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2020年7月18日土曜日

米、中国共産党員の渡航禁止を検討! ハイテク排除、ハリウッドの対中協力も非難 識者「習政権への宣戦布告」— 【私の論評】中国は超大国になるために海洋進出を諦めるかもしれないが、それでも油断は禁物!(◎_◎;)


米、中国共産党員の渡航禁止を検討! ハイテク排除、ハリウッドの対中協力も非難 識者「習政権への宣戦布告」

トランプ氏(写真)は習氏の入国も認めない?
 米国の対中「宣戦布告」なのか。ドナルド・トランプ政権は、全ての中国共産党員と家族による米国への渡航禁止を検討していると米メディアが報じた。8月には通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)など中国企業5社の製品を使う企業が米政府と取引することを禁じる法律も施行される。米中対立は全面戦争状態に突入しそうだ。
 ロイター通信は関係筋の話として、中国共産党員と家族の渡航禁止について、政府高官が大統領令の草案を準備し始めたと報じた。検討は初期段階で、トランプ大統領にはまだ諮られていないというが、複数の連邦機関が関与し、党員の子供が米国の大学に在籍することを拒否するかどうかも検討されているという。

 米国の大学に留学する中国共産党幹部の子供も多く、実現すれば影響は小さくない。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は、「中国共産党員は約9000万人とされ、配偶者や子息を合わせると数億人になるのではないか。いったん入党すれば離党しづらく、世界中に党員は存在する。中には党の任務を負う人もいると考えられ、中国本土だけの問題ではないだろう」とみる。

 一方、米政府が取引停止の対象としたのは、ファーウェイのほか、中興通訊(ZTE)、海能達通信(ハイテラ)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)の5社の製品。

 官報に8月13日から実施する規則を掲載。施行されれば、原則として対象企業の製品やサービスを利用する企業との新規契約や契約更新も行わない。各社は米政府と中国企業のどちらと取引するのか選択を迫られる。

 中国に協力するハリウッドの映画業界や米IT企業にも注文を付けた。ウィリアム・バー司法長官は16日、ハリウッドにが興行収益のため中国当局を怒らせないよう「恒常的に自主検閲している」と指摘。中国のイメージを悪くするシーンを自ら削除することが横行していると説明し、「中国共産党の一大プロパガンダ作戦」に利用されていると懸念を示した。

 IT企業についてはグーグル、マイクロソフト、アップルなどが「中国の手先になっている」と主張した。

 人もモノも中国排除が進む。前出の石平氏は、「米国への留学生や共同研究者などを経た技術の流出もあるが、ハイテク競争の域を越え、党自体を否定することで、習近平政権への事実上の宣戦布告になる」と指摘した。
【私の論評】中国は超大国になるために海洋進出を諦めるかもしれないが、それでも油断は禁物!(◎_◎;)
最早、米国は宣戦布告をしたのも同様という石平氏の見解は、正しいと思います。米国は、このように様々な方策を講じて、米国内やインド太平洋地域から中国を排除し、中国を封じ込めようとしています。
これは、いずれ成功し、中国は、米国や他の国々によって封じ込められるのでしょうか。私は、そうではないと考えています。
その根拠になることが、米国のニュース・ウイーク紙日本版に掲載されています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで浮上する第2の道とは
詳細は、この記事を読んでいただくものとして、この記事では、中国が超大国になるための道筋は二つあると言います。

以下に一部を引用します。
1つは、アメリカの多くの戦略専門家が予測してきた道だ。この道を選んだ場合は、まず自国の周辺の西太平洋に君臨し、それを踏み台にしてグローバルな超大国の座を目指すことになる。もう1つは、これとはまるで違う道だ。こちらは、戦略と地政学の歴史的法則に反するアプローチに思えるかもしれない。
まず、最初の道筋は、時刻周辺の南太平洋に君臨し、それを踏み台にしてグーロバルな超大国の道を目指すことです。

これは、困難が伴うとこの記事にも書かれています。なぜなら、最大の障害として日本が立ちはだかっているからです。

中国にとっては、日本は単独でも脅威です。先日中国の潜水艦が日本の接続領域を潜航したのですが、これはあっさりと日本に発見され、河野防衛長官がその事実を大々的に発表しました。その内容は、日本のマスコミでも公表されました。

中国としては、自国の最新鋭原潜が日本や米国に探知されるか否かを試しに、日本の接続領域に潜航させて見たのでしょうが、あっさりと発見されてしまったわけです。

これは、日本のマスコミはいずれも公表しなかったのですが、中国の潜水艦は未だ、日本に簡単に発見されてしまい、日本の敵ではないことを暴露されてしまったわけです。

これに対して、中国は日米の潜水艦の行動をいまだに探知できないようです。これは、機密事項なので、公には公表されませんが、おそらく日米の潜水艦は、中国側に発見されず、自由に南シナ海は無論のこと、東シナ海や黄海あたりを潜航していると思います。

中国が日米の潜水艦の行動を探知できるなら、今まで一度くらいは、日本の高野防衛大臣が行なったように、日米の潜水艦の行動を公表するに違いありません。そうすることによって、中国として、対潜哨戒能力の技術が向上したことをアピールするとともに、日米に対する牽制ができます。

これは、日本単独でも、日本の潜水艦は中国の潜水艦を含む艦艇を、中国に発見されることなく、探知して撃沈できることを示します。これに対して、中国海軍は日本の潜水艦に撃沈は愚か、どこにいるかさえ把握できないのです。

これでは、最初から勝負が決まったようなものです。これでは、尖閣上陸も恐ろしくてできないはずです。無論、私自身は、このブログでも以前から指摘しているように、中国の艦艇の尖閣での狼藉を放置せよと言って訳ではありませんが、それにしても、中国は今のところ、日米の潜水艦が障害となって、未だ尖閣諸島に上陸できないばかりか、尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できないでいます。

中国海軍のロードマップでは、今年中には、第二列島線まで、確保する予定なのですが、今のところ、全く不可能な状態です。さらには、英海軍がインド太平洋地域に空母「クリーンエリザベス」を派遣するとの報道もあり、中国海軍のロードマップはますます絵に描いた餅に近づいてきました。


中国がこのように海で苦戦するのは、やはり自らは未だシーパワー国にはなり切れておらず、ランドパワー国でもあるにも関わらず、海洋進出をしようとしているからでしょう。

これについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
台湾問題だけでない中国の南太平洋進出―【私の論評】海洋国家を目指す大陸国家中国は、最初から滅びの道を歩んでいる(゚д゚)!
詳細は、この記事をごいただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
現在の中国は鄧小平が劉華清(中国海軍の父)を登用し、海洋進出を目指した時から両生国家の道を歩み始めました。そして今、それは習近平に引き継がれ、陸海併せ持つ一帯一路戦略として提示されるに至っています。しかしこれは、マハンの「両生国家は成り立たない」とするテーゼに抵触し、失敗に終わるでしょう。
劉華清(中国海軍の父)
事実、両生国家が成功裏に終わった例はありません。海洋国家たる大日本帝国は、大陸に侵攻し両生国家になったため滅亡しました。大陸国家たるドイツも海洋進出を目指したため2度にわたる世界大戦で滅亡しました(ドイツ第2、第3帝国の崩壊)。ソビエト帝国の場合も同じです。よもや、中国のみがそれを免れることはないでしょう。一帯一路を進めれば進めるほど、地政学的ジレンマに陥り、崩壊への道を早めてゆくことになります。
中国の海洋進出には、日本が巨大な壁として立ちはだかっているだけではなく、シーパワー国の雄である、米国の軍隊が駐留しています。さらには、中国の香港などでの横暴に、脅威を抱き、中国の海洋進出に脅威抱いたこれもシーパワー国である英国が、「空母クイーンエリザベス」を太平洋に常駐させる計画を立てています。

シーパワー国になることは、容易ではないのです。まずは、優れた海軍を持つには、資本の蓄積が必要です。資本があれば、艦艇は作れますが、それだけでは優れた艦艇は作れません。高度の技術が必要です。

高度な技術を用いて、優れた艦艇を多数作れるようになってもそれだけでは駄目です。今度は、優れた多数の艦艇を操るノウハウが欠かせません。そうなると、シーパワー国になるための敷居はかなり高いです。かつて、世界には英国だけがシーパワー国だった時期があり、その頃には日本も米国もランドパワー国だったのですが、数十年かけて、シーパワー国に変貌しました。

中国がこれから、本格的にシーパワー国になろうとすれば、少なくとも今後20年くらいはかかるでしょう。

そうして、今後ますます多くの国々がインド太平洋地域において、中国に対して反旗を翻することでしょう。そうなると、中国としては、インド太平洋地区を治めることは、ほとんど不可能といって良いです。

これでは、中国周辺の西太平洋に君臨し、それを踏み台にしてグローバルな超大国の座を目指すことはほぼ不可能です。

では、先ほどのニューズウィークの記事に出てきた、中国が超大国になるもう一つの道とはどのようなものなのでしょうか。

その第二の道は、中国が自国の東に位置する西太平洋ではなく、自国の西に目を向けることです。ユーラシア大陸とインド洋に中国主導の安全保障・経済秩序を確立し、それと並行して国際機関で中心的な地位を占めることを目指すのです。

先のニューヨークタイムズの記事によれば、このアプローチの土台を成すのは、世界のリーダーになるためには、軍事力よりも経済力と技術力のほうがはるかに重要だという認識です。そうした発想に立てば、東アジアに勢力圏を築くことは、グローバルな超大国になるための前提条件ではありません。西太平洋では軍事的バランスを維持するだけでよく、軍事以外の力を使って世界に君臨することを目指せば良いということになります

元々、ランドパワー国である、中国がこの道筋を取ろうと方針転換をすれば、これは今よりも大きな脅威になります。

軍事力以外の力を使って君臨することを目指すにしても、やはり軍事力は重要です。それに関しては、すでにミサイルや核兵器も開発してきた中国ですから、それなりのノウハウも持っており、ランドパワー国としての技術力やノウハウを開発することは、中国に取っては、シーパワー国を目指すよりは、遥かに簡単です。

このブログでも以前示したように、中共は、南シナ海、東シナ海、太平洋、アフリカ、EU、中東などに手を出しつつ、ロシア、インド、その他の国々との長大な国境線を守備しつつ、米国と対峙して、軍事力、経済力、技術力を分散させています。

かつてのソ連も、世界中至る所で存在感を増そうとし、それだけでなく、米国との軍拡競争・宇宙開発競争でさらに力を分散しました。当時は米国も同じように力を分散したのですが、それでも米国の方が、国力がはるかに優っていたため、結局ソ連は体力勝負に負け崩壊しました。

今日、中共は、習近平とは対照的な、物事に優先順位をつけて実行することが習慣となっているトランプ氏という実務家と対峙しています。今のままだと、中国も同じ運命を辿りそうです。

このように、米国と比較すると、今のところ世界中で攻勢に出ているように見える、中国は超大国になるための2つの道の両方を同時試そうとしているようですが、いずれ中国は海洋進出の拡大を諦めて、ユーラシア大陸とインド洋に中国主導の安全保障・経済秩序を確立し、それと並行して国際機関で中心的な地位を占めることを目指すことに、集中するかもしれません。

そうなるとかなり厄介です。ただし、それ以前に中国の経済か政治制度が揺らいだり、競争相手の国々が賢明な対応を取れば、どちらの道もうまくいかない可能性も大いにあります。

米国などの自由主義陣営は、そのことも考慮に入れて、中国と対峙すべきでしょう。そうして、今はインド太平洋地域を最重要点として、中国と対峙していくべきでしょう。そのようにすれば、当面中国はますます、シーパワー国を目指して、多大な経費や労力を無駄に浪費することでしょう。

そうすれば、中国がランドパワーを強化し、ユーラシア大陸とインド洋に中国主導の安全保障・経済秩序を確立しょうとしても、疲弊してうまく行かなくなる可能性が大です。

ただ、我々が気をつけなければならないのは、中国が早めに海洋進出を諦めたように見えた場合、それは自由主義陣営に敗北したためとすぐに判断すべきではないということです。

もしかすると、それは、中国がユーラシア大陸とインド洋に中国主導の安全保証・経済秩序を確立することに転じたサインかもしれないということです。

もし中国がそれに転じたとしても、現在の失敗続きで懲りた中国は、鄧小平が残した「韜光養晦(とうこうようかい)」という言葉を思い出し、今度は細心を注意をしながら、自由主義陣営になるべく気がつかれずに、行動するようになるかもしれません。



ユーラシア大陸の、ロシアや中央アジアの国々に対して、過去の強権的なやり方ではなく、もっとスマートな形で、自らの経済圏に取り込むように働きかけるようになるかも知れません。

気がついたときには、ヨーロッパ、ロシア、中央アジア、インドなどの地域が実質的に中国に飲み込まれているかもしれません。これもかなり困難なことですが、太平洋のハワイの西側まで中国の海とすることよりは、簡単です。

日米を含めた自由主義陣営は、過去には中国が経済成長して豊かになれば、まともになるだろ等として、過去には中国の暴挙を許容してきました。それが今日の危機を招きました。

中国が第二の道を選んだ場合にも、自由主義陣営も過去の失敗を繰り返すことなく、早めにその芽を積むべきです。どのように外見や態度を変えて見せたところで、現在の中共の本質は変わりません。中共が消えるまで、戦いは続くと見るべきです。

【関連記事】

2019年9月1日日曜日

米国、米韓同盟破棄を真剣に検討か―【私の論評】韓国はいまのままなら文によって、日米を蔑ろにしつつ、相手にされてもいない北や中国に秋波を送り続けることになるだけ(゚д゚)!

米国、米韓同盟破棄を真剣に検討か

韓国はもはや味方にあらず、日米豪印同盟に舵切る米政権


「韓国は米軍のリスクを増大させた」

 韓国の文在寅政権による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄のショックが冷めやらぬ中、ドナルト・トランプ米大統領と安倍晋三首相がフランス南西部ビアリッツで会談した。

フランス南西部ビアリッツで会で会談をしたトランプ米大統領と安倍首相

 会談後の政府高官によるブリーフィングによると、両首脳は日米韓連携の重要性は確認したものの、GSOMIA破棄に関するやりとりはなかったという。

 首脳会談内容のブリーフィングではこうした「ウソ」はままある。

 筆者の日米首脳会談取材経験から照らしても、首脳会談後のブリーフィングがすべて「包み隠さぬ事実」だったためしがない。

 オフレコを条件に米政府関係者から話を聞いたという米記者の一人は筆者にこうコメントしている。

 「(文在寅大統領の決定に対する)トランプ大統領の怒りは収まりそうにない。それを安倍首相にぶつけないわけがない」

 「ただ、憤りはちょっと置いておいて、当面文在寅大統領の出方を静観することで2人は一致した。大統領は『韓国に何が起こるか見守る』とツィートしているのもそのためだ」

 だが、日米首脳会談の直後、「伏せた部分」はほぼ同時刻、モーガン・オータガス米国務省報道官が公式ツィッター上で意図的に(?)「代弁」している。

 「韓国政府のGSOMIA破棄決定に深く失望し懸念している。これは韓国を守ることをさらに複雑にし(more complicated)、米軍に対するリスク(risk)を増大させる可能性がある」

 米国務省は22日、同趣旨の報道官声明を出している。今回は韓国の決定が「米軍に対するリスクの増大の可能性」にまで言及した。ダメを押したのだ。

平気でウソをつく文在寅政権

 米国の怒りようは半端ではない。

 米政府高官たちが怒っているのは、文在寅大統領のブレーンにあれほど「破棄するな」と要求していたにもかかわらず、しらっと破棄に踏み切ったからだけではない。

 発表に際して、文在寅政権の高官でこの問題の最高責任者がぬけぬけと嘘をついたからだ。

 金鉉宗・国家安保室第2次長だ。

 タイトルから見ると偉そうに見えないが、韓国人記者によれば「ニクソン政権時代のヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官のような存在」らしい。

 今年6月の時点からワシントンを訪問し、日韓間の確執について文大統領の言い分をトランプ政権高官に直接説明に来たのはこの人物だ。

 金鉉宗第2次長は、韓国人記者団にこうブリーフィングした。

 「米国は韓国にGSOMIA延長を希望した。米国が表明した失望感は米側の希望が実現しなかったことに伴うものだ」

 「外交的な努力にもかかわらず、日本から反応がなければGSOMIA破棄は避けられないという点を米国に持続的に説明した。私がホワイトハウスに行き相手方に会ったときにも、この点を強調した」

 「またGSOMIA破棄の決定前には米国と協議し、コミュニケーションを取った。米国に(韓国の決定についての)理解を求め、米国は理解した」

 この発言に米政府高官は直ちに反論した。

 「韓国政府は一度も米国の理解を求めたことはない」

 別の政府高官は韓国通信社ワシントン特派員に対して厳しい表現でこう述べている。

 「これはウソだ。明確に言って事実ではない。米国政府は駐米韓国大使館とソウルの韓国外務省に抗議した」

 外交儀礼として相手方の大統領府高官の発言を「ウソだ」と言うのも異例なことだ。

http://www.koreaherald.com/view.php?ud=20190823000106
https://www.asiatimes.com/2019/08/article/us-verbal-broadside-at-seoul-over-axing-of-pact/

 「文在寅は長年にわたって築いてきた米国家安全保障体制をぶち壊した」

 ワシントン駐在の外交官たち(無論その中には韓国大使館員たちも含まれる)にとっては「虎の巻」ともされている米外交政治情報を流すニューズレターがある。

 購読料が高いので一般の人の目にはとまらない(筆者は米政府関係筋から間接的に入手することができた)。

 米政権中枢の極秘情報を提供する「ネルソン・リポート」だ。

 同リポートは韓国政府の決定直後の米政府高官・元高官の露骨なコメントを記している。さすがに主要メディアはそこまでは報じない、歯に衣着せぬコメントばかりだ。

トランプ政権高官:
 「文在寅という男は本当に阿呆(Fool)。どうしようもない」

駐韓国大使館で高位の外交官だった人物:

 「文在寅は戦略的痴呆症(Strategic stupidity)と言い切っても過言ではない」

米情報機関で朝鮮半島を担当した専門家:

 「文在寅の決定は愚かで誤り導かれた決定(Foolish and misguided decision)以外のなにものでもない」

 「後世の史家は、こう述べるに違いない。『この決定は何十年にもわたって築き上げられてきた北東アジアにおける米国の安全保障の中枢構造が終焉する、その始まりを暗示するシグナルだった、と』」

別の米外交官OB:

 「文在寅という男は、韓国に対する安全保障上の脅威(Security threats)はどこから来ると思っているのか、全く分かっていない」

 「コリア第一主義(Korea First Tribalism)に凝り固まった衆愚の知恵(Wisdom of the crowd)としか言いようがない」

「日米韓三角同盟よ、さようなら」
「日米豪印同盟よ、いらっしゃい」


 GSOMIA破棄決定を受けて米国は今後どう出るのか。

 短期的には北朝鮮のミサイル情報収集としては、2014年に締結された日米韓の「軍事情報共有協定」(TISA)がある。これまでGSOMIAと並行して機能してきた。

 同協定に基づき、米国を介した日韓間の情報交換は今後も継続させるというのが米国の方針だ。

 GSOMIAもTISAも何も北朝鮮のミサイル情報だけを扱っているわけではない。むしろもっと重要なのは中国やロシアの動向をチェックすることかもしれない。

 日米軍事情報の共有は今後さらに強化されるだるう。米国は韓国から得た情報をこれまで以上に迅速に日本に流すことになるだろう。

 国防総省関係筋はこう指摘している。

 「米国は文在寅大統領は信用しない。だが、韓国軍は信用している。つき合いは文在寅大統領とのつき合いよりも何十倍も古い」

 「先の米韓共同軍事演習も文在寅大統領の反対を押し切って実施した。それを阻止できなかったから北朝鮮は文在寅大統領を口汚く罵った」

大幅な米軍駐留費分担増要求へ

 韓国政府は、GSOMIA破棄決定を踏まえて今後米韓二国間の安全保障関係を一層強化すると宣言している。

 米国にとってはいい口実ができた。直近の対韓要求は2つある。

 一つは、駐韓米軍駐留費問題(SMA)。

 米韓問題を専門とするダニエル・ピンクストン博士(トロイ州立大学国際関係論講師)は米国はこの問題で高圧的になるとみている。

 「米軍駐留費協定交渉は昨年末以降中断したまま。韓国側は年間10億ドルを分担するとしているが、トランプ政権はその5倍、50億ドルを要求してくるといわれている」

 「協定だから議会の承認が必要だ。来年4月には選挙がある。それまでに協定に合意できなければ、駐留費問題は選挙の最大のアジェンダになってしまう」

https://www.nknews.org/2019/08/what-south-koreas-termination-of-the-gsomia-means-for-north-korea-policy/

 文在寅大統領としては米韓の隔たりを埋めて、穏便に年内に決着させたかったところだが、GSOMIA破棄決定で米国の怒りを鎮めるには米側の法外な要求も受け入れざるを得なくなってきているわけだ。

 もう一つはイランによる外国籍タンカーへの威嚇行動で生じた危機管理問題だ。

 中東ホルムズ海峡を航行する船舶の安全を確保する米主導の「有志連合構想・海洋安全舗装イニシアティブ」への参加協力要請だ。

 ホルムズ海峡は日本同様、韓国にとっても中東からのシーレーン確保の要だ。

 コリア第一主義の大衆ナショナリズムは一歩間違えば、反日から反米に点火する危険性を帯びている。文在寅大統領としても何が何でも米国の言うことを聞くわけにはいかない。

 米国にとっては、長期的にみると、これから5年、10年後の韓国をどうとらえるべきか、という重要懸案がある。

 中国が推し進めている「一帯一路」路線に対抗する米国の「インド太平洋戦略」の中核となる同盟国の構成をどうするか、だ。

 米国内には「韓国は外すべきだ」という主張が台頭している。早晩、韓国は「あちら側」つまり中国サイドにつくと見ているのだ。

 トランプ政権内部ではすでに「韓国抜き」の「インド太平洋戦略」が動き出していると指摘する専門家もいる。

 日本、豪州、インドという準大国を同盟化するというのだ。

 特に経済通商上の理由から米国と中国とをある意味で天秤にかけてきたオーストラリアは、スコット・モリソン政権発足と同時に米国に超接近し、米国の考える「インド太平洋戦略」の構築に積極的になってきたからだ。

http://www.iti.or.jp/kikan114/114yamazaki.pdf

豪ダーウィン港湾に軍用施設建設へ

 その事例がすでにある。

 マイク・ポンペオ米国務長官とマーク・エスパー国防長官は8月、オーストラリアを訪問し、米豪初の国務・国防閣僚による「2プラス2」協議で同盟強化を再確認している。

https://www.theguardian.com/world/2019/aug/04/mike-pompeo-urges-australia-to-stand-up-for-itself-over-trade-with-china

 米軍の豪州駐留永久化だ。

 米国はこれまでオーストラリア北部のダーウィンに近い豪州陸軍基地に米海兵隊を乾期だけに配備してきた。

 この港湾にワスプ級揚陸艦(LHD)が着艦可能な軍用施設を建設することを決めたのだ。すでに総工費2億1150万ドルが計上されている。

 ダーウィン港湾の管理権は15年以降、中国大手「嵐橋集団」(ランドブリッジ)が99年間貸与する契約を結んでいる。当時、中豪協力のシンボルとして騒がれた。米政府は強く反発していた。

 「嵐橋集団」のトップ、葉成総裁は人民政治協商会議の代表。中国共産党とも太いパイプを持っており、ダーウィン港湾管理権貸与の背景には対米抑止力の一翼を担う狙いがあるとされている。

 同港湾に米軍が軍用施設を建設するというのは、小さな一歩かもしれないがシンボリックな意味合いを持っている。

 米国とインドとの関係も直実に同盟化のロードマップに沿って動いている。

https://www.washingtonexaminer.com/opinion/our-most-important-alliance-in-2019-will-be-with-india-but-two-other-big-foreign-policy-opportunities-await

 オバマ政権で国務省コリア部長(韓国と北朝鮮を担当)確認だったミンタロウ・オバ氏はこう指摘する。

「GSOMIA破棄決定に米政府はこれ以上ないほどのネガティブに反応している。オバマ政権が将来を考えて編み出した協定だったからだ」

「当時関係者は『これは北東アジアにおける米安全保障体制にとっての聖杯*1(Holy Grail)だ』と言っていたくらいだ」

*1=イエス・キリストがゴルゴタの丘で磔刑された際に足元から滴る血を受けた杯。「最後の晩餐」の時にキリストの食器として使われたとされる。この杯で飲むと立ちどころに病や傷が癒され、長き命と若さを与えられるとされてきた。

 「ワシントンの多くのアジア関係者は日韓関係に赤信号が灯り始めたと見ている。韓国は今後その戦術展開の幅を狭くしてしまった」

 ワシントンの外交安保専門家たちから見ると、GSOMIA破棄で完全に米国を怒らせてしまった韓国はもはや「米国の同盟国」ではなくなってしまったようだ。

【私の論評】韓国はいまのままなら文によって、日米を蔑ろにしつつ、相手にされてもいない北や中国に秋波を送り続けることになるだけ(゚д゚)!

トランプ米政権は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が米政府の説得を振り切って日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄し、日韓の対立を安全保障分野に持ち込んだことで、文政権への怒りと不信を募らせています。

South Korea Flag Bikini 

協定の破棄で今後、ほんど日本には悪影響はないとともに、韓国のほうが悪影響があるともされていますが、それは情報のやりとりに関してのみいえることであり、信頼関係が大きく毀損されたことは間違いありません。

日米韓関係筋によると、トランプ政権は韓国が実際に協定破棄を強行するとは事前に認識していなかったとされ、完全に虚を突かれた形となりました。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は22日、トランプ政権高官の話として、韓国政府は米政権に対し、協定破棄の意思はないとの態度を事前に示していたと伝えました。

政権高官は「韓国のこうした行動は、文政権が米国などとの集団的安全保障に真剣に関与していく意思があるのか、根本的な疑問を生じさせるものだ」と述べ、韓国の同盟軽視の姿勢を痛烈に批判しました。

政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)のビクター・チャ上級顧問は「協定は北朝鮮の行動に関する日米韓の情報共有を円滑化させてきた」と意義を説明。協定破棄は「米国の同盟システムと対立する北朝鮮や中国、ロシアを利するだけだ」と警告しました。

CSISのビクター・チャ上級顧問

日本にとっては協定破棄で今後、北朝鮮の弾道ミサイルに対する早期警戒能力が低下する恐れはありません。それはつい先日、北朝鮮から短距離ミサイルが発射されたとき、日本のほうがそれをいち早く発表しました。過去の韓国側からの北のミサイル発射情報においては、誤りも多々あり、日本側の公表の後に訂正ということもしばしばありました。

そもそも、韓国は人工衛星がないという点からも、日米から比較すると情報収集能力は格段に劣っています。

しかし、GSOMIA破棄に関して、最も恐れるべきは、今回の行動は明らかに北朝鮮や中国に利する行動であり、そのような行動をとった韓国は信用することなどできません。

韓国から米国への情報に意図的な偽情報が流され米国の国益が直接脅かされる事態となることも考えられます。さらに、その偽情報が米国から日本にもたらされる可能性も否定できません。今後、日米韓連携に加え米韓同盟も弱体化するなどの甚大な影響が出るのは確実です。

北朝鮮のミサイル情報をめぐっては、2014年に締結された日米韓の「情報共有に関する取り決め」(TISA)に基づき、日本と韓国が保有する情報を米国を介して共有する枠組みがあります。

しかし、明らかに北朝鮮や中国に利するような行動をした韓国に関しては、日米ともいつ寝首を搔かれることになるかわからないと考えるのは当然のことです。特に在韓米軍にはそのような危機があるということです。

だからこそ、トランプ政権も安倍政権もこの事態に激怒しているのです。問題は、韓国から情報が入らなくなるなるという程度の些細な問題ではなく、はるかに大きなものなのです。

このブログでは、過去に何度か指摘してきたように、日米、中露、北朝鮮のいずれの国も、朝鮮半島の現状を維持を望んでいます。

日米にとって朝鮮半島に起こり得る最悪の事態は、中国の影響力が朝鮮半島全体に及ぶことです。中露にとっての朝鮮半島の最悪の事態は、韓国ベースで朝鮮半島が統一されてしまうことです。

日本のメディアなどは、韓国を他国が欲しがると言う前提で論じていますが、北朝鮮ですら欲しがらないという現実があります。周辺国が皆要らないと言う視点を持って考える方が現実的です。

金正恩は、南北統一 をしたいなどと望んでいません。金正恩にとっての最優先課題は金王朝の継続なのです。それを前提に考えれば、北は南北統一を望んでいないわけです。北朝鮮は歴代の大統領の末路を良く知っています。南北統一後の朝鮮の大統領になるというのは自分の死刑執行にサインするのと同じようなものです。

それでなくても、南北を統一すれば、幼い頃からチュチェ思想を叩き込まれ、金王朝を尊敬するように仕向けられた北朝鮮人民のほかに、チュチェ思想とは無縁で、金王朝に対する尊敬心など全くない韓国人が北朝鮮領内にも大量に入ってくることになります。

そんなことは、金正恩は、許容できません。さらに、文在寅をはじめ朴槿恵等、朝鮮半島から数十年を経た韓国では、中国に従属しようという行動が目立ちました。これも金正恩には耐え難いことです。

金正恩は、中国の干渉を蛇蝎のごとく嫌っています。それは、中国に近いといわれていた金正恩の叔父であった、張 成沢(チャン・ソンテク)を処刑したことでも、はっきりしています。

さらに、中国に近いとされた、実の兄の、金正男氏を暗殺したことでも、明白です。両者の殺害、ならびにその後の北朝鮮内の中国に近い筋の幹部などの処刑は、北朝鮮内の親中派を震え上がらせたことでしょう。

このように、金正恩が中国を蛇蝎のごとくに嫌っているという事実と、北の核が結果として、中国が朝鮮半島全体に浸透することを防いでいます。

だからこそ、トランプ大統領は北が短距離ミサイルを発射してもほとんど苦言を呈することはありません。北朝鮮の短距離ミサイルは、米国にとっては脅威ではなく、北朝鮮と国境を直接接している中露にとっては脅威だからです。

にもかかわらず、金正恩が文在寅の南北統一等呼びかけに、快く応じてみせたのは、当初は米国への橋渡しを期待したのと、制裁破りや、制裁の緩和を望んでいたからでした。

しかし、鈍感な文在寅は、文在寅への呼びかけに快く応じたので、すっかり舞い上がってしまったのです。しかし、米国との応対が自らできるようになった現在では、文在寅への対応は厳しいものに変わってしまいました。

金正恩と文在寅

南北統一など文在寅の妄想に過ぎないのです。しかし、その妄想に浸りきった文在寅は、今でもその妄想から冷めることができず、北朝鮮や中国に秋波を贈り続け、挙げ句のはてに、GSOMIAを破棄してしまつたのです。

政策研究機関「新米国安全保障センター」(CNAS)のエリック・セイヤーズ非常勤上級研究員は米軍系軍事誌ディフェンス・ニューズに対し、協定は日米韓が今後、ミサイル防衛や対潜水艦作戦など幅広い分野で連携を進めていくための基盤に位置づけられていたと指摘し、韓国による破棄決定で同盟強化の取り組みは「元のもくあみとなった」と批判しています。

こうなると、韓国は文在寅を放逐するか、いまのまま文在寅によって、日米をないがしろにしつつ、北朝鮮や中国にまともに相手にされていないにも関わらす、秋波を送り続けることになるだけです。それは、韓国に何の利益ももたらしません。

そうなれば、在韓米軍の撤退ということになます。その時には、このブログでも何度か掲載したように、米国ならび日本を含む同盟国が、韓国から人や資産を引き上げたり、韓国に築いた様々なシステム(金融その他)や組織等を破壊、すなわち経済的焦土化をして韓国から引き上げることになります。米国は、習近平や金正恩の敵に塩を送るような真似はしません。

その時になっても、北朝鮮が韓国に手を差しのべることはありません。それは、中国もロシアも同じことです。この三国は、経済的にも余裕はないし、韓国に対して何の恩義も感じていません。むしろ、北朝鮮は韓国人難民が押し寄せないように38度線の守りを強化するでしょう。

中国も、ロシアも、船や航空機で押し寄せる難民を受付ないでしょう。無論日本だって受け付ける必要はないのです。ただし、領海の警備を強化することになるでしょう。日本に漂着した難民はすべて韓国に強制相関すようにすべきでしょう。

今年とはいいませんが、いよいよになれば、米国と協調しつつ、10月から12月頃に韓国の経済焦土化をするべきです。冬の日本海は一番厳しいので、1番の防護壁になります。そうして、次の年の春までに領海の警備を強化するようにすれば良いのです。

これには、在日米軍も多数の難民が日本に押し寄せれば、身動きがとれなくなるし、中には武装難民もいるかもしれないので、日本に協力することになるでしょう。

ただし、韓国が経済焦土化されず在韓米軍のほとんどが撤退するという道もあります。それは、韓国が米国中短距離核ミサイルの発射上になるという条件を飲めば、そうなります。

無論、発射を担当するのは米国です。そうなれば、朝鮮半島の軍事バランスは崩れます。北朝鮮の核の脅威は半減することになります。ただし、韓国が通常兵力で攻撃された場合は、核ミサイルではなかなか対応できず、日本からの在日米軍が日本からの許可を受けて韓国を助けることになります。そうなると、対応は後手にまわるしかありません。

これらはワーストシナリオですが、文在寅を今のまま放置しておけば、このような結果になる可能性がかなり高まります。韓国国民の賢明な判断に期待したいところです。

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2019年4月2日火曜日

【新元号】安定的な皇位継承の確保を検討 男系継承を慎重に模索―【私の論評】なぜ皇位は男系によって継承されなければならないのか?


平成最後の一般参賀に臨まれる天皇、皇后両陛下と皇族方=1月2日、宮殿・長和殿

 新元号が「令和(れいわ)」と決まり、皇太子さまが5月1日に新天皇に即位されることで、政府は「そんなに時間を待たないで」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)安定的な皇位継承を確保する検討に入る。これまで125代にわたり一度の例外もなく受け継がれてきた皇室の伝統にのっとり、父方の系統に天皇を持つ男系の男子による皇位継承維持を慎重に模索する。

 「(旧11宮家の皇籍離脱は)70年以上前の出来事で、皇籍を離脱された方々は民間人として生活を営んでいる。私自身が(連合国軍総司令部=GHQの)決定を覆していくことは全く考えていない」

 安倍晋三首相は、3月20日の参院財政金融委員会でこう述べた。これが首相が旧宮家の皇族復帰に否定的な見解を示したと報じられたが、首相は周囲に本意をこう漏らす。

 「それは違う。私が言ったのは『旧宮家全部の復帰はない』ということだ」

 また、首相が女性宮家創設に傾いたのではないかとの見方に関しても「意味がない」と否定している。

 そもそも皇室典範は「皇位は男系の男子が継承する」と定めており、女性宮家を創設しても皇位継承資格者は増えないからだ。典範改正で女性宮家の子孫も皇位継承資格を持つようにするというのなら、それは女系継承容認につながり、皇室の伝統の歴史的な大転換になる。

 首相官邸筋は「天皇陛下の周りも、女系天皇をつくろうという気は全くない」と明言し、政府高官もこう指摘する。

 「女性宮家は(女性皇族の)みなさんもそれは避けたいのではないか」

 現在、男系の男子である秋篠宮家の長男、悠仁さまが皇位継承順位3位だが、仮に女系天皇を認めた場合にはどうなるか。現在は継承権のない皇太子さまの長女、愛子さまとの間で「どちらにより正統性があるかが問われ、とんでもない事態になる」(別の政府高官)との懸念もある。

 一方、戦後にGHQの皇室弱体化の意向で皇籍離脱した旧宮家の復帰に関しては、現皇室との血の遠さを強調する意見がある。だが、皇位はこれまで直系ばかりで継承されてきたわけでは決してない。

 「旧皇族から適格者に何人か皇族に復帰してもらい、その方自身には皇位継承権は付与せず、その子供から継承権を持つというのはどうか」

 首相官邸内では、こんなアイデアもささやかれている。(阿比留瑠比)

【私の論評】なぜ皇位は男系によって継承されなければならないのか?

神宮式年遷宮

天皇の皇位がなぜ男系によって継承されてきたのでしょうか。これに答えるのは容易ではありません。そもそも、人々の経験と英知に基づいて成長してきたものは、その存在理由を言語で説明することはできません。

なぜなら、特定の理論に基づいて成立したのではないからです。天皇そのものが理屈で説明できないように、その血統の原理も理屈で説明することはできないのです。

しかし、理論よりも前に、存在する事実があります。男系継承の原理は古から変更されることなく、現在まで貫徹されてきました。これを重く捉えなくてはならないです。

例えば、神宮式年遷宮は、神宮(伊勢神宮)において行われる式年遷宮(定期的に行われる遷宮)です。神宮では、原則として20年ごとに、内宮(皇大神宮)・外宮(豊受大神宮)の二つの正宮の正殿、14の別宮の全ての社殿を造り替えて神座を遷します。

このとき、宝殿外幣殿、鳥居、御垣、御饌殿など計65棟の殿舎のほか、装束・神宝、宇治橋[なども造り替えられます。

記録によれば神宮式年遷宮は、飛鳥時代の天武天皇が定め、持統天皇の治世の690年(持統天皇4年)に第1回が行われました。その後、戦国時代の120年以上に及ぶ中断や幾度かの延期などはあったものの、2013年(平成25年)の第62回式年遷宮まで、およそ1300年にわたって行われています。

このような儀式が、1300年にわたって継承されてきたことに大きな意味と意義があります。これほどの継承が繰り返されてきたことは日本以外に世界に類をみません。これも、継続することに意味があるのです。

同様に、天皇は男系により継承されてきた世界最古の血統であり、これを断絶させることはできないです。

もはや理由などどうでもよいのです。特定の目的のために作られたものよりも、深く、複雑な存在理由が秘められていると考えなくてはいけないのです。

男系継承は女性蔑視の制度ではない

男系継承は男女の性別の問題と勘違いされますが、そうではありません。いうなれば家の領域の問題であり、男女は関係ないのです。男系継承とは、「天皇家の方に天皇になってもらう」ことに尽き、それは天皇家以外の人が天皇になるのを拒否することに他ならないです。

民間であっても、息子の子に家を継がせるのが自然で、娘の子たる外孫に継がせるのは不自然です。愛子内親王殿下の即位までは歴史が許しますが、たとえば鈴木さんとご結婚あそばしたなら、その子は鈴木君であって、天皇家に属する人ではありません。

もし鈴木君が即位すれば、父系を辿っても歴代天皇に行きつくことのない、原理の異なる天皇が成立することになります。

民間ならば、継承者不在でも、外孫を養子にとって家を継がせることもあるでしょう。しかし、天皇はそれをやってはいけないのです。継承者がいなくなる度に養子を取るようなことがあれば、伝統的な血統の原理に基づかない、天皇が成立することになり、それは既に天皇ではないのです。

また、男系継承は女性蔑視の制度だという人がいます。これも大きな間違いです。歴史的に天皇は民間から幾多の嫁を迎えてきました。近代以降でも明治天皇・大正天皇・今上天皇の后はいずれも民間出身であらせられます。

ところが、皇室が民間の男性を皇族にしたことは、かつて只の一度の例もありません。男系継承とは、女性を締め出す制度ではなく、むしろ男性を締め出す制度なのです。民間の女性は皇族との結婚で皇族となる可能性がありますが、民間の男性が皇族になる可能性はありません。

皇室の歴史は、『古事記』『日本書紀』の神話にさかのぼります。初代天皇神武天皇の伝説にさかのぼれば、皇室は公称二千六百年の歴史を誇ります。なぜそれほど皇室は続いてきたのか。神話や伝説の時代から変わらぬ伝統を保持してきたからです。

だから皇室では、先例が吉、新儀は不吉なのです。なぜ? と言われても、そういう世界だからとしか言いようがありません。

そのもっとも重要な伝統は、歴代天皇はすべて父親をたどれば天皇に行きつきます。父親が天皇でなければ、その父親、さらに父親とたどりつけば必ず歴代天皇の誰かにたどりつく。これを男系と言いますが、歴代天皇はすべて男系です。天皇になる資格がある人を皇族と言いますが、二千六百年間、皇族全員が男系です。

女性の皇族も、全員が男系です。つまり父親が天皇・皇族です。しかし、民間人と結婚された女性皇族が、その子供を皇族にした例は一度もありません。


ところで、「愛子さまが天皇になれないのは可哀そう」という主張もあります。皇位の継承は、その星に生まれた者の責務なのであって、あたかも甘い汁を吸うかのような権利などでは毛頭ありません。

皇后陛下が失語症になられたこともありました。しかし、見事に克服あそばし、立派に皇后としてのお役割を全うされていらっしゃいますが、皇后だけでも大変なお役割であって、一人の女性が天皇と皇后の両方のお役割を担われるとしたら、それは無理というべきでしょう。

男系継承の原理は簡単に言語で説明できるものではありませんが、この原理を守ってきた日本が、世界で最も長く王朝を維持し現在に至ることは事実です。皇室はだてに二千年以上も続いてきたわけではないのです。

歴史的な皇室制度の完成度は高く、その原理を変更するには余程慎重になるべきです。今を生きる日本人は、先祖から国体を預かり、子孫に受け継ぐ義務があります。何でも好き勝手に変えてよいということはないのです。

以上のことを考慮すると、冒頭の記事にあるように、「旧皇族から適格者に何人か皇族に復帰してもらい、その方自身には皇位継承権は付与せず、その子供から継承権を持つというのはどうか」という考え方が最も理にかなった方法であると思います。

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2018年6月4日月曜日

文在寅大統領誕生に歓喜した韓国の若者、日本へ出稼ぎを検討―【私の論評】枝野理論では駄目!韓国がすぐにやるべきは量的金融緩和!これに尽きる(゚д゚)!

文在寅大統領誕生に歓喜した韓国の若者、日本へ出稼ぎを検討

南北首脳会談(5月26日)

 ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との橋渡しの役割ばかりが最近、目立つ文在寅・韓国大統領。大統領選挙のときに掲げた十大政策ひとつめは、雇用革命により、雇用率を70%にあげ、非正規職を現在の半分にすることだった。韓国の若者の多くが彼を支持したのには、自分たちの苦しい境遇を終わらせる期待が大きかったと言われている。ところが、大統領就任後の文氏がもっとも夢中なのは、北朝鮮問題だ。ライターの森鷹久氏が、裏切られた韓国の若者たちの行き場のない思いをレポートする。

 * * *

 「日本は本当に仕事があるのか? 真剣に日本行きを検討している」

 東京・文京区にある外資系企業で働くミニョンさん(27)の元に、地元である韓国・慶州市に住む友人からメールが届いた。友人といっても高校時代のクラスメイトで、ミニョンさんが大学進学をきっかけに来日して以降は年に一度会うか会わないかという関係。それでも、週に数度はメールのやり取りで、お互いの近況報告を行っている。

 「これまでも、韓国国内の格差や若者の失業率について報じるニュースはたくさんありましたよね。若者と私の故郷に住むような田舎の人たちは、仕事もなく本当に苦しい。でも、大手企業や公務員は優遇されていて、結局は喫緊の問題として深刻に議論される事は少なかったのです」(ミニョンさん)

 2017年の韓国大統領選挙では、親北朝鮮とされる革新派の文・現韓国大統領が選出され、韓国国内には「何かが変わる」という機運が漂った。ミニョンさんの友人も、週末にソウルで行われていた朴槿恵・前韓国大統領や当時政権だった保守派政党に対する反対デモに参加し、文大統領の誕生を心から願い、当選の際には涙を流して歓喜した。もちろん、文候補(当時)は、若者の失業対策にもしっかり取り組んでくれるだろう、という希望的な観測があったからだ。

 「文大統領は北との会談など、歴史的なことをしっかりやってくれています。でも、若者の雇用状況は全く改善されるどころか悪化の一方。選挙の時はお祭り騒ぎでしたが、その後は北の問題でまた国じゅうがお祭りに。結局今も昔も経済についての具体的な話はなされないし、お祭り騒ぎに酔いしれているだけ。その繰り返しなんじゃないか」(ミニョンさん)

 誰もが国の経済を、そして自分の生活を不安視していた。しかし、選挙や南北会談といった熱狂の中でそうしたネガティブなことを言い出せる状況ではなかったのかもしれない。たとえ重要な事実であっても熱狂する人たちの勢いを弱めるようなことは言ってはならない、そういった文化が母国にはあると話すミニョンさん。

 とはいえ、韓国の高級紙である朝鮮日報も今年に入ってから、南北会談などを大きく取り上げる一方で、こっそり「不況・廃業により三か月で32万人が職を失った」「韓国国民がついに経済を心配しだした」などと報じ始めている。大卒者の就職率は依然として7割を切り、全体の失業者数も増えている。仕事があったとしても低賃金重労働。日本でいうところのブラック企業が増加し、国民の不満が溜まらないほうがおかしい状況が長らく続いている。

 思えばこの二~三年、平昌冬季五輪や大統領選挙、そして南北会談と国民にとってのお祭りがずっと続いてきた。そうした熱狂に「水を差すな」という暗黙の了解というか、無言の圧力は我が国にも存在する文化ではある。だが、歴史的な善きことがおこなわれるのだから、苦しい思いを我慢して当然という無言の圧力だけでなく、韓国国民が現実を直視したくない、もしくはすべきではないという雰囲気を、これらの「お祭り」が後押ししたような格好にさえ見える。

 「そもそも日本で仕事をする、日本に行きたい、ということをあまり声高に表明できない。田舎に行くほどそう感じます。(かつて韓国を蹂躙した)日本で稼ぎたいなんて何事か、というわけです。でも若い人たちはみな、韓国に限界を感じている。日本行きを検討している友人は一人ではありません」

 冬季五輪の成功も、南北会談の開催も確かに「歴史的」であり、韓国国民の力を世界に見せつける偉業であったことは事実だ。しかしながら、韓国が「歴史的」で、かつ絶望的な経済状況に追い込まれていることもまた事実ではないのか。お祭りの雰囲気に「騙されるな」とまでは言えないが、誰にも本音を漏らすことなく、熱狂に沸く母国をひっそりあとにしようとする韓国の若者の気持ちが、あまりに軽視されすぎているような気がしてならない。

【私の論評】枝野理論では駄目!韓国がすぐにやるべきは量的金融緩和!これに尽きる(゚д゚)!

上の記事では、文政権の雇用政策などについて何も掲載していないので、以下に簡単にまとめます。

文政権は「所得主導型成長の促進」をスローガンに、「所得の再分配」に主眼をおいた経済政策を行っています。

具体的にいえば、

1)福祉・雇用に財政支出を傾斜配分(2018年度予算15兆ウォンのうち4割程度を配分)
2)公務員数の増加(5年で81万人の雇用増が目標)
3)最低賃金の引き上げ(2020年までに1万ウォンまで引き上げる)

というものです。ここには、先進国で雇用対策といった場合必須ともいわれる、金融緩和策はでてきません。さらには、財政政策もありません。

ところで、前述の所得再分配政策のメニュー(1~3)は全くの間違いです。そして、(2)の公務員数の増加を除けば、日本でも同じような政策が、主に『リベラル』といわれる人たちから提案されています。
ところが、韓国におけるこの政策の影響はかなりネガティブなものです。。
第一点は、公共投資の激減です。
韓国の場合、財政状況はかなり良いです(2017年の財政収支はGDP比で+2.8%、総国家債務残高もGDP比で39.8%)。そのため、景気後退局面には、公的部門の建設投資(公共投資)が景下支えのために発動されてきました。
ところが、文政権の財政政策では、雇用・福祉関連支出への配分が大幅に拡大されたため、公共投資の景気下支え機能の多くが失われつつあります。また、個人消費は安定しているものの、その伸び率はリーマンショックを契機に低下したままであり、改善の兆しはまだみえていません。つまり、公共投資の減少分を消費増が相殺するという状況にはなっていません。
第二点は、雇用環境(特に若年層)のさらなる悪化です。
経済協力開発機構(OECD)が発表した最新のデータとして、2017年第3四半期における韓国の青年(15−24歳)の失業率が10.2%に達したと紹介しています。5年前の12年第3四半期に比べて1.2ポイント上昇し、OECD加盟国ではトルコ、ノルウェー、チリに続いて4番目に高い失業率の上昇ペースとなったとしました。

一方で、同時期におけるOECD加盟国平均の青年失業率は16.2%から12.1%へと低下したと指摘。日本も7.9%から4.9%、米国も16.2%から9.0%へと減ったほか、ドイツや英国もそれぞれ失業率が改善しています。

韓国の若者

このように、韓国の現状の雇用情勢は最悪と言っても良い状況です。それについては、以前もこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
なぜかマスコミが報じない「大卒就職率過去最高」のワケ―【私の論評】金融緩和策が雇用対策であると理解しない方々に悲報!お隣韓国では、緩和せずに最低賃金だけあげ雇用が激減し大失敗(゚д゚)!

日本の大卒就職率は過去最高! 韓国に比較すると天国のようだ。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、まずは韓国の雇用の現状を示した部分のみを以下に引用します。
最低賃金引き上げの影響を大きく受けると認識される業種の雇用が2カ月間で26万件も消えた。就業者数の増加幅は2年連続で10万人台にとどまり、失業率は3月基準で17年ぶりの最高水準となった。 
統計庁が11日に発表した2018年3月の雇用動向によると、先月の卸・小売業と飲食および宿泊業の就業者数は372万3000人と、前年同月比でそれぞれ9万6000人減、2万人減となった。これら業種はアパート警備員などが含まれる事業施設管理・事業支援および賃貸サービス業と共に最低賃金引き上げの影響を大きく受けると認識されている業種だ。
これら3業種は2月にも就業者数が前年同月比で14万5000人減少した。2カ月間でこれら業種の26万人の雇用が消えたということだ。最低賃金の急激な引き上げが雇用に悪影響を及ぼしていると考えられる。
この失敗の原因ははっきりしています。金融緩和をして雇用情勢を良くすることもなく、最低賃金だけ機械的にあげたのが、この大失敗の原因です。

金融緩和をすれば、雇用が良くなることについては、この記事などを参照してください。ここでは、詳細は解説しません。

最低賃金をあげるというなら、まずは金融緩和をして、雇用が創設され、人手不足な状況にすれば、企業が人を確保するために、賃金をあげます。各企業の賃金があがった状況をみはからって、それにあわせて最低賃金をあげるというのがまともなやり方です。

しかし、韓国はこの逆をやって大失敗したわけです。しかし、これは当然といえば、当然です。景気が悪く、雇用情勢も悪いときに、最低賃金だけ上げれば、企業はさらに採用を控えるようになります。そうなると、さらに雇用が悪化するのは当然のなりゆきです。

別に高度な経済や雇用の知識がなくても、常識を働かせれば、そんなことはすぐに理解できます。

しかし、韓国のこの有様、どこかで聴いたことがあるような気がします。そうです。いわゆ、金融緩和に大反対する反アベノミクスというやつです。金融緩和すると、ハイパーインフレになるとか、国債が大暴落するとか、何も変わらないなどという識者が大勢いたことを思い出してしまいます。

このようなおどろおどろしい広告などがみられたが、
結局は国債は暴落しなかったどころか、金利は下がった

日本国内では、安倍政権になってから、2013年4月日銀が量的金融緩和に転じてから、今年で6年目に入りました。しかし、ハイパーインフレにもならず、国債も暴落することもなく、何が変わったことがあったかといえば、先に述べたように雇用が劇的に改善したということです。

その成果は今年も続き、今春の大卒の就職率は98.1%と、日本で記録をとりはじめてから、史上最高という結果になりました。これだけでも、金融緩和に反対する反アベノミクスは間違いだったことが、わかります。

そうして、韓国の現在の有様からも、反アベノミクスは明らかに間違いであることがわかります。しかし、なぜかマスコミはこの事実を報道しません。

日本でも、韓国のように金融緩和をせずに、最低賃金をあげれば、雇用を改善できると語っている人も結構いました。特にリベラル系の人にそのような人が多いです。
立憲民主党代表枝野幸男氏

その代表格は立憲民主党代表の枝野氏かもしれません。枝野幸男代表は、安倍晋三政権に対抗する経済政策を訴えていました。安倍政権のキャッチフレーズ「成長なくして分配なし」を逆転させ、低所得者層への再分配を主張し、法人税率の引き上げにも言及していました。

枝野氏は昨年ロイター通信のインタビューでも、「分配なくして成長なし。内需の拡大のためには適正な分配が先行しなければならない」といい、次のように主張しました。

 「(自民党の)所得税の改革は、本当の富裕層の増税にならず、中間層の増税になっている。何より、企業の内部留保を吐き出させなければだめ。単純に法人税を大幅に増税すればいい」

枝野氏には金融緩和という考えは全くありません。金融緩和をせずに、分配を増やすというのはどういうことかといえば、結局のところ韓国の実施した「金融緩和をせずに最低賃金」をあげるというのと何も変わりません。

枝野氏をはじめとするリベラルの雇用政策は韓国で実行され、大失敗したということです。

ブログ冒頭の韓国の若者の悲惨な状況を改善し、日本のように大卒の就職率を良くするには、分配や最低賃金を最初にあげるのではなく、まずは量的金融緩和を実施すべきです。

韓国にも、大学に経済学部はあるでしようし、まともなマクロ経済を教えている教授もいるはずです。また、韓国の若者の中には、海外に留学して経済を学んでいる人もいることでしょう。彼らが、文在寅の経済政策に異議を唱え、量的金融緩和をするように抗議をしないのはなぜなのでしょうか。本当に不思議です。

とはいえ、かつての日本もそうでした。いや、今でも金融政策と雇用が密接に結びついていることを理解しない人は、リベラルのみならず、保守系の人にも結構います。そういう人が、権力を握ると今の韓国のようになってしまうということです。

働き方改革論争、野党のなかでどこが一番「マシ」だったか―【私の論評】現代社会は数十年前と全く異なることを前提にしない守旧派は社会を破壊する(゚д゚)!

2018年3月1日木曜日

米、北に新たな一手“海上封鎖” 沿岸警備隊のアジア派遣検討 「有事」見据えた措置か―【私の論評】沿岸警備隊派遣の次には、機雷戦?その時には海自が活躍することになる(゚д゚)!


北朝鮮船籍のタンカー(左)と船籍不明の小型船が行う「瀬取り」に米沿岸警備隊の艦艇が目を光らせる

 ドナルド・トランプ米政権が、北朝鮮に“新たな一手”を打ち出す構えを見せている。国連安全保障理事会の制裁に反して、洋上で船から船へ石油などを移し替えて北朝鮮に密輸する「瀬取り」などを阻止するため、米沿岸警備隊のアジア派遣を検討しているのだ。海上臨検のスペシャリストである沿岸警備隊は米国では軍隊と位置付けられ、戦時には海軍の特別部局となることも任務に含まれている。これは、近い将来起こり得る「朝鮮半島有事」を見据えた措置ともいえそうだ。 

米国沿岸警備隊の艦船と航空機

 《米沿岸警備隊のアジア派遣も、北朝鮮の密輸監視を強化へ》

 ロイター通信(日本語版)は2月23日、このような見出しの記事を報じた。米国の強い決意を感じさせた。

 記事によると、トランプ政権とアジアの主要同盟国は、対北朝鮮制裁に違反した疑いのある船舶への臨検強化を準備しており、米沿岸警備隊をアジア太平洋地域に派遣する可能性もあるという。米高官が明らかにした。

 これと符合するように、日本政府が「瀬取り」を監視するため、米国や韓国、オーストラリア、シンガポールなどの関係国に実務者会合を呼びかけていることが、28日までに分かった。

 国際社会の警告を無視した「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮に対し、国連安保理や世界各国は制裁強化を続けている。トランプ政権が23日に発表した「過去最大規模」の独自制裁でも、「瀬取り」などに関与した海運・貿易会社や船舶、個人を対象に米企業との取引などを禁じた。

 北朝鮮の密輸は極めて狡猾だ。

外務、防衛両省は2月27日、北朝鮮船籍のタンカーが24日深夜、中国・上海の東約250キロの東シナ海(公海上)で、モルディブ船籍のタンカーに横付けしていたのを確認し、「瀬取り」の疑いで国連に通報したと発表した。北朝鮮船籍のタンカーは船名を消していた。両省が「瀬取り」の疑い例を公表したのは、1月以降で4例目となる。

 対北朝鮮制裁が効果を発揮するには、「瀬取り」を監視・阻止する「実力部隊」の態勢強化が不可欠となる。そのために派遣が検討されているのが、米国が誇る沿岸警備隊だ。

 英語で「United States Coast Guard」と表記される米沿岸警備隊は、1915年に創設された。陸海空軍、海兵隊とともに軍隊と位置付けられているが、海上での法執行権限を持っている。

 約4万1000人の隊員のほか、予備役約7000人、文官約8600人、ボランティア約3万1000人の人員で海洋の安全維持を図っているが、その任務は多岐にわたっている。

 公海や、米国が管轄する水域での法執行をはじめ、上空からの海上監視、国際合意に基づいた砕氷活動、戦時には海軍の特別部局として機能するよう準備態勢を維持することまで含まれている。

 前出のロイターの記事は《新たな戦略では北朝鮮への海上封鎖に当たらない程度まで、こうした活動の範囲を広げる方針。北朝鮮は海上封鎖は戦争行為に当たると警告している》と指摘していた。

確かに、北朝鮮の朝鮮中央通信は昨年12月、外務省報道官の話として、「(海上封鎖は)主権国家の自主権と尊厳に対する乱暴な侵害行為であり、絶対に容認されない侵略戦争行為である」「(海上封鎖を強行しようとした場合には)われわれに反対する戦争行為と見なすであろうし、無慈悲な自衛的対応措置で応えるであろう」などと威嚇した。

 盗っ人猛々しいとは、まさにこのことだ。

 国際的ルールを破って世界を恫喝(どうかつ)し、乱暴な侵害行為を繰り返しているのは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮である。

 米沿岸警備隊の派遣検討の意味・狙いは何か。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「米海軍は米韓合同軍事演習で忙しく、『瀬取り』のチェックをする余力がないのだろう。純然たる軍隊である海軍を出すよりは、沿岸警備隊を出すことで『戦争になったら米国のせいだ』というような批判を避けたいという意味合いもあるのではないか。一連の圧力を高める姿勢のなかで、1つのステップを踏んでいるということだろう。(『従北』の韓国政府が演出する)南北の融和的ムードとは裏腹に、日米間で合意した『北朝鮮に最大限の圧力を加える』という政策に基本的変化がないことを示していると受け止めた方がいい」と語っている。

【私の論評】沿岸警備隊派遣の次には、機雷戦?その時には海自が活躍することになる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事には、米沿岸警備隊の派遣検討の意味合いについて「一連の圧力を高める姿勢のなかで、1つのステップを踏んでいるということだろう」と記されています。

確かに、これからいきなり本格的な戦争に踏み切るというよりは、着実に制裁の厳しさをましていき、最後の最後で軍事的手段をとるのでしょう。

では、沿岸警備隊を派遣した後で、米国は何をするのでしょう。まず考えられのは、米軍による核関連施設の爆撃ということが考えられます。その後に様子をみて、地上軍の派遣ということになると思います。

しかし、私としてはこれらの前にもうワンステップあるのではないかと考えています。それは、機雷封鎖です。

そうです、北朝鮮の付近の海域に機雷を敷設して、外国の艦艇が北朝鮮に寄港することはもとより、北朝鮮の艦船が北朝鮮から外洋に出ることを阻止するのです。

こうすれば、北朝鮮は完璧に背取りができなくなりますし、北朝鮮や外国が、制裁違反をして、北朝鮮に物資を運ぼうにも海路ではできなくなります。陸路に関しても、北朝鮮中国国境で中国がとりしまりを厳しくすれば、北への制裁は完璧になります。

そうなると、北朝鮮には石油も供給されなくなります。これなら、北朝鮮も制裁に折れるか、最後の賭けに出て、何らかの軍事行動を起こすことになります。そうなると、米国としても軍事行動にかなり出やすくなります。

先日の述べたように、北が核開発をやめるつもりがないのですから、最終的にはこうなるしかありません。

もし、北朝鮮海域に米軍が機雷を敷設したとなれば、これは中国にとってもかなりの脅威になるはずです。まず考えられることは、中国が南シナ海の環礁を埋め立てて設置した軍事基地の周辺に米軍によって機雷が敷設されることも十分考えられます。

そうなると、南シナ海の中国の軍事基地は、補給が困難となり軍事基地として有名無実化します。

そうして、機雷敷設ということになれば、その後は日本の海自が活躍することになりそうです。なぜなら、敷設された機雷はその目的が終了した後には取り除かれなければならないからです。

それに、米軍が北朝鮮の付近に機雷を敷設すれば、それに対抗して北朝鮮も機雷を敷設することが十分に考えられる仮です。

そうして、現状では日本の海上自衛隊の掃海(機雷を取り除く行動)能力が世界一といって良い水準にあるからです。

日本には、大東亜戦争中から、朝鮮戦争、そうして今日に至るまで、大規模な掃海活動の実績があります。

日本の機雷掃海を語るには、まずは世界大戦まで遡らなければいけません。 というのも、日本は先進国の中で、現代まで最も機雷に苦しめられ続けてきた国家だからです。

日本は四海を海に囲まれていて、国土は起伏の多い地形です。必然的に海運が盛んになり、物資の海上輸送量は、大戦時は重量ベースで優に5割を越え、飛行機や自動車が発展した今でも3割以上の割合を占めています。そこで、世界大戦末期に米国は「飢餓作戦」と呼ばれる輸送路断絶作戦を実施。B29爆撃機を使って、爆弾の代わりに機雷を大量に海に沈めていきました。

航空機から投下されるMK25機雷

実に12,000個を越える機雷の効果は絶大でした。本土内の輸送路は鉄道で代替されましたが、大陸からの輸送が途絶え、世界3位の海運国となり海運に依存し始めていた日本国民は飢えに苦しむ事になりました。

この機雷は沈底機雷と呼ばれる底に沈んだまま浮いてこないタイプの機雷で、船舶が通る際に変化する音や磁気、水圧を検知して爆発するものでした。海の底に船の瓦礫や岩などと一緒に沈んでいるため、当時の技術では見つけることは困難で、囮を使って爆発させる方法で掃海する他ありませんでした。

ところがその機雷は、一度の船舶検知では爆発せず何度か船が通りすぎてから爆発するような設定の機雷も存在し、囮や掃海部隊の船が通りすぎ、安全だと言われてやってきた普通の船舶が機雷によって破壊されてしまうようなこともありました。

当時としては技術の粋を集めた先進的な機雷であり、これが終戦後も大量に日本の海に残されました。これを除去するために、米軍によって日本海軍が解体された際にも掃海部隊の人員は残され、以降多くの殉職者を出しながらも掃海部隊は掃海作業に従事しました。そうして、この掃海部隊は朝鮮戦争にも参加しています。

そして、戦争から70年が経った今でも当時の機雷が発見されて解体されています。既に爆発しなくなっているので安全に船は通れますが、海底から何十メートルも上を通る海面の船を破壊できるほど大量の火薬が、機雷に詰まっていることには変わりありません。海底の土砂を汲み上げる際に、機雷に触れてしまって爆発してしまう事故も実際に起こっています。

とは言え、これらの機雷は旧式のものです。しかも、既に動作しなくなっている機雷です。この機雷除去の知識がノウハウとして蓄えられても、現代の高性能な機雷には通用しそうにありません。

しかし、重要なのはそこではないのです。

「機雷がどれほど恐ろしい兵器か誰よりも知っている」というのが、四海を海に囲まれ、多数の海峡を持ち、先進国でもある日本の自衛隊に蓄えられた最大のノウハウであると言えます。

機雷を使われた際の日本の海運被害は他国に比べて極めて甚大で、その機雷を除去する労力は計り知れませんでした。そのために、日本の海自は世界最大規模の掃海部隊を有するに至つたのです。

「日本が高い掃海能力を持っている」というのは、船の質と数という客観的な点からも明らかです。
平成29年度機雷戦訓練(陸奥湾)

<国別掃海艦艇の種類と総数(2014年時点)>
・自衛隊-7種26隻
・米海軍-1種11隻
・仏海軍-3種18隻
・英海軍-2種15隻
・独海軍-3種16隻
驚くべきことに、艦艇の数と種類だけ見ても主要国最大規模を誇っています。世界最大の米海軍が11隻しかいないというのが不思議でなりませんが、実は米海軍はオバマ政権による軍事費縮小のあおりで駆逐艦や哨戒艇、艦載ヘリで機雷探索を行う方針に移っており、「機雷戦艦艇」の数はどんどん減っていく傾向にあります。

確かに、技術の進歩で従来は探知できなかった機雷を遠くから探知出来るようになり、機雷に探知されにくい専用の艦艇を作らなくても機雷を除去出来るようにはなってきています。しかし、機雷対策を施していない通常艦はステルス型の機雷掃討などには不向きで、米海軍は湾岸戦争の際に少なからず被害を被っています。

さらに言えば、米国は機雷が仕掛けられたら致命傷となるような海域が少なく、機雷対策が軽視されていると言うのも機雷戦艦艇が少ない理由の一つでしょう。

一方、フランス・ドイツ・イギリスは、ドーバー海峡の制海権を巡って世界大戦時に苛烈な機雷戦を繰り広げているため、機雷の恐ろしさは身に沁みていることでしょう。現代でも、敵対国家によってドーバー海峡に機雷が仕掛けられればとんでもない事態に追い込まれるため、機雷掃海艇の整備は非常に重要な意味を持っています。

そんな他国と比べて見ても、日本の7種類26艦艇と言うのは多すぎるようにも思われます。

しかし、日本は同じ島国であるイギリスより海岸線が広く、そして海峡の数も数倍以上あります。さらに、上述した飢餓作戦時に大きな被害が出た内海への機雷敷設は日本の海を航行する船舶にとって大きな脅威となるため、機雷戦艦艇が他国より多く必要なのです。それに、日本が経済大国であるということが、それを可能にしています。

さらに、離島も多い日本の領海をカバーするために、より大型の艦艇が必要となり、先進国では唯一掃海専用の掃海母艦を保有しています。この掃海母艦は掃海用の艦載ヘリのための母艦であり、米国などの場合は強襲揚陸艦などで代用されます。

うらが型掃海母艦1番艦の「うらが」(手前)

日本もおおすみ型揚陸艦を保有していますが、掃海母艦として運用するにはそもそも大きすぎる上、米海軍が揚陸艦を掃海母艦とするのは、「掃海作業が揚陸作業に必要」だからであり、掃海が主任務ではないからです。

現在日本は、掃海母艦(大型)2隻、掃海艦(中型)3隻、掃海艇(小型)19隻、掃海管制艇(ダイバー支援)2隻を保有しています。これほどの陣容を整えているのは、まず日本だけです。

以上で述べたように、日本が世界最大規模の機雷掃海部隊を持っています。しかし、それは日本と言う国が機雷に弱い国(海岸線が長く、海峡が多い上、離島が多い)だからというだけで、世界の海を守るためではありません。

しかし、原子力空母に原子力潜水艦、大量の航空機を保有するような、米国の海軍が最低限の掃海部隊しか保有していない以上、万が一、タンカーの航路に機雷が敷設されたら米国以外の掃海部隊も対応しなければなりません。

結局、上陸作戦に支障をきたすほど大量の機雷が設置された湾岸戦争後、ペルシャ湾掃海などに日本が駆り出されることになりました。

実をいうと、ペルシャ湾に派遣された当初は日本の掃海部隊は、まだ現在ほどの陣容は整っていませんでした。そのため、「練度なら負けない」と意気込んでいた海自は、ペルシャ湾で遭遇したステルス機雷などの新型機雷を見て、装備がまだ不十分だと感じ、掃海母艦や新型掃海艇などが作られることになったのです。

イラク戦争時に米に回収されたイラク軍の
MANTA機雷(音響型)ソナーで探知しにくい
そして、日本の海自は本当の意味で世界最高クラスの掃海部隊を有するようになりました。

仮に中東の海峡に機雷が仕掛けられタンカーの航行に危険が生じた場合、実のところ米海軍や現地の海軍に任せるより、日本の自衛隊がやるほうが「確実」なのです。日本と同クラスの掃海艦艇を備えるのは英海軍(それでも海自より旧式)くらいで、今まではこう言った活動は英国が中心にやってきました。

英国に任せても良いでしょう。絶対に日本がやらなければいけない仕事ではありません。しかし、タンカーの乗員や石油の輸送路を確保する上で、日本の力が確実に役に立つのです。危険な作業ではありますが、最新の機器に艦艇を備える海自であれば、他国の海軍がやるよりは安全に作業出来るでしょう。

もちろん、掃海部隊の海外派遣は、「安全な石油の輸送には危険に見合うだけの利益が日本にある」と考えられますし、日本人の乗った船舶が機雷の危険にさらされる可能性もあります。

また、日本の海外貢献アピールや集団的自衛権の実践などの政治的問題も絡んでくるでしょう。しかし、それでも、ペルシャ湾の「機雷掃海」が行われた理由は、「機雷掃海によって敵を殺すことはない」ことと「日本の掃海部隊の能力が高いから」というところにあるのです。

そうして、北に対する日米間で合意した『北朝鮮に最大限の圧力を加える』という政策を支持する同盟国の日本の掃海能力が高いことが、北制裁を徹底強化したい米軍の機雷敷設を後押しすることになるかもしれません。

機雷封鎖による北への圧力は相当なものになるはずです。物資の遮断はもとより、心理的圧迫も極度に高まります。漁船も遠洋には出ることができなくなります。当然大和堆での、漁業もできなくなり、日本に漂着する漁船もなくなります。

これは、一つの事例に過ぎず、北による日米の圧力はときが経てば経つほど大きくなっていきます。北朝鮮は覚悟を決めなければなりません。日米は、北を核保有国として認めることはしません。

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2018年2月15日木曜日

「工作員妄想」こそ妄想だったスリーパーセル問題―【私の論評】日本の安保でもあらゆる可能性を検討すべき(゚д゚)!

「工作員妄想」こそ妄想だったスリーパーセル問題



三浦瑠麗さんの「ワイドナショー」での発言に端を発する「工作員問題」。これに対する古谷経衡氏の反論が、放送から2日後にアップされ、一時はyahooトップにまで掲載されていました。

この記事に対してツイッター上ではすでに多くの方からの批判的指摘が飛んでおり、またアゴラでも新田編集長が指摘されていますが、古谷氏の記事には明白な事実誤認があるので、きちんと指摘する必要があるのではないかと思います。

というのも、yahooトップに掲載されたとなれば、そのビュー数は数百万に達したものと思われます。明らかな事実誤認のある記事に乗っかったまま「『スリーパーセル』は三浦瑠麗の頭の中にだけある存在」などと三浦批判をしている人も散見され、これはさすがにきちんと指摘すべきだろうと思うわけです。

①「スリーパーセル=潜伏する工作員」は実在する―『警察白書』より

古谷氏は当該記事の中で公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望(平29年)」を引用し、ここに「スリーパーセルなる文字がない」ことを理由に、その存在を〈三浦氏の発言は、根拠の無い「工作員妄想」の一種と言わざるを得ないのでは無いか〉〈三浦氏にだけその存在が知られている「スリーパーセル」〉などとしていますが、『警察白書』(平成29年)にはこうあります。

〈北朝鮮は、我が国においても、潜伏する工作員等を通じて活発に各種情報収集活動を行っているとみられるほか(以下略)〉


この「潜伏する工作員」こそ「スリーパー(セル)」であり、普段は通常の人々と同じような仕事をしながら(=潜伏)、一方で総連などに情報提供をしている人がいることを指摘しています。スリーパー(セル)などと検索すれば「潜伏工作員」との訳が出てきますので、仮に初耳だとしても記事を書こうと思えば検索してみるくらいはするでしょう。

もちろん彼らが、一旦緩急あればテロリストに変貌するのかどうかまでは分かりません。しかもそれが、金正恩が斃れた後に……という話はあくまで三浦氏が考えた可能性の範疇ですので批判されても仕方はないと思います。が、古谷氏の記事の中の、少なくとも〈三浦氏にだけその存在が知られている「スリーパーセル」〉なる一文は明確な誤りと指摘できるでしょう。

②公安調査庁と警察の公安部は別物

もう一つ、古谷氏の文章で問題があるのは、公安調査庁と警察の公安部門の混同です。

当該記事で公安調査庁が発表した「内外情勢の回顧と展望」を引き、そこに「スリーパー(あるいは工作員)の文字がない」として三浦氏の言及を「妄想」としていますが、記事中で公安調査庁は「公安当局」と変化し、さらに「我が公安警察」となり、最後は「我が公安や警察」となっています。

古谷氏の認識は定かではありませんが、公安調査庁の文書を引き、『警察白書』を引かずにいることから、公安調査庁と警察の公安部門が別の組織であることを知らないか混同しているのではないかと思います。

公安調査庁は法務省の外局であり、警察の公安部門は都道府県警察本部の警備局に「公安課」として設置されているほか、警視庁は「公安部」を持っています。同じ「公安」でも別組織です。

当該記事の「公安当局」が何を指しているのか不明ですが、少なくとも公安部(公安課)を持つ警察の資料である『警察白書』には「潜入する工作員」の文字があるので、〈公安当局による報告書の中には「スリーパーセル」なる特殊工作員や活動家の記述は一切存在していない〉との記述は誤りでしょう。

以上の通り、二点の単純な事実誤認について、ご本人は早急に本文を訂正するべきと思います。

これを機会に、学びましょう

それにしても、第三者のチェックが入らないままアップされ拡散されてしまうのがネット記事の怖いところ。私も他人事ではありません。この記事だって、誤りがあればすぐに修正しなければなりません。

公安調査庁と警察の区別がついていないなどの事実誤認を含んだ記事がそのままウェブ上に掲示され、一部からは好評を得てさえいる一方、確かにざっくりとした指摘の中で具体的な地名を出したり、引用元の一つに不用意なネタ元をつかってしまったとはいえ、三浦氏の発言は批判されるだけでなく「大学に通報しろ」だとか、「同僚としてある行動をとった」などと仄めかすような文言まで飛び交っているというのはどうもおかしな感じがします。この記事のように、とすると幾分手前味噌感が臭いますが、ただただ普通に、論拠を示して淡々と「ここがおかしいと思う」と指摘するだけではいけないのでしょうか? 

三浦氏が大阪という地名を出したことについても、私は差別とは思いません。皇居や国会、官庁街がある東京に比べて警戒度は低いながら地下鉄や商業施設、イベント施設などがある大都市を狙うのはテロリストからすれば十分あり得る発想ですし、例えば東京五輪の時であれば「開催地以外の大都市」が狙われるのも、危機管理の専門家が指摘するところです。テロの発動条件は議論されてしかるべきであっても、テロの危険性がある都市の一つの例として大阪を挙げることに不自然はありません。

地名を挙げたのがダメだ、差別だという文脈で言うならば、三浦氏が挙げてもいない「あいりん地区」「鶴橋」「生野区」などさらに具体的な地名を挙げて「今は大丈夫だけど過去はやばかった」的な記述をしてしまった古谷氏の方が非難されるべきなのではないかと思わなくもありません。それに工作員は必ずしも在日外国人や外国出身者に限らないのです。

とはいえ、私を含め、工作員や公安の在り方、あるいはテロの可能性についてほとんどの人はそうそう普段から考えてもいないと思いますので、これを機にみんな勉強したらいいのではないでしょうか! いや、本当にいい機会だと思います。

【私の論評】日本の安保でもあらゆる可能性を検討すべき(゚д゚)!

スリーパーセルかどうかは別にして、日本は元々スパイ天国で、各国のスパイが日本国内に多数存在しているのは、間違いないものと思います。そうして、そのスパイはときどきその存在が発覚し、テレビなどで報道して私達も目にすることになるのですが、それ以外は滅多に表には出てきません。

そもそも、スパイがすぐにそれとわかるようではスパイとはいえません。隠密裏に行動すして誰にも知られないよう行動するからスパイなのです。

しかし、それが時々表に出て来ることもあります。その典型的なものが以下の新聞記事です。

北朝鮮が日本国内から韓国内の工作員を操っていた!「225局」活動の一端とは
産経新聞 2月11日(木)17時0分配信 2016.2.11 17:30
ニュース番組やワイドショーが元プロ野球選手、清原和博容疑者(48)の報道一色になった今月2日、警視庁公安部がある重大事件を摘発していた。北朝鮮が日本国内で展開していた工作活動の一端があぶり出されたのだ。 
工作を主導したのは北の対外情報機関「225局」。容疑者は日本で教育者を装いつつ、韓国内で活動する工作員に指示を伝える役割を果たしていたとされる。 
日本国内から韓国内の工作員を動かしていたとみられるこの事件。「スパイ天国」とも揶揄(やゆ)される日本で、外国の諜報機関が跋扈(ばっこ)する実態が浮かび上がった。
これらのスパイの中に、スリーパセルも存在するかもしれないと考えるのは、突飛な考えではないし、むしろ妥当な考え方だと思います。

そうしてアゴラの新田編集長が指摘していた、10年前に毎日新聞で阪神大震災のときに、ある被災地の瓦礫から工作員のものとみられる迫撃砲などの武器が発見されたという報道がなされていますが、その記事が下の写真です。

阪神淡路大震災の時といえば、瓦礫にはさまっている人達を助ける為に海自の護衛艦に陸自の救出部隊を載せ向かったのですが、結局神戸港に接岸出来なかったということがありました。一部の神戸市民から『戦争の船は来るな!』と抗議されたためであるとされています。

今なら考えられないですが、そのような風潮がこの時代にあったのは確かで、だからこそ阪神淡路大震災のときには、このニュースが報道されなかったのでしょう。

さて、北朝鮮の工作員による工作活動の可能性については昨年このブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮有事が日本に突きつける8つのリスク【評論家・江崎道朗】―【私の論評】 森友学園問題で時間を浪費するな!いまそこにある危機に備えよ(゚д゚)!
江崎道朗氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、江崎道朗氏は北朝鮮の工作員の破壊活動に関して以下のように言及しています。
  第3に、北朝鮮はすでに日本国内に多数のテロリストを送り込んでいて、いざとなれば発電所や交通機関などを攻撃する可能性が高い。 
 天然痘ウイルスをまき散らすといった生物・化学兵器を使用する恐れもある。天然痘ウイルスの感染力は非常に強いことで知られていて、感染者からの飛沫や体液が口、鼻、咽頭粘膜に入ることで感染する。北朝鮮は、天然痘感染者を山手線に乗せて一気に関東全体に広める生物兵器テロを計画しているという話もあり、こうした危機を前提に、ワクチンの準備も含め地方自治体、医療機関が予め対処方針を立てておく必要があるだろう。
このような危機の可能性は、全くあり得ないこととして、否定することはできないです。三浦氏は12日、自身のブログで「正直、このレベルの発言が難しいとなれば、この国でまともな安保議論をすることは不可能」と反論しています。

スリーパー・セルの問題をデマや差別問題としてしまえば、それこそ北朝鮮のかく乱作戦の術中にハマることになりかねないです。

スリーパーセルの存在の可能性に関して、蓋をしてしまい全く論議をしなければ、その脅威が消えるというわけではありません。むしろ、スリーパーセルの存在もあり得るものとして、それを確かめたり、あるいはその危機が現実のものになった場合を想定してどのように行動するのか、予め定めておけけば、混乱を防ぐことができるはずです。

もし、スーパーセルなるものが存在しなけば、それはそれで良いことですが、もしも存在した場合どのようなことになるか、何も考えていなけば、とんでもないことになるだけです。

平和憲法があれば、これを防げるなどということは絶対にないです。安保では、あらゆる可能性を含めて検討すべきであり、タブーなどをもうけてある問題からは、目をそらすということは許されません。

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2018年1月28日日曜日

トランプ大統領がTPP復帰検討「有利な条件なら」 完全否定から大転換した理由―【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!


ダボス会議で演説したトランプ大統領は、「米国でビジネスを行うには最良の時期だ」と訴えた
 ドナルド・トランプ米大統領は、米CNBCテレビのインタビューで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への復帰を検討する用意があると表明した。復帰を完全否定していた従来の政権方針を大転換する発言といえる。米国の復帰が実現すれば、アジア太平洋地域をカバーする貿易・投資ルール確立という、TPPの本来の目的が達成されそうだ。

 「米国にとってより有利な条件になるならば、TPPをやる」

 トランプ氏は25日、スイス・ダボスで行われたインタビューでこう語った。トランプ氏がTPP復帰に言及したのは初めて。復帰を検討する具体的な条件には言及しなかった。

 トランプ氏は大統領就任直後の昨年1月、TPPから永久に離脱するとの大統領令に署名した。通商政策では2国間交渉を重視し、日本とは自由貿易協定(FTA)も視野に経済対話を始めた。

 通商政策の柱とする2国間交渉が思うように進まないなか、米国を除くTPP参加11カ国が新協定に合意し、早ければ2019年に発効する見通しになったことが、復帰検討の背景にあるとみられる。

 ただ、トランプ氏は「現在のTPPはひどい協定だ」と従来の認識を改めて強調し、離脱を決めた昨年の政権の判断を肯定した。

 TPPを推進する安倍晋三政権としては、米国の再加入に向け、関係が良好なトランプ政権への働きかけを強める方針だ。

 トランプ政権はこれまで、TPPや、気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」などの多国間協定に敵対的な姿勢を示してきた。ところが、トランプ氏は今月中旬、パリ協定についても「ことによっては復帰も考えられる」と復帰の可能性に言及していた。

 トランプ氏は現在、スイスでの世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に参加している。

【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!

TPPといえば、ひところTPP芸人と呼ばれる「TPPに加入すれば日本は完璧に米国の属国になる」という極論を吐く一団がいました。

そもそも、TPPとは何かといえば、通商交渉です。戦後の通商交渉の歴史を少しでもかじれば、どういう流れかわかるはずですが、なぜかこれら芸人たちは大騒ぎを繰り返しました。私も、一時この大騒ぎに取り込まれそうになりました。

そうして、これらの芸人たちは、トランプ氏が大統領になった直後TPPから離脱することを公表して以来誰も信用しなくなりました。

TPP芸人らによれば、TPPはアメリカが日本を再占領する亡国最終兵器だったはずです。

一時期、善良な人の無知に付け込み、恐怖で人を煽る「TPP商法」がかなり流行っていました。
不可思議なTPP芸人の主張
TPP芸人の主張は、「TPPは日本の国体を破壊する」、「TPPに交渉参加を表明した瞬間、日本は抜けられなくなりアメリカの言いなりになる」、「TPPにはISD条項と言う恐ろしい条項があり、関税自主権が無くなる」等など、とてつもないデマを飛ばしていました。
TPPなどという国際的な行政問題などに普通の人間が関心を持つはずもないですし、その実体についても知らないのが当たり前です。TPP芸人どもが悪徳商法として成功したのは、単なるマイナー問題を、さも国際政治的な大問題の如く信じ込ませたという一点につきると思います。
その人たち、今はどんな言論をしているのでしょうか。涼しい顔をして、何もなかったような顔をしています。

私は、TPPに関してはこのブログにはあまりとりあげませんでした、というのも反対論者の語ることが胡散臭いと思ったからです。

通商交渉の歴史をたどれば、TPPのような交渉は賛成の立場の側が通すのに苦労する条約だからです。にもかかわらず、反対派はすべての戦力をTPP反対に注げと煽っていました。

この有様は、戦前、「英米の世界支配に対抗せよ」と言いながら、ソ連の存在を華麗にスルーした偽装転向右翼と同じような臭いを感じさせました。

戦前日本にはスターリンのソ連を華麗にスルーした偽装転向右翼が存在した
TPPは成長市場であるアジア地域で遅れていた知的財産保護などのルールを作りました。社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れました。TPPが棚上げとなれば各国の国内改革の動きも止まってしまうことになります。

TPP合意を機に、日本の地方の中小企業や農業関係者の海外市場への関心は高まっていました。電子商取引の信頼性を確保するルールなどは中小企業などの海外展開を後押しするものです。日の目を見ないで放置しておくのは、本当に勿体無いです。

さて、米国が離脱したままTPP11が発効して、それに対して中国が入りたいという要望を持つことは十分に考えられます。

ただし、中国はすぐにTPPに加入させるわけにはいかないでしょう。中国が加入するには、現状のように国内でのブラックな産業構造を転換させなければ、それこそトランプ氏が主張するようにブラック産業によって虐げられた労働者の労働による不当に安い製品が米国に輸入されているように、TPP加盟国に輸入されることとなり、そもそも自由貿易など成り立たなくなります。


このあたりのことを理解したため、トランプ大統領は、TPPに入ることを決心するかもしれません。そもそも、政治家としての経験のないトランプ大統領は、これを理解していなかっただけかもしれません。だからこそ、完全否定から大転換したのかもしれません。

そうして、これを理解して、それが米国の利益にもなると理解すれば、意外とすんなり加入するかもしれません。

中国がどうしても、TPPに参加したいというのなら、社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れたのと同じように、中国国内の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければならないでしょう。

それによって、中国自体の構造改革が進むことになります。こうして、TPPにより、中国の体制を変えることにもつなげることも可能です。

しかし、改革を実行しない限りTPPは中国抜きで、自由貿易を進めることになり、結果として環太平洋地域において、中国包囲網ができあがることになります。

大統領に就任した直後のトランプ大統領は、このような可能性を見ることができなかったのでしょう。しかし、最近はその可能性に目覚め、完全否定から大転換したのでしょう。

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