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2018年1月17日水曜日

中国の米国債購入停止報道は外交カードにらむ観測気球か 日本は「利益」得るチャンスに―【私の論評】中国は米国の金融制裁を恐れている(゚д゚)!

中国の米国債購入停止報道は外交カードにらむ観測気球か 日本は「利益」得るチャンスに


 ブルームバーグが、中国の外貨準備の当局者の話として、米国債の購入を減らすか停止することを勧告したと報じた。これを受けて米国債が売られ、円高が進む場面もあった。

 筆者は旧大蔵官僚時代に国債の入札・買いオペなどの実務を経験したことがある。1日の大半を通称「ディーリングルーム」と呼ばれ、役所内で人の出入りを制限した隔離部屋で過ごしていた。

 その部屋では、さまざまな情報を見たり聞いたりするようになっていたが、多くの時間を、市場で自分のポジションに有利に働くような発言、いわゆる「ポジショントーク」の類いに費やさざるを得なかった。

 金融資本市場では、さまざまな発言が流布している。そのほとんどは、ポジショントークである。それらの発言がマスコミなどを通じて市場に流されている。

 金融商品取引法では「何人も(中略)相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布」してはいけないとされている(第158条)。ここでいう「風説」とは、虚偽の情報である。事実に基づく市場予測は風説に当たらないので、ポジショントークでも事実に基づいていれば問題ない。しかし、事実に基づくかどうかの検証はかなり難しい。

 冒頭の「中国の外貨準備の当局者の話」というのを検証するのはかなり困難である。当局者がマスコミの取材に応じることは少なくない。その際、意図的にリークすることもある。これも広い意味で、ポジショントークである。今回の場合、中国当局者がポジショントークしたとみるのが自然だ。その目的は、影響力を測るため、つまり観測気球であろう。

 米国債を大量に保有している者が、その影響力に関心があるのは当然だ。日本政府も米国債を外国為替資金特別会計で保有している。保有有価証券の総額は120兆円程度あり、その内訳は公表されていないものの、多くが米国債といわれている。

 これは、文字通り米国への「貸し」なので、米国に対して優位に立てるのではないかと思うのが一般的な印象であろう。実際、そのことを対米交渉の際に口に出した政治家もいたようだ。しかし、それは外交としては最悪であった。

 したたかな中国外交では、表だって言わずに、裏からポジショントークとして流して影響力を見たのだろう。

 ただ、実際の影響力はしれている。いくら大量に米国債を保有しているからといって、世界での取引を考えると影響力は限定的だ。しかも、効果は持続しない。やるぞやるぞといううちが花である。そうした限界はあっても、中国の対米外交としてはカードになりうる。

 日本にとっては、中国に一定の影響力が出たとしても問題はない。むしろ日本の出番だといえる。外為特会で米国債購入と為券(政府短期証券)の日銀購入によって対応できる。これは金融緩和の口実となって日本の利益となりうるのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国は米国の金融制裁を恐れている(゚д゚)!

米国債については、昨年の大晦日にとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【お金は知っている】国連の対北制裁強化で追い込まれる習主席 「抜け穴」封じなければ米から制裁の恐れ―【私の論評】中国が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして以下に米国債に関係するところだけ、掲載します。
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。 

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

米国の金融街 ウォール・ストリート

米国に金融制裁を実施されたら、最近は輸入も多くなっている中国の食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。
 
だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。 
米国に本格的に金融制裁をされると、中国は資源を購入することもできず、戦闘機や軍艦を出動させることもできなくなります。これでは、最初から勝ち目はありません。 
それに、中国の米国債保有は6月に5カ月連続で増加し、外国勢で首位の座を取り戻したようです。米財務省が15日発表した6月の対米証券投資動向によると、中国の米国債保有額は1兆1500億ドル(約127兆円)で、前月比で443億ドル増加。日本は1兆900億ドルで、5月に比べて205億ドル減少しました。日本は昨年10月に外国勢の米国債保有で中国を抜いて首位となっていました。
これは米国の脅威になるなどドヤ顔で吹聴する人もいますが、これも中国の大きな弱みとなります。米国がこれを凍結すれば、一気に中国は127兆円を失うことになります。 
そもそも、元に信用があれば、中国は米ドルを大量に保有したり、米国債を保有する必要などもありません。逆のほうからみれば、中国元は中国が米ドルや米国債を大量に保有しているからこそ、一定の信用が保たれているのです。 
その原則が崩れれば、元の信用は一気に崩れ、中国の金融は崩壊します。
そもそも、米国債(ドル建て)はどんなに売られても米国中央銀行がドル札増し刷りして米国債を買えば良いだけのことで、米国は全く困りません。

日本や中国が保有していた米国債が米国中央銀行の金庫に溜まり、代わりにドル札が日銀や中国銀の金庫に置き変わるだけで市場には何ら影響はしません。

ただ、それ大変だと思う馬鹿な輩がいるので米国債に多少の値下がりはあり得るでしょうが直ちに元に戻るだけです、それでドル札には金利がつかないですから米国は大喜びするたげです。

そもそも日本や中国が米国債を大量に購入したのは輸出で得たドル札を持っていても金利がつかないから利殖のために米国債を買っただけの話です。それに輸出で得たドル札は既に元や円に交換しているので利殖の投資だけにしか使えません。国の財政赤字の補填などには使えないのす。

いずれの国の中央銀行でも市場に出回っている国債価格安定化のために自国債の売買は日常業務です。
一旦市場に出た国債に限ってですが(これが重要)買うためには自国通貨の増し刷りは日常業務の一つです。

ただし、ギリシャ国債が売られたらギリシャは破綻します。なぜなら、ギリシャではユーロを増し刷りできません。これは、夕張が破綻したのと同じ理屈です。夕張は勝手に円を擦り増しできません。

だからユーロ圏では日本のように安易に国債発行はできません。統一通貨の問題点です。特に為替レートにも関係ないので各国間の格差は拡大します。だからユーロ圏では特に「輸出額=輸入額」ということが必要になります。

米国、日本、中国のような国では、自国で自国通貨を擦り増しできるので、そのようなことはありません。本来、貿易黒字がどうの赤字がどうのと騒ぐ必要性など全くないです。

ところで、米国には「国際非常時経済権限法」(IEEPA)という法律があります。米国の安全保障や経済に重大な脅威が発生した場合、外国が保有する米国の資産については、その権利の破棄や無効化などができるという法律です。つまり、非常時には日中が持つ米国債も凍結されてしまう可能性もあるのです。

日本やASEAN諸国と領土紛争を抱える中国は、そのために最後の一線を越えることができないのです。もし中国が他国をあからさまに侵略すれば、IEEPAが発動され、中国が持つ1兆2732億ドル(約130兆円)もの米国債は紙くずになりかねないのです。

米国は、沖縄・尖閣諸島について「日米安全保障条約の適用対象」とされていますが、これは尖閣有事がIEEPAの対象となることを示唆したものです。そういうことから、中国は沖縄・尖閣諸島をなかなか奪取することはできません。


ブログ冒頭の、中国の外貨準備の当局者の話として、米国債の購入を減らすか停止することを勧告したとありますが、これは無論高橋洋一氏が主張するようにポジショントークに過ぎないです。

もしも中国が米国債の購入を停止したとしても、利殖のための米国債がなくなるだけの話であり、損をするのは中国です。さらに、中国元そのももの信用は著しく低いので、中国はこれからも大量のドルや米国債を保有しなければ、中国の金融が大混乱に陥るのは必至です。

このポジショントークやはり、米国の市場関係者などの様子をうかがっているのでしょう。その背後には、やはり中国は米国の金融制裁を恐れているという面があるでしょう。もし、今回の中国の北朝鮮への制裁がうまくいかなければ、米国は中国に金融制裁を課すということは多いにあり得ます。もし、市場関係者が大騒ぎして、様々な対策などに打って出れば、そこに付け入るすきを見出すことができると考えているのでしょう。

1997年6月23日、コロンビア大学での講演において聴衆から「日本が米国債を蓄積し続けることが長期的な利益」に関して質問が出た際、当時の橋本総理は「大量の米国債を売却しようとする誘惑にかられたことは、幾度かあります。」と返しました。


橋本龍太郎氏
そして、アメリカ経済が与える世界経済への影響などを理由に挙げた上で「米国債を売却し、外貨準備を金に替えようとしたい誘惑に、屈服することはない」と続けました。しかし、大量の米国債を保有する日本の首相が「米国債を売却」への言及をしたことが大きく注目され、ニューヨーク証券取引所の株価が一時下落しました。

しかし、今回はそうはならないでしょう。米国の市場はこのような中国の動きに惑わされることはないでしょう。何か影響があっても、一時的なことに過ぎないでしょう。

このように金融面からみても、中国が迂闊に戦争などできないことははっきりしています。日本のメデイアはこのあたりを報道すべきです。無論、中国が未来永劫戦争をしないと言っているわけではありません。ただ、当面は戦争しても全く良いことはないということです。

しかし、これは国際情勢が変われば、どうなるかはわかりません。実際、日米戦争では互いに相手国の資産を凍結しました。

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2012年12月30日日曜日

Amazonの年末売上は過去最高、でも利益は激減、なぜ?―【私の論評】大躍進する企業とはすべからくこんなもの、アベノミクスが功を奏すればやがて日本の企業もこうなる!!?

Amazonの年末売上は過去最高、でも利益は激減、なぜ?:

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拡大しすぎてほころびが?

今年のクリスマスまでの年末商戦、米Amazonはもっとも多い日には1日で2650万個もの商品を販売、これは1秒あたり約306個です。ちなみにそれは11月26日、感謝祭明けの「サイバー・マンデー」でした。まさに飛ぶような売れ行きです。


そしてその中でもっとも多く売れ、ギフトとして贈られ、「ほしいもの」に指定されたのはAmazonのKindle Fire HDでした。そして12月25日のクリスマス当日には2300万本のデジタルコンテンツがダウンロードされました...など、Amazonからの発表は輝かしい数字にあふれています。

でも、現実は良いことばかりじゃありません。次の画像は、Amazonの2007年から今年9月までの利益の四半期ごとのグラフです。


 


【私の論評】大躍進する企業とはすべからくこんなもの、アベノミクスが功を奏すればやがて日本の企業もこうなる!!?


上の記事を書いた方、長年のデフレで考え方が少しずれていますね。しかし、それも仕方のないことなのかもしません。日本では、デフレが続き、40歳台以下の人では、そもそも、デフレでなかった時期などものごころついてから記憶がないという有様ですから。しかし、デフレで利益が減っていくのと、そうではなくて利益が減っていくのとでは全くわけが違います。日本は、過去20年もの間、デフレだったので、とにかく利益さえたくさんでていれば問題なし、利益が減っていくようであれば問題という考え方が定着してしまったようです。

アマゾンCEO ベゾス氏

確かに、デフレ期であれば、利益を確実に毎年確保して、減益になっても、わずかという企業が素晴らしいということになります。そうして、デフレ期には、多くの企業が設備投資も必要最低限しかしないし、人材投資も必要最低限ということになります。そうして、銀行などからも、ほとんど借金をしなくなります。それはデフレで国内では、モノやサービスがあまり売れない、円高で輸出もふるわないどころか、日本で生産などしていては、生産コストが割高になため、海外に生産拠点や販売拠点を移すということになります。そうして、このようなにしてデフレを克服したか、最小限の影響にとどめた企業が優秀ということになってしまいます。

amazonの書籍ピッキング・センター
しかし、デフレ・円高が是正され、インフレ気味、円安気味ということになれば、今度は、上記のアマゾンのように、将来に向けて、技術のある会社を買収したり、技術のある人をヘッドハンティングしたり、次世代を担う人を雇用(アメリカでは日本のような新卒の定期採用はありません)したり、あるいは、既存の設備で古くなったものを買い替えたり、さらに、効率の良くなるものを新規導入します。

なぜなら、デフレのときには時がたてば、お金の価値があがるので、なるべくお金を手元においておくのが賢い選択ですが、インフレ気味あるいは、インフレと いうことになれば、手元にお金を長い間おいておけば、お金の価値は減るので、どんどん投資したほうが良いということになるからです。場合によっては、手元 にお金がなくても、借金をしても投資ということになります。これは、規模は小さいですが、個人の消費でも同じことです。だから、少なくとも日本のようなデ フレでない、アメリカの企業のamazonが、減益をしているということは、ネガティブなことではなく、ポジティブなことなのです。だから、amzonは これからも、発展していくのです。


こうして、amazonのように、どんどん投資をする会社が増えてくれば、日本のデフレも解消されるわけです。何やら、借金するとか、利益が減少などというと、悪いことと決めつける愚かな人もいるようですが、確かに返済不能なほどの借金をしたり、単なるミスで利益が減少というのであれば、悪いことですが、そうではなくて、現在のアマゾンのように将来のために借金をしたり、利益を減らしているというのであれば、何も悪いことではなく、むしろ良いことです。

そもそも、バブル崩壊後から、これだけ、デフレが続いたのは、多くの企業が不良債権の解消や、銀行への借金を返済することばかりして、あまりにも借金をしない、あまりにも減益しない企業が増えたからです。このことによって生じる不況をそれまで日本に例がなかったということで、野村総研のリチャード・クー氏はバランスシート不況と名づけました。とにかく、企業が新しいことに挑戦するため適切な時期に適切な借金をしたり、減益にするというのが、本来の正しい姿です。企業がこうなれば、市中にもお金がたくさん出回り、デフレも解消されます。

ドル86円前半、アベノミクス期待で2年4カ月ぶり高値
 そうして、こういうことを狙っているのが、他でもない、安部総理の経済対策である、アベノミクスなのです。しかし、世の中には、この流れを理解せずアベノ ミクスを批判して、何とか骨抜きにしてやろうという連中がうようよしています。しかし、このままデフレで良いはずがありません。私たちは、こんな馬鹿な連 中の世迷い言になどつきあっている暇などありません。このような連中は、手段を選ばす捻り潰して前に進むべきです。

来年はアベノミクス反対派を徹底的に捻り潰す!!?
私たちは、このアベノミクスを理解して、支持して、日本にもamzonのように、減収する会社が多数になること、また、amazonのようになるため、借金をする会社が多数でてくることを支持すべきです。そうして、アベノミクスがが奏功したとしても、デフレのときのように借金もせず、減益もしない会社というのは、駄目な会社であるとみなすべきです。これは、会社だけでなく、政府だって同じことです。政府が、借金をしてでも、インフラ整備などを熱心にする国は発展し、税収も増えていきますが、そうではないような国は、たとえ借金がゼロでも発展せず、税収も減少し将来はしぼんていきます。実際関東大震災のときの政府は、外国から多額の借金をしてまで、復興を急ぎました。先の民主党政権とは随分違います。


これからは、考え方を変えなければなりません。借金駄目とか、減益駄目という方は、これからの企業ではやっていげません。民主党の方々と同じように、表舞台からは姿を消すべきです。そう思うのは、私だけでしょうか?皆さんは、どう思われますか?

もう少しで、新年です。皆さん、良い年の瀬と、良い新年をお迎え下さい!!

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2012年7月16日月曜日

なぜ効率ばかり追求すると利益が減るのか (プレジデント) ―【私の論評】変人を揃えることではなく、成果をいかにあげさせるかが本質なのだ!!

なぜ効率ばかり追求すると利益が減るのか (プレジデント):


なぜ日本の会社はiPadを作れなかったか  いま、企業が成功を収めようと思ったら、アップルのiPadのように極めて革新性の強い商品を作り出すか、リッツ・カールトンのように突出したサービスを提供するか、ふたつにひとつしかない。 ところが、日本の会社の多くは、どちらもできずに伸び悩んでいる状況だ。なぜ、そうなってしまったのかといえば、ひとことで言って、効率を追求しすぎたということだろう。 たとえば、私の専門分野である編集の仕事を例にとると、編集者の多くはあまりにも多忙な日々を送・・・・・・・・・。

ザッポスの社内
この記事の続きは、以下のURLから。

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20120715-00010000-president-nb


【私の論評】変人を揃えることではなく、成果をいかにあげさせるかが本質なのだ!!

上の記事、読まれて皆さんはどう思われましたか。新鮮に感じられましたか?私自身は、あげている事例は最新のものであるため、非常にわかりやすく、その部分では新鮮に感じるのですが、この方が主張していること自体は、新鮮ではありません。それどころか、多くの人が勘違いしてしまうのでないかと思います。しかし、これに類したようなことは、すでに、多くの人たちに昔から知られていおり、特に、ドラッカー氏が「マネジメン」という書籍を出してから、かなり広く広まったことです。そうして、ドラッカー氏は、上の著者のように読む人を惑わせることなく、的確に論考を展開していました。
晩年のドラッカー氏
マネジメントには、以下のようなことが掲載されています。
「効率とは仕事の仕方であり、成果とは仕事の適切さである」。
業務を効率化するツールは山ほどあり日々進化しています。特にIT関連などはそうです。ところが成果を出すということは、人間的な要因でによるものなので、それを飛躍的に増す画期的なツールがあるわけではありません。このことは、ITが発達した今でも、200年前もあまり変わっていません。

もちろんITは日進月歩で進化していますが、成果をあげる直接的なツールではありません。こんなことは、5歳児パソコンを与えただけで、何か仕事をして、成果をあげられるのかを考えてみれば良く理解できることです。


それに、最近ITなどは、随分進歩はしましたが、私は、マイクロソフトのオフィスによる弊害はかなり大きいものと思っています。オフィスは、事務員のためのツールです。これは、おそらく、当初パソコンの性能が悪いため、その性能にあわせてできるのは、事務処理くらいなものであったため、パソコンに標準に搭載されるようになったのだと思います。成果をあげるべきものが、オフィスで四六時中計算や文書作成して資料を作っていても成果はあげられないはずです。無論最近ては、SNSはあるし、ビデオチャットなどもありますから、日がな一日パソコンに向かっているからといって、オフィスで事務作業ばかりしているとは限りませんが、基本的には同じことと思います。

これは、成果をあげる責任のない人々、いわゆる、昔でいえば、事務員といわれる人々が使用すべきものです。成果を上げるべき人間が、日がな一日、オフィスなどいじっていても、それだけでは、何ら成果に結びつきません。


さらに、ドラッカーは、『明日を支配するもの』の中で以下のようなことを語っています。

「今日のところ、ITは、トップ経営陣に対し、情報ではなくデータを供給するにすぎない。新しい問題意識や新しい経営戦略を与えるにはいたっていない。」

この書籍も、さきほどのマネジメントも、前世紀に書かれたものであり、書かれてから随分時がたっていますが、基本的には、今も十分にあてはまる事実です。

であれば、成果とは、ツールで劇的に改善するものではないだけに、多くの人は、比較的簡単に効果が出る効率化を考える方に流されやすいということになります。

その結果、マネジメントにかぎらず、様々な書籍でドラッカー氏が述べているように以下のようなことになってしまいがちなのです。

「無駄な仕事を見事に設計するという結果になりかねない」。

これは、たとえば、「売れない精緻な企画をたてる、マーケティング事業部」、「売れない店舗を精緻に設計する店舗設計部門」を思い浮かべていただければ、よくお分かりになると思います。


そうして、効率とは仕事の仕方であるということは、仕事の仕方を担当するのは会社でいえば、スタッフ部門ということになります。

トップマネジメントが必要以上に効率化にのみ没頭するとマネジメントの地位にある者が効率性重視のあまり、自分の本来の仕事は、放り投げて、スタッフ部門の仕事をすることになってしまいます。つまりマネジメントの不在ということになってしまいます。

効率性の追求が生んだとされる長距離バスの大事故
そうなってしまうと最悪の結果になってしまいます。ドラッカーは、創造する経営者で以下のように述べています。
「新たに設立される企業一〇〇社のうちほぼ七五社が、マネジメントの失敗を主たる原因として五年以内に倒産している。」
考えてみれば、効率化の失敗で倒産したという話は聞いたことがありません。企業は、効率化の失敗ではなくマネジメントの失敗によって倒産するということです。

さて、こんなことから、効率性ばかり追求すると、利益が減るかは、当然の成り行きであることがお分かりになると思います。

しかしながら、こんな当たり前のことが、効率性ばかり考えると、忘れされてしまいがちなのです。それは、上の記事を読んでいただければ、良くわかると思います。

そうして、このような効率性の罠から逃れるため、ドラッカーは以下のように語っています。
「知識労働者の生産性と、知識労働者の自己実現をいかに測定するかはわからない。しかしわれわれは、この二つを向上させるための方法については、かなりのことを知っている」(『実践する経営者』)
ドラッカーは、4つの秘訣を教えています。
第1に、知識労働者自身に責任を持たせなければならない。「報酬にふさわしいどのような貢献を行なっているか」を問わなければならない。 
第2に、知識労働者が自らの貢献を評価できるようにしなければならない。「会社を変えるどのような貢献を行なったか。会社を変えるどのような貢献を行なうべきか」。 
第3に、知識労働者に本来の仕事をさせなければならない。さもなければ、どのような動機づけをされようと燃えようがない。今日のセールスマンは、書類づくりに時間をとられ、セールスができないでいる。 
第4に、機会に対しては、それを成果に変えることのできる有能な人材を配置しなければならない。「成果を上げるのは誰か。彼らに今何を割り当てているか。成果が上がるところに配置しているか」が問題である。 
 「知識労働者の生産性を上げられなければ、インフレ圧力という経済的なストレスと、疎外という社会的な病いが生まれる。われわれは知識労働者の生産性も自己実現度も測定できない。だがどのようにすれば生産性を高め、自己実現させられるかは知っている」(『実践する経営者』)
さて、こうしたことを知ると、上の記事著者の方が、以下のように語っているのは、間違いであることがわかります。
革新的な商品やサービスを生み出せるのは、従来型のエリートではない。むしろ、いわゆる職場の「異端児」だ。 
1日中イヤホンを耳に突っ込んで音楽を聴いている奴。いつも外回りと称して社外をうろついてばかりいる奴。仕事はろくにしないのにフェイスブックの友達の数が異様に多い奴。社内ではぱっとしないのに社外では有名な奴……。こんないささか怪しげな連中こそ、実は、斬新な商品やサービスを生み出す可能性を秘めている。もちろん、結果的には単なるダメ社員で終わるかもしれないが、少なくともルーティンの仕事を効率的にこなすだけの優等生よりも、将来会社に大きなメリットを与える可能性は秘めている。
一見、社業と無関係な突飛なことを考えつく変人社員を抱え続けることができるかどうか。企業の未来は、その「ムダ」にかかっている。

このようなことは、本質的なことではなく、上の4つの秘訣が本質なのです。無論、上の4つの秘訣を強力に推進して気づいてみたら、従来型サラリーマンのような人はいなくなって、いつの間にか、変人社員が増えたり、ごく普通の人たちが、他から見ると変人に見えるようになっていたなどということは多いにあり得ると思います。しかし、変人社員を揃えたからといって、それがすぐに、成果に結びつくとは考えられません。上の4つの秘訣を取り入れていなければ、混乱するばかりで、結局全員がダメ社員ということになってしまうかもしれません。くれぐれも、順番を間違えないように。


このような順番違いは、昔から見られることです。たとえば、昔の優秀な政治家など、英雄色を好むなどと言われていて、芸者遊びなどしていましたが、優秀でない人が、芸者遊びを徹底的にやったからといって、優秀な政治家や英雄になれるわけではありません。昔の優秀な政治家など、それなりに、頭も気も相当使ったので、ストレスもかなり溜まって、そのストレスの発散する先が、たまたま、芸者遊びだったと考えるべきでしょう。くれぐれもお間違えのないように!!

たただし、私は異端児を会社に入れるなと主張しているわけではありません。そうではなくて、まずは、上の4つの秘訣を導入すべきであると主張しているのです。その上で、異端児を入れるなら、それはそれで結構なことです。私も、過去に異端児を中途採用して成功した経験があります。ただし、その異端児たちは今は会社にいません。しかし、その時々で、確実に成果をあげてもらうことができました。ただし、異端児であることを最初から承知で会社に入れるのですから、彼らを使うには、猛獣使いにでもなるつもりで、腹をくくらなければならないです。


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