2017年12月5日火曜日

中国の「一帯一路」がピンチ?大型プロジェクト取り消す国が相次ぐ―米華字メディア―【私の論評】"一帯一路"は過去の経済発展モデル継続のための幻想に過ぎない(゚д゚)!

中国の「一帯一路」がピンチ?大型プロジェクト取り消す国が相次ぐ―米華字メディア

4日、米華字メディア・多維新聞は、中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」
について「隣国が次々と離脱し、重大な困難に直面している」と伝えた。真
2017年12月4日、米華字メディア・多維新聞は、中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」について「隣国が次々と離脱し、重大な困難に直面している」と伝えた。

パキスタン、ネパール、ミャンマーの3カ国はこのほど、中国が計画していた大規模水力発電所3カ所の事業中止を発表した。これは総額200億ドル(約2兆2500億円)規模の大型プロジェクトだ。

パキスタンはインダス川流域のディアメル・バハシャダム建設に中国が提供を申し出ていた資金140億ドル(約1兆5754億円)の受け入れを拒否。ネパールは25億ドル(約2813億円)規模の水力発電事業について、合弁相手の中国企業が「重大な財務違反を犯した」として事業取り消しを決定。ミャンマーも「大型水力発電所には関心がない」と表明したという。

専門家は「今回中止された三つの案件は、それぞれ背景や原因が異なる。しかし、周辺の発展途上国は中国に大型インフラ事業を引き渡す代償は大きいと気付いたのだろう」と指摘しているとのことで、記事は「中国の『一帯一路』構想は、周辺国に長期的な植民地戦略ととらえ始められている」と伝えている。

【私の論評】"一帯一路"は過去の経済発展モデル継続のための幻想に過ぎない(゚д゚)!


中国のメディアや評論家は、“シルクロード経済帯”や“21世紀海上シルクロード”と称されるこの“戦略”が、中国の過剰生産能力の問題の解決や、中国の資源獲得につながる云々といったように、いわゆる“一帯一路”のバブルを膨らませ続けているようです。

しかし、この概念は純粋なる砂上の楼閣であり、新たな意義は全くありません。中国が長年をかけて取り組み、そして成果が得られなかった課題にすぎません。

これは、あたかも海運を一種の“新発見”と捉えているかのようです。しかし、実際のところは、大航海時代以来、あらゆる沿海先進国が海運の発展を試みてきました。

“上海自由貿易区”によって今や世界最高のサービスを提供するシンガポール港から積替港の地位を奪う、その理由は、上海から日本・韓国への距離がシンガポールに近いからである等など、こうした考え方自体が噴飯ものです。

貨物を最終目的地に直接運ぶことができるのに、なぜ改めて積替を行う必要があるのでしょうか。欧州などを原産地とする貨物が、マラッカ海峡通った後に、なぜ遠回りして上海に行く必要があるのでしょうか。もしそのような必要があるなら、香港や珠海デルタがとうの昔にシンガポールを市場から駆逐していたはずです。

シンガポールと香港の持つ優位性で、自由貿易よりも更に重要なのは、法律制度と資本の保護です。欧米諸国が中国と貿易を行う際、シンガポールや香港で貨物の受け渡しをするのは、中国の制度を信用していないからです。

中国は依然として独裁政治で、態度が横暴な“大国”であり、この状況は変わりません。こうした中で、いわゆる“自由貿易区”を実施しても、中国の関税に穴が開くだけのことです。最終的には関税の全面的な取消しとなるか、植民地時代の租界になるだけであり、根本的に実施不可能です。

いわゆる“一帯”—“シルクロード経済帯”など、これはより荒唐無稽の極みにある妄想と言って良いです。大航海時代以来、古代のシルクロードはすでに完全に競争力を失っており、とうの昔に荒廃しているのです。


アフガニスタン、パキスタン、旧ソビエト連邦の中央アジア5か国等は、インフラや経済的収益をもたらす商機が欠乏しているのみならず、先天的要因である商業ルートの地理的制約が大きく、これをお金で解決することは根本的に不可能です。

タジキスタンと中国の間の唯一の国境検査所である“カラスウ検査所”を例にとると、この検査所はパミール高原に位置する。当地は海抜4368メートルで、基本的に人や動物が住まない所です。

当地にはウラン鉱の放射能や食料・水不足の問題があるほか、検査所の通過に6回の予約が必要となり、毎年冬には、5か月もの長きに亘って閉鎖されます。このようないわゆる“商業ルート”が、海運に対してどうやって競争力を確保できるというのでしょうか。

ロシアは、国を横断するシベリア鉄道を保有していますが、この鉄道の緩慢な貨物輸送に競争力はありません。また、ロシアは、制度が閉鎖的でインフラが不足しています。例えば、高速道路を見かけることは極めて稀です。

しかも、ロシアは中国を泥棒のように警戒し、中国がウラジオストック等の極東地域を“回収”することをおそれています。鉄道線路の軌道を統一しないほか、中国が制度や開発に口出しすることを容認しません。

極東パイプラインの問題を見ればすでに明らかなことですが、ロシアは日本を引き入れて中国と競争させたがっているだけで、しかも日本側に偏向しています。

中央アジア及び西アジアの国々の一部は、依然として全体主義国家であり、その開発の難度は北朝鮮にひけをとりません。

中国吉林省が長年をかけて勝ち取った豆満江の海上アクセスを例にとると、これは経済的に一攫千金の案件であったのですが、北朝鮮とロシアの反応は長期間消極的でした。わずか70キロの河道を開通させるのに、中国は10年以上の年月をかけたのです。

豆満江の流路
ちなみに、豆満江とは、中朝国境の白頭山(中国名:長白山)に源を発し、中華人民共和国(中国)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、ロシアの国境地帯を東へ流れ日本海に注ぐ、全長約500kmの国際河川のことです。

これは、いわゆる“一帯一路”がたとえ“実施不可能”ではないにしても、その本質は、中国が長年取り組んできた課題を再包装したものにすぎないことを物語っています。

日本国内を例にあげるとすると、それこそ、江戸時代の買積み廻船を使った北前船を現在の高速船やコンテナ、港湾設備などを使った最新鋭のインフラで行うようなものであり、全く非合理であり、とても実現するものとは思えません。実際に実行しようとしたとしても、これを本気で使おうとする酔狂なユーザーなどいないでしょう。

復元北前船 みちのく丸
中国メディアがセールスするいわゆる“一帯一路”とは、一つが、指導者におもねるため、もう一つが、“概念”への投機を推進して中国から撤退する国際資本を引き留めるためのものにすぎないのです。

中国経済の過去の発展モデルである、インフラ整備が中国で一巡してしまいもう大きな投資案件はないので中国国内ではかつてのようなインフラ整備は当面不可能です。しかし、そのままでは中国の経済発展は維持できません。

だから、それを外国で実現して、外国で中国資本によるインフラ整備をすすめ、かつての経済発展モデルを維持しようとすることであるということです。これが、"一帯一路"の本質です。これは、結局中国による外国に対する経済植民政策に過ぎないものです。

現在の中国は、かつてのインフラ整備により、鬼城や過剰な設備、過剰な鉄鋼生産など負の遺産が蓄積しています。中国はこれを"一対一路"で外国で繰り返そうとしてるだけです。これでは、"一対一路"を推進すれば、外国においていずれ負の遺産を蓄積するだけなります。

これは、いわゆる共産主義国家による計画経済と何ら変わりありません。中国の官僚が考えた"一帯一路"という計画経済が機能するはずもありません。頭の良い設計主任が、計画経済を立案して、その通りに遂行すれば、経済がうまくいくという考えは、すでに過去に大失敗して、この世から共産主義は消えています。今の中国は共産主義ではなく、国家資本主義といっても良い状況にあります。

結局この巨大プロジェクトは、所詮中国の過去の経済発展のモデルを継続するための幻想に過ぎないということです。

そのことに、おくればせながら隣国が気づいて、"一帯一路"構想から、次々と離脱し、重大な困難に直面しているのです。

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