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2018年6月1日金曜日

時間のムダだった「愛媛県文書」騒動 確認取らず公表する醜態、ダブスタ目立つ「反アベ」の人―【私の論評】財務省の増税路線を批判しない不思議な野党とマスコミ(゚д゚)!

時間のムダだった「愛媛県文書」騒動 確認取らず公表する醜態、ダブスタ目立つ「反アベ」の人

「愛媛県文書」の存在を知らせる朝日新聞の紙面

 先日の本コラムで、加計学園をめぐり、安倍晋三首相と加計孝太郎理事長が面談したなどと記述された「愛媛県文書」を取り上げた。その際、1年前の「文部科学省文書」とそっくりな構図であることを説明し、最後に、万一事実でなかった場合、メモの提出者と、それを裏取りなしで報道した多くのマスコミの責任は大きいと断じた。

 どうやら、愛媛県文書は事実が書かれていなかったようだ。当事者の加計学園が「誤った情報を与えた」とのコメントを公表したのだ。

 筆者の懸念したとおり、愛媛県文書は書かれている人の確認も取っておらず、証拠能力のある公文書にもならないメモだった。伝聞に伝聞を重ねたようなものだったのだ。文書に書かれている人の確認を取らず、公文書にもならないというのは文科省文書と同じである。

 確認が取れていない文書をそのまま公表したり、マスコミが報じたり、さらには国会で問題視したりすることにどこまで意味があるのだろうか。

 公文書ではないメモを公表するにせよ、書かれている人の迷惑になってはいけないので、その人に事前に確認を取るのが一般常識だろう。

 愛媛県文書も文科省文書もそうした当然の確認行為がないまま公表しており、何らかの意図を持ったものであるといわざるを得ない。その確認をしておけばこのような醜態をさらすこともなかっただろうに。

 そうした文書を報道するためには、裏を取る必要があるだろう。愛媛県文書も文科省文書もともに裏を取るのはそれほど難しいことではないと思われるが、マスコミはそうした当然のことを怠り、あたかも事実のように報道したこともおかしい。

 これを取り上げる国会議員も、国家戦略特区が認可の「申請」を認めただけなのに、認可をしたと間違った理解をしているので嘆かわしい。筆者は以前のコラムでNHKのウェブサイトの記述の間違いを指摘したが、報道は相変わらずである。

 文科省による認可作業は、昨年の4~10月に行われている。3年前に愛媛県と加計学園の間で行われた話が、昨年行われた認可作業にどのような影響があったというのだろうか。

 このように今回の愛媛県文書と1年前の文科省文書にはともに多少「盛って書いた」ところなど共通点が多い。しかし、文科省文書の時には、「首相の意向」と盛って書いた文科省官僚は一切非難されていないが、今回の愛媛県文書の場合、誤った情報を出した加計学園関係者が批判されるのは、ダブルスタンダードだ。

 筆者は、こうしたメモは往々にして伝聞が多く、盛った話ばかりなのでそれを信じないが、首相を追及する手がかりを失ったと残念がる人ほど、こうした「ダブスタ」が多いようだ。

 重ねて言うが、特区で行ったのは単に「認可の申請」だけで、「認可」そのものではない。首相を追及したいなら、この点をきっちりと勉強する必要がある。特区関係の新文書が出てきたと騒いでマスコミが報道し、国会で取り上げるのは時間の無駄でしかない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省の増税路線を批判しない不思議な野党とマスコミ(゚д゚)!



昨日は、国会で嘘の答弁をしたとして市民から刑事告発されていた佐川氏らが大阪地検により不起訴となりました。この1年間、マスコミ・野党は必死で追及しましたが、この結果でした。

マスコミと野党の財務省の文書書き換え追求の目的は麻生太郎財務大臣の辞任でだったと思います。麻生大臣が辞任すれば、安倍政権の屋台骨が大きくゆらぎ、秋の総裁選での安倍三選に赤信号がともると、反安倍陣営は思っていたのでしょう。

29日の国会で麻生大臣は、森友学園をめぐる文書改ざん問題について「改ざんとか、悪質なものではない」との発言に関しての、野党やマスコミの追求もこの麻生下しが主目的でした。

麻生大臣の言葉尻をとらえた、テレビ報道

麻生大臣は「書き換えられた文書の内容を見る限り、少なくともバツをマルにしたとか、白を黒にしたとか、改ざんとかそういった悪質なものではないのではないか。いわゆる答弁に合わせて書き換えたということが全体の流れである」と発言しました。

文書書き換えでも文書改ざんでも、財務省のしたことは国民の信頼を失墜させたことで重大なことには違いありません。しかし、これが麻生大臣の責任かといえば、さすがにそれは違います。

文書の書き換えは麻生大臣の認識できない範疇行われました。あのようなことで、大臣が辞任するということになれば、官僚は大臣をいつでも辞任させることができることになってしまいます。

そうなれば、安倍政権であろうと、安倍首相以外の自民党政権であろうと、他の政党の政権であろうと、文書を書き換えれば官僚はすぐに大臣を辞任させることができます。そんな馬鹿な話はないでしょう。

しかし、マスコミは、麻生大臣が「改ざん、悪質なものではない」「悪質なものではない」と題して、その言葉尻をとらえて報道しています。さらに、野党がこの言葉尻をとらえて、麻生大臣に辞任を迫るという発言も紹介しています。

彼らの報道ぶり、からはマスコミが麻生大臣の言葉尻をとらえていますぐにでもやめさせたいという意図がはっきりとみえます。もちろん野党がそうするのはある程度は、政治的に理解できるところがありますが、マスコミの報道姿勢としてはどうなのでしょうか。 

ところで野党もマスコミも麻生大臣辞任の世論形成にだけ集中しているようで、国民や政治家などの真の敵である財務省については生ぬるい批判しかしていません。さすがに最近の財務省自体は大人しくみえはしますが財政再建や社会保障の拡充という理由で消費増税路線は健在です。

経済財政諮問会議は「骨太の方針」の中に消費増税を明記し、さらに財政再建の期限や目標値を設定しています。昨年の「骨太の方針」では「増税」の文字はありませんでした。

昨年の「骨太の方針」の表紙、中身に「増税」という文字はなかった

昨年なかった「増税」の文字が、今年の「骨太の方針」には現れたということは、野党やマスコミ、識者などの財務省批判などとは全く別に、増税に関しては本来あってはならない財務省の政治的な力は昨年よりもさらに強力になっていることを意味します。

またマスコミも財務省発と思われる消費増税対策を報道したり、または「識者」の中でも消費増税の影響を論じる人が最近目立って増えてきています。

どれも「(消費税の悪影響に)万全の構え」という表現を用いて景気対策の有効性を強調したり、あるいは消費増税の影響自体を過少にみるものが多いです。財務省は見かけは大人しくしていても、その他の増税マスコミや増税政治家、そして増税識者たちが代わりに消費増税を宣伝し、それを着実に具体化していこうとしています。

その増税への熱意は未だに全く衰えていないようです。文書書き換え問題がどうなろうと、国有地売却の疑惑があつたにしても、財務省そのものは何も変わらず、あいかわらず増税路線をひた走りに走っているのです。

消費税増税を前提とした日本経済新聞の記事

増税を推進する、マスコミ、政治家、官僚、識者は消費増税の万全の対策だとか、日本経済への影響は軽微であるとか、2013年から14年にかけて言っていたのと同じような屁理屈で、増税を正当化しています。

しかし、現実は彼らの主張とはまったく異なり、日本経済は大きなダメージを負いました。金融緩和策で雇用は良くなったものの、増税の悪影響が未だ続いており、GDPの伸び率では未だお隣の韓国よりも低い状況です。現状でも、まだ完璧にデフレから回復したとは言い難い状況にあります。これを喜んだのは消費税率を上げることに成功した財務省と増税陣営だけでしょう。もちろん増税陣営の中には野党勢力の多くも存在します。

本当は、麻生大臣の言葉尻りをとらえることよりも、はるかに重大なのはこの財務省の消費増税路線とその弊害です。この問題にこそ日本の将来がかかっています。この問題を追求する野党やマスコミが存在しないというのが、本当に残念です。

もう一度増税すれば、日本経済はとんでもないことになるのは明らかです。また、デフレに戻るのは必定です。そうなれば、円高にもなり、また日本の産業の空洞化がはじまり、若者は、就活に苦しむようになります。やはり、財務省は分割して、他省庁の下部組織につけるという方式で完璧に解体するしかないのかもしれません。

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2018年2月13日火曜日

キム・ジョンナム氏暗殺事件 背景に後継問題の密告か―【私の論評】なぜ中国は今頃この事実を公表したのか?

キム・ジョンナム氏暗殺事件 背景に後継問題の密告か


1年前にマレーシアで北朝鮮のキム・ジョンナム(金正男)氏が暗殺された事件について、中国政府関係者は、北朝鮮のナンバー2とされたチャン・ソンテク氏が以前、中国を訪問した際、当時の胡錦涛国家主席に対し、ジョンナム氏を北朝鮮の最高指導者にしたいという意向を明らかにし、この情報がキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長に伝えられたことが事件の引き金になったという見方を示しました。

この事件は、ちょうど1年前の去年2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で北朝鮮のキム・ジョンウン委員長の兄のジョンナム氏が、猛毒のVXで暗殺されたものです。

この事件について、中国政府の関係者はNHKの取材に対し、6年余り前に死去した北朝鮮のキム・ジョンイル(金正日)総書記の後継問題が背景にあることを明らかにしました。

それによりますと、死去から8か月たった2012年8月、当時、北朝鮮のナンバー2とされ、キム・ジョンウン委員長の叔父にあたるチャン・ソンテク氏が、北京で中国の胡錦涛国家主席と個別に会談した際、「ジョンイル氏の後継にはキム・ジョンナム氏を就かせたい」という意向を伝えたということです。

この会談は、当時、中国の最高指導部のメンバーだった周永康政治局常務委員が部下を使って盗聴しており、周氏は翌2013年はじめに、北朝鮮の最高指導者となっていたキム・ジョンウン氏に会談の内容を密告したということです。

周永康 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
この年の12月、チャン氏は国家反逆罪などで処刑され、さらにジョンナム氏は去年2月にマレーシアで暗殺されており、中国政府は、周永康氏によってもたらされた情報がキム・ジョンウン委員長のげきりんに触れ、事件の引き金になったと見ています。

なぜ周永康氏がキム・ジョンウン委員長に情報を伝えたのか詳しい理由はわかりませんが、当時、周氏の周辺には汚職捜査の手が及んでおり、周氏としては、北朝鮮とのパイプを利用することで指導部の動きをけん制しようとしたのではないかとの見方が出ています。

その後、周氏は汚職や国家機密漏えい罪などに問われて無期懲役の判決を受けましたが、関係者によりますと、北朝鮮への密告が国家機密漏えい罪に当たると判断されたということです。

中国政府は、ジョンナム氏暗殺事件について終始沈黙を守っていますが、今回確認された情報は、今後の中朝関係を読み解くうえで重要な手がかりになりそうです。

周永康氏とは

中国の周永康元政治局常務委員は、江沢民元国家主席に近く、前の胡錦涛政権で最高指導部入りし、警察や情報機関などを統括する公安部門の責任者を務めて強大な権力を握っていたとされます。

周永康氏は江蘇省無錫出身の75歳。北京石油学院を卒業し、1980年代から90年代にかけて石油工業省の次官や国有会社の中国石油天然ガスの社長などを歴任し、いわゆる石油閥の大物と見なされてきました。

1999年からは四川省トップの共産党書記、2002年からは警察にあたる公安省のトップを務めました。そして、2007年に共産党の最高指導部である政治局常務委員に上り詰めました。

周氏は、当時9人いた政治局常務委員の中で序列は9位でしたが、犯罪捜査や治安維持などを担う公安部門や情報機関をはじめ、検察や裁判所まで管轄する中央政法委員会のトップの書記を務めていたため、強大な権力を握っていたとされています。

周氏は、一時、最高指導部入りの可能性も指摘され、その後失脚した薄煕来元重慶市書記の後ろ盾だったと見られていて、薄元書記と共謀して習近平指導部の転覆を企てていた疑惑が持ち上がるなど、胡錦涛前国家主席や習近平国家主席と激しく対立していたことが明るみに出ました。

薄煕来(はくきらい)
そして、「虎もハエもたたく」という腐敗撲滅のスローガンを掲げて大物の摘発に乗り出した習指導部のもとで身柄を拘束され、2015年6月に汚職や国家機密漏えいの罪で無期懲役の判決を受けました。このとき、国営新華社通信は「裁判所は、一部の犯罪事実の証拠は国家の秘密にかかわるため非公開にした」としていました。

判決言い渡しの模様は中国国内で国営テレビによって生中継され、以前は黒かった髪の毛が真っ白になって出廷した周氏の姿に国民の間では衝撃が走りました。

髪の毛が真っ白になって出廷した周
中国の最高指導部経験者が汚職などの罪で有罪判決を受けたのは、周氏が初めてです。

チャン・ソンテク氏とは

チャン・ソンテク氏はキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長のおじで、キム委員長が、死去した父親のキム・ジョンイル総書記の権力を世襲したあと、後見人とされた人物でした。

チャン氏は1946年に東部のハムギョン(咸鏡)北道チョンジン(清津)で生まれ、妻はキム総書記の妹のキム・ギョンヒ氏でした。

キム・イルソン(金日成)総合大学を卒業したあと入党したチャン氏は、キム総書記とのつながりを背景に頭角を現し、党の筆頭部局である組織指導部の第1副部長などを歴任しました。2010年には国防委員会の副委員長に就任し、2011年のキム総書記の葬儀では、キム委員長とともに、ひつぎを載せた車に付き添って歩きました。

チャン・ソンテク氏
北朝鮮の経済改革や外資誘致で主導的な役割を担っていたチャン氏は、中国との経済協力に積極的に取り組み、2012年に北京を訪れた際には当時の胡錦涛国家主席と会談するなど、中朝間のパイプ役を担っていました。

しかし、2013年にチャン氏は、「反党、反革命的な行為をした」などとして、すべての職務を解任されて党から除名されたうえ、特別軍事裁判で「国家を転覆させようとする極悪な犯罪を行った逆賊だ」として死刑判決を言い渡され、直ちに処刑されました。

【私の論評】なぜ中国は今頃この事実を公表したのか?

さて、上の記事により、北朝鮮の金正恩が、叔父である張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑、兄である金正男を暗殺した理由が見えてきたように思います。

さすがに、いくら北朝鮮が軍事独裁体制の国家であったにしても、張成沢氏と金正男氏を殺害するのはやりすぎではないかと思っていましたし、このようなことをするには余程の理由があるのだろうとも考えていました。

その理由がこれだったわけで、ある程度納得のいくものでした。無論、だからといって金正恩が、これら二人を殺害したことを認めるというわけではありません。このような残忍な殺害は絶対に許すことはできません。

とはいいながら、金正恩が残忍であることを前提としたうえで、なぜそのようなことになったのか合点がいくということです。

2012年8月、当時張成沢氏が、北京で中国の胡錦涛国家主席と個別に会談した「正日氏の後継には金正男氏を就かせたい」という意向を伝えた当時は、北朝鮮内部には正男氏を後継にすべきとする派閥と、正恩氏を後継にすべきという派閥があり、これらが熾烈な争いをしていたのでしょう。

そうして、結局のところ正恩派が勝利を収めて、張成沢氏は処刑され、正男氏は暗殺されたのです。もし、正男氏側の派閥が勝っていれば、正恩が暗殺されることになったかもしれません。無論、正男氏はそのようなことはしないかもしれませんが、派閥の力学などでそのようなことになる可能性も十分あります。

金正恩時代の粛清政治は、彼が最高指導者になった翌2012年から始まりました。7月15日の政治局会議で、父・金正日氏が金正恩氏を支える側近として抜擢した朝鮮人民軍参謀長の李英鎬(リ・ヨンホ)氏が電撃的に解任され、表舞台から消え去りました。そうして、おそらく処刑されたと考えられます。

李英鎬(リ・ヨンホ)氏(写真右)
この粛清劇については叔父である張成沢氏が主導したとの説もありますが、最終的に金正恩氏が決断したのは間違いないでしょう。

金正恩氏が主導する粛清政治が本格化するのは、2013年からでした。先述の李氏の粛清を主導したとされている張氏が、北朝鮮メディアで「犬にも劣る人間のゴミ」と罵倒されたうえ、時をおかず処刑されました。張氏処刑以後、金正恩氏は北朝鮮史上希にみる恐怖政治を始めました。暴君へと変化するターニングポイントがこの時だったと言えるでしょう。

金正恩氏の恐怖政治の対象は政治家だけにとどまりませんでした。2015年3月には、金正恩氏の妻である李雪主(リ・ソルチュ)夫人も一時期在籍していた「銀河水管弦楽団」のメンバーらが銃殺されました。北朝鮮での銃殺刑は珍しくないですが、メンバーらは凄惨きわまりない殺され方で銃殺されたと伝えられています。

銀河水管弦楽団
同年5月には、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長が公開銃殺されました。この時は人間を文字通り「ミンチ」にする「高射銃」が用いられました。北朝鮮の歴史は、国内の派閥闘争と粛清の歴史でした。しかし、わずか7年間で、ここまで大規模な粛清の嵐が吹き荒れるのはありえませんでした。

公開処刑された玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)氏
極めつけは、昨年2月に金正恩氏の母親違いの兄である金正男氏が猛毒のVXによって暗殺された事件です。

金正恩氏の父である金正日氏は、叔父の金英柱(キム・ヨンジュ)氏や母親違いの弟である金平日(キム・ピョンイル)氏との後継者争いに勝利し、最高指導者に登り詰めました。しかし、建国の父である金日成氏の血を引くこの二人を手にかけることはありませんでした。

一方、金正恩氏は金正日氏の長男である金正男氏を暗殺しました。北朝鮮の権力闘争史上、初めて金日成氏の血を引く身内に手をかけるというタブーを犯したのです。

残忍きわまりない金正恩氏の恐怖政治も2017年に入って以降なりを潜めているという説もあります。その理由として金正恩体制が磐石になったからという分析もありますが、はたしてそうなのでしょうか。

今のところ金正恩氏は核・ミサイル開発など、対外的な政治に重きを置いています。これがある程度落ち着いた時、必ずや国内統治に関心が向きます。その時、またもや金正恩氏の恐怖政治の嵐が吹き荒れるかもしれないです。

このような状況ですから、北朝鮮では現状では、中国のような派閥はないようにも見えます。あったにしても、寝たふりをしているのでしょう。派閥が形成されたり、過去の派閥が蘇ったりすれば、金正恩は、ただちに派閥の首謀者やその取り巻きを処刑することでしょう。

これでは、誰も怖くて、派閥など作れません。だから、北朝鮮からは派閥争いなどの情報はありません。現状では派閥はないのでしょう。そのため、北朝鮮の意思=金正恩の意思、もしくは金正恩を後継者にすべきと主張していた派閥の一強、ということになっているものと考えられます。

もし、金正男氏が後継者になっていたら、北朝鮮にも少なくとも中国のように派閥があったかもしれません。そうして、これらの事実がもう一つの疑問に答えてくれます。

それは、なぜ中国側が今頃になって、金正男氏暗殺事件の背景に後継問題の密告があったことを表に出したかということです。

その理由は、上記のように現在の中国の体制は、習近平派と胡錦濤派が協調して、江沢民派を一掃しているような状況であり、金正恩は胡錦濤に恨みを抱いており、それと協調する習近平に対しても敵意を抱いているということがあります。要するに金正恩は中国の現体制には敵対的なのです。

だから、現在の中国は北朝鮮にいうことを聴かせることはおろか、効果のある制裁もできない状況です。

そんな中で、習近平はトランプ氏に北朝鮮制裁をすることを迫られています。これについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【お金は知っている】国連の対北制裁強化で追い込まれる習主席 「抜け穴」封じなければ米から制裁の恐れ―【私の論評】中国が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では現在の中国は軍事力では米国に遠く及ばないのは無論のこと、金融大国の米国に本格的な金融制裁をされれば、とんでもないことになるため、対北制裁に関して中国は、米国の要求を飲むのは時間の問題であろうことを掲載しました。

ただし、上でも示したように、現在の北朝鮮は中国に対して敵対的であり、中国の言うことなどなかなか聞きません。また、習近平派、胡錦濤派以外に、北朝鮮に近い勢力もあるため、たとえ習近平が対北制裁強化をしようにも限界があるのです。

私は、中国がこの限界を米国に理解してもらうため、今頃になって金正男氏暗殺事件の背景に後継問題の密告があったことを公にしたのだと思います。

習近平も、どう頑張っても出来ないものは出来ないし、限界があることを米国に示そうとしたものと思います。

さて、これに対して、トランプ氏は次の一手をどのように打つのでしょうか。私としては、次には海上封鎖をするのではないかと思っています。

現在でも、これに近いことを実行しています。日本の海自も戦後一度も踏み入ったことのなかった黄海に護衛艦や航空機を派遣して監視活動をしています。

今後は、さらにこれを強化して、臨検なども含む事実上の海上封鎖をするのではないかと思います。それでも、効果がなければ、さらに機雷を敷設して完全封鎖ということもありえると思います。そうなると、もう戦争状態に入ったといっても良いと思います。

そうして、中国はこれを黙認することでしょう。それでも、陸上から物資を供給するなどの制裁破りなどもありえますが、これは微々たるものです。海上封鎖がされれば、さすがに北朝鮮も音を上げる可能性があります。

それに、海上封鎖ということになれば、これはもう、戦争一歩手前ということになり、北朝鮮に対する今までにない強力な圧力になると思います。

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2017年4月17日月曜日

台湾・八田像損壊犯は元台北市議だった FBで公表し出頭―【私の論評】台湾が100%親日とは言えないことを示した残念な事件(゚д゚)!

台湾・八田像損壊犯は元台北市議だった FBで公表し出頭

頭部が切り取られた八田與一像
   台湾南部・台南市で日本統治時代の技師、八田與一像の頭部が切り取られた事件で、台湾と中国の統一を主張する元台北市議の男が17日、交流サイト上で犯行を自供、警察に出頭した。

男はフェイスブックで「自分がやった」と公表した上で、台北市内の警察署に出頭。当局は共犯とみられる女とともに身柄を台南に移して事情を聴いた。

男は1958年生まれで、現在は台湾の急進統一派の団体「中華統一促進党」に所属。94年に統一派の政党「新党」から台北市議に当選し、1期務めた。任期中、市幹部を殴り起訴された。また、2016年には急進的な台湾独立派の団体の敷地に放火し逮捕、起訴されている。

男は自身を日本統治時代の義賊になぞらえる発言も投稿。像の頭部を指すとみられる「八田さん」を、中華統一促進党の「党本部に届ける」などとする記載もあった。

頭部が切り取られる前の八田與一像

【私の論評】台湾が100%親日とは言えないことを示した残念な事件(゚д゚)!

八田與一氏
八田與一氏は台湾では有名ですが、日本ではなぜかあまり知られていないので、以下に八田氏について簡単に触れておきます。

八田與一氏は、昭和初期に活躍した当時の台湾総督府の水利土木技術者です。1910年、東京帝国大学工学部土木科を卒業後、台湾総督府の技手として赴任しました。台湾南部に位置する嘉南平野は、当時、広大な面積を有していたものの、灌漑設備が未整備であったことから、雨季の大雨により、この地域が水浸しになり作物が育たないという治水問題を抱えていました。

その問題解決のため、当時東アジア最大級のダム建設計画を立案し、現場指揮にあたったのが八田與一氏なのです。約10年の長い年月をかけ完成した烏山頭ダムにより、豪雨による水害のなくなった嘉南平野は台湾で一番の農作地帯へ変貌しました。

また、この烏山頭ダムは素晴らしい技術構想の元で建設されています。当時高価であったコンクリートをほとんど用いず、砂利と粘土を巧みに組み合わせた手法を用いることで、ダム内に土砂が溜まりにくい構造になっており、建設後80年を越えた現在でもその機能を十分に果たしています。

総工費は当時の日本円で5,400万円(現在の日本円で5兆円と推測)でた。1日1,000人を超える作業者が従事しました。いかに大規模な建設計画であったかが伺えます。


「台湾の人々に安全な生活と豊かな農地を提供したい。」という願望と、一大計画を完遂した本人の強い信念、卓越したリーダーシップ、魅力的な人柄は今も現地の人々のみならず台湾中の人々から敬われています。

東日本大震災の際、台湾から200億円余りの巨額の寄付金が寄せられました。実は、この理由は八田與一氏を始めとする多くの日本人が当時の台湾の発展に大きく寄与したことが関係しているようです。現地の人々から、「八田與一が成しえたことは、決してお金に変えられるものではないが、東日本大震災に際し少しでも貢献できれば」という声が多数あったことは事実です。

後日談ではあるが、八田與一氏の功績を称え作られた銅像は、戦時中には日本政府の金属の供出や、戦後大陸からきた国民党政府から像を守るため、住民により20年近く別の場所に保管され、1981年に住民によって銅像が戻されました。

八田與一氏がいかに台湾の人々にとって偉大な人物であったかが読み取れるエピソードです。銅像は現在もかつての工事現場を今も見守るような姿で烏山頭ダムを見下ろす丘の上にあります。八田與一氏の命日である5月8日には、昨年も住民のみならず台湾政府の要人を始め多くの人々が集い、八田與一氏の偉業を偲ぶ催しが営まれました。

さて、今回この八田與一氏の象の頭の部分が切り取られるというとんでもない事件が起こってしまったということです。しかも、その犯人が元台北市議だったということも、衝撃的でした。

多くの日本人は、テレビなどを通じて、台湾には新日的な人が多いというこを知っているようですが、単純にそうとばかりは言えないところもあります。八田與一象は、住民によって他の場所に移され、1981年になってから元の場所に戻されたということは、それを如実に物語っています。これれに関しては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「尖閣は台湾のもの?」“二重国籍”蓮舫新代表が知っておくべき日本と台湾の対立点―【私の論評】南京・尖閣問題で台湾は決して親日ではない(゚д゚)!
民進党代表決定の名前を呼ばれる直前にハンカチで目頭を押さえる 蓮舫新代表=昨年9月15日
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、台湾は日本にとっては外国です。外国と我が国とでは、当然のことながら、利益が相反することもあります。

台湾と日本の間で利益が大きく相反するものして、この記事では、 台湾が尖閣諸島を台湾領であるとしていることと、南京市民の日本軍による大量虐殺は事実であるとしていることを上げました。

尖閣諸島が台湾領であるという台湾の主張に関しては、詳細はこの記事をご覧いただくものとして、これはどの観点からみても、無理筋というものであり、尖閣諸島は日本の固有の領土です。

無論、これに関しては、馬英九前総統の国民党政権のときには、そのような主張を表だって、していましたが、蔡英文総統の民進党政権からは、日本との関係を考慮してか、これに関しては表立って主張するようなことはなくなりました。ただし、だからと言って、蔡英文政権が、尖閣諸島は日本固有の領土であると正式に認めてはいません。

南京虐殺問題に関しては、台湾は元々、大陸中国と同じように30万もの市民を日本軍が虐殺したと主張しています。

そもそも、南京での戦闘は、異常なものでした。なぜなら、国民党政府軍軍事委員長・蒋介石が戦いの途中で麾下の数万の兵士を置き去りにして高級将校とともに南京から逃げたからです。この時蒋は督戦隊を残して逃亡しています。

督戦隊とは、逃げる兵士を撃ち殺す部隊のことです。そのため、南京市内の国民党軍兵士は逃げるに逃げられなかったのです。よって、置き去りされた兵士らは、便衣兵(一般市民と同じ私服・民族服などを着用し民間人に偽装して、各種敵対行為をする軍人)となって難を逃れたとも言われています。

そのため、南京では一般の市民が日本軍により便衣兵と間違われ、戦闘で命を落としたり、あるいは戦闘の後で捕獲した便衣兵の中に一般市民がいた可能性も否定しきれない部分があり、確かに市民が犠牲になった可能性は否定しきれません。

しかし、だかといって、日本軍が南京市民を数十万を意図に虐殺したという事実はありません。それに、当時の南京攻略の成功責任者であった、松井石根大将は、この事件のため戦後に極東軍事裁判において死刑になっています。しかし、この事件の大元の責任者である、蒋介石と高級将校たちには、いっさい何の罪にも問われていません。

南京虐殺記念館に刻まれた虐殺された市民30万の虚構
そうして、蒋介石は後に台湾の総統となり、国民党政権を樹立しました。台湾でも戦後何度か政権交代があり、国民党以外の政党が政権を担ったこともありました。しかし、その時期にも尖閣諸島が台湾であるとか、南京で日本軍は数十万の市民を虐殺したという主張を変えたことはありません。

ブログ冒頭の記事のように、親日的な台湾人が多いことは事実です。しかし、そもそも台湾の建国は蒋介石率いる国民党によって行われたことや、大陸中国の息のかかったような人も多いことから、政界や財界などにもまだまだ、国民党に関係の深い人間が、隠然と勢力や権力を保持しているため、国民党による主張など簡単に取り消すことができないのです。

現在の台湾は蔡英文総統の民進党政権が率いていますから、台湾は独立国であり、大陸中国の一部ではないという考え方であり、どちらかというと日本との関係を強化させたいと考えています。

他方、国民党を支持する層も多いという現実もあります。そのような台湾の現実を示したのが、今回の八田像損壊だったのです。

私達日本人も、このような台湾の現実を知り、台湾がいつまでも親日的であるとは限らないかもしれないことについては、肝に銘じるべきです。

そうして、日本政府や民間も、台湾の親日的な人々の絆を深めていくべきものと思います。

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