのいわゆる「石破4条件」について、文科省の挙証責任を指摘してきた(5月29日付け本コラム http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51868)。しかし、「石破4条件の挙証責任は文科省にはない」という。実際、前川喜平・前文科事務次官ほか、文科省関係者はそう主張してきた。

規制官庁側に挙証責任があるというのは、本コラムで書いたように役所の常識であるし、閣議決定された特区基本方針にも書かれている、にもかかわらずだ。

それについて面白い資料が見つかった。2005年7月12日の規制改革会議の議事録だ(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/minutes/wg/2005/0712/summary050712_01.pdf)。そこには、課長時代の前川氏が登場している。ご一読いただければ分かるが、その当時から前川氏は「挙証責任」が理解できておらず、草刈隆郎規制改革会議議長から、規制改革会議への出入りを禁止されていたのだ。このような非常識な役人が次官になるというのが、文科省の最大の問題点だろう。

さて、前置きが長くなったが、今回は稲田防衛大臣の諸々の問題について解説を加えたい。

   支持率低下の理由は「女性」にアリ

まずは各種報道から時系列を整理しておこう。

昨年7月、国連平和維持活動(PKO)をしている南スーダンで政府軍と反政府軍の間で「戦闘」があった。

9月30日、フリージャーナリストが防衛省に、PKO派遣されている部隊の「日報」開示を請求

12月2日、「日報」の情報開示請求に対して、防衛省は「日報はすでに廃棄し存在しない」とし不開示を決定

12月16日、稲田防衛大臣が再調査を指示

12月26日、電子データが統合幕僚監部に存在

今年1月27日、稲田防衛大臣に対し電子データが統合幕僚監部存在していたことを報告

2月7日、日報公開

2月15日、《省内会議 陸上幕僚監部で電子データとして保管、保管データは公表しない方針》(?)

3月16日、衆院安全保障委員会において、陸上幕僚監部で日報が保管されていた疑惑に対して、稲田防衛大臣が「報告はされなかった」と答弁

3月17日、防衛省防衛監察本部による特別防衛監察が設置され、解明が進められることに

まず、国民との関係でみれば、日報自体は2月7日に公開されているので、大きな実害はない。どこの部署で保管されていたかどうかが議論になっており、これは部内では問題であるが、国民との関係では些細な問題である。しかも、その後、南スーダンからPKO部隊は撤収されているので、この点でも、安全保障政策上の問題はまずない。

もっとも、防衛省の部内問題であるとはいえ、稲田防衛大臣が国会で「虚偽答弁」をしていたのであれば、それは問題である。それが今クローズアップされているのは、森友学園問題で、弁護士時代の活動についての国会発言が訂正されたり、先の都議選での自衛隊に関する不適切な失言があったからだ。

特に、都議選での失言(「防衛省、自衛隊としても(自民党候補の応援を)お願いしたい」と発言したもの)は弁解の余地はないくらい酷いものだ。筆者はたまたま失言が行われた選挙区の住民であったが、この失言と隣接地区選出の豊田真由子議員の暴言によって、自民党への大きな批判が起こるのを身近に感じた。

なお、2カ月前までの安倍政権の高い支持率には、小泉純一郎政権以降と比べて、いくつかの特徴があった。

年代別でみると、他の政権では、一般的に高齢世代ほど支持率が高い傾向があったが、安倍政権は逆に若い世代ほど支持率が高かった。男女別でみると、他の政権では男女で支持率の差は少ないが、安倍政権は男性の支持率が高かった。第2次、第3次安倍政権は、10年前の第1次安倍政権と比べても、世代別政権支持率と男女別政権支持率は異なっている。

最近になって支持率が急落した要因は、女性の支持率がさらに下がったことが大きい。強引な国会運営に加えて、豊田真由子議員の暴言、稲田朋美防衛大臣の失言も背景にあると筆者はみている。

豊田氏の暴言は本当にひどいものだった。これで高齢世代の男性の支持も大きく失ったはずだ。筆者もあの発言がテレビで流れるたびに腹が立ったものだ。

また、稲田防衛大臣の失言もひどかった。ある女性芸能関係者は、ワイドショーのなかで「神妙になるべき会見で、稲田防衛大臣のつけまつげはその場にふさわしくない」と指摘していた。こうした点に女性は敏感である。

   一種の「クーデター」だったのか

話を稲田防衛大臣の国会における虚偽答弁に戻すと、国民への開示や安全保障政策上の問題というより、議員本人の信頼の問題だろう。ただし、これを文書管理の観点から白黒つけるのは難しい。公文書があったとしても、開示するのは難しいからだ。

もしかすると、稲田防衛大臣のいうとおり、大臣は日報問題について防衛省から報告を受けていなかった可能性もある。たしかに、2月7日には日報が公開されていることから、稲田防衛大臣には隠蔽するインセンティブはない。しかしながら、これほどまで防衛省からのリークがあること自体が、シビリアンコントロールの観点から考えても異常なことだと言わざるを得ない。

筆者の役人時代の感覚からいえば、「軍隊組織」に近いほど上から下までの統率が取れているものだ。その代表格は防衛省、警察である。その意味からいえば、森友学園では財務省から一切情報が出ないで、加計学園問題では文科省からのリークが出たのは、想定内の話だ(文科省の方が、より軍隊組織からは遠いという意味だ)。

もちろん、防衛省からも自己組織に有利なリークが行われることはあるが、今回のような防衛大臣を貶めるリークは聞いたことがない。これまで、防衛省は、どのような人が防衛大臣になったとしても、組織として必死に支えてきたはずだ。

一部には、特別防衛監察の結果があまりに酷く、稲田防衛大臣にまったく責任が及んでいない点から、防衛省内での一種の「クーデター」だったのではないかという意見もある。

また、一部のテレビ局が報じたが、日報問題の「監察結果の概要」が画像付きでスクープされたり、防衛大臣室でのやりとりで稲田防衛大臣が「けしからん」といった、という報道も気にかかる。

テレビのスクープ報道のキャプチャ
監察結果の画像付きスクープは、「監察結果の概要」が外部に漏れていることを示唆するし、「けしからん」が防衛大臣の口癖であることは、知っている人は知っている話だ。これは、ひょっとしたら、安倍政権の倒閣運動が、各省庁の段階ではなく、かなりの広範囲で行われている可能性も示唆しているのだ。

    もろもろぶっ飛ぶ

いずれにしても、稲田防衛大臣の下では、防衛省の組織統率が取れていないの事実であるので、仮に稲田防衛大臣が虚偽答弁をしていなくても、大臣失格であるのは間違いない。8月上旬の内閣改造を待たずに辞任する可能性もあるだろう。短期間であれば、首相が兼務するという方法もある。

さて、安倍政権の倒閣が行われた場合、経済政策にかなりの変化が起こることは、7月10日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)で書いた。もちろん、教育の無償化を憲法改正で行うという議論もぶっ飛ぶだろう。

教育の無償化は、憲法改正なしでも立法政策として可能だという意見もあるが、その問題点は18日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52319)で書いてある。

安倍首相は、教育を投資とみて教育国債を発行する考え方にも理解をしている。これは、23日に行われた日本青年会議所(JC)との会合でも明らかになっている(日経新聞「首相、教育国債「次代にツケ残さず」 無償化財源めぐり 可能性排除せず」 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK23H0B_T20C17A7000000/)。この点は、ポスト安倍といわれる政治家とは異なっていることに留意すべきである。倒閣というなら、もろもろのデメリットも考慮したうえでいうべきだろう。

こうした点も含めて、24日(月)と25日(火)の国会閉会中審査が安倍政権の支持率反転につながるのかどうか、注目したい。

【私の論評】森・加計・日報問題の背後に財務省(゚д゚)!

高橋洋一氏は、ブログ冒頭の記事で、「これは、ひょっとしたら、安倍政権の倒閣運動が、各省庁の段階ではなく、かなりの広範囲で行われている可能性も示唆しているのだ」と指摘しています。

これは、おおいにありそうなことです。何やら、今回の森友に始まり、加計で国会閉会中審査が開催され、さらに日報問題と立て続けに起こる、倒閣運動は従来にはみないスケールです。

これに対して、高橋洋一氏はこの倒閣運動が広範囲となっているその背景については掲載していません。しかし、ヒントは掲載しています。

最後のほうで、高橋洋一氏は、安倍政権の倒閣が行われた場合、経済政策にかなりの変化がおこることを指摘しています。さらには、教育無償化を憲法改正で行うという議論もぶっ飛ぶとしています。

さて、これらに関与する官庁はどこかといえば、それは無論財務省です。財務省はとにかく何が何でも、増税をしたいという立場です。

福田淳一 次期財務事務次官
ところが、今までのところ複数回にわたって、10%増税を安倍総理に阻止されてきました。そうして、このままだと永久に阻止されてしないかねないという危機感を持っていることでしょう。

そこで、財務省はこの危機を打開するために、当然のことながら安倍政権の倒閣運動に向かうという筋書きはかなり自然な成り行きです。

そうして、文科省や防衛省など単独では、とてもこのような動きはできません。しかし、財務省なら、政府の金を管理しているということで、他省庁にもにらみを利かすことができるし、他省庁が何かをしようとしても、結局予算がなければ、何もできないということで、予算を司る財務省にはなかなか頭が上がらないという現実もあります。

財務省と他の省庁との違い、特に文科省との違いについては、一昨日のこのブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
「石破4条件」の真相はこれだ!学部新設認めない「告示」の正当性示せなかった文科省―【私の論評】財務省のような粘りのない文科省の腰砕けを露呈したのが加計問題の本質(゚д゚)!
石破茂氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に文科省と財務省の違いを指摘する部分のみ引用します。
ところが、ここから文科省は猛烈なサボタージュを始めました。八田は内閣府を通じて文科省に検討状況を何度も尋ねたのですが、期限である「28年3月末」が過ぎても明確な回答はありませんでした。結局、WG会合が開催されたのは、期限の半年近く後の同年9月16日でした。 
ちなみに「需要見通し」は、「複数の微分方程式体系からなる数理モデル」です。獣医師は足りているということを文科省は微分方程式を書いて証明すれば良かったのです。しかし、これは、文系事務官僚の手に負える代物ではないです。 
しかし、何も自分たちでやらなくても、省外の誰か数学の得意な人に顧問にでもなってもらいその人にやってもらえば、それで良かったはずです。そうして、その結果を他の複数の人に検証してもらえばそれで良かったはずです。でも、彼らにはそれをしませんでした。 
本当は誰かに頼んで、やってもらったのかもしれません。しかし、いくら数理モデルにあてはめたにしても、本当に足りなければ足りないなりの結果しかでません。外部に頼んだにしても、外部の数理研究者なども嘘をつくわけにはいきません。 
そこで、文科省は諦めてしまったのでしょう。文科省はこの点においては、財務省には負けてしまうようです。財務省の場合は、このような場合でも無理をしてでも、何とか自分たちの都合の良い資料を作り上げます。 
たとえば、デフレなど景気の悪い時には、マクロ経済学的には、減税、給付金、公共工事などの積極財政をせよと教えていますが、財務省はこの教えに背いて、デフレ気味味の現状でも増税をするための根拠を何とかでっちあげています。 
そうして、増税の根拠をご説明資料にまとめて、政治家やマスコミなどに足繁くかよい説明をして、その根拠をまわりに信じ込ませ、とうとう8%増税を安倍政権に実行させてしまいました。しかし、この根拠はでっちあげだったことは、増税後の大失敗ですぐに暴露されました。 
この手口は、詳しく分析してみると、数理モデルを駆使するような高度なものではありません。良く分析するといくつもの錯誤の上に成り立っていることは確かです。たとえば、財政と税制の一体改革なるものを打ち出し、まともな医療や社会保障を受けたいのであれば、増税に甘んじなければならないなどと、多くの人の情感に訴えるものであったり、明らかな錯誤の上に成り立つものです。
財務省の嘘を暴く高橋洋一氏の番組
その手口の中心は、政府の負債だけに注目させて、資産を無視して、国の借金1000兆円であり、政府は借金塗れであるようにみせかけるというものです。また、統合政府という、日銀と政府を含めた尺度見た統合政府の財政状況なども無視です。これなど、民間企業では連結決算ということで当たり前になっていることですが、それが明るみに出れば、政府の借金など幻想に過ぎないということが国民知れてしまうで、財務省はおくびにも出しません。
財務省は、自分たちの省益を守り抜くには、ここまでやり抜くのですが、文科省にはこうした根気や、覚悟がなかったようです。さすがに、一流官庁といわれる財務省と最低といわれる文科省の違いです。(無論これでは、財務省も国民にとって良くはないのですが、目標に向かって執着心を持って、努力するという意味では財務省のほうが優れているという意味です)
この文科省に比較して、はるかに粘り腰の強い、財務省が、従来のように財務省単独で、安倍政権を手玉にとったり、場合によっては弱体化させ事実上の倒閣にもっていくことができれば、財務省の最大目標である「増税」を心おきなく実行できます。

菅官房長官と安倍総理
とにかく、安倍政権がなくなれば、その後は自民党政権であろうが、民主党政権であろうが、その他の政党や連立政権であろうとも、安倍総理とその側近以外はほとんどが増税派ですから、増税は簡単にできます。

彼らにしてみれば、10%増税など序の口で、最終的には25%増税を目指していることでしょう。しかし、このような財務省の試みに対して、安倍政権一度は8%増税で負けたものの、 増税延期を公約とした選挙で大勝して、増税を阻止したり、その後は選挙に頼ることもなく延長を一方的に決めてしまいまいました。

これでは、省是である「増税」を完璧に阻まれると認識した財務省は、最後の賭けにでたのでしょう。とにかく、安倍政権と刺し違えてでも、増税を成就させるという腹なのでしょう。

そのため、従来は主に財務省がコーディネートして、政治家や民進党などの野党、マスコミやいわゆる識者を動かし、増税キャンペーンに巻き込んていた状況から、やり方を変え、多くの省庁を巻き込むさらに広範な形で、安倍政権倒閣運動にのめり込んでいる状況なのでしょう。

高橋洋一氏としては、これを言いたかったのでしょうが、現状のところでは、確たる証拠もないので、ブログ冒頭のような記事のような書き方になったのでしょう。しかし、経済に少し詳しい人や、政局に詳しい人が読めば、おそらく私と同じ解釈になるに違いないです。

死に物狂いの財務省は、たとえ現役次官など複数の高級官僚のクビが飛んだとしても、各省庁を巻き込んで、安倍政権に挑み、何とか安倍政権をなきものにしようともくろんでいるのでしょう。

そうなると、今後も森友・加計、日報問題と同じようなことが続くものと考えられます。さて、次は何なのか、思いもかけないところから、また問題が発生するかもしれません。

現在の安倍政権は従来とは異なる「2つの武器」を手にしています。官邸(内閣官房)に「内閣人事局」を設置して各省幹部の人事権を掌握したことと、特定秘密保護法の制定です。今のところ、これを十分に使うには至っていませんが、今後は駆使することでしょう。これによって、官邸は官僚から政治力を奪い、政治主導に徹しようと考えています。

これに対して、霞が関全体が財務省をリーダーに、支配権を取り戻そうとスクラムを組んだか、組もうとしているのが現状です。

しかし、このような財務省の活動は本来許されるものではありません。そもも、財務省などの各省庁は、政府の下部機関にすぎません。会社でいえば、官邸は本部や本社のような存在です。各省庁は、財務部や総務部、あるいは小会社のような存在です。

それに、官僚は国民の信託を受けているわけではないですが、政治家は選挙によって国民の信託を受けて、政府を構成しているのです。

本部や本社が、下部組織であるはずの部や、小会社に支配されるようなことがあっはならないはずです。それでは、会社全体を統治することできません。

安倍総理も座して死を待つつもりは全くないでしょう。今後、官邸と財務省の間にはかつてなかった壮大な大バトルが始まります。この戦いに官邸が負ければ、10%増税が行われ、その他の緊縮財政が導入され、日本はまた失われた20年に突入し選挙など有名無実になり官僚支配が完璧に定着することでしょう。

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