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2019年2月5日火曜日

統計不正も実質賃金も「アベガー」蓮舫さんの妄執に為す術なし?―【私の論評】虚妄に凝り固まる立憲民主党が主張する経済政策を実行すれば、今の韓国のように雇用が激減するだけ(゚д゚)!

統計不正も実質賃金も「アベガー」蓮舫さんの妄執に為す術なし?


田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 厚生労働省の毎月勤労統計を巡る不正問題に関して、ワイドショーなどでは相変わらず「低レベル」と言っていい報道が続いている。

 毎月勤労統計の不正問題自体は、国の基幹統計と言われる賃金水準の実態を正確に捉えることを怠った問題であり、厚労省の官僚たちを法的に厳しく処罰すべき問題であろう。

 また、厚労省が設置した「特別監察委員会」に関するずさんな対応については、これはデータ不正そのものを生み出した厚労省の「自己都合」で、国民の関心をないがしろにする行為として批判すべき問題である。ただし、どの程度のデータ不正かと言えば、報道や野党、そして一部の識者からは、安倍晋三政権批判の思惑が「ダダ漏れ」で、そのため過度に誇張されたものになっている。

 筆者の周囲でも、ワイドショーから情報を仕入れた人が「統計不正は大変な問題ですね。安倍政権の責任は大きいですね」と尋ねてきた。そこで筆者は、統計の全数調査を怠ったことは重大な「犯罪」だが、抽出調査自体は統計的には適切に実施し、法規に従えば特に大きな問題ではないことを説明した。

 その上で、安倍政権のはるか前から続いていた話が、安倍政権で発覚したに過ぎないことを指摘した。ついでに「ワイドショーなどを見て、その報道につられて、安倍政権が悪いように誤解する見識のない人が増えて、テレビに振り回されていて、かわいそうだ」と返したら、やはりご本人に思い当たることがあるのか、顔色を変えてにらまれてしまった。

 この例でも分かるように、安倍政権の長期化に伴い、これまたテレビの影響で「長く続くからダメ」というような、事実に立脚しないイメージ批判が蔓延(まんえん)している。そのせいで、ワイドショーなどの報道を鵜呑みにする人たちや、何でもかんでも安倍政権のせいにする人たちを、私の周りから遠ざけてしまうことになった。ただでさえ「友達」が少ないから、安倍政権の長期化は困ったものである。



厚生労働省が入る東京・霞が関の中央合同庁舎

 統計調査不正を利用して、安倍政権の経済政策の成果を不当に貶(おとし)める発言も実に多い。別に安倍政権を特に持ち上げる必要はない。だが、安倍政権の経済政策が、雇用面で大きな成果を挙げたことは否定できない事実である。

 マスコミや野党、反安倍的な識者には、この成果を否定したい思惑が広がっていて、それは事実の否定さえも伴っている。確かに、統計不正はいわば事実をないがしろにする行為だ。だが、批判している野党やワイドショーなどのマスコミがまさに雇用改善の事実をないがしろにしているとしたら、悲劇を超えて「喜劇」ですらある。

 例えば、立憲民主党の蓮舫副代表はツイッター上で次のように述べている。

 「アベノミクスの成果の根拠として、去年6月に前年比3・3%としていた賃金上昇率の伸び率が、実は1・4%だった。実質賃金の伸び率で比較すると、2%が実は0・6%と推計されました。昨年1月から11月の平均は、マイナス0・5ではないかと推計もされます。野党ヒアリングで厚労省はおおむね認める発言をしました」

 まず、安倍首相自ら国会で説明している通り、アベノミクスはその成果の根拠としても、政策目的としても、実質賃金の伸び率を重視したことはない。蓮舫氏はこの点で事実誤認している。

 さらに、前年比での実質賃金の伸び率がマイナスなのは、単に17年が18年よりも実質賃金の「水準」が高かったからである。しかも、アベノミクス期間中の賃金指数を、不正データと修正データとを比べると、むしろ上昇している。都合の悪いデータを隠すことは十分考えられるが、都合のいいデータを隠す意図は、さすがに政権側にはないと考えるのが常識的だ。

 もちろん、強固な反安倍主義者の中には、それでも政権への「忖度(そんたく)」があった、と考える人がいるが、もはや事実を提示して納得できるようなレベルの人たちではないだろう。悪意か妄執か、あるいは頑なな政治イデオロギーの持ち主か、いずれにせよ経済学による説得では無理である。

 またアベノミクスの開始当初から、なぜか蓮舫氏のように実質賃金とその伸び率を重視する人たちが多い。その多くが反安倍、反アベノミクス論者である。

立憲民主党の蓮舫副代表兼参院幹事長

    だが、そもそもアベノミクス、その中核であるリフレ政策(デフレを脱却して低インフレ状態で経済を安定化させる政策)は、実質賃金の水準や伸び率の動きをただ上げればいいだけの政策のように、単純な見方はしていない。むしろ、長期停滞からの脱出局面(現時点)では、実質賃金の伸び率が低下することも不可避であると主張してきた。

 リフレ政策が効果を与える停滞脱出期においては、実質賃金の切り下げが生じる。なぜなら、雇用が増加することで、新卒や中途採用、退職者の再雇用といった新たに採用された人たちの賃金は、既に長年働いている人たちの賃金よりも低いことが一般的だ。

 すなわち、雇用される人数が増え、失業率が低下することは、同時に平均的な賃金を低下させることになる。これを「ニューカマー効果」という。

 しかしニューカマー効果では、同時に失業率が改善し、雇用状況の改善(有効求人倍率改善、いわゆる「ブラック企業」の淘汰など)も実現していく。さらに、支払い名目賃金の総額も上昇していくだろう。そうして、経済全体の状況は大きく改善されていくのである。

 実際、安倍政権ではこのニューカマー効果による実質賃金低下と、同時に失業率低下、有効求人倍率の上昇、賃金指数の増加、名目国内総生産(GDP)の増加などが見られる。さらに、雇用安定化の成果で、失職などに伴う経済的要因での自殺者数が激減し、不本意な形で就業しなくてはいけない非正規労働者の数も大きく減少した。これらは、単にアベノミクスによって雇用の量的な改善だけでなく、質的な改善も見られたことを証明している。

 そして失業率が低下していくと、いわゆる「構造的失業」という状態に到達する。その過程で名目賃金の増加だけではなく、労働市場の逼迫(ひっぱく)の度合いに応じて、実質賃金も上昇していく。日本経済は、2014年4月の消費税率8%引き上げの悪影響がなければ、このプロセスが実現していた可能性が大きい。

 このように蓮舫議員に代表されるような「実質賃金低下ガー(問題)」論者は、あまりにも問題を単純に捉えていると言わざるを得ない。実は、実質賃金の低下だけを問題視する人たちは、経済が常に完全雇用の水準にあると思い込んでいる新自由主義者的な人に多い。

 新自由主義的な人からすれば、実質賃金の低下など、単に労働の生産性の低下を示すものでしかないからだ。蓮舫議員を含む立憲民主党や国民民主党などの多くの野党は、確か経済問題を適切な政府介入で是正していく「リベラル」のスタンスであるはずなのに、主張が新自由主義者風なのはなぜだろうか。

 おそらく、野党議員の多くは経済政策のアドバイスを受ける相手を間違えているのであろう。例えば、立命館大の松尾匡(ただす)教授が最近、安倍政権の経済政策に対抗するリフレ政策的な政治キャンペーン「薔薇マークキャンペーン」を始めている。なんでも今度の参院選に立候補する議員に、反緊縮に賛同する候補者と対して「薔薇マーク」の認定を与えるというものだそうだ。

2019年1月、毎月勤労統計の不正調査問題で、厚労省の職員らに質問する野党議員(奥)

 認定候補が野党勢力だけかどうか定かではないが、筆者はこのキャンペーンが与野党の対立構図に乗った政治色の強いものだと考えている。リフレ政策はそういう政治的イデオロギーを超えるべきだと考えているので、この運動自体には賛成できない。

 ただ、蓮舫氏のような反安倍主義者たちが、よりまともな経済政策を構築するには、松尾氏のアドバイスに対して、真剣に耳を傾けることを勧めたい。それが日本の政策議論の底上げにもつながるに違いないからだ。

【私の論評】虚妄に凝り固まる立憲民主党が主張する経済政策を実行すれば、今の韓国のように雇用が激減するだけ(゚д゚)!

野党の批判は、結局「実質賃金が下がり、実際に使えるおカネが減って貧しくなった。そのために、個人消費が伸びていない。いまの経済政策は間違っている」ということです。そうして、冒頭の記事で田中秀臣氏が主張するようにこれは明らかに間違いです。

実質賃金とは、皆さんが受け取る賃金(名目賃金)から物価の上昇分を差し引いたものです。

名目賃金が1%しか上がっていない時に物価が2%上がると、実質賃金は1%下がります。あくまで程度の問題ではありますが、「モノやサービスの値段が上がって、以前なら買えていたはずのものが買えなくなった」ことになります。インフレの悪いところです。

一方、名目賃金が2%下がっても、物価が3%下がってくれれば、実質賃金は1%上がります。「給料は減ったけど、以前よりたくさんのモノやサービスが買えるようになった」わけですから、喜ぶ人もいるかもしれません。

この部分だけを切り取って考えると、たしかに「実質賃金を、いますぐ上げろ!下がったのはケシカラン!」という主張は正しいように聞こえます。

しかし、経済は、常に動きつづけている生き物です。短いあいだだけを輪切りにして判断してしまったのでは、一見正しそうな政策が「長期的にはとんでもないこと」を引き起こしかねません。

これから起きるさまざまな変化を、「時間を追って順々に考えていく」というのが経済学的なものの考え方です。俗にいう「風が吹けば桶屋が儲かる」という世界です。

逆にいえば、この思考ができないと経済政策を誤ってしまうことになります。

失業者を減らすことが最優先

少しこみ入った話になるので、経済学でよく使われる需要曲線(赤)と供給曲線(緑)を使ってご説明します。縦軸が実質賃金、横軸が雇用者数です。

<現在>という矢印の指しているところに、いまの日本の雇用市場はあります。

左側の縦軸の「今の実質賃金」というところから水平に線を引く(………)と、「雇いますよ」という需要曲線(赤)とぶつかります。ここから下におろした線の指しているところが、「今、雇用されている人数」です。

先ほどの水平な線をさらに右にいく(………)と、「働きたいです」という供給曲線(緑)とぶつかります。ここから下におろした線が指しているところの人数だけ「今、働きたい人」がいます。

ただ、実際に雇ってもらえるのは、需要曲線(赤)から降りてきたところまでの人数だけです。この差が「失業者」となります。

失業とは、「働きたいのに働けない」ということです。しかも、失業することによって収入がとだえて経済的に困窮するだけでなく、「社会から疎外されている」と感じてしまいがちです。

その結果、非常に残念なことですが、精神的・肉体的に追いつめられて、自殺という手段を選ぶ人が増えてしまいました。日本の失業率と自殺率の相関関係は、OECD諸国の中でも際立って高くなっています。

従って、「失業者をどうやったら減らせるか」「この図の赤い矢印の方向にどうやって進むのか」ということを最も優先して考えなければなりません。

我慢して回り道を

現在の実質賃金の水準で、そのまま点線の上をわたって供給曲線(緑)に到達できれば一番良いのですがそうはいきません。点線の上は、あくまで空間です。右のほうにいきたければ、黄色い矢印が指し示すように「斜め右下方向」に需要曲線(赤)の上を動くことになります。

あくまで「下」ですから、「実質賃金が下がらないと、雇用者数が増える方向には行けない」というのが現実です。これを変えることは、誰にもできません。

では、どうしたら実質賃金は下がるのでしょうか?

先ほどご説明したように、実質賃金は(名目賃金)-(物価の変動)で決まります。

「実質賃金を下げろ」といわれて、まず思いつくのは「名目賃金を下げる」、つまり「賃金カット」でしょう。強欲な経営者が「給料を20%下げることにした!」と叫べば、たちどころに下がって、、、というほど話は簡単ではありません。

名目賃金は、経営者と労働者の交渉で決まります。「交渉」といっても、全員が実際に膝をつきあわせて丁々発止とやる訳ではありません。

「この賃金なら雇いたい」「この賃金なら働こう」という「労働市場での需要と供給から決まる」と考えたほうが自然です。アダム・スミスの「神の見えざる手」は、ちゃんと働いています。

この名目賃金というものは、あまり簡単に上がったり下がったりしません。特に日本では、毎週(週給)や毎日(日給)といった単位で給料が変動する労働者は極めて少数です。大多数の労働者は月給制ですし、しかも年間の支給額が大きく変動することはありません。

「20%下げるぞ」などと宣言したら、翌日の職場はカラになっていることでしょう。

つまり、「名目賃金は、そう簡単には下がらないし下げられない」というのが、本当の話です。

では、「物価を上げる」というのはどうでしょう?

これは何か非常に難しいこと、特に長い間デフレに苦しんだわが国にいると、とんでもなく大変なことのように思えます。

しかし、何らかの政策で「強引に名目賃金を変える」よりも、「金融政策によって物価水準を変えることで、実質賃金を動かす」というほうが世界の経済学や経済政策の世界では一般的です。

たとえば2013年1月に、政府と日銀は「+2%と言う目標を定めて物価を上げる」という共同宣言を発表しました。これは「実質賃金は一時的に下がるものの、まず失業者を減らす政策をとる」ことを示したものであると言い換えることができます。

その後の政策は、よく「異次元の」という形容詞をつけて紹介されますが、「デフレという名の異常事態からの脱却」という局面だったために「異次元の手段」が必要だっただけです。政策そのものは、ごく常識的な経済理論にのっとったものです。

「異次元」ではあっても、「異常」ではありません。

いま「物価が上昇したことで実質賃金が下がっている」のは、この右下がりの黄色い矢印の方向に日本経済が走りだしたということです。実質賃金は下がりましたが、冒頭にご紹介したとおり雇用者数は増加しています。

赤い矢印の方向に動いていることは、間違いありません。

デフレへの逆回転は絶対に阻止

現在の状態を、「実質賃金が下がって貧しくなった」と批判するのは簡単です。しかし、黄色い矢印の方向に行かなければ雇用者数は増加せず、130万もの人が失業したままだった可能性は否定できません。

いまはひとりでも多くの人が働けるようになるために、少し我慢をする時です。

きちんと現在の金融緩和政策をつづけていれば、「完全雇用」と書いた部分を通過し、右側の黄色い矢印が示す「右斜め上」に向かって供給曲線(緑)の上を動いていけるようになります。いよいよステージの転換です。

人手不足により名目賃金が上昇し、実質賃金が上がります。しかも、もらえる給料の額面が増えています。

「もらえる給料は減ったけど、物価はもっと下がっている。だから、実質的に豊かになって幸せだ」などという冷静沈着な計算のできる人が、世の中の多数派だとは思えません。やはり「金額が増えてハッピー」という人のほうが多いですから、消費が増えて経済の好循環が起きます。

しかも右方向に動いていますから、働くことができる人は増えつづけます。もう「社会から疎外された」などと、悲観する必要はありません。

1998年に3万人を超え「世界的にも高水準」と懸念されていた自殺者数は、過去5年連続して減少してきています。大規模な金融緩和に踏み切った2012年以降、減少幅が大きくなっていますが、これがさらに加速していくと期待できます。

実際の経済はこんな簡単な図よりも複雑ですから、まだ「完全雇用」と書いたところに到達しているかどうかはよく分かりません。

しかし、比較的名目賃金が変わりやすい「パートやアルバイトの時給」が、大幅に上がっているのはご存知のとおりです。首都圏のパートやアルバイトの平均時給は1000円を超えました。厚生労働省が先週発表した賃金構造基本統計調査では、女性の賃金が過去40年で最も高くなっています。

さらに総雇用者所得も増えていますから、働いている人全体が受けとる賃金の合計は増えつづけています。

総務省の調査によると、正社員を増やした会社は「人材流出を防ぐため」「採用を優位に進めるため」という理由をあげていました。つまり、「良い待遇を与えないと、働いてもらえなくなった」ということです。これは「完全雇用」状態に近づき、働く人たちの立場のほうが強くなったことに他なりません。

結論は明らかです。「物価が上がったことで実質賃金が下がり、生活が苦しくなった。金融緩和政策をやめて物価を下げろ」と言う主張は、経済政策論的に完全に間違っています。物価が下がったおかげで「実質賃金が上がった」と喜ぶことができるのは、失業する心配のない人達だけです。

もし、そんな経済政策をとってしまうと、この図の青い矢印のように「左斜め上」に動いていくことになります。たしかに実質賃金は上がりますが、多くの人が職を失い苦しむことになります。これこそが、デフレの害悪です。

今の流れを逆回転させるべきではないのです。

なお、上ではニューカマー効果を解説するため、マクロ経済でよく用いられるグラフを使って説明しました。

しかし、このようなグラフを使わなくても常識的に理解できます。

たとえば、ある企業で景気が良くなったので、事業規模を拡大しようとしたとします。事業を拡大するときには、最初は営業店舗や工場などの人員を増やすのが普通です。間違っても、本部の要員や役員などを最初に増やすということはありません。さらに、拡大するとすれば、営業店舗や工場そのものも増やすはずです。

そうなると、営業店舗や工場などには、多くの新人を雇用しなければなりません。新人を多数雇用すればどうなりますか。会社全体としては、事業規模を拡大する前よりも平均賃金は低くなります。さらに、生産性は当初は下がるのが当然です。なにしろ、新人を多く雇い入れれば、最初は新人は普通に仕事ができず、これに対して訓練や教育を施さなければなりません。

これが理解できれば、国単位で実質賃金が下がるということも容易に理解できると思います。さらに時がたつと、事業の規模が拡大し軌道にのれば、本部の人員を増やしたり、給料をあげないとなかなか人を募集できなかったりで、賃金は上昇します。

こんな簡単な理屈も理解できないのか、蓮舫さんをはじめとする野党の議員なのです。

お隣韓国では金融緩和せずに賃金だけあげて大失敗

さらに、野党議員らの考えが間違いであるということはすでに実例があります。お隣韓国では、文大統領が金融緩和をせずに、賃金だげあげる政策をとり、雇用が激減して大失敗しています。

これについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
文在寅大統領誕生に歓喜した韓国の若者、日本へ出稼ぎを検討―【私の論評】枝野理論では駄目!韓国がすぐにやるべきは量的金融緩和!これに尽きる(゚д゚)!
立憲民主党枝野代表

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、枝野氏も、雇用等に関しては蓮舫氏と同じような考えであり、実質賃金ばかりを問題にする傾向があります。以下にそのあたりがわかるような内容の部分のみを引用します。
枝野氏には金融緩和という考えは全くありません。金融緩和をせずに、分配を増やすというのはどういうことかといえば、結局のところ韓国の実施した「金融緩和をせずに最低賃金」をあげるというのと何も変わりません。 
枝野氏をはじめとするリベラルの雇用政策は韓国で実行され、大失敗したということです。 
ブログ冒頭の韓国の若者の悲惨な状況を改善し、日本のように大卒の就職率を良くするには、分配や最低賃金を最初にあげるのではなく、まずは量的金融緩和を実施すべきです。
いずれにせよ、枝野氏も蓮舫氏も虚妄に凝り固まっており、金融緩和などは実施せずに、分配を増やす、最低賃金を増やすなどの破滅的な政策を主張しています。立憲民主党が主張する経済政策を実行すれば、またぞろ大学生の就活が地獄になるのは明らかです。

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2017年10月17日火曜日

若者は保守化しているのか 雇用改善で政権支持の実態、左翼色強い報道にも縁遠く―【私の論評】まもなく実質賃金も上昇しはじめ、吠え面をかく反安倍派?

若者は保守化しているのか 雇用改善で政権支持の実態、左翼色強い報道にも縁遠く
 毎日新聞の記事で、20代以下と30代の若者に内閣や自民党の支持者が多かったという調査結果が紹介されている。「政治的な知識不足」「現状維持を望む」といった解釈のほか、「雇用の売り手市場」なども要因とされているが、若者は保守的なのだろうか。

 この種の調査では現時点での傾向はつかめるが、変化については経年的な調査の方が分かりやすい。

 そこで、内閣府で継続的に行われている「外交に関する世論調査」を参考にしてみよう。

 日本で「保守化」や「右傾化」とされる代表的な特徴は、中国への態度である。この調査では「中国に親しみを感じる」割合について、年代別の経年変化が分かる。全世代でみると、中国に親しみを感じる割合は、1978年の調査開始以降、85年6月には75・4%だったが、それ以降低下し始め、95年10月に5割を切り、直近の2016年11月では16・6%(20歳以上)まで下がっている。

内閣府が2016年12月26日に発表した外交に関する世論調査より グラフはブログ管理人挿入以下同じ
 世代別の数字をみると、1999年10月では全世代で49・6%、20代で48・9%、60代で47・4%と、ほとんど差はなかった。しかし、直近の2016年11月では、全世代で16・6%、20代(18、19歳を含む)で31・1%、60代で12・8%と世代間の差が大きい。このデータでは若い世代ほど「保守化」「右傾化」していないことが分かる。

 一方、自民党支持についてみてみると、若い世代ほど支持する割合が高くなっている。より正確にいえば、若い世代は、それほど「保守化」していないが、自民党支持が強いと説明することができる。

 もっとも、これは自民党というより、第2次安倍晋三政権の特徴だといえる。実際、民主党への政権交代を許したときや、第1次安倍政権の際にも、若い世代は自民党支持は多くなかった。

 なぜ、それほど「保守化」していない若い世代に自民党支持が多く、「保守化」している老齢世代で自民党支持が少ないのか。筆者が思うに、若い世代は雇用を重視し、情報はネットなどテレビ以外から入手する。一方、老齢世代は雇用の心配がなく時間はあるが、情報を主にテレビに頼っているからではないだろうか。

昨年の結果より作成、「もりかけ問題」で一時、内閣支持率は
下したが最近はこのグラフに近いかたちになっている
 大学教員をしている筆者には切実な問題だが、大学生にとっての最大の関心事は就職である。初めての就職がうまくいくかどうかが、その後の人生を決めるともいえる。

 民主党政権時、残念ながら就職率は低く、就職できない学生が多かった。ところが、安倍政権になってから就職率は高まり、今では就職に苦労していない。正直なところ学生のレベルが以前と変わっているわけではなく、政策によってこれほどの差があるとは驚きだ。

 しかも、今の学生の情報入手はネットが中心で、左翼色が強く政権批判が多いテレビをあまり見ない傾向がある。そうした意味で老齢世代と若い世代は正反対だ。

 安倍政権の金融緩和と表裏一体の雇用重視は本来、左派政策なので、「保守化」していない若者にも受けるのだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】まもなく実質賃金も上昇しはじめ、吠え面をかく反安倍派?

若者が、内閣を支持する理由として、高橋洋一氏は若者は雇用が良くなったことを評価し、情報入手はネットが中心であることをあげています。そうして、中国への態度から若者は決して保守化しているわけではないことを主張しています。私もそう思います。

ブログ冒頭の、高橋洋一氏の記事にでてくる、毎日新聞の記事を以下にそのまま引用します。
<衆院選>若者層は保守的? 内閣・自民支持多く…世論調査  
 衆院選公示を10日に控え、国政選挙では、昨年夏の参院選から選挙権を得た、18歳以上の10代の若者が今回初めて衆院選に臨む。総務省によると、前回参院選で10代は40歳前後の世代と同程度の46.78%が投票し、投票意欲は決して低くはない。各党とも新たな票田として注目しているが、各種の統計や専門家の分析によると、10代から30代までの比較的若い世代で政治意識が保守化していると言われる。全国各地の10代有権者10人にその背景を聞いてみた。【大隈慎吾、水戸健一、野原寛史】 
 毎日新聞が9月に2度実施した全国電話世論調査(9月2、3日と同26、27日)によると、全体として20代以下(10代を含む)と30代は、40代以上の高齢層に比べて内閣支持率も自民党支持率も高い傾向を示した。 
 最初の調査では20代以下の内閣支持率5割弱に対し、70歳以上や40代は4割台、他の世代は3割台どまりで、20代以下の高さが際立った。2度目の調査でも20代以下と30代は4割台で、40代以上は3割台にとどまった。 
 年代別の自民党支持率も、最初の調査は20代以下が4割弱と最も高く、30~60代の2割台と好対照。2度目も20代以下は3割程度で、30~60代は2割台だった。 
 こうした傾向について、10代有権者の多くは「何も知らないままなら、有名な候補に」などと政治的な知識不足を背景にあげた。福岡市の男子大学生(19)は「知らないし、わからないと現状維持で問題ないと考えるからではないか」と話す。 
 「関心のない人がとりあえず名前を知っているから入れている」「自分の主張がないから、支持者の多い方に流される」などと同世代に厳しい指摘もあるが、「民主党政権はマニフェストも達成できず、インターネットの発達で失敗も隠せない」「安倍(晋三)首相はリオ五輪閉会式のスーパーマリオの演出など見せ方もうまい」といった声も聞かれた。 
 世代間の違いを指摘する声も出た。北海道の男子大学生(19)は「自分たちは子供のころから雇用難。安倍政権で景気や雇用が改善し、わざわざ交代させる必要もないと考えているのでは」と話す。 
 大阪市の予備校生(18)は「私の祖父母は野党側の考えに近いが、若い世代は安保闘争のような大きな政治運動の経験がない。野党の政策はどこか理想主義的で、現実的な対応をしてくれそうな自民がよく見える」と解説した。 
 有権者の政治意識や投票行動を研究する松本正生・埼玉大社会調査研究センター長によると、他の各種世論調査でも10代を含む若い世代で内閣や自民党の支持率が高い傾向にあり、男性が女性よりも高いという。松本さんは「安倍首相のきっぱりとした物言いや態度に若者が好感を抱き、ある程度の固定ファンがいるのではないか。大企業や正社員を中心とする雇用の売り手市場や株高の現状が続いてほしいという願望が、若い世代で強いのだろう」と話す。 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171009-00000010-mai-soci
若者は保守的と指摘する毎日新聞の記事は、若者はモノを知らない馬鹿者と言っているようなものです。モノを知らないのはどちらなのかと言いたくなります。

このような批判をすると、以下のようなグラフを提示して、2010年半ばからエンゲル係数が急上昇しているなどの批判をする人もいます。

これについては、いろいろ調べたところ、田中秀臣氏が最も理解しやすい反論をしていました。それを以下に掲載します。
エンゲル係数の推移を見ると、平成元年から平成16年(2004年)にかけて低下していましたが、平成21年(2009年)以降上昇しています。これは、エンゲル係数が、世帯主が60歳以上の高齢の世帯では高い傾向があるため、高齢化に伴って高齢の世帯の割合が上昇していることなどが全体のエンゲル係数の上昇にも関係しているのです。 
それと所得が上昇して外食が増えるとエンゲル係数が上昇したりもするのです。エンゲル係数は基本的に高齢化の進展でこれからも上昇トレンドにあると思いますが、その他の要因でも影響がおこるといえます。 
 エンゲル係数という一部分を取り出して、現在よりも民主党政権時代の方が暮らし向きがよかったという見方は、 
1)民主党政権時に失業率が高率(見かけ失業が減る傾向が始まったかのようにみえてもそれは求職意欲喪失者が増えたため=景気の悪化が深刻で職をさがすこと自体をあきらめたから)であったことをみていない 
2)民主党政権時に経済的自由での倒産件数の比較にならないほどの多さを無視 
3)現段階での自殺者数の減少を無視(民主党政権時よりも安倍政権の下の方が減少率はるかに拡大) 
4)最低賃金の上昇も無視などさまざまに列挙できるものを無視しています。さらに最近では、雇用回復の中での実質賃金上昇もみられます。民主党政権時では、雇用悪化の中での実質賃金上昇があったのですが、それは採用コスト増加で失業者増加をもたらしました。 
安倍政権を批判するならば、現在のアベノミクスのうちリフレ政策をさらに意欲的に実行せよ、というのがまともな批判の方向でしょうが、そういう話にはならず、批判のための批判しかできない人達が多いようです。
以上、田中秀臣氏の反論にでてくる指標のグラフを以下に掲載します。

就業者数については、どうみても安倍政権になってから増加しています。

倒産件数も、安倍政権になってから持続して減っています。


自殺者数も、安倍政権になってからかなり減っています。


実質賃金については、安倍政権になってから下がっています。直近では多少あがっています。

これは、反安倍派にとっては、格好の突きどころですが、これも先程のエンゲル係数のように、反安倍派は他の重要なことを見落としています。

それまで、金融引締めで雇用が悪化していた状況でご存知のように、2013年から日銀は金融緩和に転じました。そうすると、何がおこるかというと、比較的低賃金のパート・アルバイト、正社員も比較的低賃金の新卒や若年層から雇用が増えます。

そのため、マクロ経済学では、金融緩和をした直後には、雇用は増えるものの、実質賃金が下がるということが知られています。まさに、安倍政権になってからの実質賃金の低下はこれで説明ができます。

これは、大企業が業容を拡大するときにも似たような現象がおこります。たとえば、流通関係の企業で、景気が良いので、さらに利益をあげようと、店数を増やせば、店に配置する相対的に低賃金のパート・アルバイト、新卒を増やすことになります。

そうなると、どうなるかといえば、会社全体での平均賃金は下がります。金融緩和をして、実質賃金が下がるのはこれと同じようなものです。

新卒や非正規(主婦パート・アルバイト、高齢者再雇用)などの人たちが増えればその人たちの名目賃金は低いです。これらの雇用が増えていれば、インフレ率との見合いで実質賃金が下がることは明白です。実質賃金の低下で政府の経済政策は失敗と判断するのは明らかに間違いです。

しかしけ現状どおり金融緩和政策が続けば、次の段階では、人手不足となり、安定して人員を確保しようとすれば、当然のことなが、企業も賃金があげなければならなくなります。その動きが多くの企業にまで広がれば、全体の実質賃金もあがることになります。

一つ付け加えておくと、本来は実質賃金は今頃は確実にあがっていたはずなのですが、残念ながら2014年4月から、消費税増税をしてしまったため、個人消費が冷え込み、それが企業業績にも悪い影響を与えたため、雇用情勢は良くなりましたが、実質賃金上昇にまではいたりませんでした。

しかし、この状況は長くは続きません。最近実質賃金が多少あがっているのはその予兆です。しばらく、雇用者数が増え、実質賃金が減少する状況が続きしまた。いずれ、女性や高齢者などの雇用にも限界がくるでしょう、そうなると企業としては、人材を確保するためには、賃金を上げざるを得なくなります。その時期は近いです。

最後に、安倍総理が10%増税を前提として、増税分の税収の使いみちについて言及したことをもって、安倍総理は10%増税すると早合点している人もいるようですが、安倍総理は税収の使いみちについて言及しただけであって、増税するとはっきり言及したわけではありません。

このブログでは、8%増税分の税収が、社会保障にあまり使われることなく、財務省がありもしない政府の借金返済につかわれている実体をあげて、安倍総理はこれを批判しているのだという見方を紹介しました。実際そうだと思います。

次の10%増税の時期まで、北朝鮮情勢の悪化が続いていれば、政府としては北朝鮮情勢悪化のため、増税は延期ということで、三党合意による増税法案を廃案に追い込むのはたやすいことでしょう。

さらに、もし北朝鮮情勢にかたがついていたとしても、三党合意の一党である民主党が、現状では民進党と名称を変更し、半分消滅したような状況にあり、2年後には完全消滅しているかもしれません。そうなると、増税法案を廃案に追い込むのはたやすくなります。

いずれにせよ、10%増税は今から二年後のことです。安倍総理も朝鮮半島有事が間近に迫っていることから、現在は今でも政治勢力として強大な財務省と事を構えるのは避けたいと考えているのでしょう。財務省も、北朝鮮有事に備えることに協力して欲しいと考えているのでしょう。

そんなことから、現在の選挙では増税は争点と見るべきではないことを最後に付け加えたいと思います。

現在、増税凍結宣言を早々と行った、維新が苦戦しているのをみると、実際そうなりつつあるようです。

【関連記事】

民進は共産と共闘するのか 増税凍結提言で維新好機、準備不足が響く小池新党―【私の論評】消費増税凍結が争点となりえない裏事情(゚д゚)!

↑この記事少し前の記事ですが、維新が苦戦していることから、今回の選挙ではやはり消費税凍結が争点とはなっていないことがうかかわれます。

2016年9月5日月曜日

実質賃金6カ月連続プラス 7月、2.0%増 ―【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!



 厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.0%増加した。伸び率は6月の確報値と同じで、6カ月連続で前年を上回った。ボーナスの増加などで名目賃金が増えたほか、消費者物価指数(CPI)の下落傾向が実質賃金を押し上げている。

 名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は37万3808円と、前年同月比1.4%増加した。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万1518円。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.2%増の11万3150円だった。

 実質賃金の増加は給与の伸びが物価の伸びを上回っていることを示す。7月のCPI(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比0.5%下落し、実質賃金の伸び幅が名目より大きくなった。実質賃金は6年ぶりに2カ月連続で2%台となった。ただ所定内給与の伸びは依然小幅で、物価下落の影響も大きいことから、所得環境の改善が続くかどうかは見通せない状況だ。

【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!

ここしばらく、「実質賃金が~」と叫ぶ人があまりいないと思ったら、7月は、年間は前年同月比で2%増であり、しかも過去6ヶ月韓連続のプラスということで、これでは「実質賃金が〜」と叫びようもないわけで、だから最近あまり聞かれなくなったのだと合点がいきました。

これも完璧に、金融緩和の成果であるということです。そういわれてみれば、民進党も「実質賃金が〜」と表だって声を上げることもなくなりました。

民主党政権時代と比較してほとんどの経済指標がよくなっているが、唯一と言っていい例外が実質賃金でした。そもそもデフレ脱却過程では実質賃金が下がるのは当然だし、消費増税があったからなおさらのことなのですが、民進党にはそれが全く理解できないようです。
半年前までは、実質賃金の低下が民進党の心のよりどころだったのだが・・・・・?

いずれにしても、現在でも実質賃金が上昇したとはいいながら、まだ弱含みで、今後また下がるようなことがあれば、民進党は「実質賃金が〜」と金切り声を上げることでしょう。しかし、過去において実質賃金が下がっていたのにはそれなりの理由があります。

まず実質賃金と、名目賃金の違いについて掲載しておきます。

「名目賃金」は、私たちが手にする賃金のナマの金額を現した数値でとても私たちの実感に近い賃金に関する数値です。

次に、「実質賃金指数」は先ほどの「名目賃金」から物価の上がり下がりを計算して影響した分を取り除いた数値になります。

物価が上がるとその影響分が「名目賃金」から差し引かれますので、実質賃金は下がる傾向に、また物価が下がっているときは賃金指数に低下分の影響が上乗せされますので上がる傾向になります。もう、これだけで、過去においては「実質賃金」が下がっていた理由はおわかりになると思います。

他にも実質賃金が下がる合理的な理由はあるのですが、結果として半年前くらいまでは実質賃金の数値が民主党政権時代より全般に低くかったことはは間違いありません。この数値だけが民主党政権時と比較して低下していました。そのためでしょうか、彼らはいつまでもこれにすがるしかなかったのですが、それすらもここ半年は、良くなっているので、民進党もこれにすがり続けるわけにはいかなくなりました。

そのせいでしょうか、民進党の代表戦では「実質賃金」などの雇用を政策論争にあげる候補は一人もいませんでした。そうして、全員増税賛成ということで、まるで財務省のスポークスマンのような有様です。

下のグラフは昨年11月の国会で民主党が使ったパネルです。いまだにツイッターのタイムラインにこれが表れてくることがあります。


変化を強調したグラフになっているからでしょうか、これを見た有権者の中には「民主党政権は実質賃金の面では頑張っていた」などと勘違いをする人が結構いました。だから、岡田代表はつい最近まで「実質賃金が〜」と喚いていました。

デフレ脱却とはインフレになることだから、物価が上がり、その分だけ実質賃金が下がります。所費税を上げればその分だけ一気に下がります。それは当たり前のことですが、人によっては、なぜ実質賃金を下げる結果になるインフレにわざわざする必要があるのか疑問に思うことでしょう。

さらに、安倍政権になって実質賃金を下げる要因になった物価以外の大きな要因が雇用者数の増加です。景気回復に伴いパートやアルバイトが増え定年退職者の再就職が増え、賃金の平均値を引き下げたのです。

実際、安倍政権下では一般労働者、パートタイム労働者ともに名目賃金は増えているのに、それを加重平均した全体では減少していました。


一般労働者の詳細な内訳データがあれば、賃金の高い人が退職して新人やパート・アルバイトが増えたことによる影響などもわかるはずです。しかし、このような分析は政策に反映するには有効かもしれないが、誤解している有権者に説明するのは困難だったかもしれません。

やはり、安倍総理が国会などで繰り返し説明していたように、「景気回復で雇用者数は増えている」「その結果、雇用者全体の賃金の総額である『雇用者報酬』は増えている」と言う方が分かりやすいです。それをグラフにしたのが下です。




経済無策の民主党政権がアベノミクスの安倍政権に代わってから雇用者数が増え、その結果、国民の雇用者所得は名目でも実質でも増加しました。これを考えれば、パートや定年後の再就職などが増えて平均値である実質賃金が下がったことは理解しやすいです。

これは、何も国単位で考えなくても、ある程度大きな企業のことを考えればおのずと理解できます。

皆さんが、ある程度大きな企業に勤めていると想像してみてください。そうして、景気が良くなって、会社が業容拡大のために、新人やパート・アルバイトを大量に雇ったとします。そうなると、平均賃金はどうなるでしょう。業績が拡大した場合、個々の従業員の賃金も上げるということも考えられますが、そこまでいかず、賃金の低いパート・アルバイトの数が増えた場合どうなるでしょう。そうして、さらに物価が上昇しているとしたら、当然のことながら実質賃金の平均は下がることになります。

逆に景気が悪くなって、会社の業容が縮小している場合はどうなるでしょうか。まずは、パート・アルバイトの新規採用は避けます。新人もあまり雇用しないようにします。業績があまりにも悪化すれば、社員の賃金を全体的に下げることになるので、一概にはいえませんが、業績がそこまで悪化せず、賃金水準はそのままで、賃金の低い新人や、パート・アルバイトが減れば、当然のことながら、平均賃金は上がります。さらに、景気低迷で物価が下がれは、実質賃金の平均は上昇します。

こんなことを考えれば、半年前くらいまでは、実質賃金が低下していたことの説明は十分につきます。

さて、ここ半年は、確かに実質賃金は上昇気味なのですが、それにしてもあまり上昇せず、弱含みです。どうして、そうなるかといえば、やはりまだ金融緩和の余地があるということです。

実際、日銀の黒田東彦総裁は本日、9月の金融政策決定会合で実施する「総括的な検証」について都内で講演した。検証は「あくまで2%の『物価安定の目標』の早期実現のため」と強調し、「市場の一部で言われているような緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べています。政策の中核とする予想物価上昇率を押し上げるため「2%目標をできるだけ早期に実現するというコミットメントを堅持していくことが重要」と述べました。
本日都内で講演した日銀黒田総裁
金融政策の限界論に対しては「マイナス金利の深掘りも、『量』の拡大もまだ十分可能」など否定的な考えを改めて示し、「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としました。また「それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)からはずすべきではない」と述べました。

私自身は、黒田総裁の金融緩和は「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としているのですが、特に「量」的緩和は、必ず実施すべきものと思います。

それは、以前もこのブログで述べたように、我が国の構造的失業率は2.7%程度であるにもかかわらず、最新の統計では未だ完全失業率が3.0%であり、これは、まだ「量」的緩和が不十分であり、少なくとも、完全失業率が2.7%になるまでは、必要だと考えられるからです。

これを是正して、さらに実質賃金をさらに上昇させるためにも、「量的緩和」は必須です。黒田総裁と、日銀政策決定委員会の英断を望みます。

そうして、民進党のように単純に「実質賃金が〜」と喚き、雇用に関するまともな認識のない人たちの声に振り向く必要は全くありません。なぜなら、彼らは雇用というおおよそ、国民にとって最も重要なことに関してあまりにも無頓着だからす。

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2014年8月2日土曜日

6月の実質賃金大幅減 米紙、アベノミクスの先行きを不安視 格差拡大にも懸念―【私の論評】増税始めるのが早すぎたってだけのこと。アベノミクスは第一の矢印しかちゃんと効いていない。もう少しすると、アベノミクス無効論が巷をにぎわすが、これに惑わされてはいけない(゚д゚)!


安倍政権をつぶしたい勢力は特ア三国だけではなく、欧米に存在する

厚生労働省は7月31日、6月の毎月勤労統計調査(速報値)を発表した。それによると、基本給に残業代・ボーナスなどを合計した「現金給与総額」は前年比0.4%増の43万7362円で、4ヶ月連続の増加となった。しかし、物価の影響を加味した「実質賃金指数」は前年比3.8%のマイナスと大幅に下落した。海外各紙は「賃上げは依然、お預け」(フィナンシャル・タイムズ紙=FT)、「予想を下回った」(ブルームバーグ)、「6月になってスローダウン」(ウォールストリート・ジャーナル紙= WSJ)と、いずれも後者の数字を重視して日本の景気に低調な評価を下している。

これらの経済紙の低調な評価は、以下の三点に集約される。

1.インフレが家計を食い荒らす

2.賃金アップはごく一部の大企業だけ

3.増えたのは非正規の雇用ばかり

見かけの好況感とは裏腹に、実質賃金は減り格差は広がるばかり、というのが主な海外メディアの見方なようだ。

【私の論評】増税をするのがはやすぎただけのことであり、金融緩和は間違いなく功を奏したし、これからも奏する。増税後の経済悪化から、アベノミクス無効論が巷を賑わすが、これに惑わされてはいけない(゚д゚)!

日本のロンドン五輪での体操競技のユニフォーム。これは、無論旭日旗を
元にしたデザインだ。この旭日旗を韓国は、日本軍国主義の象徴だという

上記の、欧米の代表的な経済三紙の日本経済に対する批判は、全くの筋違いです。この三紙は、日本がまだデフレから脱却していないにもかかわらず、はやばやと増税をしてしまったことを批判していません。

これでは、全くバランスを欠いています。まあ、この外国の経済紙ですから、仕方ないといえば、仕方ないのかもしれませんが、それにしても、勉強不足か、背後に何らかの意図があるものと考えておくべきでしょう。

勉強不足なら、良いのですが、背後に意図があるとすれば、それはアベノミクスの失敗を訴え、あわよくば安倍政権を転覆させようということです。

まずは、欧米三紙の批判をみていきます。

1.インフレが家計を食い荒らす
現状は、インフレ気味になっていて、しかも賃金はあがっていないので、家計の負担は増します。これは、デフレから脱却する過程で一時的には必ず発生する現象であって、最初から織り込みずみのことであり、これを批判するという事自体が非常に奇異です。
日本に限らず、どこの国でもインフレ気味になれば、発生することであり、こんな批判をする欧米三紙に、景気対策によって、インフレにもっていく過程において、副作用でこのようなことが発生するのは当然であり、そうならないようにできるというのなら、その方法を教えていただきたいものです。
そのような方法はないです。
2.賃金アップはごく一部の大企業だけ
これも当然とえば、当然であり、デフレ傾向からインフレ傾向に多少でも傾けば、これは当然のことながら円安傾向になります。(この理屈は説明しません。わからない人は自分で調べて下さい。ただし、その理屈は簡単なことで、小学生にでもわかります)
そうすれば、大企業で、海外に輸出をしていたり直接投資をしているような企業は、すぐにその恩恵を受けることができます。そのようなことをしていない、ほとんどの中小企業は何も変わらず、賃金も上げられません。

3.増えたのは非正規の雇用ばかり
これもあたり前といえば、あたり前で、通常景気対策としてインフレに持って行った場合は、最初はアルバイト・パートのような非正規の人々から賃金があがったり、雇用が増えます。 
正社員は、その後からで、役員クラスなどの上のクラスはさらにその後ということになります。

まずは、デフレ脱却してマイルドなインフレに持っていく過程においては、どれも一時的に必ずおこる現象です。

日本の場合、デフレとはいっても、時間的にも長期間にわたりましたし、量的にも本来必要な通貨量をはるかに下回るような状況でした。

これについては、以前ブログ記事でも掲載したことがあるので、その記事のURLを掲載します。
日本銀行・白川方明総裁 辞任発表緊急会見 全文文字起こし(2013/2/5)―【私の論評】どこまでも日本を弱体化させたいマスコミ白川総裁の悪行を報道せず!!国民を塗炭の苦しみに陥れた白川への恨み忘れまじ!!
詳細は、このブログをご覧いただくものとして、この記事で村上尚己氏が、日銀が白川体制だったときに、いか貨幣供給量が本来あるべき姿より下回っていたかを解説していましたので、その部分のみ以下にコピペします。


"日銀がいかに仕事をしていないかが分かる、たったひとつのグラフ 村上尚己(マネックス証券チーフエコノミスト)

さて、日銀がいかに仕事をしていなかったことが、ひと目で判るグラフとは以下です。 


詳細は、上のURLをごらんいただくものとして、要点だけ以下に掲載しておきます。
このグラフからわかることは、「日本が3.5%の名目成長を達成するには、日銀が“追加で”あと100兆円のベースマネーを供給しなければいけない(=日銀の金融緩和の規模はあと100兆円も(!)足りていない)」ということである(これ実は、これまでの日銀の政策が、実際に日本を-0.5%の名目成長に陥らせる程度のベースマネー拡大しか行なっていなかったということもわかるグラフになっているから驚きだ)。"
それにしても、これだけお金が不足していたのですから、これを正常に戻すには、通常よりもはるかに時間がかかることは経済の素人でも、十分当初から予想できることだったと思います。

さて、当時は、日本がまともに3.5%の名目成長率を達成するためには、100兆円ものベースマネーを供給しなければならなかったということです。このような状況から昨年4月より日銀は、異次元の包括的金融緩和を実施しました。これは、全く正しい施策でした。

そうして、雇用状況も改善され、今年の5月時点では、有効求人倍率、1.09倍 5月、バブル後の最高更新したわけです。

これについては、このブログでも紹介たことがありますので、そのURLを以下に掲載します。
有効求人倍率、1.09倍 5月、バブル後の最高更新―【私の論評】経済対策と経済失策には、タイムラグがあるということを知らない変態マスコミ・政治家・似非識者が多すぎ(゚д゚)!リフレは雇用を改善させないんだっけか?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に5月時点では、いかに雇用が改善されていたかがわかる部分のみを以下に掲載します。
厚生労働省が27日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月より0・01ポイント高い1・09倍だった。1992年6月の1・10倍以来の水準で、バブル崩壊後の最高値を更新した。総務省が発表した完全失業率(同)は前月より0・1ポイント低い3・5%で、97年12月以来の水準になった。
昨年はリフレに疑義を唱える人々も多かった。しかし1年たってそれ
が政策が正しいことを示す事実が次々に浮かび上がってきている。

ご存知のように4月から増税をしたのですが、4月ももちろん雇用状況は改善していましたが、5月においてはまだ、増税が雇用情勢に悪影響を及ぼすには至っていなかったため、このような雇用状況になっていました。

このようなことは、良く発生する社会現象です。ちなみに、バブルの象徴にいわれていた、あの「ジュリアナ東京」は、バブル崩壊後にオープンしています。バブルが崩壊しても、人々の心はすぐに変わることなく、バブル気分がしばらく続いたのです。

ジュリアナ東京は、バブル崩壊後に開店したという事実は意外と知られてない

5月時点では、4月から増税されているにもかかわらず、人手不足などが顕著だったので、増税後の経済の先行きが不透明さもあり、雇用条件は改善を続け、バブル後の最高を更新したのだと思います。

これをアベノミクス第一の矢である、異次元の包括的金融緩和によるものてあることははっきりとしています。

そのまま、金融緩和策だけを続けていけは、6月以降も雇用状況は少しずつ改善して行ったものと思います。無論、大多数の人がそれを実感できるようになるまでは、まだまだ時間がかかったでしょう。少なくとも、後1~2年以上はかかったものと思います。

大企業などでも、一端かなり業績を落として、改革案を実行したとしても、それが元に戻り、さらには成長軌道にのり、給料があがりはじめるようになるまでには、少なくともかなりうまくいって、2~3年、普通は5年くらいかかるのが普通です。改革をはじめて、半年や1年で、給料があがらないなどと嘆いているような、社員はただの馬鹿です。

しかし、上の記事の欧米経済三紙は、このことはとりあげず、「実質賃金指数」は前年比3.8%のマイナスと大幅に下落したことのみ強調しています。これでは、全くバランスを欠きます。

何やら、上の記事を読んでいると、そもそも「アベノミクス自体」が失敗であったかのような扱いです。

しかし、5月までは雇用情勢は少しずつですが、改善を続けていました。それは、以下のグラフを観ても明明白白です。あまりにもはっきりし過ぎています。

クリックすると拡大します

就業者数は、アベノミクス後には、間違いなく改善を続けていました。しかも、5月まで改善していました。

それが、急に6月から落ち込んだとすれば、増税の影響であることは間違いないです。

そうして、これを皮切りに、雇用がまた悪化していく可能性が大です。

本来なら、増税するにしても、金融緩和策で経済が好転し、インフレ率が4%台くらいになるまで、待ってから、景気の加熱を防ぐという意味合いで増税すべきでした。

デフレの最中の増税はどう考えても間違いです。

上の欧米経済三紙は、これを報道せず、単に6月に雇用条件が悪化したことのみを報道して、アベノミクスが失敗であったかのような印象操作をしています。意図的にしたかどうかは、別にして、実際にそのような印象操作になっています。

デフレのときには、金融緩和と積極財政をするのが、常道です。積極財政としては、公共工事を増やす、減税する、給付金を増やすなどが、あたり前のど真ん中であって、増税は、積極財政ではなく、緊縮財政の一つです。

上の経済三紙の論調など、こうした日本政府の失政は報道せず、アベノミクスがそもそも失敗であったかのような印象操作をしています。

増税をした現在また、景気は足踏みします。そうなると、この欧米三紙のような、アベノミクスに対する批判が高まります。

私たちは、このような批判に対しては、即座に対応して、それが間違いであるとの反論をすべぎてす。またぞろ財務省やマスコミ、変態識者の駄論が巷を大賑わいさせることでしょうが、これにまどわされるべきではありません。増税したあげくに、金融緩和をやめてしまえば、また過去の日本と全く同じで、いつまでたってもデフレから脱却できなくなってしまいます。そんなことをしてしまえば、失われた20年ではなく、失われた40年がこれから私たちを待っていることになります。

欧米三紙のアベノミクスに対する印象操作は、韓国の旭日旗批判のように、間抜けで的外れ

上の欧米三氏の論調など、何を考えて報道しているのかわかりませんが、韓国が旭日旗を軍国主義の象徴のように扱うのと、同程度の愚かな行為です。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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日本銀行・白川方明総裁 辞任発表緊急会見 全文文字起こし(2013/2/5)―【私の論評】どこまでも日本を弱体化させたいマスコミ白川総裁の悪行を報道せず!!国民を塗炭の苦しみに陥れた白川への恨み忘れまじ!!





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