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2020年7月12日日曜日

中国軍が中東に基地を構える日――中国は「第二のアメリカ」になるか— 【私の論評】中共が力を分散すれば、対中勢力にとってますます有利になる!(◎_◎;)

中国軍が中東に基地を構える日――中国は「第二のアメリカ」になるか

訪中したイランのザリーフ外相を迎える王毅外相(2019.8.26)
  • 中国は中東イランのキーシュ島を25年間租借する権利を得て、ここに軍事基地を構えようとしていると報じられている
  • 事実なら、中国はアジア、中東、アフリカを結ぶ海上ルートを確立しつつあるといえる
  • ただし、イランに軍事基地を構えた場合、中国自身も大きなリスクを背負うことになる
 海洋進出に合わせて中国はアジア、アフリカ各地に軍事基地を構えてきたが、今度は中東がそのターゲットになっている。

ペルシャ湾に中国軍基地ができる?

 中東の大国イランは今、コロナだけでなく、あるウワサによって揺れ動いている。イラン政府が中国との間で、4000億ドルの資金協力と引き換えにキーシュ島を25年間貸し出すことに合意したというのだ。

 ペルシャ湾のキーシュ島は91.5平方キロメートルで、約4万人が暮らす小島だが、大きな港がある他、平坦な地形のため飛行場もあり、交通の便は悪くない。



 その立地条件から古代から人が行き交い、古い街並みが観光名所にもなっている。最近では自由特別区としてショッピングセンターや高級ホテルが立ち並ぶリゾート地としての顔ももつ。

 このキーシュ島を中国に長期リースするという情報は、債務をタテに中国がスリランカの港の使用権を手に入れた一件を思い起こさせるため、イランで政府への不信感と批判が高まっているのだ。何が合意されたのか

 では、この情報は確かなのか。

 問題になっているのは、2016年に交わされた「中国・イラン包括的パートナーシップ協定」だ。昨年9月、米ペドロリアム・エコノミストは関係者の証言として、8月にイラン外相が北京を訪問した際、この協定に以下の内容がつけ加えられたと報じた。

・中国がエネルギー開発に2800億ドル、インフラ整備に1200億ドル、それぞれイランで投資すること

・その引き換えに、中国はイラン産原油を12 %割引き価格で購入できること

・中国の施設を警備するため中国兵5000名がイランに駐留できること(イランへの訓練も含まれるといわれる)

 これだけでも中国のプレゼンスがかなり増す内容だが、さらに追い討ちをかけるように今年2月、イランの民間メディア、タスニム通信が内部情報として「修正された協定にはキーシュ島のリース契約も含まれる」と告発した。それによると、キーシュ島に中国が恒久的に軍事拠点を構えることになる。
これをきっかけに、イラン国内の様々な立場から批判が噴出。反米的な保守強硬派のアフマディネジャド元大統領がナショナリストらしく「イラン国民はこの協定を拒否すべき」と主張する一方、もともとイラン現体制に批判的な亡命イラン人組織、イラン国民抵抗会議も「イラン史上最悪」と酷評している。

 イラン政府は合意内容を明らかにしておらず、中国政府もこの件には沈黙したままだ。しかし、いずれも明確に否定しないことは、キーシュ島租借に関するウワサに真実味を与えている。

誰がリースに向かわせたか

 仮に一連の報道が事実なら、中国はイランが困り果てた状況でキーシュ島の租借権を手に入れたことになる。イラン外相が北京を訪問し、協定が修正されたといわれる昨年8月は、ちょうどアメリカとの対立が激しくなった時期にあたるからだ。

 トランプ大統領は「イランが核開発に着手している」と主張し、2015年のイラン核合意を一方的に破棄。2018年暮れには経済封鎖を再開し、特に2019年春頃からは段階的に制裁を強化しただけでなく、戦略爆撃機などを派遣してイランを威嚇し始めた。

 トランプ大統領の主張はオバマ政権の業績を否定するとともに、北朝鮮との協議が行き詰まるなかで、大統領選挙に向けたアピールだったとみてよい。
ともあれ、アメリカによるこれまでにない圧力は、イランをそれまで以上に中国に接近させ、国内から批判が噴出することが目に見えていたキーシュ島の租借にまで足を踏み入れさせたといえるだろう。
中国の軍事展開への警戒感

 いずれにしても、このままキーシュ島に軍事施設ができれば、中国はユーラシアからアフリカにかけてのインド洋一帯での展開能力を高めることにもなる。

 「一帯一路」構想を掲げる中国は、その沿線上にこれまでにもジブチやセーシェルに軍事基地を構え、南沙諸島にも施設を建設してきた。


 これは「中国企業関係者の警備のため」というのが中国側の言い分だ。

 中国は2011年、「アラブの春」でカダフィ体制が崩壊したリビアに、油田で働く中国人労働者を救出するため軍艦を派遣した。この一件は、中国に中東・アフリカ一帯での展開能力を高める必要性を感じさせたとみられる。

 とはいえ、中国軍の海外展開が警戒感を招きやすいことも確かだ。それは西側諸国やインドなど周辺の大国だけでなく現地でも同じで、特にイランの場合、ジブチやセーシェルなどの小国と異なり、地域の大国としての自負もある。だとすると、イラン政府が協定の内容を明らかにしないことは不思議でない。
中国は「第二のアメリカ」になるか

 その一方で、キーシュ島に軍事拠点を構えれば、中国にとって新たなリスクが浮上することにもなる。

 外国軍隊の駐留はどこでも摩擦を生みやすいが、イスラーム圏ではとりわけ「異教徒の軍隊」への拒絶反応が強い。国際テロ組織アルカイダを率いたオサマ・ビン・ラディンがアメリカを断罪した一つの理由は、湾岸戦争(1991)でイラク軍を攻撃する拠点としてサウジアラビアに米軍が基地を構えたことにあった。

 このパターンに照らしてみると、イランに軍事拠点を構えた場合、中国はインド洋からペルシャ湾にかけての一帯でのプレゼンスを高められるだろうが、そのプレゼンスが大きいだけに、過激派から標的にされる公算も大きくなる。それは中国の中東進出におけるアキレス腱になり得る。

 中国政府はこれまで米軍の海外展開をしばしば「帝国主義」と批判し、「中国はアメリカと違う」と強調してきた。しかし、イスラーム圏で敵意の的になった場合、中国とアメリカの違いはこれまでになく小さくなるとみられるのである。

【私の論評】中共が力を分散すれば、対中勢力にとってますます有利になる!(◎_◎;)

上の記事の主張に関しては、私は概ね賛成です。中国が中東に本格的に、進出することは、そもそも不可能と私は思います。

これに関しては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中東で、中国が米国に取って代わることはできない―【私の論評】中国は中東への危険な一歩を歩みだした(゚д゚)!
イランのザリフ外相(左)と中国の王毅外相
この記事は、今年1月22日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事から以下に一部を引用します。

 ロシアはロシア帝国とソ連の後継であり、ロマノフ王朝時代から中東と深い関係にある。ソ連時代も中東において米国と覇を競った。土地勘もあり、やり方も知っている。しかし今日のロシアは、依然として強大な軍事力を誇っているものの、英国際戦略研究所(IISS)によれば2017年の軍事支出は日本より少ない。GDP(国内総生産)は韓国より小さく日本の3分の1にまで縮んでいる。総合国力において昔の面影はもはやない。影響力においても限りがあるということだ。 
 中国はどうか。国力を急速につけてきているが、歴史上、中東と全く関わってこなかった。中国の経験と知識には限界がある。 
 中国の一帯一路構想が、世界制覇に向けた中国のグランドデザインのように喧伝(けんでん)されている。しかし中国の現場から伝わってくる感触は、それとはほど遠い。大きなスローガンを次々に打ち出すものの、それを支え実行する理念、原則、ルール、実施の仕組みは、現場に近づけば近づくほど中身が見えなくなるのだ。 
 それに進出地域における経験と知識の不足という壁が立ちはだかる。これが中国の実態と言ってよい。 
 中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもある。 
 一帯一路構想を、中国を中心にかつて存在した朝貢貿易システムの再現と捉える人もいる。だが昔は、マルコポーロの例から分かるように、中国に来る人たちが道中のリスクをすべて負担した。しかし今度は中国が自ら出かける。リスクは中国が負わなければならない。中国が中東に積極的に関与するということは、宗教や民族など様々な理由から怨念が渦巻き、複雑で、世界一危険とみられる場所に足を突っ込むということなのだ。

最近ロシアと中国の中東進出を懸念する向きもありますが、ロシアには中東に関する知識や経験があるものの、GDPは東京都並で、これでは如何ともしがたいです。

中国は、最近は米中冷戦で経済は低迷気味ですが、国家単位で見れば、ロシアよりはかなり潤沢ながら、中国には中等の知識も、経験もありません。これでは、どうしようもありません。

結論から言えば、中露とも中東に本格的に進出することは困難です。この記事から、【私の結論】部分からも以下に引用します。
やはり中国の中東における経験と知識の不足という壁が立ちはだかっています。これが中国の実態です。中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもあります。 
そもそも、イスラム教の本質など中国人の多くはほとんど理解していないのではないでしょうか。私達の先進国の人間が、想定する平和とは、戦争のない状態です。少なくとも、中国でもこの考えは、先進国と変わらないかもしれません。

ところがイスラム教の想定する平和は、これとは随分違います。いくら戦争がなくてもイスラム教が世界を支配していない場合は平和ではなく、だからその平和を実現するために戦い続けなければならないというのがイスラムの考えで、これをジハードというのです。私達から見るとテロでも彼らから見ると宗教的な義務なのです。そういう観点からすると、イスラム教は平和の宗教ではありません。
テロも宗教的義務
これは、意外と習近平の考えとあい通ずるところがあるかもしれません。なぜなら習近平も世界の新たな秩序、それも中国の価値観でそれをつくりあげようとしているからです。
ただし、中国の国内のようなやり方で、中東でもゴリ押しすると、とんでもないしっぺ返しを食らうかもしれません。東南アジアでやっているように、多額の借款で中東諸国の港や、施設などを取り上げる等のことをすれば、それこそテロの標的になるということも十分考えられます。
日米にとって、中国の中東進出はどうなのかといえば、一言で言ってしまえば、歓迎すべきことかもしれません。なぜなら、中国が中東に進出すれば、テロ攻撃などにより、泥沼に嵌まり込み、とんでもないことになり、中東での軍事力を増強せざるを得なくなり、インド太平洋地域での、中国の軍事力が削がれることになるからです。

以前のこのブログにも述べたとうり、米国の外交、安全保障は、対中国を最優先としているようであり、その他のことは、中国と対峙するための制約要因としか見ていないようです。マスコミなどでは、トランプ大統領が個人的に北朝鮮に興味がないような報道をしているのを見かけますが、あれは間違いだと思います。

それにしても、中国は先日も述べたように、中東だけではなく、アフリカでも存在感を強めようとしています。さらには、EUでもマスク外交などを展開して、存在感を高めようとしています。

トランプ大統領が中国との対峙に集中しようとしているのとは、対照的です。とにかく、中共は、なんでも総合的に実施しようとしているようです。実施すべき事柄に優先順位をつけたり、当面何かに集中するという方式は、しばしば成功を修めることになりますが、何でも同時並行的に実施するとか、総合的に様々なことに取り組むことは、必ずと言って良いほど大失敗します。

軍事でも、外交でも、企業における仕事でも同じことが言えます。どのような仕事でも、実務上では、優先順位をつけて実行しなければ、物事はうまくは進みません。なぜなら、実務に投入する資源は限られているからです。

これは、企業でまともに、マネジメントをした経験のある人間なら、誰でも知っている原則です。トランプ大統領は長い間実業のマネジメントをしてきたので、これを骨身に染みているでしょう。しかし、中共はそうではありません。。

物事に集中しない、優先順位をつけないのは、官僚の特性でもあります。どこの国でも官僚は、総合的なやり方を好むようであり、毎年総合的対策を実施し、結局何も達成していないということが多いようです。

中国では選挙制度がないので、先進国のように選挙で選ばれた政治家はいません。その意味では、習近平を含む中国の指導者は、全員が指名制で選ばれ、その本質は官僚のようなものです。そのため、集中したり、優先順位をつけたりして、仕事をこなしていくべきことを理解していません。

特に民間であれば、営利企業であろうと、非営利企業であろうと、優先順位をつけずに業務を遂行すれば、いずれ弱体化し倒産します。しかし、官僚は違います。何をしようが役所は潰れることはありません。

これからも、中共は、南シナ海、東シナ海、太平洋、アフリカ、EU、中東などに手を出しつつ、ロシア、インド、その他の国々との長大な国境線を守備しつつ、米国と対峙して、軍事力、経済力、技術力を分散させる一方、日米加豪、EUなどは、中国との対峙を最優先すれば、中共にとってはますます不利な状況になります。

かつてのソ連も、世界中至る所で存在感を増そうとし、それだけでなく、米国との軍拡競争・宇宙開発競争でさらに力を分散しました。当時は米国も同じように力を分散したのですが、それでも米国の方が、国力がはるかに優っていたため、結局ソ連は体力勝負に負け崩壊しました。

今日、中共は、習近平とは対照的な、物事に優先順位をつけて実行することが習慣となっているトランプ氏という実務家と対峙しています。今のままだと、中国も同じ運命を辿りそうです。

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2020年6月17日水曜日

中国軍が尖閣奪取、詳細なシナリオが明らかに— 【私の論評】中国の尖閣奪取は、日本への侵略であり、侵略すれば攻撃してなきものにするだけ!(◎_◎;)

中国軍が尖閣奪取、詳細なシナリオが明らかに
ミサイル攻撃で使用不能になる那覇基地、米軍は動かない

護衛艦「こんごう」型(出典:海上自衛隊ホームページ

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)


 中国海軍は日本の海上自衛隊に対して戦闘能力面で大幅に優位に立ち、日本が尖閣諸島を奪取される危険が高まった──そんな衝撃的な調査報告書が米国の主要研究機関から公表された。

 日米同盟の危機が懸念されるなか、中国側は米軍を介入させずに尖閣を占拠するシナリオを具体的に作成しているという。日本の安全保障への切迫した危険の警告だといえよう。

日本に対して大幅な優位を獲得した中国海軍力

 ワシントンの大手安全保障研究機関「戦略予算評価センター(CSBA)」は5月中旬、「ドラゴン 対 太陽~日本の海洋パワーに対する中国の見解」と題する調査報告書を公表した。報告書は、同CSBA上級研究員で中国海洋戦略研究の権威トシ・ヨシハラ氏が中心となって作成した。

 トシ・ヨシハラ氏は米国海軍大学校の教授を長年務め、中国の海洋戦略研究では全米有数の権威とされる。トランプ政権にも近い立場にある。ヨシハラ氏は日系米人だが台湾育ちのため中国語が堪能で、今回の研究も中国側の言明や証言、発表に基づいている。

トシ・ヨシハラ氏

 報告書は「中国はこの5年ほどで海軍力を劇的に増強し、日本に対して大幅な優位を獲得した」と総括していた。報告書によると、中国人民解放軍の大規模な海軍増強は2010年ごろから始まり、習近平政権下のこの5年ほどで海軍艦艇の総トン数、性能、火力などが画期的に強化された。日本の海上自衛隊はこれまで、アジアの主要なパワーとして戦闘力や抑止力を保持してきたが、現在では確実に中国に後れをとっており、インド太平洋での重要なパワーシフトが起きているという。

 同報告書の内容は、ワシントンの他の研究機関の間でも議論の対象となり、一般のニュースメディアでも報じられた。日本でも海上自衛隊が同報告書の概要を内部資料として配布するとともに、その一部を海上自衛隊幹部学校のウェブサイトに掲載した。

「日本を屈服させることは容易になった」

 同報告書は中国側の研究や資料を基に、中国側が自国海軍の大増強をどうみて、日本への戦略をどう変えてきたかという点に焦点を合わせて考察していた。その結果として、以下の諸点を指摘する。

(1)中国は、尖閣諸島奪取でも東シナ海での覇権獲得でも日本を屈服させることは容易になったとみて、軍事力行使を抑制しないようになりつつある。

(2)中国は尖閣占領に関して日本側を敏速に圧倒して米軍に介入をさせない具体的な計画をすでに作成した。

(3)中国は日本との全面戦争をも想定し、その場合に中国側の各種ミサイルの威力で日本の防衛を崩壊させる自信を強めてきた。

 同報告書は、中国海軍力のこうした画期的な強化は日本や米国にとってきわめて危険な動きだと強調する。そのうえで、中国を抑止するための日本独自の海洋戦闘能力の強化や日米連携による海上防衛強化の具体策を提案していた。

尖閣諸島が占領されるまでのシナリオ

 これまで米国では、中国の海軍力を米海軍のそれと比較する研究はあったが、日本の海上自衛隊の戦闘力と比較する研究は少なかった。今回の報告書の大きな意味は、アジアでは最強水準とされた日本の海上自衛隊がいつのまにか中国海軍に完全に追い越されていたという現実を提示したことだろう。

 とくに象徴的な例として挙げられるのが、艦艇配備の垂直発射ミサイルシステム(VLS)である。中国海軍のVLSは2000年にはゼロだった。しかし2020年にはセル(発射口)数で2000基を超え、日本側の約1500基を大幅に上回った。

 ヨシハラ氏は、章明、金永明、廉德瑰ら中国政府系の学者や専門家の最近の論文などを引用して、中国が日本に対して海軍力で優位に立ったことで「自信と誇り」を強め、好戦的な対日戦略の傾向を増してきたことを指摘する。

 同報告書によると、中国は尖閣諸島への上陸強行による占拠作戦をすでに複数パターン準備している。その例証として、中国海軍公認の海軍雑誌「現代艦船」の最近号に、軍事専門家2人による尖閣奪取の詳細なシナリオが掲載されていたという。

 そのシナリオとは以下のような内容であった。

(1)日本の海上保安庁の船が、尖閣海域にいる中国海警の艦艇に銃撃を加え、負傷者が出る。すると、近くにいた中国海軍の056コルベット(江島型近海用護衛艦)が現場に急行し、日本側を攻撃し被害を与える。

(2)日中両国が尖閣を中心に戦闘態勢に入る。中国海軍空母の「遼寧」主体の機動部隊が宮古海峡を通過すると、尖閣防衛にあたろうとした日本側の部隊が追跡する。しかし、この機動部隊の動きは中国側の陽動作戦だった。

(3)日中の間で東シナ海での制空権争いが始まる。日本のE-2C早期警戒機とF-15が東シナ海上空で戦闘パトロールを始め、中国側が一方的に宣言した「防空識別圏」内に入り、中国のJ-20ステルス戦闘機と戦って撃墜される。

(4)中国軍のロケット軍と空軍が、日本の航空戦力主要基地である沖縄・那覇基地に巡航ミサイルの攻撃をかける。続いて中国軍は多数の弾道ミサイルを発射し、日本側のミサイル防衛システム「パトリオット」を無力化し、那覇基地を使用不能とする。中国側は周辺の制空権を24時間ほどで確保する。

(5)米国政府は日米安保条約を発動しない。大統領は、尖閣をめぐる日中紛争への全面介入は米国の利益に合致しないと判断する。ホワイトハウスは中国に対しておざなりの経済制裁の警告を発するが、それ以上には中国に対する行動はとらない。

(6)宮古海峡の西側で、日本と中国の海軍、空軍の部隊が激しく交戦する。中国側はフリゲート艦を撃沈され、艦隊をその海域から撤退させる。だが、中国側のJH7A戦闘爆撃機とSU30MKK多目的戦闘機が、尖閣に向けて上陸用部隊を運ぶ日本側の艦隊をみつけ、対艦巡航ミサイルで、こんごう型の誘導ミサイル装備護衛艦2隻を沈め、他の1隻を大破して、日本側の尖閣上陸作戦を阻む。

(7)米軍の偵察機が、日中両部隊の戦闘を遠距離から観察して、中国軍が攻めていない沖縄・嘉手納基地へ帰投する。中国は、嘉手納基地など沖縄の米軍基地には一切手を出さないことを米国に約束し、米軍不介入の言質を獲得していた。

(8)中国軍の上陸作戦艦隊を追尾していた日本側のそうりゅう型潜水艦が中国の対潜航空機に発見され、撃沈される。日本側は中国の尖閣上陸を必死で阻止しようと中国の沿岸警備用のコルベット艦1隻を沈めるが、大勢を変えられない。結局、戦闘開始から4日間で、尖閣諸島は中国人民解放軍に占拠されてしまう。

 こうして最終的に中国軍が日本の部隊を撃退して尖閣諸島を占領するわけだが、このシナリオでは、中国軍は嘉手納基地など米軍の部隊や施設には一切手を出さず、米軍も日中衝突には介入しない、という設定となっていた。

 同報告書は、中国がこのように尖閣奪取作戦を遂行する場合、米国が介入してこないだろうと想定することの危険性を指摘していた。中国の日本に対する軍事優位の確立は中国側にこんな想定さえも抱かせる、という警告である。

【私の論評】中国の尖閣奪取は、日本への侵略であり、侵略すれば攻撃してなきものにするだけ!(◎_◎;)

米経済誌フォーブス(電子版)は先月25日、米ワシントンのシンクタンク、戦略予算評価センター(CSBA)の最新リポートを引用し、「中国海軍は規模の上では日本の海上自衛隊を追い抜いているが、艦艇の平均サイズでは海自がリードしている。より重要なのは、有事の際に、海自は米国の支援を得られることだ」と報じています。

フォーブスの記事によると、中国はアジアをリードする海軍大国としてすでに日本を追い抜いているとしています。20年間の爆発的な成長を経て、中国海軍は現在、日本よりも多くの艦船とミサイルを保有しています。

上の記事にもあるように、CSBAのトシ・ヨシハラ氏は最新のリポートで、「アジアにおける海軍力のバランスは劇的に変化している。海洋大国としての中国の台頭は、西太平洋における日本の長年の地位を損ない、その過程でアジアにおける米国の地域戦略を弱体化させる可能性がある」と指摘しています。

リポートによると、上にもあるように、中国は1990年代後半から大規模で強力な軍事力の増強に見合うだけの経済成長を遂げました。一方、日本の経済はほとんど成長しておらず、軍事支出(防衛費)にも明らかな影響を与えています。

90年から2020年の間に、海自のコルベット、フリゲート、駆逐艦、巡洋艦、ヘリ空母の数は64隻から51隻に減少しました。一方、同時期に中国の同種の艦艇数は55隻から125隻にまで増加しています。




もちろん数だけでは全てを語れません。日本の艦艇の平均サイズは中国に比べてはるかに大きいです。サイズが大きければ大きいほど、海上に長くとどまることができ、戦闘での生存率が高くなります。

中国海軍は海自よりも多くのミサイルを配備することに成功しています。艦隊の垂直発射システム(VLS)のセル数は、艦隊の火力の量とほぼ一致しています。

日本列島はアジア太平洋の米軍に重要な基地を提供しており、これが西太平洋における米国の力の基盤となっています。有事の際に、米国は日本と一緒に戦うことになるでしょう。中国の尖閣奪取戦略は、あまりに自分たちに都合が良すぎます。

何やら、米国映画の戦闘シーンで、敵方のドイツ兵が、まるで打ってくださいといわんばりに、無防備でできて、米軍に易々とやられてしまうシーンを思い浮かべてしまいました。

言い換えれば、米国の海軍力を考慮に入れずに、日本と中国の実力を評価するのは不正確です。中国が約3300発、日本が約1600発のミサイルを配備できるのに対し、米国は1万発のミサイルを配備できます。

その約3分の2は米太平洋艦隊に属している。つまり、日米海洋同盟は、中国の3300発に対し、7600発のミサイルを配備できることになります。

それに、上でも示された戦略予算評価センター(CSBA)の最新リポートでは次のような分析もなされています。

中国の軍事兵器、機材の多くは完成品を入手して分解や解析を行い、その動作原理、構成要素や製造方法を明らかにする「リバースエンジニアリング方式」であるので、一般的に機器の信頼性が低いこと、艦艇やその装備品が最新鋭であっても乗組員の技量や練度について未知数であること、また戦力構成上対潜水艦戦能力があまり高くないことなど、いくつかの不安要素があります。

ただし、中国の政治指導部や海軍上層部が「攻撃的な戦略を採用したい欲望にかられていること」という状況は看過できないシグナルです。我が国としては、中国海軍の戦闘能力の正確な分析評価を行い、十分対応できる防衛力整備を行うとともに、堅固な日米同盟および価値観や理念をともにする台湾、豪州やインド等との連携も図りながら、中国が無謀な暴挙に走り出さぬよう、しっかり抑え込むべきです。

「超音速対艦ミサイルASM-3」の射程延伸型のものを、早く製造して大量に現場に配置することと、中国の対潜哨戒能力では、発見が難しい最新型潜水艦の隻数を増やすことや、F35の現場での運用訓練を早めに終えて、1日でも早く現場で活躍させるなど、やるべきことは山のようにあります。

それとともに、中国の戦意を喪失させることが最大の防御なります。人民解放軍の将官たちの戦意を挫くべきです。そもそも、尖閣は日本の領土であり、日中間には領土問題がないわけですがら、中国が尖閣を奪取しようとすることは、日本への侵略であり、侵略すれば、攻撃してなきものにするだけの話です。

このあたりは、政府はもっと単純に考え、中国に対する備えを固めるべきです。米国も尖閣が中国に奪取されそうになった場合、単純に考えて行動すべきです。

このブログでは台湾が中国に奪取されそうになった時の、米国のやり方を掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
習近平いよいよ「台湾潰し」へ…迎え撃つ蔡英文総統の「外交戦略」―【私の論評】中国が台湾武力奪取に動けば、急襲部隊は崩潰し、習近平の中国内での評判は地に堕ちる(゚д゚)!
米軍のF35A
中国の台湾急襲舞台は、当然のことながら航空機ならびに艦艇により派遣されると思います。それには、米国のステル性の高い航空機ならびに、潜水艦で隠密理に攻撃すれば、中国の台湾急襲部隊のほとんどが、崩潰することになります。

崩潰した後の中国台湾急襲部隊への追撃戦は、米国が行うことなく、台湾が実施すれば良いです。そうして、軍事力も強化しつつある昨今の台湾はこの追撃戦を首尾良くやり遂げるでしょう。中国にとっては屈辱的かもしれませんが、捕虜になる人民解放軍もかなりの数に登ることになるでしょう。

その後米国は、この軍事行動に関して、何も公表しなければ、台湾が独力で中国軍を粉砕したということになります。そうなると、台湾に軍事でも負けた習近平ということになり、国内でも習近平の評判は地に堕ちることにります。
中国が米国によるものだと批判しても、中国流に突っぱねれば良いのです。そもそも、中国は米軍攻撃の証拠を見つけることができないでしょう。
これと同じことを米軍は日本で実行すれば良いのです。ただし、日本の自衛隊は台湾の軍隊よりも、人員でも装備で優っていますから、米軍の出番はあまりないでしょう。

ただし、ここぞというときには、日米共同で、中国軍を徹底的に叩き、追撃戦は日本が行うことにします。

そうして、米軍はこの作戦に参加したことを発表しないようにします。そうなると、中国は日本に撃滅されたということになり、中国で習近平はもとより、中共の評判も地に墜ちることになります。

このような奇策も含めて、様々なシナリオを考えておき、いざというときには、中国を完膚なきまでに叩き潰すべきです。日本の領土尖閣などに野心を抱いたことを後悔させるべきです。

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2016年8月3日水曜日

これぞ海上自衛隊の「秘中の秘」 中国軍が最も忌み嫌う音響測定艦「ひびき」「はりま」の知られざる活動とは―【私の論評】その目的は南シナ海を中国原潜の聖域にさせないこと(゚д゚)!

これぞ海上自衛隊の「秘中の秘」 中国軍が最も忌み嫌う音響測定艦「ひびき」「はりま」の知られざる活動とは

外国潜水艦の音紋を収集する音響測定艦「ひびき」
秘密が多い自衛隊装備の中でも、二重三重のベールに包まれているのが海上自衛隊の音響測定艦「ひびき」と「はりま」だ。同じ呉基地(広島県)を母港とする艦艇の乗組員も「どこで何をやっているのか詳しく分からない」と口をそろえる。

音響測定艦が戦っている“敵”はロシアや中国など外国軍潜水艦の音だ。

潜水艦のスクリュー音はそれぞれに特徴があり、あらかじめその特徴を把握していれば、どこの国のどのような型の潜水艦が航行しているのかを特定する決め手となる。警察官が犯人を追い詰めるため指紋を重視しているのと同じように、自衛隊は各国潜水艦の「音紋」をデータベース化している。

音響測定艦はこの音紋を収集している。空から潜水艦の動きを監視する哨戒機や、海中に潜む潜水艦が相手方潜水艦のスクリュー音を探知し、集積されたデータをもとに船の身元を特定する。

自衛隊が平成3年と4年に「ひびき」と「はりま」を相次いで就役させた背景には、冷戦時代末期にソ連が技術開発を進め、潜水艦が発する音が静かになったことがある。潜水艦の最大の強みは、敵に気づかれず攻撃を加える能力。ソ連潜水艦の位置を正確に把握することが、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの無力化につながる。

音響測定艦「はりま」
 潜水艦を発見・追尾する対潜水艦戦を得意とする海自にとって、音響測定艦は不可欠な存在となっている。その音響測定艦の能力を知られることは将来の対潜戦を不利にしかねないため、海自内でも秘中の秘となっているのだ。

乗員約40人の「ひびき」は全長67メートル、幅29・9メートル。艦尾から水中に投入する曳航(えいこう)式ソナー・SURTASSで広範囲に耳を澄ませ、海自艦が集めた音紋データは米軍と共有しているとみられる。2隻の船をつないだような船体は「双胴型」と呼ばれ、自衛隊艦船としては初めて採用された。この船体により、嵐の中でも安定的に航行できる。

音響測定艦は冷戦終結後もロシア潜水艦の音紋を集め続けているほか、潜水艦能力の増強を続ける中国も主なターゲットとなった。25年5月に沖縄県久米島周辺の接続海域で中国の元級潜水艦などが航行した際は、米海軍の音響測定艦インペッカブルとともに「ひびき」も投入した。これに対し、中国側は日米の動きを妨害するため水上艦を展開し、音響測定艦を追尾したとされる。

米海軍の音響測定艦インペッカブル
 21年3月には中国・海南島南方沖で航行していたインペッカブルが中国のトロール漁船5隻に包囲された。同年5月にも音響測定艦ビクトリアスが黄海の公海上で中国漁船から航路妨害を受けた。

有事の際、西太平洋における米軍の行動の自由を奪うことを目標とした中国の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」の中で、潜水艦は中核的な役割を果たす。それだけに、中国にとって日米の音響測定艦の存在は天敵ともいえる。

【私の論評】その目的は南シナ海を中国原潜の聖域にさせないこと(゚д゚)!

まずは、音響測定艦に関して、さらに説明を加えることとします。

音響測定艦(おんきょうそくていかん)は、現代の軍艦の一種。音響測定艦は、海上自衛隊の呼称であり、アメリカ海軍では海洋監視艦(Ocean Surveillance Ship)と呼びます。武装はほとんど施されていませんが、長大な曳航聴音アレイシステムを搭載し、それによる潜水艦の探知を目的とします。聴音システムは探索曳航アレイシステム・SURTASS(Survellance Towed Array Sonar System,サータス)とも呼ばれます。 探知距離は、旧式原子力潜水艦で約100km程度と言われています。

冷戦期において、西側各国におけるソ連海軍の潜水艦の脅威は切実なものであした。潜水艦探知のために、海洋の各所にSOSUSシステムと呼ばれる固定聴音システムを整備したのでしたが、SOSUSが整備できない地区向けや機動的な潜水艦の探知のために特に聴音システムに優れた艦を整備することが検討されました。

このために開発されたのが、音響測定艦です。艦体は小型・低速ではあるのですが、静粛性に優れ、艦尾には曳航アレイを海中に投入するための設備を持ちます。静粛性と安定性を求めたために、アメリカ海軍のビクトリアス級音響測定艦やインペカブル級音響測定艦、海上自衛隊のひびき型音響測定艦は双胴のSWATH船型となっています。

中国の音響測定艦「北調991」
最初の音響測定艦はアメリカ海軍のストルワート級音響測定艦であり、1984年に就役しています。SURTASSは展張時、搭載艦の運動に制限を与えてしまうため、より簡易化したTACTASS(タックタス:戦術用タス)が巡洋艦、駆逐艦(海上自衛隊の護衛艦に相当)に装備されています。

10kt(ノット)以下で運用できるものの、艦に運動制限を加え、探知についても概略探知方位と虚像が同時に探知され、さらに艦首尾方向は不感域になるなど、用兵者には倦厭される探知ソースではあります。しかし1CZ(Convergence Zone、収束帯)域、2CZ域での探知能力は、外洋においては評価されるべきものでしょう。

最新型のアメリカ駆逐艦アーレイバーク級ではTACTASSが搭載されておらず、沿岸侵攻を第一目標とするアメリカ海軍の思想が現されています。なお潜水艦に搭載されているTACTASSはSTASS(サブマリンタス)と呼ばれますが、性能的にはTACTASSと同様です。STASSの特徴は、STASSを展張した際、聴音捜索と同時に、潜水艦が自身の放射雑音レベルの測定に用いる点にあります。

SURTASSはパッシブを基本とした曳航聴音アレイシステムであり、約2kmのワイヤーによって長さ数百mのハイドロフォンシステムを曳航するというものです。1990年代以降は、潜水艦の静粛化にともない、一部の艦にはハイドロフォンとは別に曳航式の低周波高出力アクティブソナー(Low Frequency Active, LFA)を装備している艦も出てきています。

また、海上自衛隊では東芝機械ココム違反事件によりクローズアップされた、ソビエト連邦海軍の原子力潜水艦の静粛性向上対策として、アメリカの技術指導の下、ひびき型音響測定艦2隻を建造しました。これにより、平時からソ連潜水艦の音響データ収集の向上を図るものでした。ただし、後に東芝機械のココム違反は、事件とソ連原潜の静粛性にまったく因果関係がないことが明らかとなっています。

音響測定艦は、パッシブソナーによる潜水艦の音紋採集が任務ですが、1990年代以降、アメリカ海軍に所属する音響測定艦が低周波高出力アクティブソナーを稼動させるたびにクジラやイルカが大量に座礁するという事件が多発しており、環境保護団体による非難が出ていました。これは、アクティブソナーの大音響が海棲哺乳類の感覚に打撃を与えているためだといわれています。そのために、アメリカ海軍においては、低周波高出力アクティブソナーの使用海域を制限しています。

また、冷戦終了後、潜水艦の脅威が減少したためにアメリカ海軍では音響測定艦の一部を別任務に転用しています。これはSURTASSシステムを降ろし、対空レーダーを増備、麻薬密輸組織の監視に使用するものです。主にカリブ海からメキシコ湾岸にかけて展開しています。また、民間人が乗り込むようになり、地球環境の観測にも使用され、地殻変動により発生する極低周波の観測など地学研究の機材としても利用されています。

さて、2012年辺りから、米軍の音響測定艦が日本の港に寄港している姿が、よく見られるようになりました。

米軍音響測定艦3隻が並んだ米海軍佐世保基地の立神岸壁(手前から
インペッカブル、エイブル、エフェクティブ)(2012年11月30日撮影)
沖縄のホワイトビーチに、2隻の音響測定艦が並んだ(2010年9月2日)
米軍が新鋭艦としてしは6隻程度しか保有していない音響測定艦を、佐世保に3隻同時寄港、あるいはホワイトビーチに2隻同時寄港させているということからは、米軍の意図が透けて見えてきます。

佐世保やホワイトビーチでは、乗員の休息と補給を行っていると見られています。つまり、佐世保や沖縄に近い海域において、これらの艦艇が重点的なパトロールを行っているということです。

北朝鮮の潜水艦は、質も量も非常に乏しいため、これら音響観測艦の目標は、中国の潜水艦であると言えると思います。

つまり、米海軍は、世界各国の潜水艦の動静に払う関心の半分以上を、対中国に向けているということです。

しかも、この潜水艦に対する対中シフトは、近年になって急激に強化されたものです。
定着した音響測定艦と測量艦」(リムピース12年1月26日)

以下に少し古い資料を掲載します。

特殊艦艇の佐世保への寄港状況 同記事より転載
少し字が潰れてしまっていますが、紺色の線は音響測定艦、ピンクは測量艦、緑は弾道ミサイル駆逐艦です。
佐世保への音響測定艦の寄港回数・停泊日数  同記事より転載

海底地形等、地誌データと呼べる資料は、以前から継続して調査がされている反面、潜水艦の動静を探る音響測定艦は、2009年あたりから急激に日本近海で活動していることが分かります。

これらリムピースの記事は、米海軍の中国潜水艦に対する脅威認識と衝突の可能性に関する認識が、ここ数年で急激に高まっていることを示す明確なデータです。

そうして、米軍のこのような動きに呼応して、日本の音響測定艦も日々、中国の潜水艦の動向を探っているに違いありません。

なぜ、そのようなことをするかといえば、やはり以前このブログでも掲載したように、南シナ海を中国の戦略型原潜の聖域にしたくないからです。

中国による、南シナ海の戦略型原潜の聖域化については以前にもこのブログで掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!
中国によるスプラトリー諸島にあるファイアリー・
クロス礁の完成した飛行場(昨年9月20日撮影)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の南シナ海の環礁を埋め立て、軍事基地化する目的は、結局のところ、南シナ海の深い海に、中国のSLBM(潜水艦発射型弾道弾)を配備した戦略型原潜を他国に知られることなく、潜ませることにあります。

ここから、西太平洋に抜けると、さらにアメリカ本土に近くなり、アメリカ全土が中国のSLBMの射程距離内に収まります。

潜水艦で深いところに潜行すれば、他国に悟られることなく、核による先制攻撃や、報復攻撃をすることができます。これを戦略原潜の聖域化と呼びます。

米国にとっての本当の脅威は中国による南シナ海の支配そのものではなく、南シナ海の聖域化なのです。

これに対する対抗措置が、米軍による、音響測定戦による中国戦略原潜の探査なのです。日本にとっても聖域化は脅威であり、これに対する対抗措置として、日本も音響探査戦を運用し、中国の原潜の動向を探っているのです。

目に見える、中国による南シナ海の埋め立てや、米軍による南シナ海への艦艇覇権は、氷山の一角にすぎません。本当の中国の狙いは、南シナ海の聖域化であり、米国や日本の狙いはその阻止です。

中国の潜水艦は、工作技術が日本よりはるかに劣っているので、通常型であろうが、原潜であろうが、まるでドラム缶をドンドン叩きながら、水中を進んでいるようなものです。ですから、日米ともに、中国の潜水艦の動向は、かなり詳しく把握しているものと思われます。日米は、役割分担をして共同して中国の原潜の動向の詳細を把握していることでしょう。おそらく、中国の原潜の行動は丸裸にされているものと推測します。

中国の原潜が不穏な動きをすれば、それはすぐに発見されて、米軍はすぐに対抗措置をとるでしょう。それとは対照的に、日本の特に「そうりゅう型」潜水艦は、かなり音が小さいため、中国の音響測定艦ではなかなか発見できないといのが実情です。これには、中国海軍はなす術が無いです。実戦となれば、海の藻屑と消えるのみです。

日米の協力によって、中国による南シナ海の聖域化は是が非でもやめさせなければなりません。そのための、対抗措置が日米による音響測定艦による探査なのです。

多くの人は、日米が中国の南シナ海での埋め立ての暴挙を許してしまったことを非難するかもしれません。しかし、日米は今でも中国の真の意図を挫いていましす。これからも、挫き続けることでしょう。

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2014年12月6日土曜日

制空権「日本は確保困難」 中国軍、尖閣念頭に分析―【私の論評】中国が最も危惧するのは、"日本が自衛隊を使って尖閣から中国を排除すること"! 中国の情報戦に翻弄されるな(゚д゚)!




 中国人民解放軍の専門家が航空自衛隊を中心に日本の戦力を検討した報告書で、沖縄県・尖閣諸島周辺をめぐる有事を念頭に「日本による制空権の確保は困難」と断定していることが5日、分かった。日本は作戦機が少なく作戦持続能力が低いことなどを理由に挙げた。海上封鎖などによる日本封じ込めで「経済だけでなく戦力も破壊できる」とも指摘した。中国軍筋が明らかにした。

中国軍による日本の戦力分析が明らかになるのは極めて珍しい。中国は昨年11月、東シナ海上空に防空識別圏を設定するなど航空戦力を重視しており、軍事対立を想定した検討が本格化していることを示唆している。

日本では、日中航空戦力比較で日本優位との見方が多い。ただ日本の次期主力戦闘機F35本格導入のめどがはっきりせず、中国の次世代戦闘機配備が先行すれば逆転するとの声もある。

報告書は空軍専門家らが共同で作成。日本の航空戦力の弱点について、艦船の護衛など多様な任務が求められる大規模局地戦で「空自の規模と作戦持続能力では十分に対応できず、制空権を奪って勝利するのは困難」と結論付けた。

また日本は90%以上の戦略物資や原料を輸入に頼っているとした上で、封鎖により輸入を30%縮小させれば経済と戦力を根本的に破壊できると指摘。さらに50%まで縮小すれば経済と戦力は「完全に崩壊する」としている。

空自が敵のレーダーを探知して攻撃する対レーダーミサイルや対レーダー無人攻撃機を所有していないことなどから、総合的な航空戦力は高くないと判断している。日米共同作戦の能力は初歩的に整っているとしつつも、米軍が参戦した場合の戦力には言及していない。

一方、将来的に中国と台湾が統一されれば、日本の海上交通路は、中国機が打撃できる範囲に入るとしている。

中国軍は作戦機約2600機、自衛隊は約420機を保有。戦闘機などの質やパイロットの練度は日本の方が高いとされる。
【私の論評】中国が最も危惧するのは、"日本が自衛隊を使って尖閣から中国を排除すること"! 中国の情報戦に翻弄されるな(゚д゚)!

上の記事、どういう目的でこのような報道をするのか、その背景を知るには、以下の動画が一番理解しやすいです。


この動画は、2014/08/29 に公開されたものです。軍事評論家で第29代航空幕僚長の田母神俊雄氏が、APECでの日中首脳会談の可能性と、中国軍機の米軍機への異常接近について語っています。

田母神俊雄氏によれば、戦争を始めるには中央政府の意思決定が必要で、準備には最低でも数ヶ月かかるんだそうです。自衛隊の情報収拾能力は高いですが、その自衛隊が調べても、中国が戦争準備をしている状況にはないことが明らかになっています。

また、田母神氏は、ジエット戦闘機の「異常接近」といっても6mくらいなら実はそれほど驚く距離ではないとも語っています。

要するに、中国軍の尖閣付近などでの、領空・領海侵犯などは、中国軍が戦争を仕掛けようとするのではなく、情報戦の一つであるとみるべきとしています。

では、現時点で中国が最も困るのはなんでしょうか。それは、日本政府が自衛隊を使って、尖閣から中国を排除することです。

中国としては、日本政府が戦争になると大変なので、尖閣くらいくれてやっても、良いのではと考えるように仕向けることが、領海・領空侵犯の真の目的だというわけです。

そもそも、いくら中国の軍事力が向上したといっても、まだまだの水準です。特に、対潜哨戒能力に関しては、雲泥の差というか、日本が世界のトップレベルにあります。航空機についても、中国のステルス機などまだまだ、ステルス性能が低く、まともなステルス機とはいえません。

中国のステルス機は、確かに、中国の性能の劣るレーダーでは捕捉されませんが、日本の自衛隊の性能の高いレーダだと完璧に捕捉されてしまいます。

ステルス性能がない、あるいはステルス性能が低い戦闘機は、どのような運命をたどるかといえば、現在ではすぐにミサイルで撃ち落とされるだけです。現代戦では、非ステルス機で出撃するということは自殺行為に他なりません。

これは、すでに1980年代にアメリカで実証実験されています。地上の他対空ミサイルを配備している基地をステルスではない戦闘機で攻撃するという想定のもとで実際にテストをしてみたところ、出撃したジエット戦闘機は一回の出撃で平均で6回も撃墜されるというテスト結果がでていました。まさに自殺行為です。だからこそ、ステルス機の開発がされたのです。

中国の思惑に乗らないためにも、マスコミなどのいうことには十分気をつける必要がありそうです。

上の記事も、中国にとって、都合良く日本国内で、対中国脅威論を高めるための記事であると考えるべきものと思います。

中国の現状では、制空権はおろか、もし本気で日本政府が自衛隊を用いて、中国軍を排除しようとした場合、全く太刀打ちできないため、日本国内での、中国の脅威を高め、あわよくば尖閣を濡れ手に泡で、自らのものにしようとする見え透いた企みがミエミエです。


日中戦は、中国政府による情報戦の一環ととらえるべき

昨年の夏頃には、中国国内のネットで、日中が戦ったらどういうことになるかという話題が盛り上がっていました。それに関する記事のURLを以下に掲載します。
【中国BBS】ネット上で盛り上がる日中の開戦をめぐる議論
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国では昨年の夏ネットで、他国が参戦しないことを条件として、日中が戦争をすればどうなるかという話題が盛り上がっていました。

全く根拠なしに、どのくらいの犠牲者が出るなどのことが取りざたされていました。そうして、この記事の結論は、以下のようなものでした。
  中国のネット上では日中開戦は間近との論調が多く、このような予測をしたスレッドも非常に多く存在する。これは中国メディアが“日本の右傾化”を煽って報道する傾向が強いためであり、中国のネットユーザーの多くが“日本と中国はまもなく開戦する”と信じているようだ。 
  一方、日本では日中が開戦するとは誰も真剣に検討すらしていないというのが現実ではないか。“反日教育は中国の内政問題から目をそらさせるためのスケープゴートである”との見方もあるが、開戦論で盛り上がっている中国人ネットユーザーを見ると、どうやら“目をそらさせる”戦略は成功しているようだ。(編集担当:畠山栄)
このような記事を見ていると、やはり日中戦争などは、中国側の情報戦の一環に過ぎないことがわかります。

中国としては、国内では、中国人民の中国中央政府に対する憤怒のマグマを日本に向けるために、中国政府が意図的に日中戦争のデマを流し、それに多くのネットユーザーがまんまとのせられるているということです。

一方、日本に対しては、日中戦争などのデマで、中国脅威論をさらに盛り上げ、日本から様々な譲歩を引き出そうというものです。

現状では、上記に書いたとおりです。しかし、ここで私達が気をつけなければならないことです。

現状では、かなり遅れている中国の軍事技術であり、到底日本に太刀打ちできるレベルではないものの、10年後、20年後はどうなっているはわかりません。同レベルになっているか、あるいは全体的に劣っていても、何らかの方法で、いくつかの部分は同水準までもっていけるかもしれません。

そうなれば、中国は、日本の生命線のシーレーンを封鎖して日本の経済と国民生活を破壊するという対日軍事戦略を実行したり、あるいは情報戦の一環としてそれをちらつかせて日本を威嚇し、譲歩を迫るようになるかもしれません。

日本の独立と、アジアの平和と安定を守るためには、そのようなことを中国にさせてはならないのです。その時になって、気づいても急に軍事力を向上させることはできません。一隻の空母をまともに扱えるようにするのでも、数年はかかります。まして、国の軍事力ともなれば、数年でできるはずはありません。

十分に戦略わ練って、その戦略のもと10年、20年の年月をかけて、構築していく必要があります。

そのためにも、私達は国の防衛に無関心でいるわけにはいかないと思います。

現状で、いたずに中国脅威論を煽ることは、中国の情報戦に屈することであると主張する、田母神閣下もこのことには、無論反対ではなく、大賛成だと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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