2017年10月15日日曜日

小池新党の掛け声倒れを報じる米国メディア―【私の論評】小池氏は都知事としての政治生命すら危うくなってきた(゚д゚)!

小池新党の掛け声倒れを報じる米国メディア

政策の中身は自民党と変わらず「改革とは言えない」

「ウォール・ストリート・ジャーナル」(10月9日付)の
小池氏へのインタビューを報道する同紙のサイトのタイトルと、写真

 日本の総選挙に米国の主要メディアも真剣な関心を向け始めた。

 関心の対象は、主に小池百合子都知事の「希望の党」の動きである。ただし報道のほとんどは、小池氏が唱える改革はそれほどの改革ではなく、都知事と国政野党代表を兼任して「二兎を追う」と不毛な結果に終わりかねないという慎重な見方も紹介している。

安倍氏への報復が小池氏の狙い?

「ニュヨーク・タイムズ」(10月8日付)は、「先駆者の東京都知事により日本は大きく揺れている」という見出しで、日本の総選挙の開始を報道した。小池知事が女性として国政を大きく動かすに至った側面に焦点を当て、小池氏の政治歴を前向きに描いていた。

 だが同記事は、小池氏が都知事の仕事を後回しにする形で国政に登場したことに対する東京都民の否定的な反応も取り上げていた。記事中では、墨田区在住の61歳の主婦による「二兎を追うものは一兎も得ず」「小池さんが東京都知事としてなにか重要なことを実行したならば国政進出も支持しただろうが、彼女は都知事としてまだなにもしていないと思う」というコメントを紹介している。

 さらに同記事は、小池氏の本来の政策が安全保障や外交面で安倍首相のそれとほとんど変わらず、憲法改正を求めるタカ派であるとも特徴づけていた。だから政策面では「希望の党」はそれほど大きな改革を求める政党ではないようだ、と総括している。

 「ワシントン・ポスト」は10月10日付の「人気のある東京都知事が総選挙に立候補しないことを決め、安倍首相に利益をもたらす」という見出しの記事で、小池氏の不出馬が「希望の党」の人気を大幅に落としたようだと報じた。「新党(希望の党)は指導者のいない政党と国民の目に映り、安倍首相を利する形になった」というのだ。

 また、小池氏の政策や姿勢については、日本政治研究の米国人学者トビアス・ハリス氏の見解として「小池氏が新党の指導者として総選挙に出馬しないことを決めた。このことは、今回の動きが政策面での真の改革を目指すことよりも、自民党内でこれまで安倍氏に冷淡にされたことへの報復に狙いがあることを印象づけた」という言葉を引用していた。

 さらに同記事は、小池氏が自民党の第1次安倍政権で防衛大臣のポストにあったことや、改革を唱えながらも「その政策は自民党の政策とほとんど相違がない」ことなどを伝えていた。

冷静に日本の総選挙を見つめる米国メディア

「ウォール・ストリート・ジャーナル」(10月9日付)は小池氏へのインタビューの内容を伝える記事を掲載した。

 記事の見出しは「日本の変革を有権者に求める女性に会う ただしその変革は大きくはない」である。記事によると、小池氏は男性が圧倒的に多数な日本の政界で長年活躍し、ついに日本の既製政治に挑戦する新政党を立ち上げたが、実は、それほど大きな改革は求めていないという。

 同記事は、「小池氏は変革の顔を見せながら、根本的な変革は実際には求めていない」「外交政策や安全保障政策では小池氏と自民党の間には違いはない」「北朝鮮対策や日米同盟の政策でも『希望の党』と自民党の間には大きな相違はない」といった記述も載せていた。

 また、同紙の記者が小池氏に「誰を『希望の党』の首相候補にするのか」と直接質問したところ、「総選挙の結果をみてから決める」という率直な答えが返ってきたことも明かしていた。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは10月12日付の記事でも日本の総選挙を取り上げ、「世論調査では安倍首相が総選挙での大勝利に向かっている」との見通しを伝えた。

 同記事は、共同通信、日本経済新聞、産経新聞、朝日新聞、読売新聞という日本の主要メディア5社の世論調査結果の内容を報じていた。これらの最新の世論調査によると、自民党は衆議院の過半数の議席を確実に獲得し、公明党と合わせると300議席を越えて、憲法改正に必要な3分の2以上の議席を獲得するかもしれないという。その結果は、小池氏の率いる「希望の党」にとって、たとえ野党第一党の議席を得たとしても「大きなトラブル」になるだろうと記している。

 こう見てくると、米国メディアが日本の今回の総選挙を見る目は意外と冷静である。小池都知事が巻き起こした激震のような動きも「それほどの改革ではない」という抑制された見方をしていることが分かる。

【私の論評】小池氏は都知事としての政治生命すら危うくなってきた(゚д゚)!

大手メディア各社の衆院選の序盤情勢調査が出そろいましたが、希望の党はいずれも60議席前後にとどまる情勢です。公認候補235人のうち実に4分の3が討ち死に必至です。

希望の党が、民進党と合流する、しかもその理由が政治資金欲しさであるとみられることから、まずは保守層から嫌われてしまいました。

さらに、小池代表が民進党のリベラル派を『排除いたします』と宣言した、映像が繰り返し流れて以降、風向きは完全に変わりました。


保守派、リベラルの両方の有権者が日ごとに小池氏に対する危機感をつのらせ、希望の党の党勢が急速に衰えました。

希望の小選挙区候補198人のうち優位に立つのは、笠浩史氏(神奈川9)、細野豪志氏(静岡5)、古川元久氏(愛知2)、古本伸一郎氏(愛知11)、玉木雄一郎氏(香川2)らにとどまります。小池代表のお膝元の東京でも苦戦を強いられ、松原仁氏(東京3)は劣勢です。小池代表の側近気取りの若狭勝氏(東京10)も落選の危機です。

比例区の東京ブロックの獲得議席も立憲民主党を下回る可能性があります。何しろ前回、前々回と2度の逆風をはね返して当選を重ねた馬淵澄夫氏(奈良1)や階猛氏(岩手1)、山井和則氏(京都6)など選挙に強い候補が軒並み、劣勢に立たされているのです。

13日の朝日新聞による調査では、(1)自民党と公明党を合わせた与党で300議席をうかがう勢い (2)希望の党は、東京で候補者を立てた23すべての選挙区で先行を許す――などの情勢になっています。

希望は小池頼りの選挙のはずが、アテ外れになってしまいました。小池嫌いの有権者が離れる逆効果で、公示前の57議席を維持できない確率も高いです。

希望に移った民進出身者からは、怨嗟の声が巻き起こり、すでに「小池おろし」の機運は高まっているようです。小川敏夫民進党参院会長は「民進党は解党しない。民進党を守り、再びリベラル勢力を結集する」と発言しました。


しかし、翌日には前原代表がその動きを批判し、当事者の小川会長も「意図せぬ解釈」と自身の発言を否定されたので多少は紛糾が収まったようですが、その懸念は今後もくすぶり続けるでしょう。ここ数年間の信念なき離合集散で「国会議員は再選するためなら何でもありの人たち」と国民に見透かされています。

それにしても、民進の参院内はもともと連合の組織内議員が多く、小池代表が提示する安保法制・改憲容認の「踏み絵」には猛反発しています。

地方組織は今なお『民進党』の看板を掲げ、選挙戦でフル回転しています。野田佳彦氏や岡田克也氏など無所属のベテラン組も、実は民進に党籍を残したままです。そこで選挙後に希望に移った民進出身者もまとめて再結集を目指す動きがあります。選挙が終われば、議席のない小池代表の影響力が弱まるのは確実です。

希望の党の候補者の擁立状況を見ると、自民党の石破茂元幹事長(鳥取1区)、野田聖子総務相(岐阜1区)の選挙区には対抗馬を立てていません。両氏は小池氏と親しいため、今後の連携の可能性を指摘する声もあります。

衆院選で与党が過半数を割った場合について希望の党に連携を呼び掛けることもあり得るたかもしれません。そうなると、小池氏がキャスティングボードを握るという状況もあり得たかもしれません。しかし、現在ではほんどあり得なくなってきました。

小池代表は、改憲発議に必要な3分の2議席のキャスティングボートを握れなければ、それこそ希望の党から「排除」されかねません。その前に希望の党から出ていくことも予想できます。

しかし、今後都政に専念しても前途多難でしょう。五輪の準備や築地市場移転など難問山積。豊洲市場の追加工事は2度も入札不調となり、来年秋までの移転予定が皮算用となりかねないです。都民ファーストも小池人気の陰りで分裂含みです。何より小池代表は都民の支持を大きく失ってしまいました。

JX通信が今月7、8日に実施した調査によると、都知事としての小池代表の支持率は37%で、不支持率は54%に達した。9月23、24日の調査では支持率は58%だっただけに、国政にうつつを抜かす小池代表に皆、そっぽを向き始めているようです。

さて、今後はどうなるのでしょうか。やはりブログ冒頭の米国メディアの見方のように、緑の党がこれから、どうなろうと、全く改革にはならないという見方が順当だと思います。

小池氏はどうなるのでしょうか。私自身は、以前このブログに掲載したように、小池知事の政治生命は都知事で終わりという状況に急速に近づきつつあると思います。その記事のリンクを以下に掲載します。
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東京味わいフェスタで試食する小池知事
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、小池氏が出馬するかどうかまだ未定の時期に、様々な分析から小池氏は出馬しないと断定しました。

さらに、小池氏の政治生命は今後国政においては尽きてしまっているので、東京都知事で終わることも掲載しました。

そうして、東京都知事を複数期にわたって、努める可能性も掲載しました。しかし、これもどうなるかわかりません。

小池氏は、今後速やかに国政から手を引き、都政に専念すべきです。専念するだけではなく、都知事として都民に認められる都政において、成果をあげて結果を出すべきです。そうでなければ、都知事としての政治生命も短命に終わってしまいます。

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