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2017年8月18日金曜日

半島緊迫ウラで権力闘争 習氏と正恩氏“絶縁”にプーチン氏、米中手玉の“漁夫の利” 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】半島情勢を左右するロシアの動き(゚д゚)!

半島緊迫ウラで権力闘争 習氏と正恩氏“絶縁”にプーチン氏、米中手玉の“漁夫の利” 河添恵子氏緊急リポート

習近平
朝鮮半島危機の裏で、中国とロシア、北朝鮮が狡猾に動いている。中国の習近平国家主席は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と“絶縁状態”で北朝鮮への影響力はゼロに近いが、米国と北朝鮮の緊張を権力闘争に利用しようとたくらむ。ロシアのプーチン大統領は、北朝鮮を抱き込み、米国と中国を手玉に取る。正恩氏は、米国と中国、ロシアの間でしたたかに立ち回っている。ドナルド・トランプ米大統領は、彼らの計略に気付いているのか。東アジア情勢に精通するノンフィクション作家、河添恵子氏が緊急リポートする。

 中国共産党幹部にとって、今年夏はとりわけ暑い。最高指導部が大幅に入れ替わる5年に一度の党大会を秋に控え、引退した大物長老も含めた幹部が河北省の避暑地、北戴河に集まり、非公開の会議で人事を固める重要な時期だからだ。

 一部の中国語メディアは、習氏が宿泊する豪華別荘「ゼロ号」には、暗殺防止のために防弾ガラスが設置され、習氏が海水浴をする際には、厳格な審査を経て選抜された200人以上の水上警察官が警護にあたっている-と報じた。

ロシア人のリゾート地にもなっている北戴河
 習体制が船出して5年、習氏は権力掌握と勢力拡大を目指し、盟友の王岐山・党中央規律検査委員会書記(序列6位)とタッグを組み、「トラもハエもたたく」の掛け声で、宿敵・江沢民元国家主席派の大物を次々と刑務所や鬼籍へ送り込む“死闘”を繰り広げてきた。

 昨年10月の党中央委員会総会で、習氏は、トウ小平氏や江氏と並ぶ「核心」の地位を得たが、依然として「権力の掌握ができない」というジレンマを抱えている。習政権が掲げた夢は「中華民族の偉大なる復興」だが、習氏の夢は「江一派の無力化」であり、いまだ道半ばだからだ。

 習氏の不安・焦燥はそれだけではない。

 4月の米中首脳会談で、習氏は、北朝鮮の「核・ミサイル」対応をめぐり、トランプ氏から「100日間の猶予」を取り付けたが、7月中旬までに“宿題”をこなせなかった。北朝鮮と直結するのは江一派であり、習氏は北朝鮮に何ら力を持たないのだ。

 北朝鮮は5月、「中国が中朝関係を害している」と初めて名指しで批判した。これは建国以来の「兄弟国」中国に対してではなく、習氏や習一派への罵倒と読み取るべきだ。正恩氏は強硬姿勢を崩さず、ミサイル発射を繰り返している。こうしたなか、プーチン氏の存在感が際立っている。

 中国共産党最高指導部「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)のうち、4月に、江一派の張徳江・全人代常務委員(序列3位)と、張高麗副首相(同7位)が訪露し、プーチン氏と会談した。

 習氏(同1位)も7月、2泊3日でモスクワ入りし、プーチン氏と複数回会談した。これほど短期間に「プーチン詣で」が続いた背景は、北朝鮮問題である。

 北朝鮮の金王朝は1961年、旧ソ連と軍事同盟の性格を持つ「ソ朝友好協力相互援助条約」を締結するなど、古くから特別な関係にあった。プーチン氏は大統領就任直後の2000年、ロシアの最高指導者として初めて平壌(ピョンヤン)を訪れ、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記から熱烈な歓迎を受けた。

 この2年前、北朝鮮は「人工衛星の打ち上げ」と称して、事実上の中距離弾道ミサイルを発射した。北朝鮮のミサイルは旧ソ連の技術が基盤とされる。

 プーチン氏の訪朝後、ロシア下院は「露朝友好善隣協力条約」を批准する。正日氏は2001年以降、公式・非公式で何度も訪露をするなど「プーチン氏との関係強化に邁進(まいしん)した。

 北朝鮮は一方、江一派の息がかかる瀋陽軍区(現北部戦区)ともつながってきた。瀋陽軍区は、米国や日本の最先端技術を盗み、金王朝と連携して「核・ミサイル開発」を進め、資源や武器、麻薬など北朝鮮利権を掌握したとされる。

 江一派と敵対する習氏としては、北朝鮮のミサイルの矛先が北京・中南海(中国共産党中枢)に向かないよう、プーチン氏との「特別な関係」に注目しながら、江一派の“無力化工作”に心血を注いでいる。

 習氏がモスクワ訪問中の7月4日、北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射した。訪露にあたり、習氏は「110億ドル(約1兆2170億円)規模の経済支援」という手土産を持参した。北朝鮮をコントロールできない苦境を物語っているようだ。

 これに対し、プーチン氏はロシア最高位の「聖アンドレイ勲章」を習氏に授与した。習氏を手下にしたつもりだろうか? ロシアはすでに、北朝鮮を抱き込んでいると考えられる。

 北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」は、北朝鮮北東部・羅津(ラジン)と、ロシア極東ウラジオストク間を定期運航している。真偽は定かでないが、プーチン氏が送り込んだ旧KGBの精鋭部隊が、正恩氏の警護や、北朝鮮人民軍の訓練にあたっているという情報もある。

 一連の危機で“漁夫の利”を得るのは、間違いなくプーチン氏である。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)など。

【私の論評】半島情勢を左右するロシアの動き(゚д゚)!

結局、今回の朝鮮半島情勢も、ロシアが漁夫の利を得るだけなのかもしれません。これは、第二次世界大戦における真の勝者は誰だったのかを考えることが、参考になります。

さて、戦争の勝敗は何によって決まるでしょうか。もちろん死傷者も重要です。領土や財産を奪ったか奪われたかも重要です。しかし、本質は「目的を達成したか」どうかです。

当時のソ連の、戦争目的は、まず東欧の赤化です。これには完璧に大成功しました。次の目的は、満州の獲得です。これも成功です。それどころか、北朝鮮まで手中に収めました。ちなみに、現在の中ロ関係は良いとはいえないですが、スターリンが存命中には、毛沢東は忠実な手下です。

米国は結局ほとんど何も得られませんでした。英国は、失うものばかりが多く、本当にソ連の一人勝ちです。

ウェデマイヤーレポートの日本語版のタイトルは『第二次大戦に勝者なし』との題名なのですが、内容は「第二次大戦の勝者はソ連だけだ」です。


そうして、今日ロシアを支配しているのは、徹底した『力の論理』です。自分より強い相手とはケンカをせず、また、自分より弱い相手の話は聞かないというものです。

日本からの投資などで、ロシア側の姿勢を軟化させ北方領土問題を一歩でも進めよう、などという声もあるようですが、話を進める気のない相手に交渉を持ち込んだところで、条件を吊り上げられるのがオチです。

そもそも、戦争で取られたものは戦争で取り返すしかない、というのが国際社会の常識です。力の裏づけもないまま、話し合いで返してもらおうなどと考えている時点で、日本は甘すぎます。これは、それこそ子どもの論理と謗られてもしかたありません。
 
これは、プーチンとメドヴェージェフの役回りを考えてもわかります。子分が大袈裟に騒ぎ立てたところへ、親分が『まあまあ』と薄ら笑いで入ってくるのは、弱肉強食のマフィア社会などでは常套手段です。にもかかわらず子どものままの日本は、プーチンの薄ら笑いを友好的なスマイルだと勘違いしてしまっています。要するに、マフィアの社交辞令を真に受けているわけです。

プーチンとメドベージェフ
そもそも、多くの日本人はロシアを知らなさすぎます。ウクライナの問題にしても、ロシアの歴史を知っていれば『またやってるよ』で終了です。『アメリカの影響力の低下』を論じる向きもありますが、そもそも、旧ソ連邦であるウクライナ、とくにクリミア半島に欧米が手出しできるわけがありません。メキシコにロシアが介入できないのと一緒です。

これは、世界の通史を知れば国際社会の定石が学べ、おのずと理解できることです。そうして、文明国として、日本が強くなるべき理由やその方法も理解できるはずです。

プーチン大統領にとって、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物です。元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。ウクライナを狙うのは、彼が旧ソ連を取り戻そうとする行為の一環なのです。

プーチンは故郷であるソ連邦の歴史をムダにしたくないし、ソ連の崩壊が敗北だったとは決して認めたくないのです。例えばプーチンは、ガスプロムという天然ガスの企業を使って、ロシア人から搾取を続けています。

かつてイギリスが東インド会社でやっていたような植民地化を自国で行っているわけです。この事実だけ見ても、彼がロシアの愛国者ではなく、ソ連への忠誠心が高いと見ていいです。

ソ連の愛国者プーチン
このやり口を理解しなければ、トランプ大統領もプーチンにしてやられるだけです。

日本では、半島情勢というと、米朝の二国間だけに注目しがちであるし、マスコミもこの側面ばかり報道します。

しかし、これらの背後にあるロシアの動きも注目しなければならないということです。

ロシアが対北朝鮮で融和政策を取る最大の理由は、北朝鮮の振る舞いに対し、アメリカやその同盟国と非常に異なった解釈をしているからです。長年ロシアは、北朝鮮とわずかに国境を接しているにも関わらず、金一族に対してアメリカよりはるかに楽観的な見方をしてきました。冷戦初期、北朝鮮とソ連は共産主義の価値観を共有していましたが、そうしたイデオロギー上の連帯感はとうの昔に消え去りました。

ロシアは金一族は奇妙だが、合理的だとも考えているようです。金正恩が核兵器を手にしたのは本当です。しかし、ロシアのアナリストは、北朝鮮が核兵器で先制攻撃すれば、アメリカによる核の報復を受けて金も北朝鮮も破滅することを、金は承知しているとみています。

冷戦時代に米ソに核兵器の使用を思いとどまらせた核抑止の論理が、北朝鮮の攻撃を回避するうえでも役に立つというのです。そのため多くのロシアのアナリストは、北朝鮮が国家の安全保障に自信をもてて、アメリカによる軍事攻撃を抑止できるという点で、北朝鮮の核開発は朝鮮半島情勢の安定化に役立つと主張しています。

ロシア政府が北朝鮮問題でアメリカと一線を画すのには、他にも理由があります。ロシアは中国と同じく、朝鮮半島が統一されて北朝鮮の政権がアメリカの同盟国に取って代わられる事態をまったく望んでいません。

ロシア政府は中国に同調し、米軍による韓国への最新鋭迎撃ミサイル「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」配備に強く反発しています。アメリカが東アジア地域に重点を置く限り、ロシアが今も最優先に掲げるソ連崩壊後の地域をめぐる争いにアメリカの目は行き届きにくいです。そのうえ、金が譲歩しないことでアメリカが怒りの矛先を向けるのは中国だから、ロシアがアメリカに同調しないでいることは簡単です。

実際ロシアの見方では、朝鮮半島を緊張させた責任は、北朝鮮だけでなく同じくらいアメリカにあります。そうした見方からすると、そもそも金一族がミサイルや核を開発するのは自己防衛のためだといいます。「北朝鮮は通常、自分から仕掛けるよりやられたらやり返すタイプだ」と、ロシアの外交政策分析の第一人者で政治学者のフョードル・ルキヤノフは述べました。

「北朝鮮は、強がるのは賢明でないことをイラクのサダム・フセイン元大統領やリビアのムアマル・カダフィ元大佐の末路から学んだ上で、ミサイルや核を開発している。ミサイルや核の存在が、他国による介入の代償を許容できないほど押し上げている」。ロシアのアナリストの多くは、アメリカが北朝鮮を体制転換させると言って脅しさえしなければ、そもそも北は核兵器開発の必要性を感じなかっただろうと主張しています。

悲惨な末路を遂げたサダム・フセイン(左)とカダフィ(右)
アメリカは北朝鮮に対して核開発をやめるよう圧力をかける意思も能力もない中国に苛立ち、新たな選択肢を模索しています。アメリカとしては、このまま北朝鮮に米本土を射程に収めるミサイルの開発や実験を続けさせる事態は避けたいです。

トランプが今年1月、北朝鮮が核弾頭を搭載したICBMで米本土を攻撃する能力を持つ可能性はないと約束した手前もあります。米軍が北朝鮮の核関連施設を攻撃すれば、韓国や日本を巻き込む大規模な戦争に発展する危険性があります。

もしアメリカが北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるなど、北朝鮮政策を穏健なものにしていたら、ロシアも他国と足並みを揃え、北朝鮮に核・ミサイルの開発や実験をやめさせるよう圧力をかけたかもしれません。しかしアメリカが北朝鮮への軍事攻撃や体制転覆を選択肢として残している限り、ロシアは金正恩だけでなくトランプにも責任を負わせ続けるでしょう。

米国としては、中途半端はもうするべきではないのです。道は2つしかありません。北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるか、北朝鮮を攻撃し核の脅威を取り除きいずれ、北朝鮮に民主的な政権を根付けるかです。

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