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2019年5月27日月曜日

中韓震撼…狙い撃ち! トランプ政権「為替報復関税」で不透明な為替介入“逃げ道”ふさぐ―【私の論評】為替報復関税はまともな国同士では有り得ないが、米中冷戦で使われる可能性は否定できない(゚д゚)!

中韓震撼…狙い撃ち! トランプ政権「為替報復関税」で不透明な為替介入“逃げ道”ふさぐ

人民元も米国の標的になりそうだ

新たなトランプ砲となるか。米商務省は、自国通貨を割安にする国からの輸入品に対し、相殺関税をかけるというルール改正案を発表した。中央銀行の金融政策による影響は含まないため日本が対象となる可能性は低いが、不透明な為替介入を指摘されているうえ、自国通貨が急落している中国と韓国は格好の標的となりそうだ。

 改正案は、自国通貨を割安にすることを輸出国側による補助金と見なし、関税で対抗するという仕組み。割安かどうかは米財務省が判定するとしている。貿易赤字を減らしたいトランプ政権は、中国製品への関税引き上げを行っているが、通貨安で関税引き上げ効果を打ち消すという中国側の逃げ道をふさぐ狙いがうかがえる。

 米財務省は半年ごとに主要な貿易相手の通貨政策を分析した外国為替報告書を発表している。自国通貨を安値に誘導している「為替操作国」に相殺関税を課す仕組みはすでにあるが、基準が厳しく、最近は認定された国はない。

 2018年10月発表の報告書では、日本、中国、ドイツ、韓国、インド、スイスを監視対象国と指定していることから、日本も狙ったとの報道もあるが、日本は旧民主党政権時代を最後に為替介入を行っておらず、日銀の金融緩和で円高が修正されたというのが実態だ。最近の為替動向も、米中貿易戦争を受けて、やや円高方向で推移している。

 一方、人民元は対ドルで約4カ月ぶり安値をつけているが、市場の見方は「中国当局は通貨下落を積極的に止めようとはしていない」(為替ストラテジスト)。韓国のウォンに至っては、約2年4カ月ぶりの安値水準が続いている。

 前出の米財務省の報告書で、不透明な為替介入をヤリ玉に挙げられる常連の中韓両国だが、どうするのか。

【私の論評】為替報復関税はまともな国同士では有り得ないが、米中冷戦で使われる可能性は否定できない(゚д゚)!

為替報告関税というと、為替条項のことを連想します。為替条項とは、貿易相手国・地域が輸出競争力の向上を狙い、為替介入などを通じて自国通貨を下落させようとするのを禁止する条項のことです。

米国はカナダ、メキシコと昨秋に改定・署名した北米自由貿易協定(NAFTA)の新協定に盛り込みました。ムニューシン米財務長官は「どんな貿易協定にも為替に関する条項を導入したい」と、繰り返し発言しています。無論日米の貿易協定にも盛り込みたいようです。

ムニューシン米財務長官

日米間の貿易協議が始まっています。まず4月中旬に茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が初会合を開き、農産物と自動車を含む物品貿易から議論を開始し、適切な時期にサービス分野も話し合うことで合意しました。

その後、麻生太郎財務相とムニューシン米財務長官が25日に会談。米国が導入を求めている為替条項については、財務相同士で協議することになりました。

以下、今後のドル円相場に与える影響について、考えてみたいです。

まず米国が導入を望んでいる為替条項については、交渉相手がそれを求めてきている以上、議論すること自体を拒むのは難しいです。日米両国が為替条項導入の是非について話し合っている間、相手の了解が無い為替介入は互いにできなくなりそうです。

為替条項への懸念は杞憂

ただ、冒頭の記事にもあるように、日本は為替介入の実績を毎月公表しており、2011年11月に実施したドル買い/円売りを最後に7年半も介入を封印しています。

現在、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に参加している主要国間では、「為替介入を実施する前には相手国に通知の上、可能な限り合意を得る」との紳士協定が存在しており、今後の日米交渉で為替条項が導入されたとしても、介入に際して守るべき国際的な規範は今とあまり変わらないです。

現在ドル円が取引されている110円前後の水準は、かつて日米両国が協調して最後のドル売り介入を行った140円台半ばや、ドル買い介入を行った70円台後半とかけ離れています。為替介入の是非が喫緊のテーマではない現下の局面で為替条項が導入されても、自然体の需給で決まるドル円の自由な上下動が束縛されることはないでしょう。

実際、日本より先に米国との協議に臨み、為替条項に相当する合意文や条文の導入を強いられた韓国、メキシコ、カナダの先例をみると、交渉期間中も、合意成立後も、当該国通貨の対ドルレートは市場メカニズムに委ねられて柔軟に動く日々が続いており、通貨安方向への動きが制限されたような痕跡は認められないです。

なぜなら、米国がこれまで上記3カ国と合意した為替条項は、人為的な介入による通貨安誘導の自粛を求めているだけで、「市場が決める為替レート」を双方が受け入れることをむしろ推奨しており、相場が動く方向や水準をコントロールすることを目的にしていないからです。

事実、米国がメキシコ、カナダと合意した新貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に盛り込まれた為替条項の条文をみると、米国だけが都合よく相手の通貨安誘導を一方的に封じることが出来るような仕組みにはなっていません。双方に同等の情報開示や介入の自粛が義務付けられており、当然の話ですが、為替条項を導入すると米国も人為的なドル安誘導はできなくなります。

2018年11月30日 USMCA

同条項では、当事国間で通貨安誘導の疑惑が生じた場合の紛争解決の制度も定めているが、対象になるのはあくまでも為替需給の人為的な操作です。

国内向けに実施される財政・金融政策は対象になっておらず、仮に需給操作の疑いが浮上しても30日以内に協議して60日以内に解決しない場合は、国際通貨基金(IMF)に調査を頼む手順になっています。嫌疑だけで制裁が発動できる訳ではありません。

米国が日本に対して求める為替条項に金融政策が含まれる可能性を懸念する声もありますが、杞憂に終わることでしょう。もし互いの金融政策に対する干渉が可能と解釈されるような条文を挿入した場合には、将来どこかで米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切った際、日本が「ドル安誘導」と非難して自粛を求めることも可能になります。

政治の口先介入効果は限定的

日米双方とも、自国の金融政策の自由度を縛るような条文は望まないと思われます。実際、ムニューシン財務長官は日本に求める為替条項も、USMCAとほぼ同じだと言っています。もし日本が条項を受け入れたとしても、すぐに強烈な円高ショックが走ったり、政府・日銀の国内政策が制約されたりする可能性は低いです。

為替条項の導入を求める米国政府やトランプ大統領はドル安を強く望んでおり、市場が米国の意向を忖度(そんたく)した場合には、円高/ドル安が進行するとの見方もあります。ただ、そのような発送は、昭和の時代から平成中頃までのものだと思います。

国境をまたぐ自由な資本移動に為替変動を委ねる制度を45年以上も維持した上、市場参加者の多様性と取引規模が増大し続けている近年のドル円市場においては、政府要人が自らの希望を口頭や文書で伝えるだけでは、為替レートに一時的なノイズを混入させることしかできないです。為替相場の基調的な方向感や水準を自在に操ることは、いかなる権力者でも不可能です。

過去の日本では、いくら為替介入を大々的に行ったとしても、恒常的に金融引き締め政策をやっていたのですから、円高・デフレになるのが当たり前で為替介入は一時的な効果しかなかったのです。実際私達は過去には、恒常的に円安になったのを見た試しがありません。

そうして、これは先進国同士では特にあてはまるものです。かろうじて韓国もあてはまるでしょう。さすがに、文在寅氏でもそれを自在に操ることは不可能でしょう。それは、習近平も同じでしょう。

そもそも、このブログにも掲載したように、通貨戦争などという考えは幻想です。中国が何が何でも、人民元安を実現するために、市場からドルを買い続けたり、あるいはどこまでも、金融緩和をし続けた場合どうなるでしょうか、行き着く先はハイパーインフレです。

そうなってしまえば、国内の経済が混乱するので、どの国でも不当に自国通貨を安くし続けることなどできません。

ただし、中国という国は、常識のあてはまる国ではありません。普通の国なら、ハイパーインフレになっても為替操作をするなどということはなく、適当なところで収束するはずですが、中国の場合だと国民が騒ぎだしたとしても、それを人民解放軍で弾圧して、為替操作を実行できます。

ただし、中国でさえ、そのようなやり方をしても、いずれは限界がくるはずです。そのため、為替操作は比較的短期間しかできないのです。これは、まともな国なら、急激な為替の変動を避けて、ソフトランディングさせるために用いるものです。一つの国が、長期にわたって為替操作をして自国を有利に導き続けるなどということはできません。

そんなことはわかりきっています。だからこそ、為替条項とか、為替操作の話はあまり人気がないのかもしれません。

ただひとついえるのは、今回の米中経済冷戦では、為替報復関税もあり得るかもしれいないということです。

皆さんもご存知のように、健常の日米対立は、関税による貿易戦争などの次元を超えて、米中の覇権争いの経済冷戦となっています。もはや、貿易赤字がどうのこうのという次元ではありません。


現状の報復関税だけでは、あまり効き目がなければ、米国は為替報復関税を発動する可能性は十分あると思います。

たとえ、短期間であっても中国が明らかに為替操作をしていることが、明白になった場合は、米国は為替報復関税を発動するでしょう。

それに対応して、中国も報復関税を米国にかけて対抗するということも十分あるでしょう。ただ、いずれにしても、中国は米国からの輸入が、米国が中国から輸入する物品よりはるかに小さいですし、さらには米国が中国から輸入する物品は中国からでないと輸入できないものはなく、すべて他国からの輸入で代替できるので、これは、いずれに転んでも、中国には不利です。

米国としては、現状の関税では中国を弱らせるには不十分と考えれば、次の段階では為替報復関税も実施し、さらには金融制裁も実行するでしょう。この冷戦は、中国が体制を変えるか、中国が経済的に疲弊して他国に対して影響力を行使できなくなるまで続きます。

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2016年10月2日日曜日

日銀への大きな不満?為替介入を嫌がる財務省、その判断は間違いです―【私の論評】増税キャンペーンして、為替介入をしない財務省は国民の敵(゚д゚)!

日銀への大きな不満?為替介入を嫌がる財務省、その判断は間違いです 突然「外債購入論」が浮上したワケ

ドクターZ

日銀の外債購入については正しく報道されることは滅多にない。写真はブログ管理人挿入。
以下、写真、図表ともにブログ管理人挿入。

  そもそも外債購入は可能か?

今年9月に入り、日銀の「外債購入論」が浮上してきている。日銀による現行の金融緩和政策の限界を打破する「秘策」と期待されているというが、実際にはどのような意味を持つのか。

日銀が外債を購入することによって、まず市場へ円資金を供給することができる。加えて、外債を買う過程で円を下落させる効果がある。前者で現行の日銀の金融緩和政策にプラスに働き、後者で財務省が行う「為替介入」と同様の効果もある。

この為替介入であるが、財務省の権限ということになっているため、外債購入は「法律的に難しい」といわれることがある。しかし、あまり報道されていないことであるが、外債購入自体は日銀法上では「可能」ではある。日銀法40条1項では〈日銀は自ら、または国の代理人として、外貨債権の売買ができる〉となっている。

さらに、同条2項では〈為替相場の安定を目的とするものについては国の代理人として行う〉とある。つまり、日銀法上、日銀は自ら外貨債権の売買を行うことは可能だが、為替介入目的の場合は国(財務省)の代理人として行う必要がある。

そもそも為替介入が十分な効果を生むには、財務省と日銀の連携が重要になってくるというのが経済界の「常識」。'04年の急激な円高危機の際に行われた大規模な為替介入が一例だ。

このとき、財務省はドル買いの原資となる証券を発行、日銀がそれを購入する形で進められた。これは、財務省の権限である為替介入と日銀の国債購入という「合わせ技」で、学問的には「非不胎化介入」と呼ばれるものだ。財務省は1日1兆円規模の円売りドル買いの為替介入、日銀は国債買いオペを行った結果、円安と金融緩和の効果をもたらした。

   「国益」を損ないかねない

では、いまなぜ外債購入論が急浮上しているかというと、現在の財務省が為替介入にまったくもって消極的であるからだ。

今年6月に英国のEU離脱が決定したとき、ドル円相場は1日で7円(約7%)もの変動があった。過去のデータを見ると、2週間で7%程度の為替変動が20年に一度の出来事。今回は1日で7%だったから、まさに未曽有の事態であった。それでも動かなかった財務省に、日銀は不満を持っている。

もちろん、為替介入にも注意すべき点はある。それは、円安のときも円高のときも、特定の為替水準の維持を意図してはいけないということだ。あくまで急激な変動に対してブレーキをかけるのが為替介入の目的である。

財務省が為替介入に消極的な理由はまったく不透明だが、下手するとこの姿勢は「国益」を損ないかねない。というのも、為替介入はヘッジファンドにとって絶好の「攻め時」となる。日本は小泉政権時代にその攻防をしのぎ切った経験があるが、今の財務省は当時のような対策が取れないように見える。これでは海外からなめられても仕方ない。

以上のことを踏まえると、外債購入論が浮上するのも当然のこと。ただし、今後も財務省が為替介入しないことに固執するなら、「財務省の為替介入権限を日銀に移管する」という過激な議論も出てくる。これには法改正が必要だが、その際には財務省の外為利権のはく奪を目論む政治家が躍起になるだろう。

『週刊現代』2016年10月8日号より

【私の論評】増税キャンペーンして、為替介入をしない財務省は国民の敵(゚д゚)!


日銀の外債購入については、高橋洋一氏が過去に興味深い記事をZAKZAKに掲載しています。

その記事のタイトルを以下に掲載します。
【日本の解き方】葬り去られた外債購入構想…日銀の実像 - 政治・社会 - ZAKZAK 
この記事は、2012年2月5日のものです。この記事残念ながら、すでにZAKZAKからは消去されています。ただし、私自身が別途その内容を保存しておきましたので、そこから下に引用させていただきます。
1月31日に公表された2001年下期の日銀金融政策委員会議事録に興味深いことが書かれている。中原伸之審議委員が同年11月16日、日銀による外債購入を提案していたことは知られていたが、それ以前の10月、須田美矢子審議委員、植田和男審議委員、中原真審議委員らが賛同していたことが明らかにされた。 
当時、アメリカの同時多発テロなどで景気が悪化していたので、竹中平蔵経済財政担当相は「一歩踏み込んだ金融政策に私たちは大変、期待している」と述べていた。 
そうした中、同年3月からの量的緩和について日銀は半信半疑だった。もともと00年8月のゼロ金利解除が間違いだったにもかかわらず、量的緩和に追い込まれたという被害者意識が日銀にあったのだ。 
議事録でも、01年10月12日の会合で、速水優日銀総裁は「皆が価格が下がるのはデフレで大変だと大騒ぎされるのはどうかと思う」と、いわゆる「よいデフレ論」を展開し、山口泰副総裁や三木利夫審議委員は同調していた。 
本来良いデフレなど存在しない。デフレは経済にとってすべからく悪である。
中原伸之審議委員は、(個別の商品などの価格である)「相対価格」と(いろいろな物やサービスの値段を平均した)「一般物価」の混同であると正論を示しているが、当時の日銀執行部はデフレの認識が甘かった。そのため、量的緩和政策を自己否定するかのように、量の拡大には消極的だった。 
そこで「緩和の姿勢をアピールすることが大事だ」ということで、外債購入が検討されたようだ。はじめに取り上げたのは、8月会合で財政規律を重要視して長期国債の買いオペに否定的な須田審議委員だ。外債なら問題ないからだ。 
しかし、日銀による外債購入構想は、あっけなく財務省の前に敗れた。為替の所管は財務省であるので、日銀による外債購入は財務省の権限を侵すという論理だ。 
11月16日の会合で表明された藤井秀人財務省総括審議官による日銀法の解釈に対して、政策委員会メンバーは無力だった。実際、日銀は外貨債を保有しているが、財務省の為替権限を侵さないように外貨で購入したものであって、円で購入したものはなかった。 
しかし、この構想は後の04年の大規模介入(いわゆる「テーラー・溝口介入」)につながっている。財務省が為券(政府短期証券)を発行して外債を購入し、ゼロ金利を維持するために日銀は財務省が発行した為券を購入する。 
その結果、外債購入という需給関係(一時効果)から、また日銀が為券購入によってマネタリーベースが拡大すること(永続効果)から、円安になる。実際に円安になったのは、介入の効果ではなく量的緩和の効果である。 
他に、注目すべきは、9月18日の会合で竹中大臣が中央銀行の独立性には「目標」と「手段」の2つあると問題提起したが、日銀に無視されたことだった。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
金融政策決定会合の議事録は、各金融政策決定会合から10年を経過した後に、半年分(1月から6月分、7月から12月分)ごとにとりまとめて、年2回公表しています。個々の公表予定日は、事前に公表しています。誰でも閲覧できます。

さて、為替介入というと、財務省管轄の特別会計である、外国為替資金特別会計を思い出します。これは、政府が行う外国為替等の売買に関し、その円滑かつ機動的な運営を確保するため外国為替資金が設置されるとともに、その運営に伴って生じる外国為替等の売買、運用収入等の状況を区分し経理するために設置された特別会計です。

外為資金として127.9兆円(2013.3末)。このうち外貨債権は103兆円(証券は99.5兆円、貸付3.5兆円)です。ちなみに、外貨証券の満期は1年以下1割、1年超5年以下6割、5年超3割)となっています。一方、外貨負債はありません。ということは、円安は資産を膨らませるだけであり、政府財政にとっては確実にプラスです。ざっくりみると、2014年度外為資金での円安による評価益は20兆円程度あったものと推定されます。

その他にも、多くの特別会計があります。その代表的なものを以下に掲載します。

まずは、国債整理基金特別会計。一般会計又は特別会計からの繰入資金等を財源として公債、借入金等の償還及び利子等の支払いを行う経理を一般会計と区分するために設置された特別会計です。定率繰入れ等の形で一般会計から資金を繰り入れ、普通国債等の将来の償還財源として備える「減債基金」の役割もあります。

この「減債基金」は、先進国で日本しかありません。他の先進国では昔はありましたが、公債市場が大きくなって整備されると償還財源はその都度借換債で調達するので、「減債基金」はなくなったのです。そういえば、民間会社で社債の「減債基金」もありません。将来の借金償還のために、さらに借金をする必要などないのです。

この観点から見ると、2015年度予算の11.6兆円の定率繰入は過大な計上であり、不要である。また、利払費が9.7兆円ある。しかし、この積算金利は1.8%と過大だ。おそらく2兆円くらいは過大計上だったでしょう。

次に労働保険特別会計。労災保険と雇用保険を経理するために設置された特別会計です。労災保険は、業務上の事由等による労働者の負傷等に対して迅速かつ公正な保護をするための保険給付及び被災労働者の社会復帰の促進等を図るための社会復帰促進等事業を行うもの、雇用保険は、労働者の失業中の生活の安定、再就職の促進等を図るための失業等給付及び雇用機会の増大等を図るための雇用保険二事業を行うものです。

2013年度の労働保険特別会計財務書類をみると、雇用勘定のバランスシートで7.1兆円の資産負債差額があります。いわゆる埋蔵金です。これは、高めの雇用保険料にもかかわらず失業保険給付が少ないために生じたものです。本来国民に還元すべきでした。

税収の2/3が特別会計という、この官僚のやりたい放題の構図。
このような国は他にない。この状況は今でも変わっていない。
かつて、「母屋(一般会計)ではおかゆで、離れ(特別会計)ではすきやき」といわれたことがあります。これは今でも妥当しています。

財務省は、これらの特別会計を積んでいるだけで、有効利用はしません。特にブログ冒頭の記事でも指摘されている、財務省の為替介入をして円安になったにしても、円安は資産を膨らませるだけであり、政府財政にとっては確実にプラスです。そうして、ざっくりみると、2014年度外為資金での円安による評価益は20兆円程度あったものと推定できます。

この頃は円安傾向ですから、為替介入など全く必要ではなく、本来ならここから、20兆円ほど他に融通したとしても良かったはずです。

2014年度といえば、8%増税をした年度です。財務省としては、8%増税をして景気が冷え込むことは、予め予想出来たはずですから、最初から増税しなようにするか、少なくともこの20兆円を景気対策に使うことはできたはずです。しかし、現実にはこれには程遠いものとなり、実際増税後景気は落ち込み未だに回復していません。

政府による為替介入を実行するためにこそ、外国為替資金特別会計が存在する

さらに、2016年に入ってから、円高気味の傾向が続いていますが、財務省は為替加入を行なうこともなく、そのため外国為替資金特別会計を使うこともなく溜め込んでいるだけです。

こんなことが許されて良いものなのでしょうか。許されて良いはずがありません。だからこそ、ブログ冒頭の記事のように、日銀による外債購入論が浮上するのも当然のことです。

そうして、今後も財務省が為替介入しないことに固執するなら、「財務省の為替介入権限を日銀に移管する」という過激な議論も出てくるのも当然のことです。そうして、その際に財務省の外為利権のはく奪を目論む政治家が躍起になるのは目に見えています。

まさに、増税キャンペーンは熱心にして、為替介入はしない財務省は国民の敵と言っても差し支えないと思います。

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