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2017年3月15日水曜日

「正直者」トランプが約束していた100日間の行動―【私の論評】これを読めない、読もうとしない日本のメディア関係者は機能的非識字者?


米ペンシルベニア州ゲティスバーグのアイゼンハワーホテルで行った選挙イベントで
演説する米大統領選共和党候補のドナルド・トランプ氏(2016年10月22日撮影)。
日本のマスコミはトランプ大統領のどんな発言、小さな動作にも一喜一憂し、大統領が繰り出す新しい政策に驚きの反応をみせる。日本では、トランプ大統領の政策は予測が不可能だという認識が定着しつつあるようだ。

 ところが現実は異なる。トランプ大統領が進めている政策はすべてすでに発表済みの公約であり、それらを順番に実行に移しているだけである。

 トランプ氏は選挙戦の終盤に「米国有権者たちとの契約」という声明を公表した。もし自分が大統領になったら、就任の当日あるいは100日以内にこういうことを実行する、と約束したリストである。その内容を知っていれば、トランプ大統領の施策に驚かされることはない。すべてそのシナリオ通りだからだ。

 この「米国有権者たちとの契約」の具体的な内容は日本のニュースメディアではほとんど報道されていない。そこで、今回はその全容を紹介しよう。その内容を知れば、トランプ政権の今後の動きもみえてくるはずだ。

 あの歴史的演説の場所で政策を表明

 トランプ氏はこの「米国有権者たちとの契約」を2016年10月22日、ペンシルベニア州ゲティスバーグにおける演説の中で発表した。

 ゲティスバーグといえば、1863年にエイブラハム・リンカーン大統領が「人民の、人民による、人民のための政治」をうたった有名な演説をした場所である。リンカーンと同じ共和党の大統領候補だったトランプ氏は、リンカーンにあやかるかのようにゲティスバーグを演説の場所に選び、自らの政策を大々的に表明した。

 10月22日は、大統領選投票日の11月8日まで残りわずか16日だった。自陣営の世論調査などにより、トランプ氏は自分が米国の大統領になることをすでに確信していたのだろう。具体的な政策がぎっしりと盛りこまれた演説は、そんな自信を強く感じさせた。

 トランプ氏は演説の冒頭で、まず次ように述べた。

「私はいま、米国国民のみなさんに、破たんした政治の混乱を乗り越えて、米国の国民性の中核である強い信念と楽観を抱きしめることを求めます。大きな夢を抱いてほしいのです」

「これから明らかにするのは、『米国を再び偉大にする』ための100日間の私の行動計画です。ドナルド・トランプと米国の有権者との契約です」

 そしてトランプ氏は大統領としての具体的な政策をいくつかのカテゴリーに分けて提示していく。

 ワシントンDCを浄化する6つの措置

 まずトランプ氏は、「大統領就任の初日、私の政権はワシントンDCの腐敗と特権の癒着を浄化するために、即時に6つの措置をとります」と宣言した。それは以下の6つの措置だった。

(1)連邦議会のすべてのメンバーの任期を制限する憲法修正案の提案

(2)軍事、公共安全、公衆衛生を除くすべての連邦職員を自然減の形で減らすための新規採用凍結

(3)連邦政府の新規制を1つ作る際には必ず既存の規制を2つ撤廃することの義務づけ

(4)ホワイトハウスや議会のメンバーが退官後にロビイストになることを5年間禁止

(5)ホワイトハウスの職員が退官後に外国政府ロビイストになることを禁止

(6)外国ロビイストが米国選挙に資金を提供することを禁止

 米国の労働者を守る7つの行動

 トランプ氏はさらに、大統領就任の初日に始める「米国の労働者を守るための7つの行動」を以下のように挙げた。

(1)北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、あるいは撤退の意図を表明する

(2)環太平洋パートナーシップ(TPP)からの離脱を発表する

(3)中国を通貨レート不正操作国に指定するよう財務長官に指令する

(4)米国人労働者に不当な影響を及ぼす、すべての外国の貿易不正慣行を認定し、商務長官と米通商代表にそれらの不正慣行を即時に終わらせることを命令する

(5)シェールオイル、石油、天然ガス、精炭などを含む米国エネルギー資源の生産に対する規制を解除する

(6)キーストーン・パイプラインのような重要なエネルギ―・インフラ計画を承認し、それを阻んできたオバマ・クリントン陣営による障害を取り除く

(7)国連の気候変動対策への数十億ドルの資金提供を止めて、その資金を米国の水資源や環境インフラの是正のために使う

 安全保障と憲法の統治制度を回復させる5つの行動

 トランプ氏はさらに演説を続け、「大統領就任の初日、私は安全保障と憲法上の法の統治を回復するために5つの行動をとります」と語った。5つの行動とは以下の通りである。

(1)オバマ大統領が発した違憲の執行令、覚書、指令のすべてをキャンセルする

(2)最高裁判所の故スカリア判事の後任を、私がリストアップした20人の判事たちの中から選ぶプロセスを開始する

(3)「聖域都市」(違法入国者の取り締まりをしない米国内の地方自治体)への連邦資金の供与をすべて停止する

(4)米国内の200万人以上の犯罪歴のある違法入国者を国外に追放する。それら違法入国者を自国に受け入れない国には、米国への入国査証を発行しない

(5)身元審査を適切に行えないテロ懸念地域からの米国入国を一時停止する。同時に今後米国入国者へのすべての身元審査を厳重に行う

 100日以内の成立を目指す10の法案

 トランプ氏は最後に、「私は議会と協力して次の立法措置案を議会に提出し、政権の最初の100日以内にその成立を目指します」と断言した。その立法措置案として挙げたのが、以下の10項目である。

(1)中間所得層の税金の負担救済と簡素化(4%の経済成長率、2500万人分の雇用の創出を目指す減税措置をとる)

(2)企業外国移転法の撤廃(米国企業が海外移転のために米国内の従業員を解雇することなどに特別税をかける)

(3)米国エネルギー・インフラ法の制定(今後10年間に官民共同で合計1兆ドルのインフラ建設投資を実現する)

(4)学校自由選択・教育機会法の制定(子供を通わせる学校の種類を両親に自由に選ばせる)

(5)オバマケアの撤廃と代替法の制定(オバマ大統領の医療保険改革制度を全廃し、政府の介入の少ない制度に代える)

(6)適正子供医療保険法と高齢者医療保険法の制定(子供と高齢者の公的医療保険を、税制面での優遇と組み合わせて制度化する)

(7)違法入国停止法の制定(メキシコとの間に違法入国を防ぐ壁を建設し、メキシコ政府に経費を負担させるとともに、違法入国常習者への刑罰を重くする)

(8)共同社会安全回復法の制定(麻薬や暴力の犯罪を減らすために、連邦、地方での捜査や検挙の活動を厳しくする)

(9)国家安全保障回復法の制定(オバマ政権時代の財政赤字削減のための国防費削減措置を撤廃する)

(10)ワシントン腐敗浄化法の制定(特別利益団体に絡む腐敗を撲滅する)

 以上が、トランプ候補が掲げた「選挙公約」である。公約をすべて発表した後に、トランプ氏は以下のように訴えた。

「これが私の誓いです。もし私たちがこれらの通りに進めば、もう一度、人民の、人民による、人民のための政府を作り上げることができるのです」

 トランプ氏は、まさにリンカーン大統領の演説を模して演説を終えた。トランプ氏はこの「米国有権者との契約」を、選挙に勝利した翌日の11月9日の演説でもそのまま繰り返した。

 実は非常に手堅いトランプ政治

 トランプ大統領の就任から約2カ月が過ぎたいま、この公約の内容を点検すると、その多くが驚くほど着実に実行されていることが分かる。

 オバマケアの撤廃、メキシコとの壁の設置、TPPからの離脱、NAFTAの見直し、テロ懸念国家からの米国への入国の一時禁止、違法入国者への取り締まり強化、インフラ建設、米国企業の外国移転の抑制・・・反対も激しく意外性のあるこうした新措置は、いずれもトランプ氏の大統領就任前に具体的に誓約されていたのだ。誓約に記されていたのにまだ手がつけられていない主要政策は、中国の通貨レート不正操作国指定ぐらいであろう。

 この「契約」リストをみながらトランプ大統領の新政策、新措置を追ってみると、破天荒にみえるトランプ政治が実は非常に手堅く、当初の計画に沿って進められていることが分かるのである。

【私の論評】これを読めない、読もうとしない日本のメディア関係者は機能的非識字者?

上の記事では、トランプ氏はこの「米国有権者たちとの契約」を2016年10月22日、ペンシルベニア州ゲティスバーグにおける演説の中で発表したとされています。そうして、これに関してはこのブログでも掲載したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプはかくも賢く、計算高い! メディアが知らない「真の実力」―【私の論評】新大統領のしたたかな戦略・戦術!日本の保守も見習え(゚д゚)!
この記事は、1月30日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくもとして、この記事より100日の行動を掲載した部分を以下に掲載します。

この記事では、100日の行動が掲載されているサイトのリンクと、そのサイトの一部分を画像としてそのまま引用しました。それが以下です。
O-TRU-102316-Contractv06.indd - O-TRU-102316-Contractv02.pdf(PDFファイル)https://assets.donaldjtrump.com/_landings/contract/O-TRU-102316-Contractv02.pdf


当然のことですが、ブログ冒頭の記事に掲載されている100日アクションの内容はすべて掲載されています。

これを読んでいたので、私自身はトランプ大統領の様々な大統領令などに関して出鱈目とか、予測がつかないなどと考えたことは一度もありません。すべてこの100日間の行動の通りに実行されています。トランプ大統領は公約を守っているだけなのです。

これだけ、はっきりとプランを打ち出し、それに基づいて実行している大統領は過去に存在しなかったのではないでしょうか。まったくブレずに、首尾一貫してこの100日間の行動を実行しています。

このようなことを着実に実行しているせいでしょうか、2月7日、米エマーソン大学が発表した世論調査の結果は衝撃的でした。米国ではメディアよりもトランプのほうが支持されている実態が明らかになったのです。
メディアを信用できる人――39%トランプ政権を信用できる人――49%
トランプ米大統領は就任以前から事あるごとに主要メディアを批判し、支持者から喝采を集めてきました。就任後も、ニューヨーク・タイムズ紙やCNNテレビなど、トランプ政権に批判的な有力メディアを締め出していますが、それに対して国民の多くが非難の声を上げることもありません。

トランプ大統領は2月16日の会見で、「テレビをつけ、新聞を開くと(政権が)大混乱しているとの記事を目にする。だが、実態は正反対だ。この政権はよく整備された機械のように動いている」と述べましたが、トランプ大統領はいくら自分に都合の悪いニュースが報じられてもお構いなしです。やはり、上の100日間の行動を誠心誠意実行しているという自負があるのだと思います。

米国メディアには根本的な問題があることをこのブログには何度か掲載してきました。その大きな問題とは、米国のメディアはその90%をリベラル・左派が占め、保守は10%程度に過ぎないということです。

日本でいえば、大手新聞は朝日新聞、毎日新聞のようなリベラル・左派系の新聞ばかりで、米国には産経新聞のような保守系の新聞は存在しません。

大手テレビ局もほとんどが、リベラル・保守系で占められていて、かろうじてFOXTVが唯一の保守系テレビ局です。

そのため、本来は人口比でいえば、半分程度は存在するはずの米国の保守の声がすっかりかき消されてきたという事実があります。しかし、この保守の存在がトランプ大統領誕生の原動力になったのはいうまでもありません。

リベラル左派メディアを槍玉に挙げるトランプ大統領
こうした傾向は、米国社会の隅々に影を落としています。リベラル左派、マスコミにおよばず、民主党や教育機関、映画などの大衆娯楽を乗っ取ってしまった結果保守派の価値観は一方的に踏みにじられるか、有名無実にされてしまったのです。

リベラル・左派は幼稚園のころから「資本主義の邪悪さ」と「社会主義への同情」を刷り込まれ洗脳されてきたので、自由主義や資本主義の象徴であるトランプ氏は彼らにとって「叩きのめすべき敵」なのです。

米国のリベラル左派が、トランプ氏を政治的に貶めようとすればするほど、それが逆効果になっています。米国民の多くは「抗議団=米国を3等国に転落させたい連中」とみています。

そうして、大手メディアはニューヨークやワシントンといった都市部を中心に記事を作成し、保守派の存在する広大な地方の問題には目を配ってきませんでした。というより、無視してきたのです。

メディアはリベラル左派が幅を利かせる都会の現象ばかり報じて、保守層の多い『ラストベルト』(かつての工業地帯。ラストは錆のことで、使われなくなった工場や機械を表現している)で何が起きているのかをきちんと報道しませんでした。
このように、これまで保守派の苦悩や価値観を見過ごしてきたことが、メディアが軽蔑される理由となっているのです。

米国主流メディアが報じる米国の姿と、実際に起きている事実の間には大きな断絶があるのです。米国メディアは反省して、保守派との断絶がどういうものかを理解する努力をするべきなのです。それができなければ、米国のリベラル左派は衰退の一途をたどることになることでしょう。

そうして、日本のメディアも反省すべきです。そもそも、大統領選挙のときの日本のメディアの報道は、米国のリベラル左派の報道をそのまま鵜呑みにして報道するだけで、結局大誤報の連続でした。

そうして、トランプ大統領が誕生した後は、上記で述べているような米国の実情を分析することもなく、トランプ氏の100日間の行動を吟味するでもなく、日々頓珍漢な報道を続けています。

私からすれば、字が読めないレベルなのではないかと思ってしまうほどです。無論、字は読めて、字を読んでその内容を口で発語することはできるのでしょうが、100日間の行動など読んでも、その意味するところが理解できないのではないかと思います。

このような症状を機能的識字というそうです。機能的非識字(きのうてきひしきじ、英語:Functional illiteracy)とは、個人が日常生活において、読み書き計算を機能的に満足に使いこなせない状態を指します。機能的文盲ともいいます。 

読み書き計算を機能的に使いこなせる状態である機能的識字、機能的リテラシー(Functional literacy)と対義語的に用いられます。これに対して、簡単な読み書きや計算のみできる状態を識字、ごく簡単な文章の読み書きや計算もできない状態は非識字、といいます。

非識字者は、読み書きが全くできません。これとは対照的に、機能的非識字者は、母語における読み書きの基本的な識字能力は有していながら、さまざまな段階の文法的正確さや文体などが水準に及ばないのです。

つまり、機能的非識字の成人は、印刷物に直面しても、現代社会において機能する行動ができないし、たとえば 履歴書を書く、法的な契約書を理解する、指示を書面から理解する、新聞記事を読む、交通標識を読みとる、辞書を引く、バスの運行スケジュールを理解する、などの基本的な社会行動をとることができないのです。

機能的非識字の場合はまた、情報技術にかかわることが難しいのです。たとえばパソコンで文書作成やウェブ閲覧をしたり、表計算ソフトの利用ができない、携帯電話を効果的に使えない、などの弊害もある。

無論、メディア関係の人は、ここまで酷い機能的非識字ではないのでしょうが、それにしても、印刷物に直面しても、現代社会において、たとえばマクロ経済のまともな書籍を読んでも、それに対して機能する行動ができず、デフレのときに増税すべきなどというとんでもない記事を書いたり、報道したりするのでしょう。あるいは、そもそも、経済記事を書いていても、マクロ経済に関する知識を得る必要性など感じず、ただただ、財務省などの発表をそのまま記事にするなどの行動に出るのだと思います。

米国大統領選挙で大誤報をしたという認識もなく、米国メディアの垂れ流す報道をそのまま鵜呑みして、100日間の行動の意味するところも理解できず、まともに読むこともせず、トランプ大統領のどんな発言、小さな動作にも一喜一憂し、大統領が繰り出す新しい政策に驚きの反応をみせ、トランプ大統領の政策は予測が不可能だと認識してしまうのでしょう。

機能的非識字者は自分で文字を書けるのですから、一見、自立しているように思えます。しかし彼らは、例えば保険の約款を理解できない。新聞に掲載されている記事の意味も分からないし、文章の要点をつかんだり、感動したりすることができません。図表を読み取ることができないのです。したがって、自分が生きている社会の構造を解釈し、把握することができないのです。報道関係社が、このような機能的非識字者であれば、まともな報道などできるはずがありません。

このような分析能力では、複雑さを忌避するのみならず、複雑な出来事(経済危機、戦争、国内もしくは国際政治、金融取引のスプレッド)を前にしても基本的な理解すら得ることができません。

したがって、機能的非識字者は、自身の直接的経験と比較することによってのみ、世界を解釈します。

日本人には読みづらいElectroharmonixという
欧文フォントのアルファベット。非識字者気分になれるかも?
「ビジネス」誌によれば、アメリカでは1500万人の機能的非識字成人が21世紀の初めに職についていた。American Council of Life Insurersの報告では フォーチュン誌による全米トップ500企業の75%が自社の労働者に何らかの補習トレーニングを提供していました。全米で、3000万人(成人の14%)が単純な日常的識字活動ができない状態だそうです。日本でもこの問題は大きいのではないかと思います。特に、信じがたいことにメディア関係でこれが、大きな問題になっているのではないかと危惧の念を持ってしまいます。

以下にメディア関係者の機能的非識字症状の例をあげてみます。

金融政策と雇用の間に密接な関係があることを理解できない、そのため、自分自身もしくは自分の家族に雇用に関する問題が生じたとき初めて問題となります。そうでなければ、いつまだたっても、気づきません。その一方で、新卒者の空前の雇用状況の良さには、無頓着です。そもそも、金融政策と雇用の間に密接な関係があることを理解していないので、単なる偶然としか思えないのです。

増税は自身の購買力の減少でしかありません。8%増税が実施されて、個人消費がかなり落ち込んでも、自分の給料はさして下がっていないので、その悪影響に関して、無頓着。そして、貿易赤字などに一喜一憂し、その時々でのその数字の持つ意味合いに思いがいたらない。安全保障の問題や、実質賃金、社会現象などについて、長期的な結果を考慮に入れた分析を練り上げる能力をもたず、目の前のことに一喜一憂します。

これでは、米国のリベラル左派のメディアと同様、まともな報道ができるはずなどありません。まともな報道ができなければ、そのようなメデイアはいずれ消え去るしかありません。

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2017年1月6日金曜日

【釜山・慰安婦像設置】菅義偉官房長官会見詳報 韓国・釜山の慰安婦像設置に対抗措置 菅氏「日韓関係に好ましくない影響」「国と国として約束、履行してほしい」―【私の論評】先進国になれなかった韓国は、中所得国の罠にはまり発展途上国となる(゚д゚)!


記者会見で駐韓大使の一時帰国などを発表する菅官房長官=6日午前、首相官邸

 菅義偉官房長官は6日の記者会見で、韓国・釜山での慰安婦像設置を受け、「極めて遺憾だ」として駐韓日本大使の一時帰国など4項目の対抗措置を発表した。会見の詳報は以下の通り。

     ◇

 一昨年の日韓合意において、慰安婦問題が最終的で不可逆的に解決される、このことを確認をしている。それにも関わらず、昨年の12月30日、韓国の市民団体によって、釜山の日本国総領事館に面した歩道に慰安婦像が設置されたことは、日韓関係に好ましくない影響を与えるとともに、領事関係に関するウィーン条約に規定する領事機関の威厳を侵害するものと考えており、規定に照らして極めて遺憾だ。

 これを受けてわが国は当面の措置として、(1)在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ(2)長嶺安政・駐韓国大使および森本康敬・在釜山総領事の一時帰国(3)日韓通貨交換(スワップ)の取り決めの協議の中断(4)日韓ハイレベル経済協議の延期。その措置を採ることを決定した。

 日本時間の本日未明、米ワシントンで杉山晋輔・外務次官から韓国の林聖男(イム・ソンナム)外務第1次官に対し、慰安婦像の設置に強く抗議するとともに、慰安婦像の早急な撤去を強く申し入れた。政府としては慰安婦像を早急に撤去するよう、引き続き韓国政府や関係自治体に強く申し入れをしていく。今後とも日韓それぞれが合意を責任を持って実施していくことが極めて重要だ。引き続き韓国側に対し、慰安婦像の問題を含め、合意の着実な実施を求めていきたい。

 --かなり強い対抗措置だが、必要だと判断した理由は

 「まず日韓合意を考えたときに極めて問題だ。さらにはウィーン条約の規定を考えたときにも極めて問題がある。政府としては互いの合意を責任を持って努力するのは大事という意味において遺憾であるという中で、今回4点について措置を採る」

 --日本政府は韓国や関係自治体に撤去を求めているが、なかなか韓国側が動かないと判断したのか

 「現状について日本政府として極めて遺憾だ。このことを4項目によって形として示した」

 --当面の措置ということだが、実際に撤去されるまで継続するのか

 「状況を総合的に判断して対応していきたい」

 --日本政府は日韓合意を履行することが重要だという方針で韓国の出方を見守っていたと思うが、これまでの韓国政府の対応に満足できないという思いか

 「わが国としては合意を着実に履行してきた。そういう立場に変わりはない。引き続いて慰安婦像の問題を含めて合意の着実な実施を韓国政府に求めていきたい」

 --韓国政府は問題解決に消極的だが、日本の強い姿勢によって韓国政府が積極姿勢に転じるか

 「いずれにしろ、わが国の立場を明確に示した。互いに合意の着実な実施をしていく。これは当然のことだ」

 --ここまで強い措置を講じることで、今後の日韓関係への影響は

 「日本と韓国はまさに隣国であり、極めて重要な国だ。そういう中で今回、このような措置を採らざるを得なかったのは極めて残念ではあるが、互いに国と国として約束したことは履行してほしい。そういう強い思いで実施した」

 --杉山氏から韓国の林氏にすでに内容は伝えているのか

 「わが方から韓国側に対し、この問題解決のために累次に渡って適切な対応を採ることは強く求めてきた。しかし、現時点において事態が改善しない。そういうことで韓国側に今申し上げた措置を採ることを通報している」

 --措置の実施は本日付か

 「すでにそうした措置を採ることを先方には通報している」

 --日本の措置に対して韓国政府からの反応は

 「承知していない」

 --改善が見られなかった場合はどうするか

 「いずれにしろ当面の措置という形で、このような措置を採らさせていただいた」

 --日韓合意では韓国政府は慰安婦像の撤去に「努力する」としており、確約はしていない。確約はしていないが、努力を怠っているということか

 「日韓間で合意した。そのことについて互いに誠実に実行することになっているので、そこはしっかり合意を実施してほしいとの思いの中で今日まで強く求めてきている。今回、新たな釜山市の件を受けて、政府としてこのような措置を採った」

【私の論評】韓国は、中所得国の罠にどっぷりはまり発展途上国となる(゚д゚)!

日韓合意に関しては、昨年から特に保守層の一部から、大きな批判がありました。どうせ韓国は、合意など守らないのだから、合意などしても無意味というものでした。しかし、この見方は根本的な間違いでした。

この一部の保守層の、典型的な最近の意見を以下に掲載します。
日韓合意については、現在名前の挙がっている大統領選候補者全員が「破棄」を主張しており、その時々の政権の都合で合意やら条約やらを反故にする、韓国人の感覚を日本側はよくよく知る必要があるのです。この件については、「我が国の父祖の名誉を貶めるもの」として国内保守層の猛反対を押し切り、ついには韓国と合意した安倍総理の責任は免れないものと思います。少なくとも彼は一体韓国の何処をもって、合意を順守する国であると判断したのか、お得意の記者会見で国民に対し説明すべきなのです。
確かに、日韓合意が締結される前までは、日韓基本条約を締結はしていたものの、日本政府は日韓両国の問題は解決済みしか言えませんでた。そうして、韓国は解決していないといい続けのでした。


しかし、昨年の日韓合意により日韓基本上やの賠償請求権協定の「再交渉できる」としている協定にあった「穴」が潰されたのです。日本は合意を履行済みですから、韓国政府に約束を守れといえるようになったし、約束を守らなければ報復措置も取れるようになったのです。


日韓基本条約の大きな問題点は、賠償請求権協定が韓国側非公開であったことであり、それを日本側も容認していたことにありました。これは、二国間の条約であり、秘密協定に近いものなので、外交カードとしては、利用しにくかったのです。そもそも、日韓基本条約が韓国で公開されたのは条約締結から40年過ぎ2005年でした。しかし一昨年の日韓合意は国際社会に開かれたカードであり、以前とは 状況が全く違います。

この違いを日本の一部の保守層や、韓国政府や多くの韓国人は理解していなかったのでしょう。しかし、朴槿恵辞任デモをするような一般韓国人は別にして、韓国政府までがこれを理解していないというのは、全く言い訳になりません。愚かとしか言いようがありません。

一昨年末の電撃的な日韓慰安婦合意について、日本政府は「最終的かつ不可逆的な解決」と胸を張ったのにはこのような背景があったのです。しかしながら、このことに気づかない韓国サイドの反応は予想どおりでした。

元慰安婦とされる女性たち
元慰安婦や韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)だけでなく、梨花女子大などの学生や一般市民まで次々と合意に反発して立ち上がっていました。

いわく、「長年苦しんできた歴史を、ちっぽけな金額で売り飛ばされてたまるか」などと、かえって怒りを増長させてしまったようにも見えました。

親北朝鮮の最大野党「共に民主党」の文在寅代表は「今回の屈辱的な合意は無効」と断じていました。

親北朝鮮の最大野党「共に民主党」の文在寅代表
反日で国を束ねる韓国にとって、慰安婦問題は解決されては困る問題であり、何があっても永遠に燃え盛る炎のようなものです。李明博前大統領は竹島を反日カードにしましたが、朴槿恵大統領は慰安婦問題を普遍的な「女性の人権問題」として世界にアピールしてきまし。保守派の彼女には、親北朝鮮の野党支持者を取り込むねらいもあったのでしょう。

朴槿恵にとって慰安婦問題は政権を維持する最大の反日カードなのに、なぜ日本との合意を急いだのでしょうか。

最大の理由は米国の圧力でした。南シナ海の人工島建設やサイバー攻撃など、「力による現状変更」の意志を隠さない中国と政情不安定の北朝鮮は東アジアの安全保障にとって大きな脅威であり、日米韓が緊密に連携する必要があるのですが、「米中二股外交」を展開した韓国は米国の制止を聞かず中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加し、一昨年9月、北京で開催された抗日戦争勝利70年記念行事には朴大統領自ら出席しました。

「慰安婦問題が解決しない限り日韓首脳会談は実現しない」と明言する朴槿恵は米国にとって実に厄介な存在でした。

朴槿恵(左)とオバマ(右)
言うことを聞かない彼女に怒り心頭のオバマ大統領は一昨年10月、ホワイトハウスの米韓首脳会談で日韓友好を求めて朴槿恵を叱責したとされています。会談後の会見でオバマ大統領は「(日韓の)困難な歴史問題が解決されることを望む」と厳しい表情で語りました。

同時に経済的な要因も大きいものでした。ウォン安を背景に輸出で躍進した韓国経済は近年のウォン高と中国経済の減速で大ブレーキがかかってしまいました。韓国貿易協会によると日韓関係の悪化で日韓輸出入総額は2011年の約1080億ドル(約13兆円)から2014年は約860億ドルに減少しました。

今や日本の若者は嫌韓ムード一色です。韓国観光公社などによると、2000年代後半300万人台だった訪韓日本人は現在200万人を割っています。代わりに増えた訪韓中国人はお目当ての品がなく、訪日時のような「爆買い」をしないので当地は潤わなかつたようです。

中国人観光客も、韓国がTHAAD配備を決めたせいで、減少しています。韓国メディアによると、8月の訪韓中国人客は18年ぶりの減少となり、高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備が影響しているようだといいます。

焦った経済界から「やっぱり日本だ」との声が噴出しました。一昨年5月、ソウルで開かれた日韓経済人会議で韓国代表は「両国が1つの経済圏を形成し、ともに成長、共同繁栄の時代を構築すること」を提案しました。会議では「日本を追い抜いた」との奢りから停止していた「日韓通貨スワップ協定」の復活や「韓国のTPP加入」などが議題となっていました。

米国と経済界から突き上げられた朴槿恵は孤立を怖れて渋々、日本との関係改善に動き、一昨年11月、ソウルで就任以来初の日韓首脳会談を開催しました。昨年末、朴槿恵への名誉毀損で在宅起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長の無罪判決、韓国憲法裁判所による1965年の日韓請求権協定は違憲との審判請求の棄却も合意を後押ししました。

そうして、朴槿恵も韓国政府も、野党も、多くの韓国人らも、日韓合意も日韓基本合意と同じく、すぐに有名無実にできるものと軽く考えていたに違いありません。

日韓合意を伝えるテレビのキャプチャ画像
彼らは、日韓合意には日韓だけではなくアメリカという第三者が強く関与していることをすっかり忘れていました。そうして日韓合意は、二国間だけの合意ということではなく、世界に向けて日韓は合意したという内容を明らかにしたものです。

これを守らないということは、韓国はまともな国ではないと、自ら世界に向かって、喚き散らすようなものです。全く愚かです。

日韓合意をしたときから、このような日がいずれ来ると思っていましたが、やはりそうなりました。

今後韓国は、朴槿恵の後の大統領も候補者全員が朴槿恵と同程度からそれ以下の無能ですから、経済はますます悪化することでしょう。北朝鮮、中国問題の悪化から、地政学的な韓国の価値は大きく上がったわけなのですが、同盟関係における信頼性が下がり続けているので、無価値化しつつあります。日本としては、日本海の安全を考えると軍事的敵対は出来ませんが、かといって支援する意味もありません。

今後誰が大統領になって何をしようとも、経済は破綻し、いずれまた通貨危機を迎えることになることでしょう。そうして、経済はIMFの管理下に再び入り、安全保障的にも問題ありとしいうことで、国連の信託統治領になり、米国、英国、その他複数の国々が軍隊を派遣して、統治することになるものと思います。

そうして、中所得国の罠にズッポリとはまり、先進国になることなく、発展途上国にまた逆戻りすることでしょう。取るに足らない国になっても、「取るに足らない国になってしまったのは、日本のせいだ、日本が悪い」と反日を繰り返すことでしょう。が、それを何度繰り返えしたとしても、経済は好転も成長もせず、世界の他の国々から呆れ果てられ、疎んじられる存在になることでしょう。

発展途上国になった韓国では、慰安婦問題で暴れた過去を懐かしむことでしよう。「あー、この国はあの時何とかならなかったものか」と。しかし、自ら招いた結果であり、韓国はそれに甘んじるしかないのです。

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