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2019年1月1日火曜日

米、中国けん制へ新法成立 台湾と軍事協力推進―【私の論評】ARIA成立で習近平涙目、米国は中国が体制を変えるか経済的に無価値になるまで制裁を続ける(゚д゚)!

米、中国けん制へ新法成立 台湾と軍事協力推進

米議会は新法成立を通じて、対中政策で安易な妥協をしないようトランプ氏にクギを刺した

トランプ米大統領は31日、アジア諸国との安全保障や経済面での包括的な協力強化を盛り込んだ「アジア再保証推進法」に署名し、法律が成立した。台湾への防衛装備品の売却推進や南シナ海での航行の自由作戦の定期的な実行を明記し、中国をけん制する。2019年3月1日に期限を迎える米中貿易協議も見据え、政権と議会が一体となって、中国に圧力をかける狙いがある。

新法は議会の対中強硬派が主導し、18年4月に上院に提出された。12月上旬の上院での法案採決では野党・民主党を含む全ての議員が賛成した。中国の安保・経済面での台頭に対する米議会の危機感を象徴する法律といえる。

新法は中国の軍事面での影響力拡大をけん制した。中国が軍事拠点化を進める南シナ海のほか、東シナ海で航行や飛行の自由を維持する作戦を定期的に実施する。東南アジア諸国の海洋警備や軍事訓練などに今後5年間で最大15億ドル(約1650億円)を投じる。

東南アジア諸国連合(ASEAN)が中国と共同で策定する南シナ海での紛争回避に向けた「行動規範」を通じ、ASEANによる海洋権益の維持を支援すると明記。ASEAN支援を明確にして、中国主導の規範づくりにクギを刺した。

ルールに基づく経済秩序を目指す「インド太平洋戦略」の推進も盛り込んだ。人権尊重や国際的な法規範の重視を改めて打ち出し、広域経済圏構想「一帯一路」を進める中国に対抗する姿勢を示した。


知的財産保護についても、中国の産業スパイやサイバー攻撃を念頭に「罰則を含む法律執行の強化が最優先事項だ」と指摘した。米政府は180日以内にインド太平洋地域での中国による知的財産権の窃取の現状や摘発状況を議会に報告する。サイバー分野でもアジア諸国と連携を深める。

国・地域別では台湾との協力を強める。脅威がさらに高まりかねない中国に対抗するため、防衛装備品の定期的な売却を進める。米政府高官の台湾訪問の推進も盛り込んだ。米国では18年3月に高官交流の推進を明記した台湾旅行法が成立している。インドについても「防衛装備品の売却や技術協力を最も親しい同盟国と同じ水準に引き上げる」と強調した。

新法は議会にとって、トランプ大統領が中国に対して安易な妥協をしないようクギを刺す意図もある。トランプ氏は現時点で中国に強硬姿勢を示しているが、シリアからの米軍撤退を突然表明するなど一貫性に乏しい政策決定が目立つ。法律を成立させれば政権の政策決定を縛ることができる。これまでも議会は対ロシア制裁強化法を成立させ、対ロ接近を探るトランプ氏をけん制したことがあった。

新法は超党派の賛成を得ており、仮にトランプ氏が拒否権を発動しても、議会が再可決し法律が成立する状況になっていた。

【私の論評】ARIA成立で習近平涙目、米国は中国が体制を変えるか経済的に無価値になるまで制裁を続ける(゚д゚)!

このブログでは、かねてより、米国による対中冷戦はもはやトランプ政権のレベルではなく、米国議会レベルになっているという主張をしていましたが、今回の「アジア再保証推進法」の成立はまさしくその正しさを裏付けるものとなりました。

これにより、現在の冷戦はトランプ政権が終了したあとでも、冷戦が続くことが決定的になりました。

習近平が、トランプ政権が終われば、米国による対中冷戦が終わるか、継続されたにしても緩くなるかもしれないと考えていたとすれば、その望みは完璧に断たれました。

昨年の米国では、行政府、議会、軍、研究者等、あらゆるレベルにおいて、中国政策は、従来の関与を軸とするものから、抑止を重視する強硬論へと潮流が向かっているように見えました。

米国 自由の女神像

一昨年末の『国家安全保障戦略』、昨年1月の『国防戦略』は、中国を修正主義勢力と呼び、戦略的競争相手と明言しました。米軍は、南シナ海での航行の自由作戦の頻度を上げ、最近、インド太平洋を見据え、つまり中国への対応を強化することを明確にすべく、太平洋軍の名称をインド太平軍に改称しました。

「アジア再保証推進法案(ARIA:Asia Reassurance Initiative Act)」は、昨年から審議されていましたが、トランプ大統領の署名によって発効の運びとなりました。
新法は超党派の賛成を得ており、仮にトランプ氏が拒否権を発動しても、議会が再可決し法律が成立する状況になっていたというのですから、米国議会の並々ならぬ決意がうかがえます。

 ARIAは、序論的な部分と、次の3編からなります。

(1)インド太平洋における米国の安全保障上の利益促進
(2)インド太平洋における米国の経済的利益の促進
(3)インド太平洋における米国の価値の促進

各部分はさらに全体で20項目に細分化されており分量が多いですが、その中で繰り返し、南シナ海の係争地形への人工島建設とその軍事化をはじめとする、ルールに基づかない中国の行動への懸念が表明されています。執拗ともいえる取り上げ方は、歓迎とともにいささかの驚きすら覚える内容です。米議会の対中強硬の雰囲気をよく表していると言えます。

ARIAの第1編は、日本、韓国、豪州をはじめとする条約上の同盟国との防衛協力強化を求めるとともに、インドとの戦略的パートナーシップの強化、台湾へのコミットメントを求めています。
台湾については、台湾関係法と「6つの保証」に基づく米政府のコミットメント、武器売却を求めるとともに、この3月に成立した「台湾旅行法」に沿って米高官の訪台を大統領が許可すべきである、と言っています。米議会は伝統的に一貫して親台湾ですが、ARIAもその伝統に沿った内容になっています。
第2編では、2国間・多国間の新たな貿易協定の交渉をやりやすくする権限を大統領に付与するとしています。さらに、インド太平洋地域へのLNG(液化天然ガス)の輸出を呼びかけたり、米通商代表部(USTR)に対しASEANと交渉を行う権限を付与するなどしています。

こうしたコミットメントは、トランプのTPP離脱という愚行の損失を、いささかなりとも補うものとなり得るかもしれないです。

第3編では、人権の促進、民主的価値の尊重、法の支配や市民的自由への対応が謳われています。そのために、2019年から2023年の5年間で、1億5千万ドルを拠出するとしています。

トランプ政権は、米国が支持してきた価値観を無視したり軽視したりしているきらいがありますが、ARIAの内容を見ると、議会は必ずしもそうではありません。これは心強い点です。

そして、最も重要なことは、この法案の提出者が、共和党のコリー・ガードナー、マルコ・ルビオ、民主党のベン・カーディン、エド・マーキーと、超党派である点です。

マルコ・ルビオ上院議員

つまりARIAの内容は、米国のコンセンサスと言って良いです。米国のインド太平洋重視、対中強硬姿勢は揺るがないでしょう。これから、米中は対決の要素が多い関係になるのは、間違いないです。

まさに、「アジア再保証推進法」の成立をもって、米国は対中国冷戦を国家戦略として実行していくことを内外に明確に示したのです。昨年10月のペンス副大統領の演説を、実行する意思を内外に示したのです。

習近平は今回の推進法の成立で、涙目になっていることでしょう。米国は、今後中国が体制を変えるか、そうでなければ経済的に無価値になるまで制裁を続けるでしょう。

現在のロシアのGDPは韓国より小さく、東京都を若干下回る程度の規模です。GDPが東京都程度の国が、いくら軍事力が強かったにしても、できることは限られます。

どうあがいても、米国と真正面から軍事力で衝突することなどできません。局所的に戦闘で勝つことはあっても、戦争には到底勝つことはできません。

現在のロシアの経済規模は、経済的に世界に対して影響力を及ぼすには小さすぎて無価値になったといえるでしょう。

米国は、中国が自ら体制を変えない限り、中国を第二のソ連にしようとしていると言って良いでしょう。

なお、米国の政策決定においては、議会が大きな役割を果たしています。この点に鑑み、日本としては米議会の動向をよく観察し、積極的に働きかけていく必要があります。それは、ここで取り上げたような安全保障政策だけに限ったことではないです。

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2018年12月1日土曜日

日米印で中国牽制! 初の3カ国首脳会談で「自由で開かれた太平洋」打ち出す―【私の論評】日米印壕英仏はインド太平洋で中国を迎え撃つ(゚д゚)!

日米印で中国牽制! 初の3カ国首脳会談で「自由で開かれた太平洋」打ち出す

首脳会談に臨む(左から)安倍晋三首相、トランプ米大統領、インドのモディ首相

 日本と米国、インドが「対中包囲網」強化をアピールした。11月30日にアルゼンチンで開幕したG20(20カ国・地域)に合わせて、安倍晋三首相と、ドナルド・トランプ米大統領、インドのナレンドラ・モディ首相は3者会談に臨み、「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を確認したのだ。日米印3カ国の首脳会談は史上初で、海洋での覇権拡大を狙う中国への対抗姿勢を打ち出した。

 「日本と米国、インドは(自由、民主主義、人権、法の支配といった)普遍的価値と戦略的利益を共有している。われわれ3人が協力することで、この地域(インド太平洋)と世界にさらなる繁栄と安定をもたらすことができるだろう」

 安倍首相は会談冒頭、こう述べた。

 モディ氏は、日米印3カ国(Japan、America、India)の頭文字を合わせた「JAI」が、インドで「成功」を意味する言葉だと紹介し、緊密連携の重要性を強調した。

 日本と米国、インドの3カ国は最近、協力関係を深めている。

 日本の航空自衛隊は今月、インドのアグラ空軍基地で、同国空軍と初めてとなる共同訓練を予定している。派遣される空自隊員は、同時期に行われる米印両空軍の共同訓練「コープ・インディア」にもオブザーバー初参加する。

3カ国が協力を深める背景には、習近平国家主席率いる共産党一党独裁の中国の存在がある。中国は東シナ海の沖縄・尖閣諸島の周辺海域に公船を連日侵入させ、南シナ海では軍事拠点化を進めている。さらに、スリランカやパキスタンなどインド洋各国で港湾建設を支援し、海軍の寄港地を確保している。ウイグルやチベットでは人権弾圧を続けている。

 自由・民主主義陣営の日米印3カ国としては、放置できないのだ。

 史上初の日米印首脳会談が行われる前には、トランプ政権が行動で、「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を示した。

 米海軍のイージス巡洋艦「チャンセラーズビル」が11月26日、中国が軍事拠点化を進める南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島の付近を通過する「航行の自由」作戦を実施したのだ。さらに、米海軍は28日にも、イージス駆逐艦と補給艦の2隻に台湾海峡を通過させた。

 中国は「貿易戦争」中の米国だけでなく、日本とインドからも追い詰められようとしている。

【私の論評】日米印壕英仏はインド太平洋で中国を迎え撃つ(゚д゚)!

この記事の冒頭の記事にもあるように、「自由で開かれたインド太平洋」など、最近「インド太平洋」という言葉が、脚光を浴びています。本日は、なぜそのように脚光を浴びるようになったのか、その背景を掲載します。

5月30日、ハワイの真珠湾で行われた米太平洋軍の司令官交代式  胸に手を当てるマティス国防長官

ジェームズ・マティス米国防長官は2018年5月30日、ハワイの真珠湾で行われた米太平洋軍の司令官交代式に出席し、太平洋軍(PACOM)の名称を同日付で「インド太平洋軍」(INDOPACOM)に変更したと発表しました。

米太平洋軍は、1947年に創設され、米軍が有する9つの統合軍(うち6つの地域別統合軍を含む)の中でも最も古い地域別統合軍で、ハワイ州・オアフ島の海兵隊キャンプ・H・M・スミスに司令部を置いています。

太平洋軍は、当初、アフリカ最南端の喜望峰から米本土の西沿岸までを担任区域としていました。

その後、1983年に中央軍(CENTCOM)、1995年にアラビア海を中心に中東を担当する第5艦隊(5F)、そして2008年にアフリカ軍(AFRICOM)が、それぞれ創設・編成されたことに伴い、関係地域別統合軍との間で担任範囲が調整されました。

現在は、インドとパキスタンの国境から真南に引いた線以東から米本土の西沿岸までを担任区域とし、ほぼインド洋から太平洋全域の北東アジア(5+1地域)、東南アジア(11)、オセアニア(14)、南アジア(6)の36カ国1地域をカバーしています。

このように、太平洋軍は、創設当初から、インド洋を含めて管轄しており、かねてインド太平洋軍への改称が取り沙汰されていました。

マティス長官が演説で、「インド太平洋軍は米西岸からインドまでの広大な地域と密接なかかわりを持つ主要な戦闘部隊である」と述べたように、この改称はまず、太平洋軍の担任地域をより正確に反映する狙いがありました。

さらに、マティス長官は、「インド洋と太平洋の連結性が増していることに鑑み、今日、米太平洋軍をインド太平洋軍に改名する」とも述べました。

米国は、中国が東シナ海、特に尖閣諸島周辺での不法行動を活発化させ、南シナ海を軍事拠点化し、インド洋に向けてシルクロード経済圏構想「一帯一路」を強力に進めているのに対抗するため、日本やインド、オーストラリアなどとともに「自由で開かれたインド太平洋構想」を推進する考えを打ち出しています。

つまり、インド太平洋地域では、今後、中国の覇権的拡大の動きが強まって対立の危険性が増大するとの認識のもと、それに対し地域の連結性をもって対処する必要性が高まったことを受けた措置です。

もともと、アジア太平洋諸国がインド洋から太平洋に至る地域を相互に結びつけて概念化する「インド太平洋」という用語は、2007年にインド国家海洋財団(NMF)会長で海洋戦略家のGurpreet S. Khurana氏が提示したのが初めてとされます。

インド国家海洋財団(NMF)会長で海洋戦略家のGurpreet S. Khurana氏

オーストラリアも、2016年の「国防白書」で「Indo-Pacific region」という用語を使い、自国がインド洋と南太平洋の間に位置し両海洋に跨る「インド太平洋」国家であるとの認識を示し、直近のシーレーンと両海洋へのアクセスが国益に直結することを明示しています。

また、中国の海洋覇権の野望を念頭に、安倍晋三首相が発表した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、そのようなインド太平洋を維持することにより、地域全体の安定と繁栄を促進することを目標とした戦略指針です。

日本、米国、インドおよびオーストラリアを戦略構築の4本柱(Quadrilateral)として、中国の東シナ海・南シナ海~インド太平洋への侵出抑止に主眼を置いています。

マティス長官は「太平洋とインド洋にわたる同盟国や友好国との関係は、同地域の安定を維持する上で極めて重要だ」と強調しました。

その言葉の通り、米国はかねて、上述の考えを持つ日本やインド、オーストラリアなどと防衛協力などの分野で連携を強化してきました。

このたびの改称は、そうした方針に沿ったものと見ることができ、これからのインド太平洋地域における安全保障取組みのあり方を裏付ける出来事なのです。

伝統的な大陸志向を修正し「海洋国家」を目指すインド

NATO軍最高司令官を務めた経験を持つ、米海軍提督ジェイムズ・スタヴリディスの書籍『海の地政学/Sea Power』では、インド洋を「未来の海洋」と表現しています。これには歴史的意味が込められています。

米海軍提督ジェイムズ・スタヴリディス  TEDより

インド洋は、紀元前3000年以来の長い交易や交流の歴史があり、その間に略奪や襲撃があったのも事実ですが、概して平和な「交易の海」でした。

欧州とインドとの交易が本格化したのは、いわゆる15~16世紀にかけた大航海時代に、ポルトガルの国王マヌエル1世(幸運王) の命でバスコ・ダ・ガマが喜望峰を回り、アラビア人の水先案内人に導かれて 1498年5月インド西岸のカリカットに達し、インド航路が開かれて以来です。

インドが政治的実体としての国の形を成したのは、16世紀の「ムガル帝国」以降とされていますが、安全保障上の脅威は、中央アジアのステップ地帯や現在のイランとアフガニスタンの高原地帯からもたらされました。
 
その脅威が、伝統的にインドを大陸に釘づけにしてきたのです。

今日に至っても、カシミール問題を巡るパキスタンおよび中国との領土紛争や、マクマホンライン(インド東北の辺境地区)を巡る中国との国境紛争が続いています。

そのように、インドは、近年まで外洋に囲まれ陸地に縛られた国でした。しかし、中国が経済力を高め、大規模な艦隊を建設し、インド洋へ侵出するに及んで、インド洋周辺の事情は様変わりしたのです。

中国は、単にインド洋沿岸の友好国に最新式の港湾を作って自国の海上交通路を保護しようとしていると主張するかもしれないですが、インドは「真珠の首飾り」によって包囲されたように感じています。



中印国境紛争などによる脅迫観念と台頭する中国への対抗意識などがその感覚を一層鋭くさせています。

そればかりか、中印は、共に核兵器保有国であり、重複するミサイル射程圏という新しい地政戦略的環境、強いて言えば、「恐怖の均衡」の中に投げ込まれているのです。

インドは、2004(および2009)年に「海洋ドクトリン」(2015年改訂)、2007年に「海洋軍事戦略」、そして2015年に「海洋安全保障戦略」を立て続けに発表しました。

その中で、中国(海軍)は「インド洋地域に戦略的足掛かりを獲得」し、インド洋への進出と域内におけるプレゼンスを拡大しているとの脅威認識を示しています。

そしてインドは、伝統的な大陸志向を修正しつつ、自らを「歴史的に海洋国家」と規定し、インドの安全と繁栄のために「インド洋が死活的に重要である」との立場を明確に打ち出しました。

インドは、海洋安全保障への取り組みの出遅れを取り戻そうと懸命に努力しています。

また、2014年に発足したモディ政権は、南アジア諸国との近隣諸国優先政策を維持しつつ、 「アクト・イースト」政策に基づき関係強化の焦点をアジア太平洋地域へと拡大し、ベトナムや日米との協力関係を強化しています。

インド洋は、西は湾岸諸国からアフリカ東岸、中央はインド亜大陸、東は島嶼部東南アジアからオーストラリアを含む地域で世界の海の5分の1を占めます。

中東には石油の主要供給元があり、ペルシャ湾~アラビア海~インド洋を経て世界へ供給されます。

また、インド洋は世界貿易の東西航路(大きな通商路)となっており、世界のコンテナ輸送の半分、世界の石油関連製品の70%が運ばれています。

さらに海上交通路(シーレーン)を制するマラッカ海峡、ホルムズ海峡、バブエル・マンデブ(マンダブ)海峡、喜望峰などのチョークポイントがあり、まさに世界を動かし、左右する「未来の海洋」と呼ぶに相応しいのです。

今後、ユーラシアやインド太平洋地域の経済の最も強力な牽引役となるのは、台頭著しい中国とインドでしょう。

なおそのうえ、中国とインドの経済圏や勢力圏は、次第に重なり始めています。さらに、富の創造と戦争技術の向上には密接な関係があり、また、軍事ハードウェアとソフトウェアの技術進歩によって地政学的距離が接近します。

そのため、両国の「恐怖」意識はいやが上にも高まり、今後、特にインド洋を舞台にした摩擦や対立の危険性は増大することはあっても、減少することはないと見ておかなければならないです。

「4+2」構想を支える「基地ネットワーク・システム」の構築を急げ!

いま、東シナ海、南シナ海そしてインド洋の帰趨が、インド太平洋地域における安全保障確保の上で最大の課題となっています。

米国は、2010年の「4年ごとの国防計画の見直し」(QDR)において、インドに「安全保障提供者」(net provider of security)としての役割を期待し、インドもこれを引き受けました。

安全保障提供者には、国際的規範と法を遵守し、海軍力に裏打ちされた強い協力関係を維持して「航行の自由」の確保と海洋における国際法レジームの強化が求められています。

その具体的な行動は、プレゼンスと即応、関与、能力構築支援、海洋状況把握(MDA)、海上安全保障行動、排他的経済水域(EEZ)哨戒、共同パトロール、 海賊対処、人道支援・災害救助活動(HA/DR)、 非戦闘員退避活動(NEO)、海上阻止、平和作戦、捜索・救難などです。

インド洋で、インドがその役割を果たすのであれば、東シナ海は日本、南シナ海はオーストラリアと米国が同じ役割を果たさなければならないです。

そして、世界の海を守る意思と能力のある米国のプレゼンスをもってインド太平洋全域をカバーするのです。

南シナ海にオーストラリアとともに米国を加えたのは、「力の空白」地帯である南シナ海に空母機動打撃群を中心とする大きな戦力を展開できるのは米国だけであるからです。

この際、米国は、南シナ海で軍事同盟を結ぶ台湾とフィリピンとの関係を再調整し、また相互基地アクセス協定を締結して、台湾(高雄)、フィリピン(スービック湾)、ベトナム(カムラン湾)そしてシンガポール(チャンギ海軍基地)に基地を確保し、各基地のネットワークを構築すれば、自由に活動できます。

同じように、基地ネットワーク・システムをインド太平洋地域の同盟国・友好国間にも拡大する必要があります。

英南部のポーツマスで、入港した空母「クイーン・エリザベス」を見物に訪れた人々

それもって日米印豪を4本柱とした安全保障体制にインド太平洋地域に重大な利害関係を有する英仏を加えた「4+2」構想の活動を支えれば、この地域における安全保障確保のための課題を解決する有力な応えとなり得るのです。

まさに、日米印壕英仏はインド太平洋で中国を迎え撃つ体制を整えつつあるのです。

一国の外交は、広く国民世論の理解に支えられなければならないです。日本にとって望まし  いインド太平洋像を現実のものとし、将来のアジア戦略の柱としていくためには、日本国 民の間に自らの日本国が「インド太平洋地域」に属しているとの理解と感覚を醸成してい くことも不可欠です。

そのためには、首相をはじめとする政治指導者が、この新しい地 域概念の日本にとっての必要性や妥当性について、国民に語りかけていく努力を強化しな ければならないです。

 政府は、これからの日本にとって、なぜこの新しい地域秩序像が必要とされ、インド洋 方面諸国との関係強化が求められているのかについて、首相による施政方針演説や所信表明演説の機会、さらにはメディアへの積極的な啓蒙活動も利用しつつ、国民に丁寧に説明 し、説得していくべきです。

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2018年10月20日土曜日

米、中距離核全廃条約から離脱へ=ロシア違反と批判、来週伝達―NYタイムズ―【私の論評】米の条約離脱は、ロシア牽制というより中国牽制の意味合いが強い(゚д゚)!

米、中距離核全廃条約から離脱へ=ロシア違反と批判、来週伝達―NYタイムズ

トランプ米大統領(写真左)とプーチン・ロシア大統領。米紙ニューヨーク・タイムズは
19日、トランプ米政権が冷戦時代に旧ソ連との間で結ばれた中距離核戦力(INF)
全廃条約から離脱する見通しだと報じた

 米紙ニューヨーク・タイムズは19日、トランプ米政権が冷戦時代に旧ソ連との間で結ばれた中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱する見通しだと報じた。

 ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が来週、ロシアを訪問し、プーチン大統領に米国の方針を伝えるという。

 同紙によれば、トランプ大統領が近く、条約離脱を正式に決定する。同政権が主要な核軍縮条約から脱退するのは初めて。米国の条約離脱が、米ロ両国と中国を巻き込んだ新たな軍拡競争につながる恐れもある。

握手するゴルバチョフ・ソ連書記長(左)とレーガン大統領(右)(ともに当時)

 1987年にレーガン大統領とゴルバチョフ・ソ連書記長(ともに当時)の間で調印されたINF全廃条約は、米国と旧ソ連が保有する射程500~5500キロの地上発射型弾道・巡航ミサイルの全廃を定めた。ただ、米国は近年、ロシアが条約に違反して中距離核戦力の開発を進めていると批判してきた。 

【私の論評】米の条約離脱は、ロシア牽制というより中国牽制の意味合いが強い(゚д゚)!

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版、2017.11.16)は、米国防省が中距離核戦力(INF)全廃条約(以下、「INF条約」)で禁止されている中距離ミサイルの再開発を検討していると報じました。

冒頭の記事にもあるように、1987年に米ソ間で調印されたINF条約は、両国の中距離(射程500~5500キロ)地上発射型弾道ミサイルと巡航ミサイルの全廃を定めました。

しかし近年、ロシアが条約に違反して中距離核ミサイルの開発を進めているとの疑惑が深まる一方で、米国だけが条約を遵守しているのは不公平だとして米側の不満の声が高まっていました。

米当局者によると、米国は数週間前、ロシアが条約を順守しないようであれば、新たな中距離ミサイルの研究開発を進める意向をロシア側に伝えたといいます。

しかし、問題の所在は、米国とロシアの間にとどまりません。というのも、INF条約は米露(締結時はソ連)間の条約で、中国には適用されないからです。

その中国は、平成29年版「防衛白書」によると、「DF-4」、「DF-21」などの中距離核ミサイルを160基保有しています。

中国のDF-21

他方、米国は、地上発射型弾道・巡航ミサイルの全廃に加えて、バラク・オバマ大統領の「核のない世界」の方針を受け、INF条約の対象外である核搭載海上発射型巡航ミサイル「トマホーク」を2010年の「核態勢見直し(NPR)」で退役させました。

その結果、米国には海中発射型(TLAM-N)と空中発射型(AGM-86B)の巡航ミサイル「トマホーク」がかろうじて残っただけになりました。

そのため、アジア太平洋地域では中国の「アクセス(接近)阻止/エリア(領域)拒否(A2/AD)」戦略によって中距離核ミサイルの寡占状態が出来上がり、米国による同盟国・友好国に対する核の地域抑止(「核の傘」)に大きな綻びが生じているのではないかとの懸念が増大していました。

ロシアの戦略爆撃機T-160「ブラック・ジャック」

ロシアは、国際的地位の確保および米国との核戦力バランスの維持とともに、通常戦力の劣勢を補う意味でも核戦力を重視してきました。

戦略核戦力については、米国に匹敵する規模の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)および長距離爆撃機(Tu-95「ベア」、Tu-160「ブラックジャック」)を保有し、核戦力部隊の即応態勢を維持しています。

問題の中距離核戦力については、米国とのINF条約に基づき1991年までに廃棄し、翌年に艦艇配備の戦術核も各艦隊から撤去して陸上に保管しましたが、その他の多岐にわたる核戦力を依然として保有しています。

こうしたなか、2014年7月、米国政府は、ロシアがINF条約に違反する地上発射型巡航ミサイル(GLCM)を保有していると結論づけました。

米政府当局者に「SSC-8」と呼ばれる同ミサイルは、2個大隊を保有し、ロシア南東部アストラハン州のカプスチン・ヤルなどに配備されていると指摘されていました。

この件について、米政府は、たびたびロシア政府に対し異議申立てを行ってきた。

しかし、ロシア政府が否定しているため、米国はその対抗措置として、新たな中距離ミサイルの研究開発を進める意向をロシア側に伝え、そのうえで、ロシアが条約を順守すれば、開発を断念すると伝達したのです。

中国H-6(Tu-16)爆撃機

一方、中国は、核戦力および弾道ミサイル戦力について、1950年代半ば頃から独自開発を続けており、抑止力の維持、通常戦力の補完そして国際社会における発言力の確保を企図しているものとみられている。

中国は、ICBM、SLBM、H-6(Tu-16)爆撃機のほか、INF条約に拘束されないため、中距離弾道ミサイル(IRBM / MRBM)を保有し、さらに大量の短距離弾道ミサイル(SRBM)といった各種類・各射程の弾道ミサイルを配備している。

わが国を含むアジア太平洋地域を射程に収める中距離弾道ミサイルについては、発射台つき車両(TEL)に搭載され移動して運用される固体燃料推進方式の「DF-21」や「DF-26」があり、これらのミサイルは、通常・核両方の弾頭を搭載することが可能です。

また、中国はDF-21を基にした命中精度の高い通常弾頭の弾道ミサイルを保有しており、空母などの洋上の艦艇を攻撃するための通常弾頭の対艦弾道ミサイル(ASBM)「DF-21D」を配備しています。

さらに、射程がグアムを収めるDF-26は、DF-21Dを基に開発された「第2世代ASBM」とされており、移動目標を攻撃することもできるとみられています。

これらの中距離弾道ミサイルは、中国周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での軍事活動を拒否する「A2/AD」戦略を成り立たせるための重要な手段です。

米国のINF廃棄と相まって、アジア太平洋地域に中国の核ミサイルの寡占状態を作り上げることができるため、米国による同盟国・友好国に対する核の地域抑止(「核の傘」)に大きな綻びが生じているのではないかとの懸念が増大していました。

中国の中距離弾道ミサイルは日本を各地を狙っている
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このように、中距離核ミサイル、すなわち戦域核ミサイルについては、米国と中国(および北朝鮮)との間に非対称状態を生じています。

米国の核による地域抑止の低下についての懸念は、第1列島線域内の同盟国・友好国のみならず、米国の要人の間でも公然と指摘されるようになっていました。

日本側の意向も、様々なチャネルを通じて米側に伝えられており、米国政府もINF条約の「くびき」について十分認識しているとみられました。

これまで、米国の核戦略は、主としてロシアを対象に策定されてきましたが、21世紀の世界における安全保障の最大の課題は中国であり、今後はロシアのみならず、中国を睨んだ核戦略および核戦力の強化に目を向けなければならないです。

米国政府がINF条約違反と結論づけたロシアによる中距離核ミサイルの開発ならびに中国による大量の中距離核ミサイル保有を考えれば、米国には、同条約の破棄あ踏み切り、懸念される地域核抑止の信憑性と信頼性を回復しようとするでしょぅ。



この際、同条約の無効化に伴い、米国は短距離・中距離核ミサイルの配備について、わが国を含む第1列島線域内の関係国(日本、韓国、台湾、ベトナム)に打診してくる可能性もあります。

打診とは、わが国を含む第1列島線域内の関係諸国に、核を配備すること等の打診ということです。日本としても、どのようにすればわが国の核抑止力を高めることができるか、その在り方について真剣に検討すべき段階に入っています。ただただ、核を忌避したとしても、中国の中距離核弾道弾がなくなることはありません。

日本では、北朝鮮の核ばかりが注目されて、なせが中国の核兵器についてはほとんど問題にもされず、報道もされませんが、現在でも中国の中距離弾道弾は日本の大都市全部に狙いをつけています。

以上のことを考慮すると、今回の米国による中距離核全廃条約から離脱は、対ロシアというよりは、対中国に重きをおいた措置であると考えられます。

いまのままの状況であれば、中国は対中国経済冷戦を挑む米国を牽制するため、日本をはじめとする第1列島線域内の国々に対して、核攻撃の構えをみせ、脅すということも考えられます。今回の措置ははそれを予め防止するという意味があるのです。

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2017年5月2日火曜日

北完全包囲!海自最強「いずも」出撃、日米英仏の海軍結集 強引な海洋進出続ける中国けん制の狙いも―【私の論評】在日米軍は、中国牽制のため日本国内再編も実行中(゚д゚)!

北完全包囲!海自最強「いずも」出撃、日米英仏の海軍結集 強引な海洋進出続ける中国けん制の狙いも

海上自衛隊最大の新型ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」の引き渡し
式を終え、飛行甲板に整列し敬礼する乗組員ら
2015年03月25日
 朝鮮半島の高度な緊張状態が続くなか、強固な「日米同盟の絆」が示された。海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」が1日午前、海自横須賀基地(神奈川県)を出港、米海軍補給艦の防御を行った。昨年3月に施行された安全保障関連法に基づく米軍の「武器等防護」は初めて。加えて、日米英仏4カ国による初の合同訓練も3日から実施される。核・ミサイル開発を強行する北朝鮮に圧力を加える一方、東・南シナ海で強引な海洋進出を続ける中国を牽制(けんせい)する狙いだ。

 「いかなる事態にも、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くことは、政府の最も重要な責務だ。そして、大切なことは『有事を事前に防ぐこと』だ」「平和安全法制(安全保障関連法)では、あらゆる事態に隙間のない対応ができる態勢を完備した」

 安倍晋三首相は先月末、夕刊フジ「GW特別号」(2日発行)の単独インタビューでこう語った。その強い信念と覚悟が表れたといえるのが、海自史上、最大級の護衛艦である「いずも」の動きだ。

 政府関係者によると、「いずも」は、護衛艦「さざなみ」とともにシンガポールで今月開かれる国際観艦式に参加するため、1日に横須賀基地を出港。東京湾を出たところで、米海軍補給艦と合流して西へ向かう。補給艦は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮に対する警戒で、日本周辺に展開している米軍艦艇に燃料などを届ける。

 「いずも」は基準排水量1万9500トン、全長は248メートルと、東京都庁(243メートル)より大きい。最大14機のヘリコプターを搭載できる。多くの哨戒ヘリを一気に投入することで、潜水艦捜索能力が強化される。米補給艦に近づく他国軍潜水艦の警戒・監視に当たる。

 ただ、防空能力や攻撃能力を必要最低限しか装備していない。このため、「いずも」以外の護衛艦も米艦防護に加わる可能性もある。日米の連携を実際の任務でも示し、「世界規模の脅威」となった北朝鮮の暴発を阻止する。

 韓国で行われていた米軍と韓国軍による合同野外機動訓練「フォールイーグル」は4月30日に終了したが、朝鮮半島の緊張状態は続いている。

 朝鮮人民軍の創建85年の記念日「建軍節」(同25日)に合わせて、南東部にある元山(ウォンサン)一帯で、300門余りの長距離砲などを投入した過去最大規模の火力訓練を行った。同29日には、平安(ピョンアン)南道、北倉(プクチャン)付近から弾道ミサイル1発を発射した。

 米韓両軍は警戒態勢を緩めていない。

 世界最強の米原子力空母「カール・ビンソン」と、韓国海軍の共同訓練は同29日から始まった。韓国からはイージス駆逐艦「世宗(セジョン)大王」などが参加。巡航ミサイル「トマホーク」を154発も搭載する、米海軍最大の原子力潜水艦「ミシガン」も、半島周辺にとどまっている。

カールビンソン
釜山港に入港した「ミシガン」
 アジア太平洋地域の平和と安定を守る、新たな動きも明らかになった。

 日米英仏4カ国による合同訓練に参加するため、フランス海軍の強襲揚陸艦「ミストラル」も先月29日、海自佐世保基地(長崎県)に寄港したのだ。訓練は3日から22日まで、米領グアムなどで実施される。

フランス海軍の強襲揚陸艦「ミストラル」
 「ともに手を携えて訓練することで、相互運用性を高められる」

 艦長のスタニスラス・ドゥ・シャルジェール大佐は、こう語った。

 「ミストラル」には、英海軍ヘリコプターを搭載しており、水陸両用作戦を担う陸上自衛隊の西部方面普通科連隊員や、米海兵隊員らも乗せて5日に佐世保を出港する。海自の輸送艦「くにさき」と、共同訓練を行いながら南下し、グアム周辺では4カ国で上陸訓練などを行う。

 ドナルド・トランプ米大統領は4月29日、米CBSテレビのインタビュー(同30日放映)で、北朝鮮が「6回目の核実験」を強行した場合、軍事行動に踏み切るのかと聞かれ、次のように答えた。

 「分からない。そのうち分かるよ」

 軍事的選択肢を排除しない考えを明確にした。

【私の論評】在日米軍は、中国牽制のため日本国内再編も実行中(゚д゚)!

以前このブロクで北朝鮮有事の8つのリスクについて掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮有事が日本に突きつける8つのリスク【評論家・江崎道朗】―【私の論評】 森友学園問題で時間を浪費するな!いまそこにある危機に備えよ(゚д゚)!
先月終了した米韓合同演習「フォールイーグル」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、朝鮮半島リスクのうちの中国がらみのリスクをこの記事から以下に引用します。
 日米韓三か国が朝鮮半島有事対応に追われている隙をついて中国が例えば尖閣諸島に海上民兵――米軍はLittle green menと呼ぶ――を送り込んでくる可能性がある。日本としては、朝鮮半島からの避難民対応で海上保安庁の巡視船を日本海に配備しなければならず、尖閣諸島周辺はがら空きになる。もちろん自衛隊も朝鮮半島対応に追われている。 
 その隙を衝こうと中国なら考えているはずだ。正規軍を送れば国際社会から非難されるが、漁民を装った「民兵」が荒天を避けるために尖閣諸島に避難し、そのまま居座るケースが考えられる。
このリスクに関しては、あり得ると私は思っていましたが、朝鮮半島付近にこれだけまるで武器の展覧会のように、空母などの艦船や潜水艦が集結しているのですから、仮に中国がこのような野望を抱いていたとしても、実行するだけの勇気はないことでしょう。

これだけの大量の武装集団が控えているそのすぐそばで、そのような素振りでも見せれば、まずは激しく牽制されるだろうし、本当に尖閣付諸島に海上民兵でも送り込むようなことをすれば、日本側もこれに厳しく対処するでしょう。

それにこれはどの国からみても、火事場泥棒のように見えますから、米国などもこれに対処しやすいでしょう。米国も南シナ海の中国への牽制として、これを見過ごすことしないでしょう。

そうして、北朝鮮有事でも米軍はこれだけの武装集団を送り込んでくるわけですから、これが中国有事ともなれば、とんでもないことになると、考えていることでしょう。

それと、在日と米軍は、現在の北朝鮮への対応そのものとは直接関係なく、日本国内の米軍の再編を勧めていました。

在日米軍は、元々海兵隊や海軍の最先端航空戦力を中国と北朝鮮に近い日本の西部地域に集中させる再編作業を今年中に終える予定でした。この改編作業が終われば、山口県に位置する米海兵隊の岩国基地は、日本本土から中国と北朝鮮を牽制する前哨基地として生まれ変わることになります。

F35B戦闘機が到着し、関係者らによる式典が行われた=今年1月20日午後、山口県岩国市
昨年8月23日、武井俊輔・外務大臣政務官や宮沢博之・防衛大臣政務官などが、山口県岩国市で福田良彦・岩国市長に、来年1月から米国の最新鋭ステルス戦闘機F-35Bを在日米軍岩国基地に配備する計画を伝えたと公表しました。この計画に基づき、来年1月に10機、8月に6機のF-35Bが岩国に追加配備されます。この機種は一般空軍用F-35A、艦載機用F-35Cとは異なり、垂直の離着陸が可能です。

さらに、日米両国はこれまで進めてきた在日米軍の再編計画に基づき、現在、米第7艦隊の母港である横須賀に配備された空母「ロナルド・レーガン」などで運用される艦載機59機(FA-18ホーネットとスーパーホーネットなど)を神奈川県厚木基地から岩国に移転します。
FA-18スーパーホーネット
在日米軍はこれまで横須賀に近い厚木基地において艦載機の整備と訓練のための陸上基地として活用してきたのですが、中国や北朝鮮などに近い西部地域に拠点を移すことになります。これに先立ち、在日米軍は2014年8月に沖縄に配備されていた航空給油機KC-130の15機を岩国に移転しました。

こうした一連の動きは、北朝鮮の核・ミサイルの脅威と中国の海洋進出への対抗を迫られている日米同盟にとって、自然な選択と言えます。米国は、日本の集団的自衛権について初めて「歓迎」の立場を明らかにした2013年10月、日米安全保障協議委員会(2+2会議)で、当時開発がまだ終わっていなかったF-35Bを「2017年に(米)国外では初めて日本に前方配備する」計画を明らかにしました。

現在も岩国には米海兵隊のFA-18ホーネットとAV-8ハリアーなどが配備されています。F-35Bはこれらの機種に代わるものとして、昨年1月から新たに配備されました。

岩国基地へのF-35Bの配備は日米同盟と中国の激しい力比べが続けている東アジア情勢に複合的な影響を及ぼすものとみられます。F-35Bは、高いステルス性能を備えている上、行動半径が1000キロメートルを超えます。

また、機体に射程距離が370キロメートルに達する「空中発射巡航ミサイル」(JASSM)を搭載できます。F-35Bが岩国から発進した場合、日本海の公海上で北朝鮮の弾道ミサイル発射基地を原点打撃する能力を備えることになります。


さらに、F-35Bは、有事の際、いずもなど日本の軽空母に離着艦し、弾薬の提供と給油を受けることもできます。日本政府は、米国に対するこのような後方支援ができるように、一昨年9月、安保関連法を改正しました。実際このようなことが行われる可能性も十分にあります。

F-35Bは、中国牽制にも活用されます。この戦闘機を運用する予定の米海兵隊の強襲艦LHD-6 ボノム・リシャールは、長崎県佐世保に駐留しています。米海兵隊の強襲艦がF-35Bを乗せたまま、東シナ海と南シナ海の広い領域を監視し、中国の海洋進出を牽制できるのです。さらに、岩国にはKC-130空中給油機が15機も配置されており、F-35Bの活動範囲は飛躍的に拡大することになります。
強襲艦LHD-6 ボノム・リシャール
現在の北朝鮮有事に備えた行動とは別個に、米国は日本国内でこのような軍事的な再編を行っているのです。

さらに、最近の北朝鮮に備えての日米の緊密な連携ぶりは、中国にとってはかなりの脅威だと認識されていることでしょう。

北朝鮮有事に備えてでさえ、現状の規模の展開がなされているわけですから、これが中国に対するとなれば、この数十倍になることも予想できます。日米英仏どころか、世界中の武装集団が集結することになるかもしれません。

ただし、尖閣の危機が完璧に去ったというわけではありません。沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で先月30日、中国海警局の船3隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。尖閣周辺で中国当局の船が確認されたのは2日連続でした。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載していました。領海に近づかないよう巡視船が警告した。29日は4隻が確認されましたが、1隻は同日午後6時半ごろに接続水域の外に出ました。

日本側としては、中国が火事場泥棒のような真似をしたら、排除や逮捕するなどして、すぐにこれに対処した上で、全世界に向かって中国の火事場泥棒的行動を非難し、その無法ぶりを世界に強く印象づけるべきでしょう。占拠された後で、これを非難しても後の祭りです。

2013年6月15日土曜日

日本へ脅迫、見過ごせず…米大統領が中国けん制―【私の論評】米中一体化は習近平の妄想にすぎない!!第二のニクソンショックはないのに日中一体化と騒ぐ日本のマスコミこれいかに(゚д゚)!

日本へ脅迫、見過ごせず…米大統領が中国けん制

読売新聞 6月14日(金)21時38分配信

習とオバマの会談
米国で7、8両日に行われた米中首脳会談で、中国の習近平(シージンピン)国家主席が沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題の「棚上げ」に言及したのに対し、オバマ米大統領が尖閣周辺海域における中国公船の領海侵入を念頭に、「同盟国である日本が中国に脅迫されることを見過ごすことはできない」とけん制していたことが分かった。

日本政府筋が14日明らかにした。

習氏は会談で、尖閣の領有権を主張する中国政府の立場を説明した上で、日中対立の長期化を避けるため、「日中が問題を棚上げするべきだ」との考えを強調したという。日中対立悪化を望んでいない米国が日本に棚上げを求めれば、日本も応じざるを得ないとの判断が働いたとみられる。だが、オバマ氏はこれに乗らなかった。

【私の論評】米中一体化は習近平の妄想にすぎない!!第二のニクソンショックはないのに日中一体化と騒ぐ日本のマスコミこれいかに(゚д゚)!

 習近平は、オバマ大統領の会談のしょっぱなから、太平洋は米中で共同管理などと誇大妄想狂的なはなしからはじめたようですが、これは全く習近平の妄想にすぎません。そうして、米中一体化も習の妄想にすぎません。

なのに、マスコミの中には、米中一体化を懸念して、今回の習・オバマの会談について、あたかも米中一体化のはじまり、第二のニクソンショックのように喧伝するものもありました。

後にニクソンショックと呼ばれたニクソン、毛沢東会談

1971年7月、ニクソン大統領は日本に事前通告せず、突然中華人民共和国訪問を発表しまた。これがいわゆる「ニクソンショック」です。それまで、アメリカは日本に対して台湾指示を要求していました。しかし、日本の頭越しに全く食い違う方向に行動したのです。日本では“アメリカが裏切った”という不満が噴出しました。これにより、佐藤栄作政権は弱体化しました。当時、このアメリカの動きに坂本重太郎氏は気づいていました。

ニクソン大統領はベトナム戦争を集結させるために中国と接触しようとしたのだといわています。しかし当時の風潮から坂本氏の見解は受け入れられなかったようです。

1973年、米軍はベトナムから撤退した。先日行われた米中首脳会談で習近平国家主席が述べた「米中両国の首脳の戦略家としての勇気と知恵」というのは、「自国の利益を一番重視して行動する」という意味だったようです。坂本氏は「第二のニクソンショックはありえる」と断言しました。孫崎享氏は以前のニクソンショックよりも深刻だと述べました。今年3月、ドニロン大統領補佐官は「中国を封じ込める人がいるが、これについて私たちは拒否する」と述べていた。前駐米大使の藤崎一郎氏はそんなに日本は慌てる必要はないと見ています。



そうして、多くのマスコミが、今回のオバマ・習会談が実りの大きいように報道し、あたかも米中一体化が進んでいるかの印象を与えました。

しかし、そんなことはないということが、上の記事で明らかになったと思います。そうして、上の記事だけではなく、様々なソースからこのことは裏付けられています。

まず第一に、本日はこのようなニュースも入っています。
日米共同訓練:オスプレイが海自艦船に初めて発着艦
【サンディエゴ(米西部カリフォルニア州)西田進一郎】米軍と陸海空3自衛隊による離島防衛・奪還の共同訓練が14日朝(日本時間同日深夜)、カリフォルニア州で本格的に始まった。海上自衛隊の艦船に米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが初めて発着艦し、人道支援・災害救助などの訓練を実施した。訓練は報道陣に公開され、オスプレイの安全性と日米の一体的な運用能力をアピールした。
習・オバマ会談のすぐ後から、島嶼防衛に関する日米の共同演習が始まり、その直後にオスプレイが日本の空母と言っても良いような、護衛艦に初着艦です。これは、快挙と言って良いと思います。

第二に以下のようなものもあります。
新華社記者の質問に失笑も… 米中首脳会談“冷めた”米メディア

【ワシントン=佐々木類】7、8両日に行われた米中首脳会談では、“2大パワー”による協力関係を強調した中国の習近平国家主席に対し、オバマ米大統領は「日本は米国の同盟国」と明言して、習主席を牽制(けんせい)したとされる。サイバー攻撃や海洋安保問題などで解決への進展がみられなかった会談に対して米国内では冷めた見方が目立った。
 米大手シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ(AEI)」のマイケル・オースリン研究員は「信じられないほど縮みゆく米中関係」と題した論文を米紙ウォールストリート・ジャーナルに寄稿した。

オースリン氏は、「中国のいう“新型大国関係”とは、大きな問題で米国は中国の協力を得られず、米中関係を安定させるため小さな問題に焦点を当てるものだ」と分析してみせた。
 米紙ワシントン・ポストは、「記者会見で新華社の記者が、習氏のいう『新型大国関係』に関するできレースの質問をした際、日米双方の記者から失笑がもれた」と報じている。

米メディアの冷ややかな反応は、中国のサイバー攻撃や為替操作による不公正貿易、海洋安全保障など重要課題で実質的な進展がなかったためとみられる。

G2(米中2国による枠組み)論が力を持ち、歓迎ムードが散見された2011年1月の胡錦濤前国家主席の訪米時に比べ、為替操作疑惑やサイバー攻撃が発覚した現在、米メディアの見方はかなり厳しく変わってきたようだ。
やはり、以前このブログで私が述べたことの正しさが裏付けられたものと思います。その記事のURLを以下に掲載します。

【スクープ最前線】中国、米に“土下座” 尖閣上陸「3時間でいい」と懇願―【私の論評】これが事実だとすれば、中国はかなり危ない状況にあるとみるべき!!習近平はラストエンペラーとなるか【8】

 この記事では、習がオバマ大統領に、列島上陸の許可を願い出るであろうことを掲載しましたが、これについては、本当にそうしたかどうかは、永遠にわからないことだと思います。しかし、ブログ冒頭の記事で、オバマ大統領は尖閣問題棚上げには同意しなかったということが掲載されていることから、列島上陸懇願もあり得たものと思います。

アメリカの過去の大統領には信じられないほど馬鹿な大統領もいましたが、オバマはさほど馬鹿ではないということかもしれません。

オバマ米政権も市民の通話履歴やネット上の情報を収集していると中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン氏(29)が暴露したという事件が最近ありましたが、そんなことは当たり前のことであり、たまたま暴露した人間が出たということで、やはりオバマもまともなところは、まともです。

まともであれば、台頭する中国という国がアジアにあれば、それに拮抗する日本という国とも関係を強化するというのが当然のやり方だと思います。パワーオブバランスという考え方からすれば、それがまともなやり方です。  

それにしても、マスコミこのような背景は説明せず、米中一体化の脅威を煽るばかりです。無論、日本としては、米中関係に関しては、注視していかなければならないことは確かですが、冷静に見つめていくことが肝要です。今の段階では、米中一体化は習の妄想にすぎないと私は思います。皆さんは、どう思われますか?

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2013年3月24日日曜日

海自飛行艇 印へ輸出 中国牽制、政府手続き着手―【私の論評】安全保障のダイヤモンドへの地固めは着実に進んでいる!!

海自飛行艇 印へ輸出 中国牽制、政府手続き着手:

US-2
政府が、海上自衛隊に配備している水陸両用の救難飛行艇「US-2」をインドに輸出するための手続きに着手したことが23日、分かった。インドは日本側に救難活動や海賊対策でUS-2を導入する方針を伝えてきており、製造元は現地事務所を設け、インド政府との交渉に入った。日本にとり輸出による生産増で1機当たりの製造コストを下げ、自衛隊の調達費を低減させるメリットがある。

この記事の続きはこちらから!!



【私の論評】安全保障のダイヤモンドへの地固めは着実に進んでいる!!



US-2は、海上自衛隊が運用する救難飛行艇。製作は新明和工業。US-1Aの後継機体です。US-1Aは優れた飛行艇であったが、いくつかの問題も抱えていました。特に海上自衛隊からは、離着水時の操縦性の改善・患者輸送環境の改善・洋上救難能力の維持向上などが要求されていました。これらの課題に対して、US-1Aの近代化に向けた研究は新明和工業社内で1991年(平成3年)から行われており、防衛庁(現 防衛省)の指名によるUS-1A改開発は1996年(平成8年)10月から新明和を主契約会社、川崎重工業、富士重工業及び日本飛行機(日飛)を協力会社として開始されました。

当時世界最大の飛空艇二式大艇

この飛行艇は世界で最も優れている点があります。それは何かといえば、嵐で波が高くても、離着陸がしやすいというものです。この性能にかけては、世界一です。さすが日本の飛行艇です。新明和ほどこの性能に優れた飛行艇をつくることは、他の国ではできないことです。

新明和工業株式会社(しんめいわこうぎょう、英: ShinMaywa Industries, Ltd.)は、兵庫県宝塚市に本社を置く日本の機械メーカーでした。戦前は川西財閥傘下の航空機製造会社でした。

紫電


戦時中に、世界最大の飛空艇二式大艇や局地戦闘機紫電、紫電改を開発製造したメーカーとして知られています。前身の川西航空機時代から優れた航空機のメーカーとして知られていましたが、戦後は民需転換に成功し、天突きダンプ、じん芥車、水中ポンプ、機械式駐車場、理美容機器と、航空機以外にもユニーク且つ多彩な製品を持つメーカーとして評価されています。ただし、自衛隊にUS-1飛行艇を納品しているので戦争当時のノウハウが生かされているといえます。

紫電改

さて、この新明和私は、高校生くらいの頃から知っていました。なぜ知っていたかといえば、私が通っていた床屋さんの椅子が新明和製だったからです。椅子だったから、鏡のほうだったか忘れましたが、確か「新明和」とはっきりメーカー名が記されていました。そこで、いつも髪を刈ってもらっていたので、「新明和」といえば、床屋の椅子というようなイメージを持っていました。

サイトでみつけた、新明和の床屋の椅子。私がお世話になったのはこれに近いものでした。


ところが、あるときに本屋さんに行くと、 US-1の開発物語が掲載された文庫本が売られており、立ち読みしたら、何とあの床屋さんの椅子のメーカーである「新明和」が開発したこと、それどころか、このメーカーがあの二式大艇や、紫電、紫電改を作ったメーカーであることを知り、びっくり仰天してその書籍を買い求めて、家で一気に読んでしまったことを覚えています。その書籍の内容は忘れてしまいましたが、とにかく開発者らの感動的な物語であったことは、はっきり覚えています。

ポーランドのセクシーなお姉さんが髪をカットする床屋さん。お客さんも満足げ?

その後、床屋に行ったときは、床屋のお姉さん(注:私の行っていたのは上の写真のような床屋ではなく、普通の床屋(笑!!))に、その話をしたことを覚えています。このお姉さんも、新明和が二式大艇や紫電改のメーカーであったことなど知らなかったようで驚いていたことを覚えています。ちなみに、この床屋さんにはこの美人お姉さんがいたのて、それ目当てに行っていたというのは事実です。なにやら、髭をそってもらったりいろいろしていると、お姉さんの胸などが体にあたったり、いろいろ作業をしていると、作業衣の隙間から下着などが見えたりして、頭の中は、上の写真のような妄想状態でした(笑)!!今では良い思いでです。今回の話題で久しぶりにこのことを思い出しました。

この新明和現在では、理容室の椅子は製造していません。椅子の分野からは、2008年に撤退しています。理容室の椅子のシェアとしては当時は以下のようなものだったと思います。
タカラベルモント…70%
新明和…20%
その他…10%
撤退の理由は結局高齢化でこれから伸びることはない事業であること、それに、2008年といえば、デフレ真っ最中であり、しかも、リーマンショックがあったということもあり、断念したのだと思います。それに、椅子を作っていたのは、新明和本体ではなく、新明和リビテック株式会社という子会社だったということです。

これも、ポーランドの床屋。いかがわしいサービスはしません。本当に床屋だけのサービスです。

それにしても、今では床屋の椅子は作っていないものの、今の新明和でも手がける製品は本当に幅が広いのでびっくりしてしまいます。 軍事産業からの転身がうまくいった格好の事例だと思います。

そうして、この事実は今の日本の軍事産業を象徴しているように思えます。 とにかく武器輸出三原則なるものがあります。

武器輸出三原則とは、共産圏と国連決議による武器禁輸措置をとられた国、及び紛争地域への武器輸出を禁止したものであり、他の地域への武器輸出は「慎む」とされているため、武器輸出そのものを禁止しているわけではありません。しかし、日本は原則として武器および武器製造技術、武器への転用可能な物品の輸出をしていません。

武器輸出三原則によって原則に当てはまる武器輸出が事実上禁止されているますが、このことを直接規定した日本の法律は存在しません。

この武器輸出三原則により、政府が武器もしくは、武器に転用可能なものは輸出できにくい状況にありましたが、野田政権のときに武器の輸出を原則として禁じる「武器輸出三原則」の緩和を正式に決め、官房長官談話として発表しました。それまでは、例外として輸出を認めるかどうか個別に判断していました。これを抜本的に見直し、新たに設ける基準に従い、平和・人道目的や、国際共同開発・生産への参加であれば輸出を容認することとしたのです。



この「US-2」の輸出もこうした輸出緩和の流れの中でのものだと思います。特に、US-2の場合は、海難救助用ですから、インドに販売するのは、何も問題がないのだと思います。でも、インドがどのように使うかはまた、別問題です。嵐であっても、このUS-2なら、武装集団を派遣する事が可能です。そうして、こうしたことを続けているうちに、いずれは、 US-2にミサイルや機関砲を装備したものも売れるようにすれば良いと思います。二式大艇の場合は、武装もしていました。飛行場がないところでも、飛ばして長距離爆撃機にできます。

そうして、インドに売るということには意味があると思います。それは、このブログの過去の記事にも、掲載したように、安倍総裁が提唱する安全保障のダイヤモンドの一角にはインドが含まれているからです。

安全保障のダイヤモンドに関するこのブログの過去の記事を以下に掲載します。

尖閣侵犯、野田内閣“弱腰”で中国エスカレート 曳光弾封印…―【私の論評】知れば知るほど、納得する安倍総理の凄さ!!安全保障のダイヤモンドを知れ!! 

 



詳細は、上記の記事をご覧いただくものとして、安全保障のダイヤモンドについてのみ以下にコピペさせていただきます。

  (安倍首相は)「南シナ海には核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原子力潜水艦の基地とするのに十分な深さがある」「間もなく中国海軍の新型空母が頻繁に見かけられるようになる」「中国の周辺諸国を恐れさせる事態」などと記したうえで、中国の海洋覇権を防ぐために、日本とオーストラリア、インド、米国ハワイが、インド洋から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイヤモンドを形成すべきだ、と主張しています。 
    この構想を進めるためか、岸田文雄外相は13日にオーストラリアに飛び、同国のカー外相と会談。米国を含めた安全保障分野の協力を加速させる方針で合意しました。 
    さらに、安倍首相は東南アジア歴訪の最後に訪れたインドネシアで18日、法の支配と自由で開かれた海洋の重視などを掲げた「日本外交の新たな5原則」を発表し、中国を強く牽制しました。 
    注目の論文では、セキュリティー・ダイヤモンドを強化するため、英国やマレーシア、シンガポール、ニュージーランド、タヒチのフランス太平洋海軍との連携についても触れています。英国は、もともと、マレーシア、シンガポール、ニュージランドのなどの宗主国でした。フランスも、この地域にかつて、植民地があり、タヒチの宗主国でもありました。 
    この構想には、周辺諸国は諸手をあげて賛成しています。もう時代は変わりました。このような構想を発表しても、周辺諸国は、日本の軍事力に脅威をいだくどころか、中国の脅威をかわす、希望の星です。
この安全保障のダイヤモンド一朝一夕 にしてできるものではありませんが、今回のインドへのUS-2の輸出はこのための良い下準備となるものと思います。

どんどんこの路線を進めて、中国の海洋進出の野望を挫くことは、周辺諸国の切なる要望だと思います。私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?

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