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2015年2月23日月曜日

高橋洋一「ニュースの深層」「ピケティ格差解説」TV番組に出たら、出演者がみんな「所得トップ1%に入る年収」だった―【私の論評】ピケティ氏の理論を精査せず鵜呑みにすれば、ただブームにのる脳味噌のうっすいバカの展覧会の展示物になるだけと心得よ(゚д゚)!

高橋洋一「ニュースの深層」「ピケティ格差解説」TV番組に出たら、出演者がみんな「所得トップ1%に入る年収」だった


先週土曜日(21日)、面白い体験をした。その日は、たまたま2件、テレビとラジオの出演があった。ともに、格差問題で、ピケティ本に関する話だった。筆者が、ピケティ本の解説本(『【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める! 』http://www.amazon.co.jp/dp/4860637402/)を書いているから、お呼びがあったのだろう。

テレビはBS朝日『Live Nippon』(18:54~20:52)でテーマは「景気回復は本当か?格差問題は?」、ラジオはJ-WAVE『Prime Facto』(21:00-24:00)でテーマは「もしアイドルがピケティを読んだら?」だった。

BS朝日では、最近の格差拡大を意味する以下の図がでてきた。



これをベースにして、トップ1%の人のシェアが最近拡大しているという話だ。実は、ピケティ本の各国の格差のデータは、上の図の引用元のWorld Top Incomes Database(http://topincomes.parisschoolofeconomics.eu/#Database:)からのモノが多い。

土曜日のBS朝日では、おそらく出演者どころか、番組関係者の誰もピケティ本をきちんと読んでいなかったようだ。

それにもかかわらず、上の図で、まあいいたいことをみんな言っていた。

時間が許せば、ピケティ本でのトップ所得のシェアというのは、トップ所得者の所得が国民所得に占める比率であること、例えば、トップ1%は20歳以上の人口の中で所得が上位1%に相当する個人だ、といいたかった。しかし、そうした時間はテレビでないので、日本でトップ1%とは年収いくらなのかについて、年収1300万円とだけ言った。

そうしたら、出演者すべて、さらにはスタジオの多くの人が自分はトップ1%だと認識したようだ。

トップ10%に入る年収は576万円

男性の解説者が何か関係のない話にふったので、そのままスルーした。ただし、事前の進行では、富裕税の話が強調される感じだが、その勢いがそがれたみたいだった。

ラジオでも同じ話をした。ところが、ラジオでは担当者もトップ1%に入っていないといい、スタジオでは「へー、そーなんだ」という驚きはあったが、テレビとは違う反応だった。

トップ1%が年収1300万円というのを、正確に言おう。先のWorld Top Incomes DatabaseのJapanのところをみれば簡単に数字は出てくる。トップ1%の年収は1280万円。ついでに、トップ10%、トップ0.1%、トップ0.01%の年収はそれぞれ576万円、3261万円、8057万円だ(いずれも2010年)。

BS朝日の出演者は、トップ1%を3000万円くらいと思っていたのかもしれない。マスコミが高給取りというだけではなく、ピケティ本という学術書の性格を知らないことも理由かもしれない。というのは、トップ1%は20歳以上の人口の中で所得が上位1%に相当する個人だ、とテレビではいえなかったことを書いたが、働かないで所得のない人も含めた上で、その1%なのだ。給料をもらっている人の中での1%ではないのだ。

ピケティ本のように、すべての人の所得分布を表す日本の統計もある。厚労省による所得再配分調査は、世帯の所得分布と等価所得という個人ベースの所得分布について所得再分配前後のデータがある。以下の図は、等価所得の所得再配分前の所得分布だ。



最高税率は先進国で最高水準

他の統計では、給与をもらっている人の中でトップ何%なのかというデータが多い。例えば、国税庁の民間給与実態統計調査は、毎年出されている統計でしばしば利用されるが、これは給与をもらっている人しか調べていない(下図)



これによれば、トップ1%は年収1500万円、トップ4%で年収1000万円である。ただし、いずれの統計でも、マスコミやそこに出演する多くの人はトップ1%に入っているだろう。

格差問題について、マスコミで議論すると、ほぼ格差を是正すべきという論調になる。もちろん、筆者も所得再分配をある程度は行うべきと考えている。ただし、それはあくまで海外と比較しながらである。日本の格差は、米英のアングロサクソン国に比べれば、たいしたことなく、高齢化でも説明出来る程度だ。

ピケティ本を見ると、格差是正のための所得税や相続税について、それぞれ最高税率の推移について各国のものが出ているが、日本は図に書かれていない。そこで、筆者の解説本では、日本の最高税率推移を書いておいた。特に、2015年から所得税と相続税の最高税率は先進国の中では最高水準である。

こうした海外事情にもかかわらず、所得税や相続税の最高税率をさらに引き上げるのは、あまり賢い選択ではない。

テレビでは格差問題の議論は綺麗事すぎてつまらない。何しろ議論している人のすべてがトップ1%なのに、そろいもそろって金持ちから増税、格差是正といったら、テレビ視聴者から見れば片腹痛しだ。しかも、自分が増税対象だとわかると、ひるむようでは視聴者に見透かされるだろう。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】ピケティ氏の理論を精査せず鵜呑みにすれば、ただブームにのる脳味噌のうっすいバカの展覧会の展示物になるだけと心得よ(゚д゚)!

この番組私もたまたま視聴しました。この番組を視聴した私にとっては、上の内容はかなり理解しやすいのですが、視聴しなかった人にとっては、理解しにくい面もあるかと思いますので、以下に若干説明したいと思います。

要するに、ピケティのいう年収トップ1%とは、20歳以上の人で、働いていなくて所得がない人、たとえば大学生や、定年退職した人も含めての20歳以上の人口の中で所得が上位1%に相当する個人ということです。さらに、それを職業としている人は別にして、株式投資とか、他の間接投資などで儲けたお金は所得とはいいません。

ということは、年収一千万を超えれば、上位1%に入る可能性が非常に高いわけです。

しかし、一般の人そうして、この番組に出演していた人たちも、そのことを理解せず、自分たちはピケティのいう所得上位1%にはあてはまっていないと誤って認識して、当然のこととして格差是正のため富裕税などをもうけるべきと主張しがちであることを諌めているわけです。

そもそも、欧米ではこのことは十分理解されていて、それでかなりの物議をかもしたわけです。そうして、反対する人もかなり多かったのです。

しかし、日本ではなぜかあまり物議が醸されることもなく、何やらピケティの理論がすんなりというか、当たり前であり、あっさり何の吟味もされず受けいられられ、それをもとにして格差問題が議論されていることに警鐘を鳴らしているのです。

私も、これに関してはこのブログで、結構はやい時期に警鐘を鳴らしました。その記事のURLを以下に掲載します。
ピケティ氏の陰鬱な「資本論」 ウォール街に警戒―【私の論評】日本はピケティ氏からみれば、理想の国! 余計なことをせず、デフレから脱却しさえすれば日本が世界で一番繁栄する国となるだろう(゚д゚)!
トマス・ピケティ氏

高橋洋一氏も述べているように、日本の格差は、一般にマスコミや左派勢力が喧伝しているように、とんでもない酷い格差というほどではく、米英のアングロサクソン国に比べれば、たいしたことなく、高齢化でも説明出来る程度のものです。要するに、高齢化すれば、資産は増えるのが当たり前で、資産を持たない若者と高齢者の間で格差を生じるのはある程度は、当然といえば当然です。

また、左派系などの語る格差問題で大きく見逃されているのは、デフレです。デフレを放置しておけば、そもそも雇用が悪化して格差が大きくなるのは当たり前であり、まずはデフレを解消しないことには、格差がどうのこうの語ってもはじまらないわけです。

そうして、高橋洋一氏も所得再分配をある程度は行うべきとしています。私もそう思います。

特に、デフレの真っ最中や、現状のように昨年4月の8%増税の悪影響があり、追加金融緩和の時期があまに遅すぎて本格的に効果があらわれるにはもうすこしたってからという状況で、しかも公共工事の供給制約がある現状においては、減税や、給付金政策、それも再配分的な政策が必要不可欠であることをこのブログにおいてもかねて主張してきました。

しかし、このような問題と、ピケティ本に影響されて、日本の状況を良く考えもしないで、富裕税をすぐに導入すべきなどいう主張は間違いです。特に、2015年からは、所得税と相続税の最高税率は先進国の中では最高水準にあります。にもかかわらず、格差是正のために所得税や相続税の最高税率をさらに引き上げよと単純に主張するのは間違いです。

そんなことをすれば、年収1千万を少し超えた程度の人にも、税金がさらに賦課され、富裕層は海外に国籍を移し、相続税の減税をしようとし、お金が海外に逃げるだけです。

それにしても、マスコミや評論家など、このあたりをほとんど理解しないで経済を語っています。それに左派など、ピケティ氏の理論を変な方向にもっていき、それで安倍総理を非難しようした動きもありました。

さらに、反リフレ派など、ピケティ氏の理論を変な方向に展開させ、アベノミクスが無効であるとの主張の根拠にしようとした動きさえあります。

増税派も、何とかこのピケティ氏の理論をあらぬ方向に展開させ、増税の正当化を図ろうとしました。

それに関しは、以前のこのブログにも掲載したことがあります。
ピケティ氏、消費増税に「ノー」 都内の討論会で発言―【私の論評】ピケティ氏の理論を利用して増税推進を正当化してみたり、イスラーム国人質事件で政府批判をする輩は、私達の生活を実質的に脅かす者共であると自覚せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとしして。このような危惧は、経済学者の田中秀臣氏も、ピケティ氏の理論のおかしげな展開に関する危惧を先月ツイートしていて、この記事にも掲載したのですが、以下に再掲させていただきます。


まったく田中秀臣氏の言うとおりです。

テレビなどても、高橋氏や田中氏が指摘するように、浅薄な論議がなされています。この浅薄さが、マスコミを増税キャンペーンなどに駆り立てさせたのかもしれません。

そもそも、給料が高ければ、多少税金があがったとしても、痛くも痒くもありません。マスコミは、自分たちが富裕層であると認識しなければ、これからどんどん衰退し敗退し、いずれ、テレビも新聞もラジオ程度のメディアになると思います。その危機は、もう迫っています。気づかないのは当のマスコミの人間だけかもしれません。これについては、以前このブログにも掲載した事があるので、以下にその記事のURLを掲載します。
“テレビ画面“を奪い合う、戦争が始まる ネットフリックスの衝撃。テレビ局の猶予はあと5年だ テレビの「今、目の前にある危機」―【私の論評】どんなメディアであっても、ユーザーからそっぽを向かれれば、存立の基盤がなくなるという危機感がなければ、容易に腐敗する!その一旦は間違いなく、私達も担っていると心得よ(゚д゚)!


詳細はこの記事をご覧いただくものとして、ネトフリックスが日本に進出してくれば、テレビ局はとんでもないことです。

いずれにしても、テレビは、高給をもらって、浅薄な判断で反日、増税キャンペーンを繰り返しています。このような、メディアがいつまでも隆盛を極めることなどないと思います。私は、おそらく今のままのテレビ局も、ある程度残るには、残るとは思いますが、現状のラジオ局並みのメディアになると思います。その日は案外近いと思います。

それにしても、テレビ局にかぎらず、ピケティ氏の理論はきっちり精査すべきと思います。外国と日本との違いなど無視して、!鵜呑みにすれば、田中氏が指摘しているように、ただブームにのるだけの脳味噌のうっすいバカの展覧会の展示物になるだけと心得るべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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