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2018年9月24日月曜日

モルディブ大統領選で野党候補勝利、親中の現職敗れる 「中国依存」転換へ―【私の論評】モルディブでも意味不明な投資をする中国に未来はない(゚д゚)!


野党モルディブ民主党(MDP)のソリ候補

インド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブの大統領選で、選挙管理委員会は24日、インドなどとのバランス外交を目指す野党モルディブ民主党(MDP)のソリ候補(54)が過半数を獲得したと明らかにした。親中派の現職ヤミーン大統領(59)は敗れた。アジアと中東を結ぶ海上交通路(シーレーン)の要衝、モルディブで進んだ中国依存政策が転換されることになる。

 選管によると、ソリ氏は有効投票数の58.3%を獲得した。ソリ氏は「人々は変化と平和、正義を求めた」と、勝利を宣言した。

 ヤミーン氏は2013年の就任後、中国から巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた支援を受け、首都マレに2億ドル(約225億円)を投じた「中国モルディブ友好大橋」を建設するなどインフラ整備を次々と推進。野党幹部や最高裁判事を拘束する強権政治も展開し、国内外から反発を招いていた。

 ソリ氏は、中国に依存する外交政策の見直しや民主的な政治を訴え、支持拡大につなげた。MDPは隣国インドとの連携を重視しており、ソリ新政権は現政権で亀裂が走った対印関係の修復に乗り出す見通しだ。中国支援の事業の見直しも視野に入れるが、着工済みプロジェクトも多く、作業は難航が予想される。

 中国の海洋進出を警戒するインドは選挙結果について「民主主義の勝利」とのコメントを発表。選挙の不正を懸念していた米国も歓迎する声明を発表した。

【私の論評】モルディブでも意味不明な投資をする中国に未来はない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事によると「ソリ候補(54)が過半数を獲得したと明らかにした」としていますが、当選したのかそうでないのか、あるいは当確なのかなにやらはっきりしません。

ニュースサイトMihaaruによると、過半数を獲得したとは、472の投票箱のうち446を開票した段階での暫定結果で、得票率はソリ氏がヤミーン氏を16.6%上回っているそうです。

ヤミーン氏

ソリ氏は首都マレで記者団に対し「国民は変化、平和、公正を求めている。ヤミーン大統領に、国民の意思を受け止め、憲法に従い円滑な権力移行を始めるよう要請する」と述べました。

有権者が投票所で長い列を作ったため、モルディブの選挙管理委員会は投票時間を3時間延長しました。

ヤミーン氏が率いるモルディブ進歩党(PPM)の幹部はロイターに対し、同氏が高い支持を集める地域からの投票結果はまだ公表されていないと述べました。

同氏のメディア担当者はソリ氏の勝利宣言に関するコメントを控えました。

選挙管理委員会は憲法規定に従い、9月30日までに公式結果を発表するとしています。

とはいえ、よほどのことがない限り、ソリ氏の当選は間違いないようです。

米国とインドは平和的に行われた選挙を歓迎すると表明。ソリ氏率いる野党連合が勝利した可能性が高いとしています。

野党幹部によると、少なくとも5人の野党支持者が「有権者に影響を与えた」として拘束され、警察が22日夜に「違法行為を阻止」するため主要野党のオフィスを強制捜索したといいます。

欧州連合(EU)と国連の団体を含む大半の選挙監視団体は、モルディブ政府から選挙監視要請を受けたものの、選挙監視を行えば、不正投票があった場合でもヤミーン氏再選への支持に利用されかねないとして、要請を断りました。

ただ選挙を監視した団体の一つ、トランスペアレンシー・モルディブは、投票は当初円滑に行われ、ソリ氏が勝利する見通しだとし、「すべての当事者に平和的な権力移行を促す環境の維持を求める」としました。

モルディブを巡っては、従来のパートナー国であるインドと、ヤミーン氏のインフラ関連の取り組みを支援してきた中国との間で対立がみられています。西側諸国では中国の影響力拡大への懸念が広がりました。

ヤミーン氏は2月、同国初の民主選挙で選ばれたナシード元大統領ら野党関係者9人に対する有罪判決を無効とする最高裁の判断を受け入れず、非常事態宣言を発令。政治的な混乱が続いています。

モルディブの状況については、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「中国が土地を収奪している」 モルディブの野党指導者、対中批判強める 中国の手法は「債務のわな」―【私の論評】アジア諸国を「一帯一路」という妄想の犠牲にするな(゚д゚)!
記者会見する野党指導者のモハメド・ナシード前大統領=1月22日、スリランカのコロンボ

この記事は今年の1月のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 政治的混乱が続くインド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブで、野党指導者が「中国によって土地が収奪されている」と批判を強めている。不透明な土地取引が行われ、投資には高額の金利が課されているとの主張だ。中国に傾斜するヤミーン大統領を批判する思惑もあるが、強引な中国の手法に警戒感を示した格好だ。 
野党指導者のナシード元大統領は、AP通信やインド英字紙タイムズ・オブ・インディアなどとのインタビューで、「中国のモルディブでのプロジェクトは土地の収奪だ」などと主張している。
政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 ナシード氏によると、中国はモルディブで既に17の島々の権利を取得しているが、どれも手続きは不透明だという。中国は取得した島に約4千万ドル(約43億円)を投資すると約束しているが、ナシード氏側は「高金利であり、いずれモルディブ側は返済に窮する」と主張している。 
 野党側が念頭に置くのが、スリランカ南部ハンバントタ港の事例だ。中国の出資で港湾設備が建設されたが、スリランカは巨額の金利返済に苦しみ、最終的に昨年末に99年間の長期リースの形で中国側に明け渡すことになった。援助を受けていたはずが奪い取られた格好だ。ナシード氏は中国の手法は「債務のわなだ」と主張。憲法を改正して、外国人への土地販売を容認したヤミーン氏についても批判している。
政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 最高裁の政治犯釈放命令に端を発したモルディブの混乱をめぐっては、ヤミーン氏は5日に発令した15日間の非常事態宣言をさらに30日間延長することを決定。ヤミーン氏側は、中国に特使を派遣して支持を訴えており、ここでも両国の蜜月の関係がうかがえる。一方、ナシード氏側はインドに援助を求めており、与野党の対立は深まる一方だ。

・・・・・・・〈一部略〉・・・・・・

しかし、ここの土地を収奪する中国にはそれなりの意図があります。それは、無論一帯一路と多いに関係しています。

「一帯一路」とは、(1)支那西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、(2)支那沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、交通インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進していく構想です。夢のような構想ですが、中国は「本気」であり、具体的な目標を高速鉄道の建設に置いています。 
実際に、中国浙江省義烏と英ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行が、始まっています。支那が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、支メディアによると、両国間の直通貨物列車は初めて。支那は欧州との経済関係強化のため、中央アジアを通じた鉄道物流の充実を図っています。 
 中国は「一対一路」で「経済スーパーパワー外交」を展開するつもりのようです。中国の成長果実を周辺国にもシェアすることによって、周辺国との経済圏を構築し、善隣関係を強めることがねらいですが、同時に、過剰投資に悩む国内産業の新たな市場開拓、対外投資の拡大、約4兆ドルの外貨準備の運用多角化といった中国自身の経済的な思惑も込められています。
「一帯一路」を言い出したのは習近平・国家主席であり、彼の権力確立に伴って、この構想にも勢いをつけようとしています。私自身は、この構想は最初から失敗すると思っています。
なぜなら、世界航路や陸路などのインフラ整備はもうすでに出来上がっていて、われわれはそのインフラによってすでに貿易を行っています。そうして、このインフラは各国政府や民間機企業が、長年にわたり競争をしつつ切磋琢磨してつくりあげてきたものであり、さらに現在でも改良・改善が加えられています。 
今更中国が後から割って入って、最初から計画してつくりだすにしても、現在までにつくりあげられてきたインフラにまさるものを中国が中心になってつくりあげることはほとんど不可能だからです。 
中国としては、過去の国内のインフラ整備による経済成長が忘れることができず、その夢をもう一度海外で実現したいのでしょうが、国内において、共産党中央政府の鶴の一声で、何でも自由にできましたが、外国ではそういうわけにはいきません。
そもそも、一帯一路は、中国の余剰労働力を利用して、外貨獲得をしようというものであり、これがとてもうまくいくとは思えないです。

というのも、こういうブロジェクトはある程度国が成熟し経済成長も数%のような国が、経済成長率が十数%以上のような国に投資すると収益率がかなり高くなります。しかし、中国のように成長率の高い国が投資したとしても、収益率はかなり低くなります。

ちなみにモルディブの経済成長をみてみます。以下のグラフをご覧ください。


過去においては、26%と驚異的な成長をした年もあるようですが、最近ではそうでもないようです。2017年は4.8%、2018年は 5.0%(予測)です。

中国のGDPはあてになりませんが、一応は、2017年は6.9%、2018年は 6.56%(予測)です。中国のGDPなどの経済統計はデタラメだといわれていますが、仮にこれが本当だとすれば、中国によるモルディブ投資はかなり収益率が低いものであると言わざるを得ません。

仮に本当の中国成長率は低いとしても、モルディブが有力な投資先であるとは到底いえません。いずれにせよ、収益率は最初から相当低いと言わざるをえないです。

こういう国に、投資して中国企業に受注させ、中国人労働者を送り込んで工事をするという姑息なことをしたとしても、そもそも収益率がかなり低いので、外貨を獲得するなどということできません。

そこで、中国が考えだしたのは、当該国を一対一路で援助をしていたはずが、巨額の借金を抱えさせた上でインフラも奪うという方式です。

こうした手法は「債務のわな」と批判されています。3月にはティラーソン米国務長官(当時)も、一帯一路の参加国が、完成したインフラを中国側に譲渡する事態に対し、「主権の一部を放棄しないで済むよう(事業契約を)注意深く検討すべきだ」と呼び掛けました。

米シンクタンク「世界開発センター」は今年3月、一帯一路参加各国の債務についての調査結果を公表した。返済能力や債務の中国への依存度などについて、IMFのデータなどから検証しています。

債務にリスクがある国とされたのが、ジブチ、キルギス、ラオス、モルディブ、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、パキスタンの8カ国です。


報告によると、東アフリカのジブチは対外債務が2年間でGDPの50%から85%に増加した。大半の債権を抱えるのは中国です。東南アジアのラオスでは、最大67億ドル(7327億円)に達する鉄道プロジェクトが国のGDPのほぼ半分を占め、債務返済が難しくなる可能性を指摘しました。

中央アジアのタジキスタンでは、IMFと世界銀行が債務について「リスクが高い」と評価しているが、今後もさらなるインフラ投資が行われるといいます。

調査で「最大のリスクを負っている」と指摘されたのが、パキスタンです。一帯一路関連プロジェクトである中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に基づいて、インフラ整備が進行中で、中国から約620億ドル(6兆7800億円)の融資が見込まれています。調査は「高い金利が、パキスタンのリスクとなる」と警告しました。

さて、このような中、モルディブ大統領選で野党候補勝利し、親中の現職敗れる 「中国依存」転換されるというのは当然といえば当然です。

しかし、それにしても理解できないのは中国の挙動です。このような最初から儲からないことがわかりきっている投資をして、さらに投資先の国に債務を負わせ、最後にインフラを取り上げるなどのことをするのですが、それで何になるというのでしょう。

たとえば、「中国モルディブ友好大橋」を取り上げたとして、それが何になるというのでしょうか。考えてみてください、そもそも借金を返せないような国のインフラを取り上げて、何になります。

当然のことながら、そこからは富はほとんど生まれません。無論かなり経済成長をしている国であれば、そんなことはないでしょうが、であれば簡単に借金を返すことができるはずです。

巨大な橋を自分のものにしてしまえば、一見儲かったようにもみえますが、その橋ができたことによって、地域が繁栄すれば良いですが、そうでなければ、橋をメンテするのにかえって金がかかるだけになります。

土地でいえば、極端なことをいえば、中国のやり方はあまり高くもない土地に大枚をはたいてインフラを設置し、最終的にインフラをとりあげるというものですが、そもそもあまり高くもない土地に設置したインフラは富を生み出すのでしょうか。もちろん生み出す可能性がある場合もありますが、それは当該地域が急速に経済発展することが前提です。

もし儲かるというのであれば、他の国々も似たようなことをしているはずです。他国どこもやらないようなことを中国は「一帯一路」という美名をつけて、結局他国から富を収奪しようとしてるようですが、とても収奪できそうにもありません。

中国はまともに植民地経営をしたことがないので、その実体を知らないのかもしれません。かつての先進国による植民地経営も実体はほとんど儲かりませんでした、結局金食い虫的な存在になってしまったので、先進国は植民地を手放したのです。

余剰労働力をなんとかしようとしてるのかもしれませんが、それにしてもこんなやり方が長続きするとも思えません。そもそも、中国は自国内に豊富な内需が期待できそうな国ですし多くの先進国はそれに期待していました。

しかし当の中国はその潜在可能性を最大限に活用するでもなく、「一帯一路」で海外に投資をするという摩訶不思議なことをしています。何やら、経済合理性のみを考えても、中国のやり方は意味不明です。こういう意味不明なことをやる国には、未来はないと考えるのが当たり前でしょう。

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2018年2月23日金曜日

「中国が土地を収奪している」 モルディブの野党指導者、対中批判強める 中国の手法は「債務のわな」―【私の論評】アジア諸国を「一帯一路」という妄想の犠牲にするな(゚д゚)!


記者会見する野党指導者のモハメド・ナシード前大統領=1月22日、スリランカのコロンボ
政治的混乱が続くインド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブで、野党指導者が「中国によって土地が収奪されている」と批判を強めている。不透明な土地取引が行われ、投資には高額の金利が課されているとの主張だ。中国に傾斜するヤミーン大統領を批判する思惑もあるが、強引な中国の手法に警戒感を示した格好だ。

野党指導者のナシード元大統領は、AP通信やインド英字紙タイムズ・オブ・インディアなどとのインタビューで、「中国のモルディブでのプロジェクトは土地の収奪だ」などと主張している。

政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 ナシード氏によると、中国はモルディブで既に17の島々の権利を取得しているが、どれも手続きは不透明だという。中国は取得した島に約4千万ドル(約43億円)を投資すると約束しているが、ナシード氏側は「高金利であり、いずれモルディブ側は返済に窮する」と主張している。

野党側が念頭に置くのが、スリランカ南部ハンバントタ港の事例だ。中国の出資で港湾設備が建設されたが、スリランカは巨額の金利返済に苦しみ、最終的に昨年末に99年間の長期リースの形で中国側に明け渡すことになった。援助を受けていたはずが奪い取られた格好だ。ナシード氏は中国の手法は「債務のわなだ」と主張。憲法を改正して、外国人への土地販売を容認したヤミーン氏についても批判している。

政権側を批判するスローガンを叫ぶ野党の支持者たち=4日、モルディブの首都マレ
 最高裁の政治犯釈放命令に端を発したモルディブの混乱をめぐっては、ヤミーン氏は5日に発令した15日間の非常事態宣言をさらに30日間延長することを決定。ヤミーン氏側は、中国に特使を派遣して支持を訴えており、ここでも両国の蜜月の関係がうかがえる。一方、ナシード氏側はインドに援助を求めており、与野党の対立は深まる一方だ。

【私の論評】アジア諸国を「一帯一路」という妄想の犠牲にするな(゚д゚)!

モルディブとはどのようなところなのか、まずは下に地図を掲載します。


モルディブは 1,000 を超える珊瑚島と 26 の環礁からなるインド洋に浮かぶ熱帯の国で、ビーチやブルーラグーン、そして豊かに広がる珊瑚礁で知られています。首都マレでは、目抜き通りのマジディーマグ沿いに活気ある魚市場、レストラン、ショップなどが並んでいます。また、同市にある 17 世紀のフクルミスキー(金曜モスクとしても知られる)は、切り出した白珊瑚でできています。

以下の写真でもわかるように、典型的なリゾート地です。



このようなところで、中国の土地収奪がおこなれているという事自体がなかなか日本人にはピンとこないかもしれません。

しかし、ここの土地を収奪する中国にはそれなりの意図があります。それは、無論一帯一路と多いに関係しています。


「一帯一路」とは、(1)支那西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、(2)支那沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、交通インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進していく構想です。夢のような構想ですが、中国は「本気」であり、具体的な目標を高速鉄道の建設に置いています。

実際に、中国浙江省義烏と英ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行が、始まっています。支那が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、支メディアによると、両国間の直通貨物列車は初めて。支那は欧州との経済関係強化のため、中央アジアを通じた鉄道物流の充実を図っています。

中国は「一対一路」で「経済スーパーパワー外交」を展開するつもりのようです。中国の成長果実を周辺国にもシェアすることによって、周辺国との経済圏を構築し、善隣関係を強めることがねらいですが、同時に、過剰投資に悩む国内産業の新たな市場開拓、対外投資の拡大、約4兆ドルの外貨準備の運用多角化といった中国自身の経済的な思惑も込められています。

「一帯一路」を言い出したのは習近平・国家主席であり、彼の権力確立に伴って、この構想にも勢いをつけようとしています。私自身は、この構想は最初から失敗すると思っています。

なぜなら、世界航路や陸路などのインフラ整備はもうすでに出来上がっていて、われわれはそのインフラによってすでに貿易を行っています。そうして、このインフラは各国政府や民間機企業が、長年にわたり競争をしつつ切磋琢磨してつくりあげてきたものであり、さらに現在でも改良・改善が加えられています。

今更中国が後から割って入って、最初から計画してつくりだすにしても、現在までにつくりあげられてきたインフラにまさるものを中国が中心になってつくりあげることはほとんど不可能だからです。

中国としては、過去の国内のインフラ整備による経済成長が忘れることができず、その夢をもう一度海外で実現したいのでしょうが、国内において、共産党中央政府の鶴の一声で、何でも自由にできましたが、外国ではそういうわけにはいきません。

そのため、「一帯一路」は中国の妄想にすぎないと私は思っています。もし、これが成功するというのなら、共産主義も成功するはずです。しかし、一昔前は、計画経済により大成功するだろと思われた、共産主義は大失敗しました。

現在では中国ですら共産主義体制をとっていません。共産党という名称は残っていますが、その実体は国家資本主義です。

さて、モルジブはこの「一帯一路」の「21世紀海上シルクロード」の付近に位置しています。中国としては、ここを「一帯一路」の何らかの拠点にしたいと目論んでいるのでしょう。たとえば、このあたりに軍事基地を設置して、「一帯一路」構想が妨害されないように睨みをきかせる、あるいは物流の中継地点にするなどのことが考えられます。

中国は巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによって信頼を失っています。

習近平が提唱する「中国夢」は妄想に過ぎない
これは、軍事的には南シナ海や尖閣諸島付近で顕著にあらわれています。通商に関してもこれが如実にあらわれているのが「一帯一路」です。「内向き」国家である中国は自らの戦略が世界中の国々に通用するものであるという身勝手な妄想を現実のものにしようとしています。

「一帯一路」構想は、いずれ崩壊するブロジェクトですが、崩壊するまでの間に、中国が世界各地に投資をしたり、国営ゾンビ企業などの中国人労働者を大量に送り込んだりして、世界各地で軋轢を生むことになります。

以上のようなことから、安倍政権は、習近平の「一帯一路」に絶対に協力するようなことはあってはならないです。むしろ逆に、「一帯一路」に脅威を感じて抜け出そうとしているアジア諸国に、「駆け込み寺」としての受け皿を用意しておくことが日本の使命であり、国益に叶った戦略です。

モルジブのような平和な島々が土地を収奪され、中国の発展妄想の犠牲になることがあってはならないです。

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