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2020年4月24日金曜日

政府景気判断、11年ぶり「悪化」 4月の月例経済報告―【私の論評】今後維新の動きをみて、安倍総理は衆院解散総選挙に踏み切る(゚д゚)!


テレビ会議で開催された月例経済報告関係閣僚会議に臨む安倍首相(23日、首相官邸)

政府は23日にまとめた4月の月例経済報告で、景気について「急速に悪化しており、極めて厳しい状況」との判断を示した。「悪化」の表現を使うのはリーマン・ショックの影響が残る2009年5月以来ほぼ11年ぶり。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動の制約が強まり、消費や生産、雇用などの足元の指標が総崩れとなっている。先行きも「極めて厳しい状況が続く」と記した。
同日夕の関係閣僚会議で西村康稔経済財政・再生相が報告した。政府は2月まで「緩やかに回復」としていた景気判断を、3月に「大幅に下押しされている」に引き下げたばかり。急速な感染拡大を受けて、2カ月連続で景気判断を下方修正した。「急速な悪化が続いており、厳しい状況」としていたリーマン危機後の09年2~4月の景気判断よりも厳しい認識を示した。

西村氏は記者会見で「家計や企業の経済活動が急速に縮小する過去に例を見ない、極めて厳しい状況だ」と述べた。

個別の14項目のうち個人消費、輸出、生産、企業収益、業況判断、雇用情勢の6項目で現状認識を引き下げた。

内需の過半を占める個人消費は、判断を2カ月続けて下げ「急速に減少している」とした。判断にあたってはナウキャスト(東京・千代田)がまとめたJCBカードの購買データを参考にした。3月後半の1人当たりの支出は外食が前年同期比14.2%減、旅行が13.8%減となった。家具などの耐久消費財も売れ行きが落ち込んだ。

3月の景気ウオッチャー調査では、飲食やサービス関連で働く人の景況感が急速に冷え込み、リーマン危機を下回る過去最悪の水準に沈んだ。すでに政府は緊急事態宣言の対象を全国に広げ、外出や移動の自粛を徹底するよう求めている。例年なら消費が盛り上がる5月の大型連休も新幹線の予約が前年比9割減となっている。

製造業にも影響が広がっており、政府は生産の現状認識を4カ月ぶりに下げた。

東芝は20日から5月6日まで、工場を含む国内の全拠点の臨時休業を決めた。地方でも外出自粛で、思うように工場を稼働できなくなりつつある。需要減とあわせて生産には打撃だ。内閣府の試算では、世界的な需要減や部品供給の制約で4月の自動車の生産は前年同月から29.1%減る。

雇用情勢は失業者が急増している欧米に比べると落ち着いているようにみえるが、政府は「弱い動きがみられる」と判断した。需要の急激な消失を受け、求人数は製造業を中心に減少している。内閣府がハローワークのオンライン求人票の求人数を集計したところ、4月は23日時点で前年同期比20%減。2月の12%減、3月の16%減から減少幅は拡大している。

関係閣僚会議で配られた資料には「影響が大きい観光・飲食・イベント関連業種での雇用調整助成金の活用がカギ」との一節がある。客観的なデータの分析が中心の月例経済報告の資料では異例の記述で、失業者が増えることへの政府の強い危機感がにじむ。

第一生命経済研究所の新家義貴氏は「経済の正常化はある程度の時間をかけて段階的に進めざるを得ない。景気のV字回復は難しい」とみている。

【私の論評】今後維新の動きをみて、安倍総理は衆院解散総選挙に踏み切る(゚д゚)!

安倍晋三首相は昨年8月1日、浜田宏一内閣官房参与と首相官邸で会談し、10月の消費税率10%への引き上げをめぐり意見交換していました。浜田氏によると、首相は「リーマン・ショック級のことは起こらないだろう」との見通しを示し、予定通り増税する考えを説明しました。

首相は増税に伴う消費落ち込み防止のため、自動車や住宅の購入者への税負担軽減策を講じたことに言及し、「(現時点で)駆け込み需要がないということは、落ち込みも少ないのではないか」とも発言したとされています。

確かに増税した10月には、リーマンショック級の経済危機は発生しなかったのですが、今年1月には、武漢ウイルスの感染が報じられており、その後は日本も感染者が増大し、個人消費などの経済活動が停滞し、今日に至っています。

現在政府は、冒頭の記事にもあるとおり、リーマンショック級の景気低迷を認めているわけです。安倍さんはリーマンショック級の経済危機がなければ消費増税として、消費増税に踏み切ったわけですから、消費減税する大義名分ができたと言っても良い状況です。

さらに、消費税減税を実施するための小さな一歩として、注目すべきことがあります。それは、目黒区長選挙です。この選挙では、維新が候補者を出して注目を浴びていました。この小さな一歩は今後大きな動きになる可能性を秘めています。

その結果を以下に掲載します。


任期満了に伴う目黒区長選(東京都)は19日投開票され、無所属現職の青木英二氏(65)=自民、公明推薦=が3万178票(得票率39.9%)を獲得し、無所属の新人で元区議の山本紘子氏(43)=立憲、共産、社民推薦=と、維新の新人で医師の田淵正文氏(61)を退けて、5選を果たしました。

さて、この選挙の意義については、以前このブログで解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
産経・FNN合同世論調査 立民の支持率急落 維新が野党トップ―【私の論評】目黒区長選挙は、安倍総理の起死回生につながるか? 
吉村洋文大阪府知事
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
この選挙、コロナ感染下であることもあり、将来の国政選挙の趨勢を占うのには良い機会となるかもしれません。 
この選挙の結果で、安倍総理は衆院解散の決意を固めるかもしれません。このブログにも掲載してきたように、安倍政権は消費税減税を実施しないなど、首をかしげるような経済政策を実行中です。 
これは、このブログで解説したように、やはり緊縮病に冒された財務省の官僚が、与党議員にもその強力な感染力で緊縮病を感染させているからです。緊縮病に冒された、議員はコロナ禍の最中にあっても、緊縮をすることが、日本を救うと本気で思っているようです。 
これだけ、自民党が緊縮病に冒されていれば、安倍総理もいかんともし難いところがあります。無論、安倍政権が悪い、安倍総理が悪いという側面は否定できませんが、財務省が、緊縮を省是として貫いてきたことも事実です。 
財務省の緊縮病を、マスコミも、政府も、どの政党も、識者などのいずれの勢力も防ぐことができなかったのも事実です。その結果、つけあがった財務官僚は、平成年間の全期間を緊縮財政を実施し、令和年間もそれを押し通そうとしています。 
このままだと、景気は最悪になり、復旧するにもかなりの時間がかかりそうです。いまのままだと、安倍総理は念願の憲法改正もかなわず、二度の消費税増税で景気を悪化させた総理大臣として歴史に刻まれることになります。 
安倍総理の起死回生策は、消費税減税、追加経済対策、憲法改正を公約として、解散総選挙を実施して大勝利する以外にはなさそうです。 
憲法改正にはできれば、緊急事態条項を盛り込むべきです。もし、この選挙で維新が躍進すれば、憲法改正ができる見込みが高まることでしょう。 
そうして、自民の反緊縮派議員と、維新の反緊縮は議員が強力して、消費税減税と、追加経済対策を強力に推進すべきです。 
その意味で、目黒区長選挙の趨勢は、日本の将来を占う上でも重要な選挙と位置づけることができると思います。
今回の選挙では、自民、公明推薦の、青木氏が当選しました。維新は、落選しているものの、得票数としては、青木氏や山本氏と同じ桁数を得票しています。自公、維新あわせると、64.%を占めています。東京の区長選でこれだけ得票したことは、維新の躍進とみても間違いないと思います。今後の都知事選でも躍進が期待できそうです。

維新の参議院議員音喜多氏は、維新の消費税減税の動きについて以下の動画で語っています。



減税に関しては、公明党はいざしらず、安倍総理は維新と利害が一致しており、本当のところは、減税したいのがやまやまなのですが、財務省と財務省の緊縮病に冒された、党幹部の存在が、減税から程遠い実体になっています。

ただし、公明党も支持母体からの減税への要望が大きくなり、減税に傾くかもしれません。

憲法改正に関しては、自民党内部にも賛成する議員も多く、維新も改憲推進派です。

次の衆院選で、安倍総理が消費税減税を含む追加経済対策と、憲法改正を公約として、大勝利し自公・維新で2/3以上の議席を占めた場合、減税も、憲法改正もできる可能性がかなり高まることになります。

今後の7月の都知事選挙なども注目です。ここで、維新の動きを見定めて、有利と見た場合、秋頃に衆院解散総選挙というシナリオは十分ありそうな気配となってきました。

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2020年3月23日月曜日

東京五輪「中止」は回避 安倍首相とIOCの利害一致 「延期」容認に入念にすりあわせ―【私の論評】今こそ、オリンピックを開催しても経済が悪化した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

東京五輪「中止」は回避 安倍首相とIOCの利害一致 「延期」容認に入念にすりあわせ

IOCバッハ会長(左)と安倍総理(右)

安倍晋三首相は23日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7月の東京五輪の開催延期を容認する考えを初めて示した。首相が先進7カ国(G7)首脳による16日の緊急テレビ電話会議で、五輪を「完全な形で実施したい」と語ったことを受け、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が柔軟な姿勢に転じたとみられる。首相もIOCも「中止」の判断だけは避けたかったようで、22日には大会組織委員会の森喜朗会長を挟み、入念なすりあわせが行われた。

 「トランプ米大統領をはじめ、G7の首脳も私の判断を支持してくれると考えている。判断を行うのはIOCだが、中止が選択肢にない点はIOCも同様だ」

 首相は23日の参院予算委員会で、IOCが4週間以内に延期も含めて検討を進めることに理解を示しつつ、東京五輪そのものが「中止」とはならないことを強調した。

 中止となれば、これまでの準備の多くが水泡に帰すばかりでなく、日本経済に及ぼす悪影響は「延期」の比ではない。IOC側も五輪開催が1回分吹き飛べば、スポンサー料など収入面で甚大な被害を受ける。

 首相は、G7首脳に「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」として、規模縮小や無観客ではなく「完全な形で実施したい」と根回しし、「中止」の選択肢を消すことに努めた。大会組織委幹部は「首相のG7での振る舞いを見て、利害の一致したIOCが延期を含めた検討を始めた」と解説する。

 「好都合だった」と森氏も振り返る。これまでは、感染がどう広がるか分からない現状で、早々と結論を決めるのは得策でないとして、決断を5月下旬頃まで先送りする案もあった。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中で日を追うごとに深刻化していた。連日のように各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)や競技団体、現役アスリートらが声を上げ、組織委への風当たりは強まっていた。

 森氏は23日の記者会見で「われわれもIOCと話を合わせたいと、月曜日(23日)から(電話会議を)やろうと思っていた。(開催が)早まり、よかった」と打ち明ける。組織委側がバッハ氏から「延期」という単語を聞いたのは22日が初めてというが、事実上、電話会議が決まった時点で延期の検討は決まっていたのかもしれない。

 森氏は22日、首相や東京都の小池百合子知事らと電話で対応を協議し、特に首相とは3回も連絡を取り合った。首相は、IOC側が延期を決断した際、受け入れる考えも示したという。首相は23日の参院予算委でこう強調した。

 「世界中のアスリートがしっかり練習でき、世界からしっかり参加していただき、アスリートや観客が安心できる形で開催したい」(森本利優、原川貴郎)

【私の論評】今こそ、五輪を開催しても経済が悪化した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

オリンピックの開催は、やはり延期にした方が良いです。たとえ、7月24日までに日本で武漢肺炎が終息したとしても、他国がどうなっているかはわかりません。

以下のグラフをご覧になって下さい。


これは、新型コロナウイルス 第1感染者確認後のグラフです。 3/22時点の感染者数累計は、 日本(1101)、韓国(8897)、イタリア(59138)、イラン(21638)、フランス(15810)、ドイツ(24806)、スペイン(28603)、アメリカ(32582)です。

このグラフでもわかるように、日本は、いまのところ感染の封じ込めに相対的に他国よりも成功しています。このグラフは単純に感染者数の比較をしていますが、日本の場合は人口が1億2千万人ですが、先進国では米国の人口は3億人ですが、その他の先進国は数千万人です。

人口10万人あたりの、感染者数などで比較すれば、韓国、イタリア、フランス、ドイツ、スペインなどは、さらに悲惨な状況であることがわかるでしょう。

これらの国々にすれば、現状ではオリンピックどころではなく、感染症対策で精一杯でしょう。

さらに、日本だって今までは、感染封じ込めに成功してきたようですが、これからはどうなるかはわかりません。

小池百合子東京都知事

新型コロナウイルス対策について東京都の小池百合子知事は、23日の記者会見で「感染の爆発的な増加を避けるためロックダウン(都市封鎖)など強力な措置を取らざるを得ない状況が出てくる可能性がある」と述べています。ネット上ではこれに反応し『東京封鎖』『ロックダウン』という言葉がツイッターのトレンド入りし、さまざな憶測や不安が飛び交いました。

小池知事は封鎖について「何としても避けなければならない」とイベント自粛継続などへ協力を呼び掛けました。ネット上では「封鎖するのは警察?自衛隊?」「山手線も止まるのか」「検問所どれだけ必要なの」「仕事は?給料は??」との声が相次ぎました。映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』の主人公・織田裕二が発した「レインボーブリッジ封鎖できません!」のセリフを連想して「映画みたいなこと本当に起きるの?」と疑問を抱く人もいました。

飲食店閉鎖などの措置が実施されている海外からは「友達とも自由に会えない状況だけど、みんな頑張ってる。私も頑張ろう!」との反応もありました。相次ぐ新型コロナ関連のニュースに「流行が早く終わったらいいな。明るく笑いながら、何気ない日常を過ごしたいな」と切望する声もありました。

無論、小池百合子知事の「ロックダウン」という言葉は、最悪のシナリオを想定したものですが、それにしても全くあり得ないとはいえません。

運悪く、東京がロックダウンされれば、当然のことながらオリンピックは開催できません。そうした可能性もあるのですから、やはりここは、延期すべきでしょう。

オリンピックを延期とか、中止などというとすぐに経済の落ち込みを心配する人もいますが、日本や米国などの経済規模がかなり大きな国では、オリンピックの経済効果は実はさほどでもありません。それよりも、個人消費を伸ばしたほうがはるかに、経済効果は高いです。

これに関しては、良い事例があります。それは、2012年のロンドンオリンピックです。英国は、オリンピックの直前に付加価値税(日本の消費税に相当)を大幅にあげ、大失敗しています。日本でも、オリンピックの前年である昨年に消費税を上げて大失敗しています。

英国は量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。 その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。

このようなことを主張すると、英国の財政は日本よりも良い状況だったからなどという人もいるかもしれませんが、日本の財政は負債のみでなく、資産にも注目すれば、さほどではないどころか、英国よりもはるかに良い状況にあります。

英国は、日本よりは経済規模が小さいですが、それでも経済対策を間違えば、オリンピックなど開催しても景気は落ちこんだのです。

オリンピックを開催すれば、経済効果は大きいですが、かといって経済対策の間違いを補えるほどかといえば、そうではないのです。英国よりも経済規模が大きい日本ではなおさらです。

私は、もともとさほど大きくはない経済効果を期待して、オリンピックを無理に開催する必要性などないと思います。そのようなことをするよりも、オリンピックは延期して、消費税減税、給付金対策、無論追加の金融緩和をするなどのことをして、経済を浮揚させてから、オリンピックを開催すべきです。

武漢肺炎で、経済が破壊されてとんでもないことになるのではないかと心配する人もいるようですが、まともな経済政策をしている国において、大規模な災害や、伝染病等で経済が一時かなり悪化しても、災害や伝染病が終息した後はかなりの勢いで消費等が伸びて、回復します。これについては、このブログでも香港の事例をあげたことがあります。

詳細は、当該記事をご覧になって下さい。以下にグラフだけ引用しておきます。


戦争の場合もいっとき景気は落ち込みまずか、それでもその後ものすごい勢いで経済が伸びることは、私達日本人が経験しているところです。これについても、当該記事に書きましたので是非ご覧になってください。

現状では、オリンピックは延期して、ロンドンオリンピックの失敗に学び、上げてしまった消費税を減税して、一人あたり10万円くらいの給付などを行い、日銀も異次元緩和のスタンに戻り、オリンピックが開催するときには、日本経済が大きく回復する状況ををつく出すのがベストです。

誰もが、先行きにあまり不安を感じない状態で、平和の祭典を開催するのが、日本にとっても世界にとってもベストだと思います。

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2019年9月12日木曜日

韓国で「恐怖のスタグフレーション」進行中か 消費者物価上昇率が8カ月連続0%台、新「漢江の奇跡」に疑問―【私の論評】韓国経済の悪化の根本原因は、誤った金融政策にあり(゚д゚)!

韓国で「恐怖のスタグフレーション」進行中か 消費者物価上昇率が8カ月連続0%台、新「漢江の奇跡」に疑問

現在韓国では若者が「ヘル朝鮮」と呼ぶ状況が続いている

韓国の8月の消費者物価指数が、対前年同月比でマイナス実数値(マイナス0・04%)を記録した。1965年に統計を取り始めてから初めてのマイナスだ。8月は気候によって農水産物が変動しやすいが、2019年1月から連続して0%台なのだから、これはすごい。

 輸入依存度が高い国で、その通貨はこの1年間、対ドルでも、対円でも下落してきた。それなのに消費者物価上昇率が8カ月連続して0%台とは、新「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ぶべきかもしれない。

 ところが、この1年間の物価関連ニュースをチェックすると、「奇跡」への疑問は広がる一方になる。

 韓国の場合、最低賃金引き上げで、賃金は上昇しているが、税金や年金支払いの増額で、世帯当たりの可処分所得は減っている。

 さらに、生計費に占める外食費の比率がとても高い。外食費比率(17年)は日本が4・8%なのに対して、韓国は13・3%にも達する。自炊をしない単身世帯が多いことが背景にある。

 そういう構造的要因を抱えるなかで、韓国の喫茶店、ハンバーガーショップなど軽食店は今年1月、5~20%の値上げに踏み切った。法定最低賃金の大幅引き上げに伴う措置だった。が、消費者物価指数は対前年同月比0%台。

 3月には、市外バス運賃が平均11%値上げした。タクシーも27%値上げした。しかし、0%台行進は続いた。

 今年1-3月期の消費者物価動向を、中央日報(19年4月30日)が以下のように総括していた。

 「上昇率は前年同期比0・5%だが、同じ期間に必須消費品目の価格は大きく上昇した。穀物価格が急騰してコメが18・5%、玄米が23・1%、もち米が24・7%、大豆が21・4%上がり、牛肉は国産が2・2%、輸入が2・8%、鶏肉が10・9%上昇した。水産物もスルメが15・6%、タコが21・1%、練り製品が9・9%、塩辛が4・2%など大幅な上昇を示した。牛乳が5・4%、醗酵乳が4・2%上がった。ここにリンゴが6・9%、ナシが41・1%、モモが22・6%など主要果物価格も上昇した」

 それでも0%台行進の理由を、同紙はこう書いている。

 「(物価指数の計算を)構成する項目の中にはマイナス上昇率を示し価格が下がった品目もあるが、高いプラス上昇率を示したものもある。ところが価格が下がったのは、たいてい消費者が買わなかった結果の可能性が大きい。購入していない品目の低い価格は体感できない」

 おかしな日本語訳文だが、要は国民の日常生活とはほとんど関係ない物品が消費者物価指数の計算項目に入っていて、それらの物品の値下がりが、全体の指数を0%台に抑えているということだ。

 となると、韓国は何のために消費者物価統計を取っているのだろうか。

 最近は安い居酒屋も値上げしている。焼酎シェア1位の「チャミスル」の出庫価格が6・45%上がったことがきっかけだ。ソウルの冷麺は、盛岡冷麺の名店よりも高くなった。

 韓国の民間シンクタンクは9月8日、19年の予測成長率を2・1%から1・9%に引き下げた。「スタグフレーション」進行中と思われるが、韓国の国営放送は、おかしな消費者物価指数を根拠に「デフレへの憂慮が広がる」と報じている。

 ■スタグフレーション 景気後退と物価上昇が同時に発生する現象。賃金が上がらないのに物価が上昇し、資産価値が減っていく。国民生活は困窮し、「最悪の経済状態」と言われている。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。著書・共著に『悪韓論』(新潮新書)、『崩韓論』(飛鳥新社)、『韓国リスク』(産経新聞出版)など多数。

【私の論評】韓国経済の悪化の根本原因は、誤った金融政策にあり(゚д゚)!

確かに、室谷氏の語るように、価格の0%台行進についての、中央日報の記事は、何を書いているのか全く意味不明です。しかし、これについては、日本の報道機関も似たりよったりです。

このようなことは、新聞記者の経済知識があまりに乏しい(室谷氏も含めて、ただし室谷氏は、経済記者ではないので致し方ないか???)ため、「個別価格」と全体の「一般物価」がしばしば混同されていることに起因しています。つまり、雇用改善などを受けた値上げや消費の伸び悩みを受けた戦略としての値下げなど個別企業の動きと、マクロ経済を反映した物価全体の動きについて、区別されていないのです。

個別価格は、それぞれの商品に付けられている価格であり、誰でもイメージできるできるでしょう。

一般物価については、例えば消費者物価指数が典型例ですが、イメージが難しいです。それぞれの個別物価を指数化して、各商品の加重平均ウエートで平均を取るという作り方です。これは、韓国でも同じような方法で計算されています。韓国の統計がおかしいということではありません。

この手法だけを見れば、各商品の積み上げによって一般物価が算出されるので、ある商品の個別価格の上昇がそのまま一般物価に反映されると思ってしまうかもしれません。しかし、そうならないところが、マクロ経済学のポイントです。

これは、ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン氏が指摘した「スイッチ効果」と呼ばれます。ある財の個別価格が上昇すると他の財を節約し、その消費が減少することでその財の個別価格が低下するので、結果として一般物価には変化がないというものです。

ミルトン・フリードマン氏

もっとも、現実にはある個別価格の変化がただちに他の個別価格の変化をもたらすような価格伸縮性があるわけでありません。このため、短期的には大きな個別価格の変化があった場合、それは一般物価の変化にも影響しますが、数年単位でみれば、価格は伸縮的になるので、スイッチ効果が認められます。

いずれにしても、こうした事情を踏まえると、長期的な視点を含む政策論で考えるときには、個別価格と一般物価は区別したほうが良いです。

個別価格は各財の競争状態で決まります。つまり、ニーズが高かったり、供給が少ないと個別価格は上昇します。

一般物価はどうかといえば、スイッチ効果で説明したように、所得が一定であれば、高いものを買うときは他のものを控えるのですが、所得が大きくなれば、他の財の節約は必要なくなります。ということは、所得に応じて一般物価が決まってくるわけです。

これをマクロ経済の言葉で言えば、有効需要によって基本的には一般物価が決まります。このため、GDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの差)によって、インフレ率(一般物価の変化率)が決まるのです。

その際、インフレ率のみならず失業率も決まります。ここがマクロ経済学のキモです。有効需要をコントロールするために、金融政策と財政政策があるので、それらの即効性や遅効性を考慮しながら、マクロ経済管理をするわけです。
こうしてみても、個別物価の動きと中期的なインフレ目標の関連は薄いです。

韓国の場合は、2019年1月から連続して物価上昇率が0%台というのですから、これはもうすぐに量的緩和策をとるべきです。

韓国消費者物価指数の推移 2019年 1月-9月

さらに、マクロ経済的には、インフレ率のみならず失業率もきまるわけですから、失業率を減らすためにも、何をさておいてもまずは、金融緩和しなければならないはずです。

ちなみに、韓国では昨年金融緩和をせずに、最低賃金だけをあげるという、立憲民主党の枝野代表の主張する経済政策を実行して、雇用が激減しました。


韓国は7月12日、2020年の最低賃金を前年比2.9%増の8590ウォン(約790円、時給ベース)とすることを決めました。1988年の制度開始以来3番目に低い伸び率となります。文在寅(ムン・ジェイン)政権は「所得主導」の成長を掲げ、18年(16.4%)、19年(10.9%)と2桁上昇が続いたのですが、賃上げが雇用減を招いているため一転して抑制に転じことになったのです。

では、韓国銀行(韓国の中央銀行)はどのような政策を採用しようとしているのでしょうか。

韓国銀行(中央銀行)は7月18日、市場の据え置き予想に反して政策金利を1.75%から1.50%に25ベーシスポイント(bp)引き下げました。利下げは2016年6月以来、3年ぶりです。

しかし、その後の動きはありません。最低賃金の引き上げで雇用が激減、物価の上昇率がo%台の状況が1月から続いているというのですから、利下げは当然のこととして、量的緩和もすぐに実施すべきです。

なぜ実行しないのか、本当に不思議です。この状況に陥っても、なお金融緩和しないことこそ、私は"新「漢江の奇跡」"の奇跡と呼びたいです。

文在寅大統領は、金融緩和せずに最低賃金だけ上げて、雇用を激減させるという愚かな政策をしたということからも、経済、特にマクロ経済がわからないのははっきりしていますが、誰か取り巻きで理解している人はいないのでしょうか。

韓国が金融緩和するとすぐに、キャピタルフライトするなどという人もいますが、これはこのブログの過去の記事にそうでないことを示しました。韓国自体が外国から多額の借金をしていれば、その可能性はありますが、実体はそうではありません。あれから多少時がたっていますが、現状ではこれはまだあてはまると思います。

最近では、日本との関係悪化が、韓国経済を悪化させているという人も多いですが、私はそれ以前に文在寅大統領の、金融緩和をしないで、最低賃金だけあげるという、マクロ経済政策に反した政策が大失敗し雇用が悪化し、なおかつ物価上昇率が0%台であっても量的緩和をしないということが、根本の原因であると思います。

これなしに、たとえ日本との関係を良好にしたとしても、それだけで韓国経済は良くならないです。無論、日韓関係を良くすれば、経済の伸びしろを増やすことはできるでしょうが、それだけでは根本原因が除去されるわけではありません。

何があっても、量的緩和を行わない韓国銀行は、まるで白川総裁までの日銀のようです。そうして、最近の日銀は、イールドカーブコントロールを採用してから、引き締め気味です。そのため、消費税増税ともあいまつて、日本でも物価目標がなかなか達成できていまん。とはいいながら、緩和はしているので、韓国よりはましです。特に、雇用状況は良いです。

いまのままでは、韓国では雇用は改善されず、物価上昇も、賃金上昇も見込めず若者にとってはヘル朝鮮の状況はまだまだ続くことでしょう。

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2018年3月24日土曜日

安倍首相退陣なら日本経済は悪化する…石破or岸田政権発足→景気悪化の悲観シナリオ―【私の論評】ポスト安倍政権がまともな経済政策を実現するには財務省完全解体が必須(゚д゚)!

安倍首相退陣なら日本経済は悪化する…石破or岸田政権発足→景気悪化の悲観シナリオ


 森友文書書き換え問題を受け、安倍晋三首相の自民党総裁三選に赤信号が出たと指摘する声が、海外からも出てきた。いつも安倍政権に対して辛口の米紙ニューヨーク・タイムズからだ。

 筆者は、安倍首相の三選に赤信号が出たと思わないが、日本の事情を知らずに日本の新聞報道を真に受けている海外メディアでは、ときどきびっくりするような報道がある。特に株式市場では気の早い人ばかりなので、一部ではあるが安倍首相の退陣シナリオを語る人もいる。

 そういう人々の間では、安倍政権下のアベノミクスによって各種経済統計、企業業績データにおいて好景気・景気回復が維持されてきたため、もし安倍政権が終了した場合、日本経済にとって悪い影響を与えてしまうのではないかという懸念も出ている。そこで、“すぐ”という可能性は低いものの、安倍政権後の日本経済がどうなるかを考えてみよう。

唯一の救い

 ポスト安倍としては、自民党の岸田文雄政調会長と石破茂元防衛相が下馬評に上がっている。

岸田政調会長

 岸田氏は21日、香港で投資家らに講演した。その場で、財政再建の必要性や、金融緩和をいつまでも続けられないことを強調したという。ポスト安倍を意識して安倍政権との違いを見せたのだろうが、はっきり言えば、海外の投資家向けとしては出来の悪い講演だ。

 こうした海外投資家向けの場では、いかに日本株を買ってもらうかというのが相場であるが、国内の政局向けの話をしてしまった。事実認識としても、日本政府の中央銀行を含めた連結のバランスシートを見れば明らかであるが、急いで財政再建するような状況ではない。連結バランスシートで財務状況を判断する投資家から見れば、岸田氏は財務がわからない政治家に見えただろう。そうした人が日本のリーダーになったら、誰も日本株を買おうとしないだろう。

 岸田氏は温厚な性格で人柄もいいと評判であるが、なにしろ親戚縁者には財務省関係者が多い。伯父として宮澤喜一元首相を持つ、財務官僚出身の宮澤洋一自民党税調会長は従兄である。やや大げさに言えば、財務省キャリア官僚関係者に囲まれて生活しているといってもいい。

 このため、今の財務省不祥事に対して、財務省解体や消費増税中止とはいえない立場である。実際、香港の講演でも2019年10月の10%への消費増税は予定通り行うと言っている。

石破茂氏

 一方、石破氏はどうだろうか。筆者はしばしば石破氏から批判されている。これでわかるだろうが、石破氏は反アベノミクス論者である。詳しくは、筆者が書いた昨年7月10日付「現代ビジネス」記事『「安倍降ろし」で石破総理が誕生すれば、日本経済は大失速間違いナシ』をご覧いただきたい。

 この意味で、マクロ経済政策としては、財政再建路線、金融緩和否定というアベノミクスの真逆であり、岸田氏も石破氏も変わりはない。そのマクロ経済政策が実際に行われれば、アベノミクスで達成できた雇用や株高は失われ、デフレ脱却もかなわず、デフレに逆戻りになる可能性がある。

 これでは悲観シナリオだけになってしまうが、唯一の救いがあるとすれば、世論が財務省批判一色となって、ポスト安倍は財務省解体などの荒療治や、世論の後押しで消費増税中止をせざるを得なくなるような場合だ。

 増税指向の財務省が解体され、「政治力」が弱くなれば、それは日本経済にとって長期的にプラスである。財務省の擁護である岸田氏や石破氏が、泣いて馬謖を斬る状況になれば、ポスト安倍でも一定の経済パフォーマンスを発揮できる可能性はややあるだろう。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

【私の論評】ポスト安倍政権がまともな経済政策を実現するには財務省の完全解体が必須(゚д゚)!

岸田氏や石橋氏が泣いて馬謖を斬る状況とはどのような状況でしょう。以上のような経過を踏まえれば、これまでに明らかになったことからでも、政治が対処すべき課題は明白です。

まず、公文書管理の抜本的見直しは当然です。そもそも、いったん決裁された公文書を書き換えることが可能になったのは、文書原本が所管官庁に残されていたからです。

そんな所業を根本から防止するには「全省庁共通の公文書を保管する」ような官庁を作って、決裁済みの原本は所管官庁ではなく、一括して保管する仕組みを作る必要があります。そうして、保管だけではなく、各省庁の文書が文書規程などにもとづき、まともに運用できるかを監査するようにすべきです。

公文書の書き換えは刑法上の犯罪

公文書は国民が歴史を検証するための公的資産です。決裁後は自動的に原本を公文書館に収め、その後は二度と所管官庁が手を出せないようにすべきです。所管官庁は必要ならコピーをとっておけば良いです。所管官庁が原本そのものを保存する理由はありません。

そうして、それよりも重要なのは、財務省の実質的解体です。今回は本省の理財局が近畿財務局に指示して書き換えさせた事実が明らかになりました。しかし、本来、国有財産をめぐって政策立案する理財局と現場で国有財産を管理する財務局の仕事は、まったく性格が異なります。

現場の執行部門の仕事は民間と密接に関わっています。そこでは当然、利権も絡むことになります。そのような現場の仕事を、政権中枢で政策を立案する官僚が指揮監督しなければならない理由などありません。

財務省の組織
内部部局大臣官房
主計局
主税局
関税局
理財局
国際局
審議会等財政制度等審議会
関税・外国為替等審議会
関税等不服審査会
施設等機関財務総合政策研究所
会計センター
関税中央分析所
税関研修所
地方支分部局財務局
税関
沖縄地区税関
外局国税庁

利権が絡む現場の仕事に政治的裁量が働く余地があってはならないはずです。必要なら、法に従って淡々と資産を売り払っていけば良いだけです。そうであるなら、理財局を財務省から切り離したうえで、財務局の担当部署と統合し「国有財産管理部局」にして、国土交通省などに統合すべきではないでしょうか。

同じように、税制の企画立案をする主税局と徴税執行業務を担う国税庁が同じ財務省の組織にある理由はありません。国税庁は外局とはいえ、事実上、財務省と一体です。かねて指摘されてきたように、年金保険料の徴収業務と国税庁の徴税業務を一体化した「歳入庁」の設立をすべきです。

理財局といい国税庁といい、そもそも現場の執行業務をする財務局や税務署を政策立案を担う高級官僚が指揮監督する仕組み自体がおかしいです。政策立案と現場が一体となっているからこそ、政権の意向を官僚が忖度して現場が振り回されるような疑惑が生じてしまうことになります。

以上のような改革を断行すると、財務省は予算編成をする主計局と税制の企画立案をする主税局、関税制度の企画立案をする関税局、通貨政策を担う国際局、大臣官房だけになります。全部、政策立案部局です。そのほうが現場と切り離されて、よほどすっきりします。

そうして、以前からこのブログにも掲載してきたように、大蔵省という官庁は、単純に分割すると、時間をかけて他省庁を植民化するという性癖があるので、主計局、主税局、関税局、国際局、大臣官房(内閣官房に吸収)はすべて内閣府の中に吸収してしまうという方法が有効であると考えます。

会計検査院については、他省関連団体への天下りを徹底的に監視し、やめさせなければなりません。こちらも抜本改革は避けられないです。

麻生太郎副総理兼財務相の責任をどうすべきでしょうか。監督責任は免れないでしょう。ただ、財務省解体の荒行を考えると、首相経験者である麻生氏の力量に期待する面もあります。一段落するまで組織に残って蛮勇を奮うべきです。責任問題はその後で自ら判断すべきです。

消費増税はどうなるのでしょうか。これほどひどい財務省のウソがバレた以上、だれが財務省が言う財政再建の必要性や、社会保障と税の一体改革などを信用するでしようか。増税は延期するしかありません。一から出直しです。

以上のうち、少なくとも、財務省が予算編成をする主計局と税制の企画立案をする主税局、関税制度の企画立案をする関税局、通貨政策を担う国際局、大臣官房だけになるという抜本的な改革が行われなければ、岸田氏や石破氏が、泣いて馬謖を斬る状況とはいえないでしょう。

このような方向に動いていけば、ポスト安倍でも一定の経済パフォーマンスを発揮できる可能性がでてきます。そうして、主計局、主税局、関税局、国際局が内閣府の一部となり、大臣官房が内閣官房に吸収されるというようドラスティックなことが実現できれば、必要もない増税が行われたり、デフレ・円高なのに金融引締めが行われるということもなくなるでしょう。

このくらいの改革を実現できれば、どのようなポスト安倍政権がどのような政権になったとしても、日本ではデフレのときには、金融緩和と積極財政を、緩やかなインフレを超えたインフレの場合には、金融引締めと緊縮財政を実施するというまともな政策ができるようになるでしょう。

さらに、一歩すすめると、自民党や他の政党でもある一定規模のところには、政党系の複数のシンクタンクを設置し、政策を立案させるようにさせ、政党の近代化をはかるべきです。現在のように、役人が政策を立案するという方式は、官僚優位を招きやすいです。官僚は本来は、目標、方針が決まったことを間違いなく実施することに専念すべきです。

立憲主義に必須の政党の近代化については、ここで述べていると長くなってしまうので、また機会をあらためて掲載します。

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2015年3月16日月曜日

「謝るほどに悪くなる日韓関係」ついに終止符を打つ時が来た―【私の論評】現体制の中韓は捨て置け!両国政府が国民の批判に耐えられるような体制になったとき、まともな関係を構築すればそれで良い(゚д゚)!


黒田勝弘氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
2015.03.16

 戦後70年(韓国では解放・光復70年)、日韓国交正常化50年を迎えた今年、韓国のメディアでは予想通り年初から“反日報道”が荒れ狂っている。2015年日韓歴史戦争の幕開けである。

 直近でいえば、ISIL(イスラム国)による日本人殺害事件に関連し、韓国政府は朴槿恵大統領が安倍晋三首相に哀悼の書簡を送るなど対日姿勢を軟化(?)させているが、メディアは一斉に「安倍、自衛隊の海外武力行使拡大へ」(2月2日、東亜日報)など逆に“安倍叩き”に熱を上げている。

 そんな中で発刊された前大統領・李明博の回顧録『大統領の時間 2008-2013』には2010年、菅直人首相によって出された「日韓併合100年」の「談話」の経緯が記されている。

 回顧録は、菅首相から談話内容については事前に電話で知らされたとし、過去の謝罪と反省が今回は韓国に特定されたことに加え、李王朝文書返還など「自分が求めてきた(謝罪と反省の)具体的行動」が込められていたとし「村山談話を越えて韓日関係を進展させる歴史的措置だった」とべたぼめしている。

 しかし戦後50年の村山談話や慰安婦問題の河野談話(1993年)もそうだが、韓国が守れ、守れと日本にしきりに要求して騒ぎ立てる、韓国にとってそんなに好ましい素晴らしい内容だったのなら、そこで「納得」となって過去は終わりとなっていたはずではなかったのか。

 それが終わらず蒸し返されてきた。1998年、「日韓共同宣言」と銘打って文書で完璧に「謝罪と反省」を明記し、これを取り付けた金大中大統領など「これで過去は清算された」と言ったのに、韓国側はその後も過去を蒸し返し続けている。

 安倍政権に対してはスタート以来、右傾化とか軍国主義復活、歴史歪曲……などと非難の大合唱を続けてきた韓国では、どんな内容になろうが「安倍談話」は認めず叩きまくろうと手ぐすね引いている。ということは、韓国相手にはもはや「謝罪と反省」は何の意味も効果も持たないということだ。「謝るほど悪くなる日韓関係」に終止符を打つ時である。

 その意味で「戦後70年安倍談話」は韓国にこだわる必要はない。そして1945年以降、これまでの70年間の歴史をしっかり振り返った方がいい。日本は過去の反省、教訓の上でいかに国際社会に貢献したかを語ることだ。

 そして韓国、中国を含むアジアに対しては、過去の反省に立った日本の支援がアジア諸国の発展に寄与できたことをうれしく思うと、堂々と述べればいい。戦後70年とは別に「日韓50年談話」も必要なら出していい。その際も新しい日韓協力の50年間が韓国の現在のめざましい発展につながったことに感謝(!)し、共に喜びたいと語ればいいのだ。

 。狙いはむしろ外野というか国際社会だ。韓国、中国を含む戦後アジアの発展への日本の寄与これこそが“過去イメージ”を乗り越え、国際的共感を得るものであり、歴史戦争に勝てるキーワードなのだ。

 文・黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)

 ※SAPIO2015年4月号

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】現体制の中韓は捨て置け!両国政府が国民の批判に耐えられるような体制になったとき、まともな関係を構築すればそれで良い(゚д゚)!

黒田氏は、以前韓国の反日の実体について語っていたことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を抜粋させていただきます。

そこで、黒田氏に、なぜ韓国の政治家やメディアがこれほど日本への憎悪をむき出しにするのか、その実情を説明してもらった。 
「韓国の国民のほとんどは、実は反日感情など持っていません。私は生括していて何の危険性も感じないし、不快な思いもしない。それどころか、韓国人はきわめて穏やかで親切です」 
 黒田氏は微笑を浮かべて語った。日常生活では、日本拒否の現象など見当たらない、というのである。すぐには信じられなかったが、黒田氏はありのままの実感を話したのだ。 
 しかし、それにしては朴大統領の尋常ではない日本批判、そしてマスメディアの憎悪むき出しの日本攻撃は、どう受け取ればよいのか。黒田氏は苦笑してこう語った。 
「メディアの人間は自分を知識人だと思っていて、知識人として朝鮮を植民地にした日本を批判すべきだ、それも忘れてはならないという思いが強い。しかし、いくら日本をたたいても一般の国民は反応しないので、いら立って日本をより強烈に批判する。しかし、反応しない。そこでますます怒る……という現象になっているのですよ」 
 そういえば、ある大手旅行代理店幹部が、韓国から日本への観光客は増えているが、日本から韓国への旅行者は減っていると語っていた。 
 数年前までは、「ヨン様」ブームなどで韓国を訪ねる日本人客、特に女性客が増えていた。それが、朴大統領をはじめ韓国の政治家やメディアが日本を激しく攻撃するようになってから激減したというのだ。 
 しかし、一般国民が朴大統領の日本批判や韓国のマスメディアの日本攻撃などそれほど読んでいるとは思えず、日本の、特に週刊誌や月刊誌の多くが韓国を批判、いや憎悪むき出しで攻撃しているのを読んで、韓国に拒否反応を示すようになったのであろうと考えられる。ということは、韓国人とは逆に、日本人は売らんがための報道に容易に影響される、もろい存在だということになる。我ら日本人、しっかりしなくては! 
週刊朝日  2014年5月2日号
何やら、同じ黒田氏の発言なのに、この記事とブログ冒頭で語っていることとが相矛盾するようにもみえます。

しかし、 矛盾しているというわけではないのだと思います。韓国においての反日は、政府主導によるものであり、政府主導にマスコミが便乗して、様々な反日報道をしているということなのだと思います。そうして、そのような政府の論調や、マスコミの論調に一部の韓国人が便乗して大騒ぎしているというのが実情だと思います。

結局、韓国による反日も、中国と同じで官製反日ということなのです。中国の反日デモなどが官製であることは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
リスクの代償払うのは?ユニクロ上海の「尖閣は中国領」張り紙−【私の論評】中国の反日デモは、官製であることがいよいよはっきりしてきた!!ところで、その背景は?

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、当時(2012年10月21日)の中国における、大規模な反日デモが官製(政府主導という意味)であることを掲載しました。

2012年当時中国の主要都市では、反日デモが繰り返されていた

それにしても、官製であるないは別にして、最近はこのような反日デモが、中国ではほとんど見られなくなっています。皆さんは、その原因は、何であるかをご存知でしょうか。

その原因は簡単なことです。もともと、中国の反日デモなどは、官製だったのですが、最近では政府が官製デモを主催しなくなったからです。

なぜしなくなったかといえば、中国では反日デモを政府主導で起こすと、それがいつの間にか反政府デモになってしまうという事態になってしまったからです。

今では、人民が反日デモをしようと、政府に届けを出すと、以前はたいていは許可されたのに、最近では滅多に許可されません。なぜそんなことになったかといえば、このようなデモも一旦開催されると、いつの間にか反政府デモに変わってしまったからです。

それどころか、最初から反政府デモを実施するつもりでも、そのような届けを出すと、認可されることはまずないので、反日デモという届けを出して、反政府デモを実行するというようなことが、行われるようになったからです。

それにしても、ではなぜ、政府が反日デモを主催していたかとえば、それは中国ではもともと建国以来毎年平均2万件の暴動があったとされていたのが、2010年あたりでは、毎年平均10万件を超える暴動が発生するようになりました。

なぜ、そうなったかといえば、人民の地方政府や、中央政府のやり口に、腸が煮えくり返るような思いが、ますます酷くなり、いつどこで、憤怒のマグマが大爆発してもおかしくない状況になっていたからです。

こうなると、以前からそうだったのですが、いつ人民の憤怒のマグマが自分たちに向けて大爆発するかわからず、中国政府は日本を悪者に仕立て、人民の憤怒のマグマの爆発する先を日本に向けようとしたのです。

尖閣問題の発端も、もともとは官製デモと同じで、日本を悪者に仕立て、中国人民の怒りの矛先を日本に向けさせることが目的だったのです。

しかし、今では、反日デモを煽ったり、認可すれば、必ず反政府デモになり、かえって逆効果になるということで、そのようなことはしなくなったのです。ただし、尖閣に関しては、政府が直接制御できるので、まだ実行し続けているというのが実情です。

変な韓国旗のビキニ? 韓国の現体制が変わらない限り日本は、接触を絶つべき
韓国も同じような状況にあります。ここしばらく続いた政府の無能ぶりにより、韓国の経済は破綻しかけています。それに、韓国は一応自由主義陣営の一員のような体裁はとってはいますが、未だに酷い差別が存在したり、言論の自由も制限されています。

だから、政府は反日を煽って、国民の怒りの矛先を日本に向けようとしてきたのです。いずれ、韓国でも反日を煽ると、いつの間にか政府批判を煽ることになると思います。

そうなったときに、韓国政府は中国と同じように、国民に対して反日を煽ることはできなくなることでしょう。

いずれにしても、中国にせよ、韓国にせよ、政府がうまく機能せず、国民の憤怒のマグマが煮えたぎるということは、もちろん日本の責任ではありません。だから、いくら日本を責めたとしても、それだけでは何も解決しません。

今のまま何も変わらないとすれば、中韓の体制が崩れるまで、政府による反日は続きます。

であれば、謝罪などすれば、ますます両国政府とも、反日を激化させ、自分たちの延命をはかるだけです。

これに対する対処は、黒田氏がブログ冒頭の記事で語っているように、戦後アジアの発展への日本の寄与これこそが“過去イメージ”を乗り越え、国際的共感を得るものであり、歴史戦争に勝てるキーワードとして、戦後の国際貢献を強調し、世界の共感を得ることです。

日中韓の関係は、中韓の体制が変わらぬ限り悪化する

これに関しは、安倍総理は外交を通じて、かなり進めています。ただし、中韓と直接蜜に話しをしているというわけではありません。中韓以外の外国と、積極的に接触して、日本との関係を強化するという形で進めているものです。

私としては、黒田氏の提言を一歩すすめ、中韓とはなるべく接触を絶ち、必要最小限にとどめ、他国とのつきあいを深めていくということで、日本の立場を国際的に認めてもらうということが、一番良いことだと思います。

中韓の体制が変わらない限り、日本が謝罪をしたとしても黒田氏の指摘するように、ますます関係が悪化するだけです。中韓をどうにかしようなどという考えは、捨て去り、他の外国に認めてもらうという方針で臨むのが日本として一番良いやり方であると、確信します。

中韓両国の政府が、自分の存立基盤を確保するために、日本を悪者に仕立てて、反日を煽るというのではなく、少なくとも政府が国民の批判に耐えられるような体制になったときに、まともな関係を関係を構築すべきです。こんな当たり前のことができない、稚拙な政府と関係を保つ必要性など全くありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年12月24日水曜日

強まる習政権の「恐怖政治」 胡錦濤派“粛清” 有力者全滅の可能性も―【私の論評】習近平は、権力を掌握できるか否かの正念場!しかし、掌握したとしても対日本政策は変わらないどころかますます悪化する(゚д゚)!


握手を交わす習近平(左)と胡錦濤(右) 写真はブログ管理人挿入以下同じ

中国の習近平国家主席が「恐怖政治」を強めている。胡錦濤前国家主席の側近、令計画・人民政治協商会議副主席が「重大な規律違反の疑い」で共産党の取り調べを受けたのだ。習氏による腐敗撲滅運動の一環で、その標的は、江沢民元国家主席率いる「上海閥」から、胡氏が率いる中国共産主義青年団(共青団)出身者で構成する「団派」に移ったといえる。識者は「団派全滅もあり得る」と分析している。

中国各紙は23日付で、令氏が規律違反の疑いで調査を受けていることを国営通信、新華社電を掲載して報じた。香港紙、東方日報は同日、令氏一家には計370億元(約7100億円)の預金があるほか、日本の京都に豪邸を所有していると報じた。
令計画氏

令氏は山西省出身。共青団で政治活動を始めて胡氏と懇意になり、胡氏が2003年に国家主席になると、政権の大番頭役である秘書として絶大な権力を握った。ところが、12年3月、息子が北京市内でフェラーリに女友達を乗せたまま死亡事故を起こして左遷されていた。

令氏の失脚には前兆があった。山西省政協副主席だった実兄の令政策氏は6月に拘束された。義兄の王健康・同省運城市副市長は8月から当局の調査対象になり、10月には弟の令完成氏も当局に身柄を拘束された。令氏の外堀はすでに埋められていた。

周永康氏
 共産党指導者が失脚すると、その取り巻きも罪を問われる。周永康前政治局常務委員の事件に絡み、すでに約500人が拘束されたといわれる。

「月刊中国」の発行人である鳴霞(めいか)氏は「習氏は今後、団派に対する大規模な粛清を行う可能性がある。胡氏は大丈夫だろうが、団派の有力者が全滅することもあり得る」といい、こう続けた。

「月刊中国」発行人 鳴霞氏

 「令氏の腐敗情報は以前から、米国の中華系ニュースサイトが報じていた。京都の豪邸の写真や不動産情報まで流れていた。そこには、令氏以外の共産党幹部の腐敗情報も出ている。習氏は独裁権力を強固にするため、強引な形で“政敵”を次々と失脚させている。先日、失脚した薄煕来・元重慶市党委員会書記の海外資産が没収された。令氏など団派の関係者は日本国内にもいる。日本の政財界に知己も多い。みんな戦々恐々としているのではないか」

【私の論評】習近平は、権力を掌握できるか否かの正念場!しかし、掌握したとしても対日本政策は変わらないどころかますます悪化する(゚д゚)!

昨年3月中国人民政治協商会議の開幕式に出席した習近平国家主席(上段右)と令計画氏(下段)

中国や北朝鮮などの国は、やはり恐ろしい国です。いくら権力の中枢に登ったとしても、権力闘争に負けてしまえば、追放されたり、命を奪われたり、財産を没収され、社会的に抹殺などされてしまいます。要するに、失脚という言葉で表現される、こういう独裁体制の国でおこる惨劇です。

まさに、習近平は、権力闘争の真っ最中であり、次々と政敵を葬り去りつつあるのです。

この件に関しては、前々から兆候があり、このブログでもそれについて掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載させていただきます。
中国、高官ら40人超不審死 事実上「粛清」との声も 汚職撲滅キャンペーンで―【私の論評】二種類の亡霊が示す、中国の政治権力闘争は命がけであることと出鱈目さ加減!こんな国に将来はない(゚д゚)!
不審死を遂げた遼寧省高級人民法院(高裁)ナンバー2の女性副裁判長、徐安生氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では中国の高官が相次いで不審死を遂げている事実を掲載しました。そうして、さらに、現在の中国には、二種類の亡霊がいることを掲載しました。

亡霊のうち、一つは、超不審死を遂げた人々の亡霊です。もう一つは、実体のない公務員という幽霊です。中国には、仕事をしていないのに政府から給与を得ていた「幽霊公務員」が16万人もいたことが判明しました。

この記事を書いた時点では、高官が超不審死を遂げていたのでずが、これに関しては当然のことながら、権力闘争の一環であるのは間違いなかったものと思います。

ただし、この時点では、地方政府の幹部が不審死を遂げていたのですが、最近では、さらに上の層が対象になってきています。

いずれ、もっと上の層まで行くことが十分予想されます。そうなると、胡錦濤自身にも追求の手がおよぶことも十分考えられます。

習指導部が発足した2012年11月の共産党大会から先月下旬までに、国家指導者級幹部3人、党指導部の党中央委員3人を含む、少なくとも57人の政府機関や地方政府の指導者級以上の幹部が失脚しました。李東生元公安次官など周永康氏の元側近も10人近く含まれます。

習が反腐敗運動を掲げて周氏ら潜在的な対抗勢力をたたくのをみて、中国政府の官僚は、習氏の怒りを買えばあらぬ腐敗を追及されかねないとすっかり萎縮しているようです。「今は目立たないのが得策だ。どこで虎の尾を踏むか分からない」。習氏の明確な意向が見えない分野では大胆な政策提案をできない状況にある、と政府関係者は漏らしています。

反腐敗運動を逆手に取り、出世競争のライバルを汚職の疑いで密告する例も増えているといます。汚職調査を受けることを苦にした公務員の自殺者も相次いでいます。

次の標的は、習氏がまだ人事を掌握しきれていない中国軍のようです。制服組トップだった徐才厚・前中央軍事委員会副主席は10月末に収賄罪などで起訴されました。その後、軍幹部への取り調べは厳しくなり、11月には取り調べを受けた馬発祥・海軍中将が飛び降り自殺をする事件も起きました。
飛び降り自殺した 馬発祥・海軍中将

軍内では軍の既得権益に切り込む習氏への反発が少なくありません。習氏が思惑通り、反腐敗運動を名目に軍をも掌握できるかは依然予断を許さない状況です。

それにしても、中国は完全に狂っています。習近平は、他の官僚らの不正を追求していますが、習い一族の蓄財など、ニューヨーク・タイムズや、ブルームバーグがすっぱぬいており、その額たるや、天文学的であり、四億ドル弱にものぼるとされています。そうして、その資産は、香港不動産が中心だそうです。

それに、以下のような信じがたい報道もされています。
習氏専用機で象牙密輸 国際環境団体が報告
習近平専用機
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の犯罪集団が、昨年3月の習近平国家主席や中国政財界幹部によるタンザニア公式訪問を利用し、大量の象牙をタンザニアで買い付けて不法に持ち出したとする報告を発表しています。

タンザニアを訪問した習

このニュースでは、習自体は、直接関係ないような報道ぶりですが、そんな馬鹿な話はないと思います。習自身がかかわっていた可能性も十分あると思いますし、もし仮にそうでなかったとしても、このようなこと、もし日本の閣僚以上のような人が、政府専用機で、このような事態が発生したとしたら、とんでもない大騒ぎになるはずです。

そもそも、政府専用機だからといって、まともに管理もしていなければ、専用機で密輸などという不祥事が発生したら、その専用機を利用した閣僚のクビは飛ぶでしょうし、場合によっては、総理大臣の辞任騒ぎにまで発展する可能性があると思います。

本当に、中国は私達日本人からは、常識を逸脱したトンデモ国家であることは間違いありません。

失脚相次ぐ中国の現実から、現状では、習近平が権力を掌握できるか否かの正念場であることがわかります。しかし、権力を掌握してもしなくても対日本政策は変わらないどころかますます悪化することでしょう。

もう年末で、今年も終わりが近いです。2015年の日中関係はどうなるかなど、予め十分予想がつきます。良くなることは、一切ありえません。来年は、「終戦70周年」にあたります。この時にこそ、習政権は「歴史問題」で日本を激しく叩くつもりだからです。

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