2017年7月28日金曜日

【国防最前線】必要性が低い女性防衛相 圧倒的に男性が多い自衛隊、弱体化しかねない「客寄せパンダ」的施策―【私の論評】現状で、憲法9条だけが変わっても無意味(゚д゚)!


稲田防衛大臣 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
私はそもそも「女性を防衛相にする必要性は特にない」と思っている。非常時でも、すっぴんで髪ボサボサというわけにいかないだろうから、そういう意味で適さない。

 小池百合子防衛相時代も、演習場視察の前日から自衛官がひたすら散水を続けたり、動線に敷物をしたり、あれこれ心を配っていたことを思い出す。本人が知れば「そんなことは無用だ」と言うだろうが、やはり男性大臣よりも神経を使うことは確かだ(=ほとんど注意を払わせない、身だしなみなど気にしない女性ならいいかもしれないが)。

 もし、「女性活躍の象徴」として女性防衛相を選んだのだとしたら、何の意味もなさない。

 自衛隊には圧倒的に男性が多い。それは男性にしかできない任務が多いからだ。ただ、女性にできる分野もあり、これまで開放されなかった職種を希望する女性も出てきている。昨今は女性も活躍の場を広げつつあるが、それは人口減に伴う労働者不足を補わなければならない日本全体が抱える状況と同じ。つまり、人手不足が大きな要因だ。

 本来、戦場では女性は足手まといになる。女性防衛相が就任して応募が増えたというなら効果があるといえるが、おそらく、そのような成果は出ないだろう。まして、女性の魅力で(?)沖縄問題が進展したり、憲法改正に理解が広がるなどということもない。

 今後、本気で女性枠を拡大させるならば、女性防衛相を据えることなどではなく、インフラ投資のために防衛費のGDP枠2%以上へ増額など、相当の覚悟をすべきだ。スーパーマーケットとまでは言わなくても、基地や駐屯地に低料金か無料の託児所を完備するなりの徹底した措置を施した上で将来も女性を簡単に諦めさせない体制を構築すべきだろう。

今現在は「任務に全力をささげたい」と考えている女性隊員らが、ある時に価値観が変わり、家庭が優先順位のトップになることは大いにあり得る。その時に、引き留める要素が何もないのなら、それは組織の怠慢となる。

 しかし、問いたいのは、それだけの投資・支出を国民は許容できるのかだ。

 莫大(ばくだい)な経費を要するミサイル防衛、サイバー、宇宙など、日本の防衛に必要な金はまったく足りていない。それらを抑えてまでやるのか? あるいは別枠予算でも付けるか?

 マンパワー獲得という真の目的からかけ離れた、「客寄せパンダ」的な安易な施策では、自衛隊が弱体化しかねない。防衛省をめぐる一連の騒ぎは、自衛隊PKO(国連平和維持活動)のあり方、女性活用の今後を熟考する契機にすべきではないだろうか。 

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 防衛問題研究家。1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。テレビ番組制作などを経て著述業に。防衛・安全保障問題を研究・執筆。著書に『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)、『自衛官の心意気-そのとき、彼らは何を思い、どう動いたか』(PHP研究所)など。

桜林美佐さん

【私の論評】現状で、憲法9条だけが変わっても無意味(゚д゚)!

ブログ冒頭の桜林美佐氏の、論評はやはり女性の軍事問題研究科だからできるというとろがあると思います。男性や、軍事の素人ではなかなか、ここまではっきりとは書けないです。このようなことを男性が書くと、女性差別主義者であるとみなされてしまうかもしれません。

それに、誰が正しいとか、誰が間違いなどというような、倒閣のために自衛隊を利用する輩共とは異なり、不毛な議論ではなく、何が正しい、何が間違いという観点から論じていて、理解しやすいですし、こういう論点なら、正しい意思決定のきっかけづくりにもなりえると感じました。

対戦車ヘリのパイロットの訓練を受ける女性自衛官
私も、女性の防衛大臣は必要ないと思います。これは、直接は関係ないのかもしれませんが、たとえば戦場で戦闘中に用を足すことを考えた場合、女性はなかなか難しいと思います。

昔聴いた話ですが、戦闘中に用を足したくなった場合は、無論我慢はするのですが、我慢しきれなくなった場合、米兵のほとんどは戦闘のその場で、銃をうちながら、大便でも小便でも、用を足すのが当たり前なのですが、日本兵は特に大便の場合など、人目をはばかり、人の見えないところまで行って用を足すものが多く、その間に敵から撃たれるものが結構いたという話をきいたことがあります。

これは、当然のことながら、米兵のやり方が正しいです。戦闘中には、その場で銃をそばにおきいつでも敵に対応できるようにして、用を足すべきです。

1945年3月 硫黄島 
このようなことは、確かに女性には難しいことだと思うのです。とはいいながら、女性のほうがが向いている役割も多いです。

しかし、そうはいっても、桜林さんが主張するように、「女性活躍の象徴」として女性防衛相を選ぶというのは、全く無意味だと思います。

そうして、桜林さんの語っているように"マンパワー獲得という真の目的からかけ離れた、「客寄せパンダ」的な安易な施策では、自衛隊が弱体化しかねない。防衛省をめぐる一連の騒ぎは、自衛隊PKO(国連平和維持活動)のあり方、女性活用の今後を熟考する契機にすべき"です。

自衛隊に関しては、憲法9条を変更する前に、できることは多くあります。また、憲法9条が変わったとしても、自衛隊がすぐに変わることを意味するわけでもありません。

それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
安倍内閣で防衛費が5年連続増額しているのを、評価する向きもあるでしょう。しかし、防衛費1%枠などという何の根拠もない霞が関の掟を頑なに守っている枠内での話に過ぎません。 
トランプ米大統領は、「同盟国は義務を果たすべきだ。せめて防衛費を文明国水準のGDP2%にまで引き上げよ」と訴えています。 
これは大きなチャンスです。増やせば良いのです。これだけ北朝鮮が暴れまわり、中国やロシアといった不安定要だらけの隣国に囲まれているのです。日本が防衛費をGDP2%に増やしたとて文句を言うのは敵国だけです。 
しかし、国内には防衛費増額を拒む勢力がいます。財政支出抑制を金科玉条とする財務省主計局、彼らに唯々諾々と従う防衛省自衛隊、そしてそれを是とする政治家。
ある自衛隊の駐屯地でのトイレットペーパーに関する注意書き。予算の問題はこんなところにも。
防衛費増額と憲法は何の関係もありません。それとも、自衛隊が、「米軍並のファーストエイドキット携行できるにようにするとか、軽武装をできるだけの人数を充足させる、アメリカ軍楽隊よりもマシな訓練を行えるようにする、トイレットペーパーの減り具合を気にしないで済むようになする」というような、これらの予算請求もすべて憲法改正をしなければできないのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずがありません。
平成27年度自衛隊音楽まつりに参加した米軍の軍楽隊
本気で戦争に備えているのであれば、防衛省は予算の拡大を要求するはずです。現状を見るに、自日本の本気で戦争する気は無いように思えます。このような現状は仮想敵国には見透かされているでしょう。であれば、自衛隊の抑止力はかなり低いと考えられます。 
憲法を改正する以前に、努力してより自衛隊を実戦的に変えることは可能なはずなのです。ところが威勢のいいことを言う「保守の論客」はこのような小さな問題をコツコツと掘り起こし、解決しようという地道な努力をしようとしません。 
世論を煽り、新しい玩具を買え、防衛費を増やせ、自衛隊の定員を増やせ、憲法を変えろと叫ぶだけです。まあ、その方が楽だし人気もでるのかもしれません。しかし、いくら喰うためとはいえ、そんなことで良いのでしょうか。 
できるかどうかもわからない、非常にハードルが高い憲法改正を叫び、それが出来れば世の中は変わると主張し、小さな努力はしない。それでは沖縄で反基地闘争をやっている連中と同じではありませんか。
私は、憲法9条を変えるという安倍総理の考えには、賛成ですが、 その前にできることはするべきです。

そうして、憲法9条を変えさせまいとする野党や、マスコミが、ここにきて一気に日報問題で、稲田防衛大臣を辞任に追い込みました。

稲田大臣は、確かに安倍内閣の中で最も評判が悪い閣僚になっていました。失言も多く、メディア出演・答弁・記者会見も頼りないものでした。記者懇談会に出ないこともあってメディア等からの視線も厳しく、連日連夜、稲田大臣と彼女を支えている統幕・内局に不利な一部の陸自幹部からと思しきリーク情報が報道されていました。

政治指導者の過ちをただし国民に直接説明するという姿勢は一見もっともらしいですが、極めて危険です。なぜならば「国民」とは実際にはひとかたまりではなく、多種多様だからです。

「国民のため」という発想は、「天皇陛下の御為」「国民の為」を掲げた226事件がそうであったように、「自分と同じ考えの国民」という独善に陥りやすいです。だからこそ、今回のリークはクーデターであり、重大なのです。

日本を震撼させた2.26事件
このことを野党やマスコミも指摘すべきであるにもかかわらず、普段は過去の軍部の暴走の危険を例に出し、文民統制の重要性を指摘しておきながら、今回は、目的があくまで倒閣なので、稲田防衛大臣個人や、安倍政権を攻撃するだけです。

とはいいながら、リークの全てを否定するものではありません。例えばパワハラ等への内部告発はもっと行われるべきです。しかし、それはあくまでも文民統制に反しない限り、つまり政治的活動に関与しない範囲であるべきなです。
しかし、それにしても、稲田大臣が辞職し、制服組がリークによって大臣を辞職させ、首相の政治生命すら危うくさせたという前例を作ってしまったということは非常に残念であるし、かなり危険なことでもあります。

なぜなら、今後の防衛大臣が陸自に対して“忖度”せざるを得なくなってしまう可能性があるからです。その結果、陸自の不祥事を追及できず、陸自も含めた防衛省改革が不可能になるおそれがあります。

要するに、今後、稲田大臣に変わって優秀かつ能力があり、熱意あふれる防衛大臣が誕生し、改革を断行しようとしても、真偽不明の内部リークで潰されてしまう、もしくはそうされることを恐れて断念してしまう可能性がでてきたのです。

こうした事態を避けるため、今回の日報問題を踏まえた文書管理のありの方針を決めるべきです。それこそが、本来稲田大臣がとるべき責任であったはずでし、それを稲田大臣にやらせるべきでした。辞任はその後でも良かったはずです。

南スーダン派遣自衛隊日報
部隊がどこいるか補給物資や弾がどれくらいあるかといった部隊の安全に関わる情報が満載された何十ページにも及ぶ日報が、その都度、情報公開請求されれば、部隊にとっては大きな負担になります。

今回のように、その都度情報公開の判断をさせれば、部隊の活動の政治問題化、部隊への政治介入が起こり、部隊にも隠蔽のインセンティブが働いてしまうことになります。このままでは現場の部隊は、上級部隊に何も意味のある報告できなくなり、現場と上級舞台は、分離されてしまうことになります。そんなことになれば、自衛隊は崩壊します。

これらの日報は自衛隊全体では、膨大なものになります。これを逐一、政治家などが日々全部読んで、様々な判断をするなどということは不可能です。無論、自衛隊の幹部などもそのようなことは不可能です。

現場の日報は、何のためにあるかといえば、当該部署の1年間の流れを把握するという意味もあると思います。はじめてその部署についた人でも、日報をみれば大体の流れをすぐに把握できます。だから、現場で日報をある期間保存するというのは当然といえば、当然です。3年間くらいは保存したいところでしょう。5年前のものだと、随分状況が変わっているので、現場でも破棄しても良いかもしれまん。

そこで今後は、このような現場の実情も踏まえて、文書管理の方法を設定すべきです。PKO部隊なら活動が終わった直後あるいは年一回を区切りとして、他の部署なら3年に一回として、活動終了後3年といった公開時期を設定し、あらかじめ公開すべき内容と公開すべき範囲、非公開にすべき内容を定め、特異な事象が発生した場合には即公開するといった基準を設けるべきです。

こういうと、すべてをのべつまくなくリアルタイムで公開すべきであるという愚かな人もでてくる可能性もありますが、この日報は、いわば軍隊のものであり、そもそも最初から公開すべきでないものもあります。たとえば、部隊の脆弱性に関するものなど、一般に公にすれば、仮想敵に対して有益な情報を与えるだけになります。あるいは、当初は重要でなかったものが、後で重要であることがわかるということもしばしばあるはずです。

このあたりも、他国の軍隊のやり方を見習い、慎重に定めるべきでしょう。それから、稲田大臣は辞任しましたが、今後の議論が稲田大臣個人の問題や、安倍総理個人の問題に矮小されることなく、文民統制や日報管理のあり方、そもそも一義的な文民とは国民なのか、政治指導者なのか、まともに議論されべきものと思います。

そうして、憲法9条を変えることも重要なのですが、その前に文書管理等を明確にし、予算も増やすべきです。そうして、文書管理をまともにするためには、他の事柄もかえなくてはないらないことがいろいろと出て来るはずです。それも逐次変えていくべきです。今の状況で、憲法9条だけが変わっても、無意味です。

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