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2020年4月30日木曜日

自衛隊中央病院 院内感染対策など公開 東京 新型コロナ―【私の論評】自衛隊は、世界で最も感染に強い組織(゚д゚)!


NHKニュース

動画はこちらより https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200430/k10012412711000.html

200人を超える新型コロナウイルスの患者を受け入れた自衛隊の病院が、院内感染の対策などを報道関係者に公開しました。

公開されたのは、東京 世田谷区にある自衛隊中央病院で、取材は病院の指導のもと、患者が出入りする動線などと重ならないように配慮して行われました。

30日は、院内感染の対策や患者の受け入れ態勢が公開され、病院に来た人はすべて建物の外にあるテントで体温を測っていることや、感染の疑いの強い人が搬送されてきた場合には、出入り口から検査場所まで専用の動線を設けて誘導していることなどが紹介されました。

また、重症の患者を受け入れている病棟では、廊下を二重の扉で仕切ったうえ室内の空気が外に流れ出ないよう陰圧に保つ対策をしているということです。

病院では、新型コロナウイルスの集団感染があったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客など、200人を超える患者の治療に当たっていて、これまでに院内感染は起きていないということです。

また、自衛隊中央病院は先月、クルーズ船の患者について、軽症や無症状の人でも胸部のCT検査を行うとおよそ半数に肺の異常が認められ、このうち3分の1は、その後、症状が悪化したとする分析結果を公開しています。

病院は、この特徴を「サイレント肺炎」と呼び、症状の悪化に気付きにくいおそれがあると指摘しています。

自衛隊中央病院の上部泰秀院長は「いろいろな医療機関と協力して画像所見を共有してソフトを開発したり、共通の基準を見つけたりすることに取り組んでいる」と話し、今後もほかの医療従事者と知見を共有したいとしています。

【私の論評】自衛隊は、世界で最も感染に強い組織(゚д゚)!

自衛隊というと、「何であの人たちは感染しないの?」と、現在ネット上などで話題になっています。新型コロナ感染拡大を受けて、数々の現場に赴く彼らは、濃厚接触と戦い続けながらいずれの任務でも感染者を出していません。彼らには独自の「予防マニュアル」があるのだといいます。

この「予防マニュアル」は自衛隊独自もので一般公開はされていませんが、一般家庭向けに『新型コロナウイルスから皆さんを守るために』というマニュアがあります。これは、各自衛隊員の家庭にも配布され、その内容が励行されているのでないかと思います。そうでないと、自衛隊員の感染が海外で感染して帰国した一人の例外を除いて、皆無ということはあり得ないと思います。

3つの密を避けることと、このマニュアルを励行すれば、一版家庭でもかなり感染を防ぐことができるのではないかと思います。

さて、以下に自衛隊員のコロナの防御の内容を記します。

◆脱ぐ時は2人一組

全国の駐屯地から医療・介護施設へのマスク配布作業を始め、集団感染が発生したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』の船内対応、チャーター便帰国者の一時宿泊施設への物資搬送など、新型コロナの感染拡大を受けて様々な任務に従事する自衛隊。

ときには保菌者との濃厚接触が避けられない現場もありますが、隊員の感染事例は海外からの帰国者1人のみです。いまだ任務中の接触を原因とする感染者は出ていないのです。

とりわけ医師や政府職員、検疫官の感染が相次いだクルーズ船の任務では、2700人の隊員が対応にあたったにもかかわらず、感染者ゼロで任務を完了したことは特筆すべきです。

制服組トップの山崎幸二・統合幕僚長は、後日の会見で「しっかりした防護基準を定め、現場で指揮官が徹底し、隊員が実行した。訓練の成果だと思う」と振りかえっています。

例えば、クルーズ船では、厚生労働省が設けた基準とは別に自衛隊独自の防護策を講じていたといます。

「船内の消毒業務などは防護服を着たうえで手袋を二重にし、防護服との隙間が生じないようにつなぎ目を粘着テープでふさぎました。さらに靴カバー、目にはゴーグルを着用しました」(防衛省・統合幕僚監部報道官室)

元陸自一佐で、イラク先遣隊長、福知山駐屯地司令などを歴任した佐藤正久・自民党参院議員が解説しています。

「今回の新型コロナのようにヒトに感染するウイルスに対応する場合、自衛隊は必ず防護服を着用します。手袋をして顔も覆い、靴カバーを付けるフル装備です。任務が長時間にわたる場合は、さらにオムツを着用することもある。

防護服を脱ぐときは“外側”に触れないよう、2人一組で行ないます。一般的には、頭の部分から順番にお互いの防護服を外していき、最後にお互いの手袋を取るといった手順です。そこまで徹底しないと、感染を防ぐことはできません」

◆爪の根元を洗う

自衛隊の新型コロナ対応は防護服のような特殊な対策がメインではありません。むしろ多くの場面で、一般の人もやっている基本対策の徹底を心がけているそうです。ただし、その「やり方」が違うのだといいます。

「船内でのウイルス感染を避けるため、『手指で何かに触れたらすぐに消毒する』、飛沫によるウイルスの侵入を防ぐため『マスク着用時は鼻にあたる部分を押さえて隙間をなくす』などを徹底しました」(統合幕僚監部報道官室)

マスクは鼻まで付ける、ここまではいまや常識だが、そこで鼻回りの隙間をなくす一手間が「自衛隊式」です。そうした配慮は洗濯にも見られます。

「洗濯は各自が行ないましたが、感染リスクが高い医官・看護官らは個室の風呂場や部屋に持ち込んだバケツ型の洗濯機を利用し、それ以外の隊員はフェリー内の洗濯機を共有して使いました」(同前)

その他の対策としては、「食事の際は対面を避ける」「対面の時は2メートル以上空ける」などがあるといいます。

新型コロナに限らず、自衛隊の感染症対策は基本を突き詰めることを重視しています。その代表が「手洗い・うがいの励行」です。自衛隊OBが語ります。

「集団行動が基本の自衛隊では1人が感染症に罹患すれば、部隊の任務自体が行なえなくなってしまう。そのため、入隊後に教育隊から教えられる基本動作の中に手洗い・うがいの励行があります。その結果、手洗い・うがいをきっちりやる習慣が身につくのです」

手洗いの励行は、部隊生活の日常にも及びます。

「トイレや洗面所に『手洗いの仕方』を解説する貼り紙を出しているところもあります。それも、小便器の前だけでなく、個室に座ったときの正面にも張られていたりする。用を足すときに必ず目に入るよう指示の徹底化を図ります」(前出・自衛隊OB)

手洗いにも自衛隊ならではのポイントがあります。

「石鹸をつけ両手の平をゴシゴシ前後にこする人が多いですが、そうすると親指と爪の洗浄が疎かになりがちです。そのため、『親指だけを洗う』『爪の先は別に洗う』『その後、爪の根元を洗う』など、手順を具体的に指示しています」(佐藤氏)

そうした指示は足元にも及びます。感染症対応の現場で、隊員自身がウイルスを運ぶような事態を避けるため、例えば、鳥インフルエンザや豚コレラなど家畜に感染症が発生した場合は、現地での活動後、ブーツに付いた土を必ず現場で落とし、靴底の消毒を徹底しています。

佐藤氏が続けます。

「海外任務では事前に予防注射を何本も打ちますが、それでも感染症の恐れは消えない。そのことを隊員にきっちり伝え、手洗いの励行を指示しました。イラクでは駐屯地の食堂入り口に手洗い場を設け、食事前に手洗いをする動線を作りました」

手洗いに水が使えない屋外での食事の場合は「ウェットティッシュを用いて手指の消毒を行なう」といいます。

◆『衛生ニュース』の発行

これらの「自衛隊式」予防法は誰もが日常生活で実践できる対策ばかりですが、それを集団単位で確実に実施できることが自衛隊の強みです。佐藤氏はこう言います。

「自衛隊は以前から感染症に緊張感を持って対処しています。『自衛隊における感染症対策に関する訓令』や『感染症対策に関する達』により、自衛隊内の各組織での対応や感染症の種類ごとに発生時の報告を義務付けています。隊員には部隊ごとに発行する『衛生ニュース』で、流行中の感染症とその予防法を伝えています」

そうした取り組みが効果を発揮できるのは、自衛隊という組織ならではの特性によります。

「『上意下達』が徹底しているため、組織全体に情報が浸透しやすい。他の役所や民間と大きく違うところです」(同前)

具体的には、部隊での朝礼・終礼での予防励行の伝達、営舎での10人弱の班単位での指示など、多くの段階で感染症予防の徹底が伝えられます。

近年、自衛隊ならではの危機管理テクニックを取り上げた『自衛隊防災BOOK』がヒットしました。そこでは日頃の防災や減災に役立つ知識や技術が数多く披露されています。ある現役隊員が語ります。

「我々の強みは『健康管理も仕事の一部』と全員が認識していることです」

意識の徹底こそがコロナ予防につながっているのです。これは、当然のことながら、自衛隊中央病院でも実践されているはずです。

このような自衛隊の実践的なノウハウは、他の組織にも役に立つはずです。だからこそ自衛隊中央病院は、院内感染対策など公開したのでしょう。これに関しては、設備上参考にしたくてもできない場合もあるでしょうが、他の組織も学ぶべきところは学ぶべきです。

私達自身も学ぶべきです。その意味で以下に自衛隊関連のいくつかの動画を掲載します。

まずは、自衛隊員の感染者がゼロである理由を明快に説明した、「チャンネルくらら」の動画です。


この内容、細かなところでは、多少の間違いもあるのですが、自衛隊員の感染がなぜ"ゼロ"なのか、明快に説明しています。かなり参考になるし、実務的です。間違いについて、気になる方は、この動画の配信先のYouTubeのサイトをご覧になって下さい。コメント欄に、その内容がコメントされています。ご覧になれば、おわかりになると思いますが、これらの間違いはごく些細なものであり、動画の内容や伝えたい内容を毀損するものではありません。

以下は、自衛隊式の手洗いの仕方です。



次は、自衛隊式のマスクの着脱方式です。


以上の2点だけでも、家庭などでは実行すれば、かなり役に立つと思います。

以下は、感染防止の車両の養生法です。


これも大いに参考になりそうです。

以下は、ガウンの自衛隊式のガウン着脱方式です。


これは、病院などの最前線で、コロナウイルス患者の治療に携わっている人々に役立ちそうです。

さて、台湾はコロナウイルス感染の防止で、最も成功した国ですが、その台湾ですら、軍隊で感染クラスターが発生しています。

中央感染症指揮センターは19日、新たに22人の感染が確認されたことを明らかにしました。そのうち21人は軍艦「磐石」の乗組員で、内訳は20代から40代までの男性19人、女性2人。いずれも4月14日から18日にかけて発症した。残る1人は20代男性。昨年4月21日に留学のため渡米し、今年4月10日に米国で発症。17日の帰国時、空港で検体を採取し、感染が確認されました。

なお、軍艦「磐石」で発生したクラスター(集団感染)による感染者は、これで累計24人となりました。中央感染症指揮センターはすでに、「敦睦遠航訓練」に参加していた軍艦「磐石」を含む、合計3つの軍艦の乗組員744人全員の検体検査を行っています。現在、感染が確認された24人はすべて「磐石」の乗組員で、ほか2つの軍艦の乗組員から陽性反応が出ていません。

軍隊における感染の発生は、米国にもみられ、空母が戦列から離れているくらいです。中露の軍隊にも感染者がいるようですが、隠蔽されているものとみられます。その中にあって、感染の最前線に赴いた自衛隊員が多数いる中、一人の例外を除いて感染者がゼロというのはすごいことです。

中露のような独裁国家にとって、コロナウイルスの大流行は寧ろチャンスです。中露では一般人はいくら死んでも、独裁者本人と指導部さえ無事なら、問題ありません。軍隊に感染者がでても、動けるうちは動かし、使い物にならなくなれば、捨てて、交代要員をあてれば、それで良いのです。

ところが、他の国では疫病の為、大混乱が起きています。その混乱に乗じて、中露は覇権拡大を狙うので、常に備えが必要です。このようなときに、自衛隊の感染がゼロというのは本当に心強いです。

自衛隊感染者ゼロという事実は、彼らも知っているでしょう。だから、尖閣などに来る中国の艦艇の乗組員も戦々恐々としているでしょう。なぜなら、彼らには発見することができない日本の潜水艦に、いつ撃沈されるても不思議はないからです。

しかも、今世界はコロナウイルス禍にあり、いわば世界中が緊急事態の最中にあるわけです。このような緊急事態下には、平時にはあり得なかったようなことが起こることがしばしばあるからです。コロナ禍に乗じて何か、有利に立ち回ろうとする彼らからすれば、なおさら敏感になっているはずです。

コロナ感染の影響を受けていない海自の潜水艦は、今でも中国艦艇を沈める模擬訓練を東シナ海や南シナ海行っていることでしょう。

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2020年2月10日月曜日

連邦議員が、ニューヨーク・タイムズ、ワシント・ポストで公開された中国プロパガンダに対する捜査を要求―【私の論評】我が国でもFARA(外国代理人登録法)を成立させよ(゚д゚)!

連邦議員が、ニューヨーク・タイムズ、ワシント・ポストで公開された中国プロパガンダに対する捜査を要求

<引用元:ワシントン・フリービーコン 2020.2.6

ワシントン・フリービーコンのロゴ

「チャイナデイリー」が連邦法を無視していることをワシントン・フリービーコンが発見してから、連邦議員は司法省にプロパガンダメディアに対する「本格的捜査」に着手するよう求めている。

チャイナデイリーは外国代理人の開示要件に従わずに、数百万ドルをかけて国の認可を受けたプロパガンダを米国の主要新聞に掲載しており、ジム・バンクス下院議員(共和党、インディアナ州)、トム・コットン上院議員(共和党、アーカンソー州)とその他33人の議員が同メディアの活動に対する捜査を要求することに至った。13日に一同はウィリアム・バー司法長官に書簡を送り、連邦開示法を「チャイナデイリーが遵守しているかに関して審査し報告書を作成する」よう司法省に求めた。

ジム・バンクス下院議員(共和党、インディアナ州)

「共産主義者の残虐行為を曖昧にしようとするプロパガンダには、対抗措置を講じてしかるべきだ。外国代理人登録法(FARA)ではすでに連邦政府に有害な外国の影響力と戦うための武器が提供されている。司法省はそれらを使用して中国のプロパガンダを取り締まるべきだ」と書簡には書かれている。

本紙は以前、チャイナデイリーがニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストの紙面で、信頼できるニュース記事に似せて作られた何百というプロパガンダ記事を掲載しているのを発見した。

バンクス議員は本紙へのメールの中で中国との緊張を冷戦と比較した。「我々は民主主義が共産主義独裁体制に勝るということを世界に納得させた。どうやらその戦いをもう一度やらなければならないようだ――今度ははるかに裕福で同じように断固とした敵が相手だ。連邦政府は我々の価値観の勝利を確保するために、持てる全ての武器を使用しなければならない――失敗した場合の結果は言語に絶する」と彼は述べた。

8人の上院議員と27人の下院議員が署名した書簡は、中国の国家的存在がFARAの義務に違反していることに対して措置を講じるよう議会が初めて司法省に強く求めたものではない。2019年には、上院の超党派グループが中国プロパガンダメディアの新華社通信とCGTNアメリカの活動に対する捜査を要求してから、同省は彼らに外国代理人として登録するよう命じた。

CGTNアメリカは連邦命令に従ったが、新華社通信はまだ外国代理人として登録していない。バンクスは1月、司法省に新華社通信の登録状況を調査するよう司法省に要求した

チャイナデイリーは初め1983年に外国代理人として登録し、それ以来米国で親中国プロパガンダを発行してきた。中国の代弁人は近年大々的に活動を拡大しており、2017年以来3,500万ドル以上を費やしている。チャイナデイリーは2012年以来、6つの米紙で500以上の記事体広告と700のオンライン記事を流してきた。

米国の主流媒体で流した記事体広告には中国の圧政を取り繕ったものもあった。ウォールストリート・ジャーナルに掲載されたプロパガンダ記事では、中国が100万人以上のウイグル人イスラム教徒を拘留していることを、「法に基づく急進化低下活動」と呼んでいた。チャイナデイリーはコメントの要求に応じなかった。

「無害な記事もある――中国政府の健康構想のような話題を売り込むものもある――が、そうでないものもある。そうした記事は中国の残虐行為を隠ぺいする役割を果たしている。それには新疆地区でのウイグル人に対する非人道的犯罪や、香港での取り締まりに対する支持が含まれる」と書簡はしている。

中国本土以外で合計60万部を発行するチャイナデイリーは、国の最高機関に浸透している。バンクスは以前、プロパガンダメディアが議会のほぼ全員に新聞を配布していると知って、連邦議会での同紙の配布を制限しようと試みた。

司法省はコメントの要求に応じなかった。

【私の論評】我が国でもFARA(外国代理人登録法)を成立させよ(゚д゚)!

2月5日、35人の米連邦議会議員が、中国官製英字紙・チャイナデイリー(China Daily)の調査を要請する書簡を司法省および法務省に送った。議員たちは、すでに米国外国代理人登録法(FARA)に登録されている同紙が、法律に違反している可能性があると指摘しています。

チャイナ・デイリーの紙面

チャイナデイリーは過去30年間、米主流紙や地方紙の広告枠を購入して、記事を「折り込み広告」として、あたかも新聞紙面の一部にみえるかのように挿入していることは、従来から指摘されていたことです。

FARA(外国代理人登録法)登録媒体はこの法律に基づき、2年ごとに広告購入や財務諸表の詳細を米当局に報告する義務が課されています。しかし、議員たちは同紙が報告を怠ったと指摘しています。

中国共産党機関紙であるチャイナデイリーは、1983年に外国代理店登録法に記録されました。

「チャイナデイリーは、中国共産党が進行中の残虐行為を隠ぺいするために利用する悪質なプロパガンダに過ぎない」と、ジム・バニング上院議員は書簡のなかで書いています。

「私たちが勝利した冷戦から得た教訓とは、自由な民主主義は共産主義の独裁よりも優れていると世界が確信したことだ」と議員は続けました。

議員は司法省に対して、チャイナデイリーの財務諸表および法的評価の提出を要求するよう求めました。また、法務省に対して、同紙にFARA遵守に関する報告書の提出を要請するよう求めました。

米国の場合は、FARA(外国代理人登録法)があるので、中国などの外国のメディアが悪さをしようとしても、上記のように連邦議員は司法省に対して疑義を申し立てることができます。

しかし、このような法律のない我が国においては、中国、ロシア、イスラエル、米国など世界の工作機関は、我が国の影響力のある人物を代理人に仕立て上げ、その国益にあうような発言をさせています。報道界、政財界、官界、学会、宗教界などにその代理人をひそかに埋め込み、有利な情報または虚偽情報を流させ、わが国の世論を誘導しています。

また、これらの代理人をつかって政財官界にロビー活動を展開し外国に有利な政策を講じさせたり、企業の技術者を引き抜いて先端技術情報を取り込んでいます。

たとえば、中国の場合、共産党中央宣伝部、対外連絡部の指揮のもとに、国家安全部や人民軍が、工作員を放ち、我が国の記者や有名人に、沖縄の米軍基地に反対させ、集団安全保障法案に反対させ、あるいは靖国参拝に反対させるなどの活動を執拗に展開しています。

それら代理人は、多くの場合、「中国の古い友人」、「友好人士」と呼ばれ、自尊心をくすぐられているのが実態です。中には、共産主義イデオロギーに洗脳されたものやハニートラップに引っかかって脅迫されたものもいますが、大部分は多額の報酬や有利な便宜供与をえて活動している者たちです。

日中友好協会 丹羽宇一郎会長

また、朝鮮総連や在日科学技術協会のメンバーは、わが国から核技術などを窃取することを目的に京都大学などに対して秘密工作をすすめていることも暴露されました。

<米国の制度>
法治国家、米国は、こうした内側から国論を誘導したり、先端技術を窃取しようとする外国代理人の活動を監視するため、外国代理人登録法(22.USC.611)とロビー活動公開法(2.USC.1601)を制定しています。

外国の政府、政党や企業、団体の利益のために政治活動や宣伝活動を行い、あるいは官庁や議会に対して働きかけを行うものを「外国代理人」と位置づけ、外国代理人には司法省に登録し、半年ごとに活動報告を行うことを義務づけています。これに違反した場合は、5年以下の禁固または1万ドル以下の罰金を課されます。

そのため、米国人の広報コンサルタントも外国の利益になる広報を行う場合は、登録しておかねばなりません。そして、半年ごとに、誰に金銭や報酬をいくら支払いその他便宜供与を与えたか、司法省に届け出なければなりません。

ただし、米国の報道機関は登録義務から免除されています。届けられた情報はだれでも閲覧できるように公開されますので、これによって誰が外国の利益代表であるかを国民に広く知らせ、注意を喚起することができるのです。どのような個人や組織が外国の利益のために働いているかを知ることは、民主主義に不可欠な要素であると米国は考えているのです。

我が国も、これにならったものを早く制定しなければ、内部から間接侵略され、世論を操作され、先端技術とノウハウ等盗まれ放題です。すでに、かなり国家防衛の基礎が掘り崩されているとみるべきです。

以下は、その要綱です。
〈外国代理人登録法〉
1 外国の政府、政党もしくは外国の企業、団体の利益のために、我が国の公職にあるもの(議員、公務員、国立大学教授など)または公職にあったものに対し、ある行為をとるよう、もしくは取らないように働きかけまたはその意見に影響を及ぼそうと試みるものは、国家公安委員会に外国代理人として登録しなければならない。 
2  外国の政府、政党もしくは外国の企業、団体の利益のために、日本国民に対し広報活動を行い、または国民から取材しようとする者(個人または組織)は、外国代理人として登録しなければならない。(ただし、日本人または日本の組織が実質的に支配する報道機関は、この登録義務をまぬかれることとする。外国人または外国の組織が実質的に支配する報道機関は、登録義務がある。) 
3 外国の政府、政党もしくは外国の企業、団体の利益のために、官公庁または日本企業に在職する職員を採用し、または採用のあっせんを行おうとする者は、外国代理人として登録しなければならない。 
4 登録した外国代理人は、半年ごとに、その行った活動の内容(接触相手、接触の内容、報酬の支払い、便宜供与、資金源など)について国家公安委員会に報告しなければならない。外国代理人が雇用しまたは業務を委託する者についても、その異動の都度、国家公安委員会に報告しなければならない。 
5 報告の内容は、官報に公示するとともに、国民が容易に閲覧することができるようインターネット上に公開しなければならない。 
6 登録義務、報告義務に違反した場合、5年以下の禁固または300万円以下の罰金を科すこととする。 
7 公職にある者またはあった者が、その職務内容に関し、登録された外国代理人から陳情、請託などの働きかけを受け、または報酬、便宜供与を受けた場合は、遅滞なく、国家公安委員会に届けるともに、その所属組織にその内容を報告しなければならない。
日本では、憲法改正ばかりが強調されていますが、それ以前にこのような法律が必要です。憲法を改正しなくても、このような法理を成立させるのこと等できることは多くあります。

まずは、このような法律の整備や防衛費の増加などから実行していき、その先に日本国憲法の改正があると、私は考えます。

なお、このような法律が成立したとしても、日本で普通に生活している人にとっては、全く関係ありません。審議の過程であからさまにこれに反対するような議員や識者などがいたとすれば、いずれかの国の代理人であるとみて間違いないでしょう。

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2018年11月2日金曜日

安倍首相、インド首相との首脳会談風景を公開で「日印関係のさらなる発展を望みます」とエール続々―【私の論評】日印関係を強化することの意義(゚д゚)!

安倍首相、インド首相との首脳会談風景を公開で「日印関係のさらなる発展を望みます」とエール続々



 安倍晋三首相(64)がツイッターを通じてインドのモディ首相との会談風景をまとめた動画を公開した。

 今回で12回目となったモディ首脳との首脳会談。28日には山梨の自身の別荘に招待し夕食会を開いたほか、29日には首相官邸で正式な首脳会談を行っていた。

 モディ首相との首脳会談の様子はツイッターでも逐一報告されていたが、31日に安倍首相はツイッターを更新し、「モディ首相を日本にお招きし、首脳会談に臨みました。その様子を動画にまとめましたので、是非ご覧ください」と改めて会談の様子をまとめた動画を公開。日本とインドの親密な関係性をアピールしていた。


この投稿に対し安倍首相のツイッターには、「インドはIT大国だし、密接な関係になるのは喜ばしいことしかないです!日印関係のさらなる発展を望みます」「今後さらに日印関係は良くなっていくでしょうね。国の発展に尽力されること、今後も宜しくお願いします」「親日国とますます親密になることを期待しています!」というエールの声が続々と寄せられていた。有権者の多くは今後もインドとの関係が深くなることを強く望んでいるようだった。

【私の論評】日印関係を強化することの意義(゚д゚)!

安倍総理のインド関連のツイートになぜこれだけ、エールが寄せられるのでしょうか。無論昔からインドは親日国だったということもありますが、それ以外にもインドがかなり大きな潜在可能性を秘めた国でもあるからです。本日はインドの潜在可能性について掲載したいと思います。

インドのモディ首相の来日に関連して、以下の2つニュースが報道されています。
<円借款>インドに3,000億円 29日首脳会談で伝達
毎日新聞 10/24(水)23:57配信
政府はインドに対し、日本の新幹線方式を導入する鉄道建設などを対象に今年度、3,000億円超の円借款を供与する方針を固めた。安倍晋三首相が29日、東京都内で予定するモディ首相との会談で伝える。
「今年度、3,000億円超の円借款を供与する」そうです。
政府は2015年度以降、年間3,000億円超の円借款を含む政府開発援助(ODA)をインドに供与している。同国に対する円借款の累計額は今年度を含めて約6兆円で、世界で最も多い。政府は「自由で開かれたインド太平洋戦略」の一環として、今年度も高水準を維持することにした。
(同上)
「円借款の累計額は約6兆円」で「世界で最も多い」そうです。実にすばらしいです。なぜすばらしいか、その理由は後述します。

もう1つ。
<安倍首相>印首相を別荘招待 中国とバランス外交
毎日新聞 10/23(火)21:58配信
安倍晋三首相は23日の自民党役員会で、近く訪日するインドのモディ首相を、山梨県鳴沢村の自身の別荘へ招くと明らかにした。モディ氏は28日に別荘を訪れ、正式な首脳会談は29日に東京で行う。
安倍総理はモディ首相を自身の別荘に招待したのです。誰かと「緊密な関係になりたいとき」「緊密であることを示したいとき」こんなことををします。

日本の総理が、外国首脳を別荘に招く。これは、なんと中曽根さんがレーガンさんを招待して以来だそうです。なんとも「特別待遇」です。すばらしい!

安倍氏は28日、インドのモディ首相を山梨県の河口湖の近くの自身の別荘に招き、夕食を共にした。

なぜ安倍総理が、インドのモディ首相を特別待遇することがすばらしいといえるのでしょうか。それは、日本にとってインドは、米国に並ぶ最重要国家だからです。これはなぜでしょうか?

軍事同盟国米国が最重要国家であることは、中学生でも理解できます。米国との同盟がなければ、尖閣諸島は、とうに中国の領土になっていたかもしれません。中国は、「日本には、沖縄の領有権はない!」と宣言しているため、沖縄も危険です。

では、インドは、なぜ最重要国といえるのでしょうか。米国は、日本の軍事同盟国であり現在世界で唯一の超大国ですが、その力は相対的に弱くなりつつあります。トランプ大統領のスローガンは、「アメリカを再び偉大に!」でした。

ということは、トランプ大統領は、「アメリカは、昔偉大だったけど、今は昔ほど偉大ではない」と考えているということです。確かに、40~50年代とか90年代等と比較すると、米国は衰えています。

トランプ大統領の前のオバマ大統領はあろうことか「米国は最早世界の警察官じゃない!」と自ら宣言してしまいました。さらに、オバマ大統領は北が非核化の意思を表明しない限り、対話しないという対北政策を「戦略的忍耐」と名付け、8年間、ほぼ沈黙してきました。その結果、北は核開発を進めることができました。

このような状況では、米国の同盟国は「アメリカ同盟頼り」だけだと危険だと考えるのが当然です。トランプ大統領は軍事費も拡張し、再び米国を強くしようとしていますが、8年間のブランクは大きく、すぐに米軍が強くなるわけではありません。

無論、「自主防衛能力」を向上させていくことが最重要ですが、その一方で、他の大国との同盟関係も深めていく必要があります。日本が「同盟国」に選ぶなら、インドが最適なのです。

なぜかというと、多くの国々のライフサイクルを見ると、欧州は成熟期というかはっきりいえば黄昏時です、米国は成熟期、過去には大成長を続けた中国も、今や成長期の最末期となっています。

黄昏時の欧州中央銀行

ロシアは今やGDPはインド以下で現状ではだいたい10位前後です。韓国とより若干小さいくらいの規模です。そうして、韓国と東京都は同じくらいの規模です。そうして、ロシアの人口は1億4千万人で、日本より2千万に程多いくらいの規模です。ロシアが大国といえるのは、今や領土の大きくらいかもしれません。

東京都なみで、これから伸びる可能性もないロシアは、ソ連時代の核兵器や軍事技術ほ継承しているので、大国と見られがちですが、今や大国ではありません。米国と比較の対象にもなりません。軍事的には去勢をはってはいますが、今やNATOと対峙するのも難しいです。


しかし、インドだけは、いまだ成長期の前期にあり、これからもますます成長しつづけていくことが確実です。

インドは1947年、イギリスから独立しました。その後、混乱期が長くつづき、この国が成長期に入ったのは1991年でした。この年、インドは「経済社会主義」を捨てて、「自由化」に踏みきりました。中国は、鄧小平が「資本主義導入」を決めた1978年から成長期に入りました。つまり、インドが成長期に入ったのは、中国より13年遅かったことになります。

そうして、インドのGDPは2016年、2兆2,564億ドルで、世界7位でした。しかし、1人当たりGDPは同年、1,723ドルで、世界144位という低さでした。常識的に考えると、インドはまだまだ「成長期前期」にいることがわかります。

この国の1人当たりGDPが、まだまだ先進国に比較すると低い現在の中国並みの水準まで増加したと仮定します。すると、インドのGDPは、約9兆ドルになり、日本を軽く超えてしまうのです。そして、インドの人口は、日本の約10倍、12億1,000万人ですから、同国のGDPが将来日本を超えることは「必然」といっても良いのです。


そうして、インドが長いあいだイギリス植民地であったということで、中国よりはかなりまともです。そもそも、中国には選挙制度はありませんが、インドにはあります。ただし、女性の地位が未だにかなり低いなど社会構造に未だ大きな問題点はあります。そうはいっても、中国と比較すれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は進んでいます。さらに、インドは大東亜戦争中から日本の親日国でもあります。

米国などの先進国は、経済成長すれば中国も先進国並の体制に変わるであろうと期待していましたが、ご存知のようにその期待は見事に裏切られました。しかし、インドの場合は経済成長をすれば、独自の発展をして世界の先進国の良きパートナー、良き隣人になる可能性は中国などよりかなり大きいです。

将来、インドは、経済的に中国に並ぶ大国になるでしょう。そうして、社会構造的には中国よりははるかに先進国に近い体制になることでしょう。そうして、中国と異なり、先進国と共通の価値観をある程度共有できるようになるでしょう。ですから、日本は未来を見据え、インドとの関係を強化していく必要があります。

というわけで、現在の日本にとっては、米国とインドが日本の最重要国家です。安倍総理は、「大戦略観」をもって、インドとの関係強化に取り組んでおられる。実にすばらしいことです。

【私の論評】

安倍首相 インド首相を別荘招待で関係強化へ―【私の論評】今回の会談は自国の都合だけで動く中国に勘違いさせないという意義もある(゚д゚)!



2017年2月15日水曜日

金正男氏殺害の女工作員か…マレーシア紙が顔写真を公開―【私の論評】暗殺の真の目的は統治の正当性を主張するため(゚д゚)!


マレーシアの英字紙ザ・スターが公開した、金正男氏を
暗殺した工作員と思われる女の画像(画像:The star)

クアラルンプール国際空港で、金正男氏を暗殺したと見られる女工作員の比較的鮮明な映像が公開された。

マレーシアの英字紙、ザ・スターは、クアラルンプール国際空港の監視カメラにとらえられた女工作員の映像を公開した。

画像には、「LOL」(日本のネット用語の「www」と同じ意味)とプリントされた白いシャツに、青色のスカート姿の中年のアジア系の女が、右手で手提げバッグを押さえている様子が写っている。

これは、午前中に公開された画像に写った女と同一人物と思われるが、距離やアングルは異なるとザ・スターは伝えている。

一方、金正男氏の遺体が搬送されたクアラルンプール病院には、北朝鮮大使館のものと思われる3台の車がやって来た。いずれも外交官ナンバーが付けられている。

北朝鮮大使館はマレーシア警察当局に、金正男氏の遺体の引き渡しを要求している。しかし、ロイター通信によると、韓国の国家情報院の担当者は「遺体は家族に引き渡されるだろう」と語っている。

【私の論評】暗殺の真の目的は統治の正当性を主張するため(゚д゚)!

まずは、金正男氏が亡くなったことは、確実なので、ご冥福をお祈りさせていただきます。

上のニュースは、韓国のサイトDailyNKからのものです。この件に関しては情報が少ないので、以下にこのサイトからいくかのニュースをそのまま引用します。
マレーシア警察、金正男氏殺害の女工作員を乗せたタクシー運転手を拘束 
マレーシアの警察当局は、金正男氏を暗殺したと見られる容疑者の女2人を乗せたタクシードライバー1人を一時拘束。取り調べの上、釈放した。マレーシアの華語紙、東方日報が報じた。また、工作員はベトナム国籍であると伝えている。 
ブキッ・アマンの警察本部の幹部は東方日報の取材に、金正男氏が殺害された月曜日の午後に、2人の女工作員を乗せたタクシー運転手を逮捕したと述べた。
記事は、犯行の様子を次のように伝えている。 
「出発ロビーにいた金正男氏に女工作員2人が接近した。うち1人がまず金正男氏にむけて毒の入ったスプレーを発射し、もう一人が金正男氏の口をハンカチで押さえて、気道深くに物質を入れた後、出発ロビーの外で待っていたタクシーに乗って逃走した」 
警察は、2人は運転手に「自分たちはベトナム人」と語っていたとし、また、某国(北朝鮮)が今回の暗殺を行わせるために雇ったと見ているという。使われた毒物を特定された模様だが、薬物名は言及されていない。 
当局は市内全域に特別警戒態勢を敷き、容疑者ら行方を追っている。
「家族は中国当局が保護」金正男氏暗殺で韓国高官

マレーシア警察当局が15日午前9時ごろ、金正男氏と思われる遺体を、プトラジャヤ病院からクアラルンプール病院に移送したとマレーシアの英字紙、ザ・スターが報じた。クアラルンプール病院はマレーシア最大の病院で、移送は解剖を行うためと思われる。

これに先立つ午前8時ごろ、地元警察の幹部が捜査官と共にプトラジャヤ病院の霊安室に入っていった。

プトラジャヤ病院の霊安室の周辺には国内外のメディアが殺到しているが、警察当局は入口を封鎖して、メディアが中に入れないようにしている。

一方、韓国の国家情報院の李炳浩(イ・ビョンホ)院長は15日の国会情報委員会の懇談会で、金正恩氏が金正男氏を暗殺せよとの指示を下したことに対し、正男氏が助命を嘆願する書簡を送っていたと明らかにした。 
金正男氏は2012年4月、金正恩氏に「私と家族に対する膺懲(暗殺)命令を取り消してほしい。我々には逃げるところも、身を隠すところもない。逃げる道は自殺だけだということはよくわかっている」とする書簡を送っていたという。

李院長は今回の暗殺について「長年の努力の末に実行されたもので、このタイミングで行われたことに特別な意味はない」「(政権を脅かす存在だから暗殺したという)計算ずくの行動ではなく、金正恩氏のパラノイア的な性格が反映されたもの」とも述べた。

また、金正男氏の家族の安否について李院長は、本妻と息子1人が北京に、後妻と息子1人(キム・ハンソル氏)と娘1人はマカオにおり、いずれも中国当局の身辺警護を受けているとの認識を示した。
マレーシア警察、金正男氏殺害の女工作員を乗せたタクシー運転手を拘束
マレーシアの警察当局は、金正男氏を暗殺したと見られる容疑者の女2人を乗せたタクシードライバー1人を一時拘束。取り調べの上、釈放した。マレーシアの華語紙、東方日報が報じた。また、工作員はベトナム国籍であると伝えている。 
ブキッ・アマンの警察本部の幹部は東方日報の取材に、金正男氏が殺害された月曜日の午後に、2人の女工作員を乗せたタクシー運転手を逮捕したと述べた。
記事は、犯行の様子を次のように伝えている。 
「出発ロビーにいた金正男氏に女工作員2人が接近した。うち1人がまず金正男氏にむけて毒の入ったスプレーを発射し、もう一人が金正男氏の口をハンカチで押さえて、気道深くに物質を入れた後、出発ロビーの外で待っていたタクシーに乗って逃走した」 
警察は、2人は運転手に「自分たちはベトナム人」と語っていたとし、また、某国(北朝鮮)が今回の暗殺を行わせるために雇ったと見ているという。使われた毒物を特定された模様だが、薬物名は言及されていない。 
当局は市内全域に特別警戒態勢を敷き、容疑者ら行方を追っている。
金正男氏、韓国政府の「亡命作戦」露呈で殺害か…韓国メディア

北朝鮮の故金正日総書記の長男・金正男(キム・ジョンナム)氏が13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で殺害された事件を巡り、北朝鮮が韓国への亡命を阻止するために行ったのではないかと、韓国メディアが報じている。 
韓国メディアによると、国家情報院は李明博政権時代、金正男氏を韓国へ連れてこようとしたが、本人が韓国より米国やヨーロッパに行くことを望んだため、米国政府と交渉を行ったという。しかし交渉は決裂し、作戦は失敗に終わった。 
このことが報じられ、金正男氏が身の危険を感じて再び韓国や第三国に亡命する可能性が浮上したため、これを未然に防ぐために殺害した、というのだ。 
中央日報は情報筋の話として「金正男氏が韓国に亡命するという情報を入手した北朝鮮が、暗殺に乗り出したものだろう」としている。この情報筋はまた、李明博政権が金正男氏を亡命させる準備を進めていたが、政府は負担が重いと感じて計画を断念した、と述べた。そして最近、韓国政府が金正男氏に再び亡命を持ちかけたことが北朝鮮当局の知るところとなり、暗殺された可能性があるとも述べている。 
金正男氏は2010年6月、中央日報の記者に質問に「(ヨーロッパに行くとは)どういう意味ですか。そんな計画はありません。どうしてヨーロッパに行くんですか。旅行にいくことはあるかもしれないけど…」と亡命説を否定していた。 
彼の足取りを把握していた韓国政府の関係者によると、浪費癖があり、経済的に困窮していた金正男氏に対し、外国の情報機関がアプローチしていたという。これを北朝鮮が苦々しく思っていたことも影響した可能性がある。 
一方、文化日報は北朝鮮事情に精通した情報筋の話を引用し「金正男氏は北朝鮮当局から召喚命令を受けたが、これに応じなかったため、殺害された可能性が高い」と報じた。 
この情報筋はまた、金正恩体制が安定しつつある状況で「金正男氏は金正恩氏を脅かす存在ではない」としつつも、不安要素除去のため殺害された可能性が高いと述べた。
下の写真は、ジーパンに青いストライプのシャツ、スエードのモカシンにハンティング帽をかぶった金正男(キム・ジョンナム、2010年当時)氏です。服装は、典型的な“アメカジ”スタイルです。


全般的には無難そうですが帽子から靴までツートンで色相を合わせるなど、特別なファッション感覚を見せています。また彼は新商品を早く取り入れています。靴は銀のガンチーニの飾りのついたイタリアのブランド「サルヴァトーレ・フェラガモ」(Salvatore Feragamo)です。

当時の春・夏(S/S)新商品です。赤れんが色に近い茶色と青色が発売されていました。韓国国内販売価格は当時で63万8000ウォン(約4万8600円)。シャツは米国カジュアルブランドのラルフローレンです。今年初めに発売された近い製品の国内販売価格は14万8000ウォン。帽子とジーパンのブランドは確認されませんでした。

ソ・スンヒ成均館大学衣装学科教授は「スエードのモカシンやハンティングキャップのように普通、男性たちがあまり試みないアイテムを消化しており、思考が開放的と見られる。色相の選択では心理的に安定し、豪宕ながらも、穏やかな感じを表現している」と評していました。
さて、この事件、元々暗殺計画があって、長年その機会を狙ってきたのが、今回たまたま様々な条件が重なり、暗殺に成功したというのが真相だと思います。

金正男氏は、金正恩朝鮮労働党委員長の地位を脅かす目障りな存在として、北朝鮮当局から付け狙われる運命にさらされてきました。

「張成沢氏が正男氏にひそかにドルを送金している」。中朝関係者によると、2013年に側近らが金委員長にこう告発したのが張氏処刑につながったとされます。前年の訪中時に張氏が中国首脳に「正男氏一家の保護」を求めたとも報告されました。

張氏処刑の罪状に「後継者問題への妨害」「クーデター謀議」が挙げられましたが、これは中国を後ろ盾に張氏が正男氏を担ぎ出し、クーデターを起こすのではないかとの金正恩の猜疑心の表れだったとみられています。

12年には、朝鮮人民軍総参謀長だった李英浩(リ・ヨンホ)氏が更迭されましたが、「正男氏との内通」が疑われたことがきっかけだったといわれています。

「3代世襲には反対だ」「改革開放を進める中国式のやり方しかない」。正男氏は日韓の記者らに対してこう公言してはばかりませんでした。中国の幹部子弟らの間でも「太っちょ兄さん」と愛称で呼ばれ、支持する者が少なくありませんでした。

10年に中国で再会した父、金正日総書記に「弟に後継者の資格があるのか」と迫ったとも伝えられます。

韓国で12年に起訴された北朝鮮の秘密警察の要員は「正男襲撃を指示された」と供述。中国当局も正男氏に対する警護レベルを引き上げていたといわれます。暗殺が事実なら、警戒が薄い東南アジアの移動時が選ばれたということでしょう。

親族粛清は金委員長の父、金正日総書記の生前からありました。1997年2月に金正日氏の先妻の成ヘ琳氏の実姉、成ヘ琅(ソン・ヘラン)氏の息子で、金正男氏のいとこの李韓永(イ・ハニョン)氏(82年、韓国に亡命)がソウル市内で、金正日氏の指示を受けた北朝鮮工作員により射殺されました。

粛清の歴史は金正恩委員長にも引き継がれました。金委員長は2013年12月に叔父の張成沢国防副委員長(当時)を突然、全職務から解任し、処刑しました。

金正恩
当時、党政治局拡大会議では、「張成沢が行った反党・反革命的宗派行為、反動性が暴露された」としていました。張氏が金委員長の「命令に従わない」ことが処刑の理由でした。

張氏は金正日氏の妹、金敬姫氏の夫で、党を中心に活動。中国や韓国を訪問したこともあり、北朝鮮では数少ない「外部を知る人物」でした。11年12月の金正日氏の死後は敬姫氏とともに、金委員長への権力移行に努めてきました。

親族で後見人であった張氏を処刑した金委員長の手法を、韓国では朴槿恵(パク・クネ)大統領自らが「恐怖政治」と非難しました。

手錠をかけられ軍事法廷に引きずり出された張成沢。(2013年12月「労働新聞」より引用)
しかし、金委員長にとり、自分に意見する者、逆らう者は親族だろうが消し去るべき存在なのです。その後も側近幹部の粛清や更迭の情報は続きました。

金正男氏は、張氏とは特に親密な関係だったとされます。。本など海外メディアのインタビューで金委員長の世襲に言及していた。

さらに、北朝鮮との関係が悪化する中国が長らく金正男氏の背後におり、中国国内で半ば“自由”に行動していたことが、金委員長の逆鱗(げきりん)に触れた可能性が大です。

北朝鮮当局の関与、金委員長の“暗殺指令”があったのであれば、金委員長は金正男氏を囲い続けてきた中国の反発を見越した上で、兄の処断を実行したことになります。“金正恩恐怖統治”の歴史は進行途中であり、今後も続くことでしょう。


それにしても、なぜ金正恩委員長はこのような処刑や暗殺をしなければならないのでしょうか。それは、明らかです。

日本などの先進国の選挙という民主的手続きを経て選ばれるリーダーと異なり、金正恩委員長の統治の正当性はかなり低いからです。

私達が思うほどには、金正恩氏の体制は盤石ではないのです。いつ崩れてもおかしくはないのです。だからこそ、統治の正当性を主張するため、暗殺・粛清を行うのです

無論、個々の暗殺や、粛清などにはそれぞれ様々な理由があると思います。しかし、その根底はすべて統治の正当性が低いから、行わざるを得なくなるのであり、やはり統治の正当性を主張することが目的であるといえます。

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2016年10月27日木曜日

豊洲問題の議論過程を公開 小池都知事の姿勢は正解―【私の論評】お白洲方式を成功させるためには、原則と順番がある(゚д゚)!

豊洲問題の議論過程を公開 小池都知事の姿勢は正解

豊洲市場の問題は徐々に進展している。構造上の安全性と衛生上の安全性の二つが指摘されていたが、2016年10月25日の都の「市場問題プロジェクトチーム」で、構造上の安全性は問題なしという意見がでた。

この議論の様子は、ネット上(都政改革本部HPの動画)で確認することができる。多少専門的な議論であるが、流れは誰でも把握できるだろう。この会議が面白いのは、構造上の問題があると批判してきた人と、実際の設計担当者がガチンコで議論していることだ。


 小泉政権時の「お白洲」

批判者は、森山高至氏と高野一樹氏だ(会議の座席表もネットで確認できる)。いずれも、テレビ出演やブログで構造上の安全性を批判してきた。

ところが、会議では、実際に設計を担当した日建設計の人にかなりやり込められていた。今後も、専門的な議論を続ける模様だが、構造上の安全性は問題なしという方向で結論が出るのではないか。

この会議を見て、かつての経済財政諮問会議の「お白州」を思い出した。筆者は、小泉政権時、財務官僚であったが、当時内閣府に出向し竹中平蔵大臣直轄の経済財政諮問会議特命室参事官であった。それまでの役所の慣例であれば、そこは経済財政諮問会議の事務局なので、同会議を意のままに操っていただろう。しかし、竹中大臣は違った。

筆者が、いろいろな政策案を竹中大臣に相談すると、答えはいつもおなじで「面白そうだね。今度の経済財政諮問会議で議論しよう」だ。けっして、筆者の意見をその場で採用することはなかった。

そして、経済財政諮問会議が「お白州」になる。「お白州」というのは、竹中大臣自身が言っていた言葉である。経済財政諮問会議は、資料も議論も直ぐ公開される。会議では民間議員、閣僚同士のガチンコ議論が当時は行われていた。筆者の提案したものは民間議員ペーパーになり、閣僚からの反対意見を招いた。ある時、財務大臣と経産大臣が猛烈な反対をしたが、そのロジックは論旨不明だった。そうした閣僚の反対意見を聞いていた小泉総理が、両大臣に対し「役人の言いなりなるな」と机を大きく叩いて、会議を終わりにしてしまった。それは総理が意図したものだが、その場は険悪な雰囲気だった。

 一方的な意見を垂れ流したマスコミは情けない

その後、物騒なペーパーを書いた筆者は怒られるのを覚悟していたが、竹中大臣は論点が明確で結論の方向性が出たと評価してくれた。もちろん、筆者の提案がすべて「お白州」で賛同を得たわけではなく、ボツになったものもあった。

「お白州」では、提案する方もそれを批判する方も、公開の場で対等である。これは裁判みたいなものだ。

豊洲市場の構造上の安全性についても、森山氏と高野氏の批判だけを聞いているともっともに聞こえるが、その反対意見の日建設計の担当者と議論すると、どちらがよりまともかが、素人にもだいたい分かる。

小池都知事は、議論の公開を重視している。少なくとも、都庁内での議論を透明化し、いわゆる御用審議会を「お白州」状態にしたことは評価していい。為政者は、良い意見をとればいいのであって、その意味で公開の場を設定するのは正しい。

森山・高野氏と実際の設計担当者の間で「市場問題プロジェクトチーム」という「お白州」で議論すれば、どちらかが「公開処刑」になるが、小池都知事としてはいい結論を選べる。

それにしても、森山氏らを使い続けて、豊洲市場は構造上の安全性に問題ありとの一方的な意見を垂れ流したマスコミは情けない。

++ 高橋洋一

【私の論評】お白洲を成功させるためには、原則と順番がある(゚д゚)!

メディア、特にテレビは、豊洲問題の報道の仕方を徹底検証して、反省していただきたいものです。この件では、テレビは豊洲の危険性を煽っていた森山氏らをフル稼働させました。外野だけじゃなく、現実の当事者を参加させないとこうなります。やはり、日建設計の担当者も稼働させるべきでした。

森山高至氏
フジテレビは10月2日放送の「新報道2001」で、築地市場の豊洲移転を取り上げ、豊洲市場加工パッケージ棟の柱が傾いているのではないか、と指摘しました。

根拠としたのは、東京都中央区の渡部恵子区議が提供した1枚の写真。ネット上では、この報道に対し、「柱の傾きはカメラの性質によるもの」だという指摘がありました。

写真を撮る時にレンズを傾けると、周辺が歪んで見える効果があるからです。

VTRでは、提供写真を使った。だが、柱が傾いていると強調するために、写真を回転させ、右側の柱が垂直、左側が大きく左に傾いているように見せているのではないか、との声も出ました。

番組は、プロカメラマンや建築の専門家などの意見を紹介し、豊洲市場やその周辺の地盤沈下の影響による柱の傾きが疑われるとの方向で報じました。「柱の歪みはカメラレンズによるものだ」とする都の職員の話も取り上げましたが、全体としては、柱が傾いていると印象づける内容で、そこに批判が集まりました。

「報道2001」で報道された豊洲市場の柱
結局、この柱の湾曲の件ついて以下の様な事実上の謝罪をしています
今月2日の『新報道2001』で、豊洲市場内の柱の一部が傾いて見える写真があると放送しました。柱が傾いたように見えるのは、カメラのレンズによる可能性があるという点は放送中、VTRやスタジオで説明していますが、東京都は否定しており、番組であらためて事実関係を検証したいと考えております。 
これに限らず、豊洲新市場問題については、かなり白熱した場面が多数見受けられました。日々のテレビ番組の制作に追われている現場からすると、豊洲新市場等のホットな話題について「語れる専門家」を探したとしても、日中のビジネスタイムのテレビ出演できるような「あまりパッとしない専門家」ぐらいしか出演に応じてもらえないことになります。大規模構造物について現役で事実を専門的にまともに語れる人は、事務所等に所属して守秘義務があり日中は働いて番組出演など不可能です。

その結果、検証されない“トンデモ”ない内容が報じられることになり、事情を知らない視聴者は「そういうことなのか、豊洲はけしからん」という認識になったのでしょう。そもそも、ターレー(運搬車)程度の荷重で床が抜けるはずもなく、当然ガセネタや言いがかりのレベルの放送内容になってしまったのですが、これの検証ができないことは本当にテレビ局や制作会社の責任にだけ帰していて良いのでしょうか。

このような問題は、過去に幾度となく繰り返されています。たとえば、STAP細胞騒動などもそうです。結局のところ、すべてが小保方氏の倫理問題にすり替えられ矮小化され、理研や文部省の危機管理の問題や、統治の問題がなおざりにされたままです。

本来は、業界団体なり本当の専門家なり施工・設計の当事者なりがしっかりと声を上げ、訂正報道を求めるなり、問題のある発言をした自称専門家の出演自粛を要請したり、明確な風説の流布には営業妨害で訴訟を起こすといった話さなければならなかったはずです。


私自身は、東京都の資料や他の資料から、豊洲は少なくと築地よりは、はるかに安全であると思っていました。そのため、豊洲の建物を下の盛り土せずに、コンクリート製のピットとしたことについては、安全性には問題はないものの、誰がどのような意思決定をしたのかはっきりせず、この点は問題であるとは思っていました。

そのため、築地から豊洲への移転と、意思決定の問題に関しては切り離し、移転はなるべく速くするようにして、意思決定の問題は徹底追求すべきであると考えていました。

しかし、今から考えてみると、安全に問題があるかもしれないとされるなかで、豊洲移転を当初の予定通りにするなどのことをしていれば、風評被害が深刻な悪影響を及ぼしたかもしれません。

しかし、高橋洋一氏の説明するように、小池知事が"経済財政諮問会議の「お白州」"方式として、豊洲の安全性を誰にでも理解できるようにしたことにより、この風評被害は完璧に防ぐことができたと思います。これによって、豊洲移転は意外は早まるかもしれません。

今後、今回のような専門性を要する事柄に関しては、テレビ等のメディアは白州の場の提供や、提供された白洲の場の報道に徹するべきかもしれません。何しろ、現状のメディアでは、専門性を持った人材があまり存在しないので、結局のところ今回の『新報道2001』のような報道になってしまいがちです。

「お白洲」式であれば、「一方だけの意見を述べる人を出すのではなく、反対意見の人もでせばいいだけです。そうして、できればたかだか数時間の議論ではなく、時間を十分とって議論させるようにするのが良いです。しかし、時間の限られた放送枠ではここが難しいのかもしれません。しかし、そうはいっても、テレビ、メディアは公開ですから「公開処刑」もありうることになります。

無論ここでいう「公開処刑」とは北朝鮮などの本当のそれではなく、動画において特定の人物の恥ずかしい部分がさらされてしまっていたりする、大勢の前で辱めを受ける状態を公開処刑と例えているものです。

このかつての経済財政諮問会議や、「市場問題プロジェクトチーム」など「お白洲」方式は、他の場面でもどんどん採用すべきです。

ただし、「お白洲」方式をするにしても、やり方があります。これに似たようなものとして、かつての民主党政権下で行われた「事業仕分け」があります。しかしこれは「お白洲」に見えて全く「お白洲」ではありません。

そもそも、「事業仕分け」は財務省の書いたシナリオを下に民主党の政治家が役者を演じただけのものです。

そもそも人選が間違えていました。たとえば、あの有名な蓮舫氏によるコンピュータ開発における「一番でなければいけないのですか」という発言が示すように、そもそも技術関連の専門家でもなんでもない政治家と、これまた専門家でもない官僚を対決させるという図式は全くの間違いで、あれは当然のことながら、コンピュータ開発の専門家同士を対決させるべきでした。それもできれば、直接ブロジェクトに関わっていない意見の異なる専門家同士を対決させるべきでした。


そうすれば、そもそも専門家同士の対決で今回の「市場問題ブロジェクトチーム」のように結論がでたかもしれません。

結論がでなくても、双方で議論をつくした上で、最終的には政治的判断をするのであれば、「事業仕分け」も受け入れられたかもしれません。この「お白洲」方式も人選を間違えれば、何も決まらないし、議論がまともにつくされることもありません。

国会でも公聴会などもありますが、公聴人が意見を述べるというだけで、ガチンコ対決をさせるというわけではありません。それに公聴会でも人選が間違っている場合もあります。

改憲議論をする際などは、現在日本で主流の憲法学者のみでなく、「憲法9条は、日本が自国を防衛をするための戦力を保持したり、行使したりすることを禁止しているわけではない」という解釈の京都学派の学者も参加させ、十二分に時間をとったガチンコ対決をさせるような「お白洲」を開催すべきです。

「お白洲」で結論が出れば、それはそれで良しとして、最終結論が出なかった場合には、最終的に政治判断をするということで良いと思います。

このような形で国会でも「お白洲」で調整した上で、政治判断をするという具合にすれば、憲法問題に限らず、経済でも、エネルギー問題でも何度も多くの国民が納得するまともな意思決定となるのではないかと思います。

現状の国会などみていると、まるで野党は「国会とは政府を追求する場である」と心得ているように思えてなりません。もちろん、そういう面を全く否定するとはいいませんが、このような側面だけが強調される現状では、時間と労力ばかりがかかって、まともな意思決定などできるはずはありません。何か意思決定が行われても、すっきりせず多くの国民が「消化不良」になったような感触を受けると思います。

結局、誰が正しくて、誰が間違いであるとか、与党が間違いで、野党が正しいなどという考え方をしていては、まともな論議など永遠にできるはずはありません。

「何が正しいか、何が間違いか」という考え方をすべきなのです。国会の論議は、この原則を忘れているから不毛になるのです。そうして、今回の「市場問題ブロジェクトチーム」がうまくいったのは、「豊洲は安全か、安全でないか」を徹底的に議論したので、うまくいったのです。

「お白洲」方式を成功させるためには、まずは「何が正しいか、何が間違いか」を議論すること、そうして議論する人の人選を間違えないこと。これが絶対原則です。

この原則を忘れて、都議会が、小池知事が、都の役人が、挙げ句の果てに元石原都知事が正しいとか、間違いかという議論をしていても議論が不毛になるだけです。そんなことよりも、まずは何が正しくて、何が間違いかを議論し、それがはっきりした次の段階で、必要があれば、誰に責任があるかを明確にするべきです。順番を間違えた論議は、不毛です。

今後「お白洲」方式を他の場面でも多く採用していただきたいのは、やまやまですが、この原則を忘れたものは無意味です。

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2016年3月19日土曜日

英国高速鉄道に日立製作所の新型車両「あずま」 ロンドンで公開、2018年に運行―【私の論評】鉄道発祥のイギリスが日本の車両を導入する一方インドネシアは中国の新幹線劣化コピーで頓挫(゚д゚)!


18日、ロンドンで公開された日立製作所製の英鉄道車両「ヴァージン アズマ(あずま)」
英鉄道会社ヴァージン・トレインズは18日、日立製作所から納入された「都市間高速鉄道計画(IEP)」の「ヴァージン・あずま」を、ロンドン市内のキングス・クロス駅で公開した。日立製作所が笠戸事業所(山口県)で製造して英国内で試験走行してきた高速鉄道車両「クラス800」で、2018年からロンドンと英北部スコットランドのインバネス間で運行を開始する。

ヴァージン・トレインズによると、イースト・コースト本線を走行することから日本語で東を意味する「あずま」と名付けられた。日立製作所が開発した新型車両で、コンパクトなデザインで最新の省エネ技術を取り入れた駆動システムを採用、運転速度は最高で時速125マイル(201キロ)。設計上時速140マイル(225キロ)まで出せる。

電化区間は架線から電力供給し、非電化区間は床下のエンジンと発電機ユニットから電力供給できる「バイモード技術」を採用、電化・非電化両区間の直通運転ができる。日立製作所は「軽量化など日本で培ってきた技術が生かされている」とアピールした。

ヴァージン・グループの創設者で会長のリチャード・ブランソン氏は、「『あずま』によってイースト・コースト本線は21世紀の英国で最も洗練された先進的な路線となる」と語った。

公開された車両は、昨年1月英国に搬送され、試験走行を実施。同社は、英運輸省からIEP向けに122編成(866両)を受注しており、このうち12編成分(76両)は笠戸事業所で製造、残る110編成分(790両)は英中部ダラム州ニュートン・エイクリフで今年初めから本格稼働を始めた車両製造工場で順次製造する。

その他同社では「クラス800」を2017年からグレート・ウエスタン本線で営業運転を開始する。

ヴァージン・グループの創設者で会長のリチャード・ブランソン氏は、「『あずま』によってイースト・コースト本線は21世紀の英国で最も洗練された先進的な路線となる」と語った。

リチャード・ブランソン氏
 公開された車両は、昨年1月英国に搬送され、試験走行を実施。同社は、英運輸省からIEP向けに122編成(866両)を受注しており、このうち12編成分(76両)は笠戸事業所で製造、残る110編成分(790両)は英中部ダラム州ニュートン・エイクリフで今年初めから本格稼働を始めた車両製造工場で順次製造する。

その他同社では「クラス800」を2017年からグレート・ウエスタン本線で営業運転を開始する。

【私の論評】鉄道発祥のイギリスが日本の車両を導入する一方インドネシアは中国の新幹線劣化コピーで頓挫(゚д゚)!

上の記事だけを読んでいると、イギリスの鉄道事情に詳しくない方だと、よくわからないと思いますので、以下にその概要を解説します。

イギリスは、国鉄が1社あるわけではなく、20社以上の会社がそれぞれ独立運営しています。

イギリスの国内線はすべて全席自由席です。本来、乗車券のみ(指定券不要)で乗車可能。たとえ満席でも立って乗車可能です。

必ず座りたい方は駅窓口で座席を予約して無料の指定券をもらうことも可能です。ただ、イギリスの鉄道は座席指定が最初からできない鉄道会社(8社(下記参照))も存在します。

以下に、イギリスの主な鉄道路線図を掲載しておきます。

London発着の主な路線図


ChilternRailwaysAbellioGreterAnglia
VirginTrainsSouthWestTrains
LondonMidlandsTrainsFirstGreatWestern
VirginEastCoastSouthern
GrandCentralSouthEasternTrains
FirstHullTrainsThameslink
GreatNorthern/Thameslink
マーク:事前予約可能

ブログ冒頭の記事に出てくる、ヴァージン・トレインズによると、イースト・コースト本線は、上のチャートでは、黄緑色の線です。たしか、インバネスまでは行っていないはずで。この路線の終着駅は、エジンバラで、そこからはスコットレイルに乗り換えて、インバネスまでいくはずだと思います。

VirginEastCoastが延長して、インバネスまで行くようになったのでしょうか。しかし、それも変です。この路線図は最新のもののはずです。このあたり、ご存知の方がいらっしゃったら是非教えて下さい。

London発着以外の主な路線図


ScotrailLondonMidlandsTrains
CrossCountryEastMidlandsTrains
FirstTrainsPennineExpressFirstGreatWestern
ArrivaTrainWalesNorthernRail
VirginTrains
マーク:事前予約可能








それにしても、鉄道の先進国どころか、生みの親であるイギリスに鉄道後進国の日本の日立の車両が用いられるというのですから、これは素晴らしいことです。

確か、商用鉄道としては、 1825年イギリスのストックトン・ダーリントン間を結ぶ鉄道が世界初だったはずです。

このようなイギリスの鉄道会社で日立の車両が用いられるというのですから、本当に日本の技術水準は高いのだと思います。

日立といえば、日本の新幹線の車両も製造しています。やはり、イギリスのような島国の場合、日本の新幹線のような高速鉄道が適しているのだと思います。

フランスには最高時速500kmもだせる、TGVがあります。しかし、フランスなどヨーロツパ大陸は山岳地帯のスイスなどを除いては、平地が多く鉄道路線も直線部分が多いし、高低差もあまりありません。だからこそ、500kmも出せるのです。ただし、これは、後に述べるように試験車では、それだけ出そうと思えば出せるということです。

日本の新幹線は、TGVのように高速は出せませんが、それは日本の国土の特殊事情によるところが大きいです。日本は、狭い国土で、平地も少なく、線路もどうしても曲がりが多く、高低差が激しいです。このようなところでは、時速500Kmも出すのは非常に危険です。

だからこそ、現状の最高速度は320Kmに制限してあるのです。そうして、実際の営業時の最高速度は、時速300kmです。そもそも、駅間が相当広くないとメリットがあまりないので、この位の速度にとどめてあるのです。

なお、試験車では、700系の先行試験車である300Xが営業線での高速走行試験で443.0Km/h、フランスのTGV-Atrantiqueが、やはり試験車両で建設中に515.3km/hを達成しており、これが国内外の最高速度記録です。フランスの記録はき電電圧のアップ、下り勾配の利用等特別な条件での結果であり、営業運転で採用できる方法ではありません。

営業運転で一番最高速度が高いのは、300km/h運転の500系新幹線電車です、営業運転ではTGVも同じく300km/hです。これ以上速度を増すとすれば、やはりもう、現状の方式で無理で、リニアモーターカーということになるでしょう。

細かい説明は、しませんが、輸送効率ということになると、やはり日本の新幹線が世界でトップということになります。

それに、安全性も実証済みです。日本の新幹線は、阪神淡路大震災でも、東日本大震災においても、大事故になるということはありませんでした。さらに、事故率は世界で一番少ないです。

新幹線の人身事故といえば、三島駅乗客転落事故と、これは記憶に新しい、昨年6月東海道新幹線の車内で焼身自殺を図った男のせいで、女性の乗客が1名亡くなられた他、十数名の重軽傷者が出るなどしたとても痛ましい事件くらいなものです。

この事件があったときの、ツイートを以下に掲載します。
しかし、これは新幹線の安全性の問題ではなく、あくまで人為的なものです。新幹線の安全性や、信頼性は、これらの事件で揺らぐことはありませんでした。

だからこそ、イギリスのヴァージン・トレインズも日本の日立の車両に決めたのは、もっともなことだと納得できます。

鉄道発祥のイギリスの鉄道会社が新幹線の技術を持つ日本から車両を導入するというのに、あのインドネシアはどうしてしまったのでしょう。

今日もインドネシアの高速鉄道に関して以下のようなニュースが入ってきました。
中国ようやく5キロ区間だけ建設許可 受注のインドネシア高速鉄道 残る区間なお買収めど立たず 
 インドネシア運輸省は19日までに、ジャワ島の高速鉄道計画(全長142キロ)を担う合弁会社「インドネシア中国高速鉄道」に対し、設計図が提出された5キロの区間の建設認可を出した。残る137キロの区間については必要資料が提出され次第、順次審査するという。 
 同社は認可を得た区間の工事を近く始める予定で、2019年初旬に完工、同年5月に開業するとしている。だが、残る区間の認可がいつ出るのかがはっきりしない上、用地買収のめども立っておらず、計画の先行きにはなお不透明感が漂う。 
 同計画では今年1月に着工式典が行われたが、運輸省の許可が下りず、工事は始まっていなかった。
なんと、たった5キロ区間ですよ、50キロでなくて、5キロです。これって、高速鉄道で走ったら、どのくらいで走り抜けてしまうのでしょうか。ほんの一瞬ですね。

なんということでしょう。 今からこの有様では、これから一体どのくらいかかるのか、想像もつきません。

やはり、中国は海外で事業を展開するのは、無理なのだと思います。中国のアフリカ投資は、のきなみ失敗しています。それは、おそらく、海外での事業の展開も、国内でやるように、地元民のことなど何も考えず、自分たちの都合で、ただ箱物を作るという具合にすすめるからです。

しかも官僚の鶴の一声でやってきたので、何でも自分勝手にすすめることができのですが、他国ではそうはいかないということだと思います。本来まともな国なら、地元の人々の意見も聴きながら、地元に役立つようにしようとするのですが、中国の場合はそんなことは一切考慮せず、自分たちの都合だけで、実施したきたので、相手のニーズを汲み取るなどということが一切できないし、相手と一緒に作りあげるという観念がないのだと思います。

それに、イギリスのヴァージン・グループの創設者で会長のリチャード・ブランソン氏は、中国の高速鉄道など、日本の新幹線の劣化コピーに過ぎないことを当然知っているのだと思います。

そんなところから、導入すれば、安全性は極度に低いですし、たとえ安く導入できたとしても、安全性の面からいえば、やはり安物買いの銭失いということになりかねません。

インドネシアのジョコ大統領は、まさに安物買いの銭失いをしたと思います。


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