2014年6月20日金曜日

日本に残された「3つの選択肢」―【私の論評】ちょと待ってくれ、まずはデフレを解消しなければ何をやってもモグラ叩きになるのではないかい、そろそろデフレと低成長を所与のものと考えるのはやめようよ(゚д゚)!

日本に残された「3つの選択肢」



日本の出生率がいまと変わらず、平均寿命が5歳延びると仮定すると、私たちにとって、これから選べる選択肢は次の3つになると思います。これらは大まかな数字で試算しているので、1つの指針として考えてください。

社会保障を現状維持のままで、消費税を40%に引き上げる

社会保障を3割削減して、消費税を30%に引き上げる

退職年齢を75歳に引き上げて、消費税を20%に引き上げる

この3つの選択肢を並べた場合、国民を論理的に説得できるのは、どれだと思いますか。

国民全体を説得するのに、①の選択肢はあまりにも厳しすぎます。消費税を40%に引き上げると説明しただけで、国民は拒絶反応を起こすでしょう。②は①ほどではないにせよ、特に高齢者からの拒否反応が強く、国の財政が危機的状況にならない限り、実行するのは難しいでしょう。

ところが③なら、まだ国民を説得する余地があります。

国民皆年金ができたのは1961年ですが、当時の平均寿命は68歳にすぎませんでした。支給開始年齢が60歳だったので、平均寿命で見れば8年間の年金がもらえる計算になっていました。

財政状態が日本ほどは悪くない欧州の国々では、引退年齢を65歳から67歳、68歳に引き上げようとしています。欧州諸国よりも平均寿命が高く、今後も平均寿命が延びていく可能性が高いことを考えると、もともと日本の年金は欧州に比べて支給開始年齢が早すぎたのです。

欧州の年金制度は、持続性では日本よりまともでしたが、財政危機をきっかけに、年金の支給開始年齢が引き上げられることになりました。欧州よりも財政状態の悪い日本が、そうした歴史の教訓に学ばない理由はありません。

ここで、私たちは歴史に学ばないと、とんでもない苦難に遭ってしまうでしょう。財政と社会保障制度の抜本的な改革をする前に、日本が財政危機になってしまうと、国民の負担は私の想定よりも重くなることは間違いありません。それを避けるには、なんとしても10年以内に社会保障のあり方を見直し、年金支給開始年齢を大幅に引き上げることが自明の理なのです。

上の記事は要約です。詳細を知りたいかたはこちらから(゚д゚)!

【私の論評】ちょと待ってくれ、まずはデフレを解消しなければ何をやってもモグラ叩きになるのではないかい?そろそろデフレと低成長を所与のものと考えるのはやめようよ(゚д゚)!

上の記事について、エコノミストの村上尚己氏は以下にようにツイートしています。
この村上氏のツイート私も全くこのとおりだと思います。デフレと低成長を前提にものごとを考えていては、結局モグラたたきになるだけです。この記事で述べているように、デフレ・低成長を前提として、それは変わらぬ所与のものとして、実際に上にあげてある3つの選択肢の中からいずれを選んだとしても、結局様々な問題が発生して何の抜本的解決にはなりません。

デフレと低成長を放置すればどうなるか?

仮に、デフレと低成長を放置しおけば、結局上の3つの選択肢のどれを選択したとしても、長い年月がたてはたつほど、国民所得が増えるどころか、少なくなり、結局社会保障の原資である、税収も減ります。

物の値段が下がり続けるのがデフレ
税収が減ったからといって増税したとしても、結局さら税収が減るだけです。だからといって、また増税したとしてして、それを何回も繰り返せば、いずれ消費税を100%にしても、税収は増えなくなります。それでも、税収が減ったからといってさらに増税すれば、いずれ100%を超えます。

100%といえば、たとえば、米を100円で購入したとしたら、 消費税を含めて200円を支払わなければならないということになります。


そうなると、人々はどうすることでしょうか?多くの人は、米と自分の持っているものを交換するようになります。そうです。自給自足の経済に移行することになります。

もしかすると、野菜や小麦も自分で栽培し、魚なども自分で採るようになるかもしれません。そうして、お金は、自給自足では事足りない、希少なものを購入するときだけに遣うようになります。そうなれば、企業も製造業であれば、自社で製造したものと、他社の製造したものなどを物々交換するようになると思います。



そうして、給与はお金が少しで、あとは米や生活必需品などで支払らわれるようになるかもしれません。

小売業などは人々の物々交換する量が多くなれば、成り立たなくなり、昔のようなほんとうに小さな商店が復活することになると思います。そこでは、お金による取引は一部で、米やその他による物々交換が主流になると思います。

これは、社会システムの後退です。このようになれば、ますます税収は減ります。あるい税収そのものがなくなるかもしれません。そのときには、日本政府は事実上解体して、小さな自給自足の部落が経済主体となるかもしれません。日本という国は、皇室を頂点とした概念上の存在にしかすぎなくなり、自給自足の小部落が、人々の生活の場となります。

いずれ社会システムが崩壊する

ただし、あまり小さいと安全保障上の問題もでてくるので、昔のように独自の経済システム、防衛システムを持つ藩のような組織ができあがるかもしれません。藩をまとめ幕府のような存在ができあがるかもしれません。

いや、そうなる前に小さな自給自足の部落が主体となったときに、なにもかも弱体化して、中国に攻めこまれ、中国の属国ならまだいいですが、中国の一省となってしまうかもしれません。そうなれば、中国人が多く移り住み、日本人は排斥されるようになります。そうなれば、自ら国を滅ぼす馬鹿な日本人など、役に立たないわけですから、そうなります。

デフレと低成長を所与のものとして、これを放置してどこまで、財政を優先するとこのようなことになります。

まずは、デフレを解消せず増税一辺倒であれば、いきつく先は自給自足経済にならざるを得ません。しかし、デフレを解消すれば、黙っていても経済成長をするようになります。そりゃそうです。需要が増えてくるわけですから、そうなります。

そうなったときに、財政再建などを考えれば良いわけで、デフレを放置しておいては、財政再建もままならず、自給自足経済という社会システムの後退を招き、国民は極度の貧困状況に陥り、それこそ、アジアやアフリカの最貧国のような常態になり、いずれ内乱が勃発するか、中国などの攻めこまれ日本という国は消滅することになります。

歴史に学ぶなら中途半端ではなく古今東西の役に立つものを優先的に学べ

上の記事では、最後のほうで歴史に学べとしていますが、ここに提示されている歴史はあまりに偏りすぎています。

アメリカでは、ドラッカー氏が、年金支給開始の年月が引き上げらるべきだと主張してから、数年と経ずに本当にそうなりました。ヨーロッパの先進国もそれに追随しました。

しかし、当時のアメリカやヨーロッパの国々は、少なくともデフレではありませんでした。もし、その頃現在の日本のように長期にわたってデフレが続いていたとしたら、ドラッカー氏も年金の支給開始がどうのこうのと言う前に、まずはデフレを解消せよと言ったに違いありません。

今の日本が歴史から学ぶとすれば、上記のようなことではなく、古今東西のデフレを解消した事例や失敗事例です。

失敗事例として、近くは、イギリス、イタリア、スペイン、ボルトガルの事例です。これらのすべての国では、財政再建を目的として増税をして失敗し、結局税収が増えず、財政再建もままならず、苦しんでいます。

そうして、成功事例として、一番先に学ぶべきは、世界恐慌(日本では昭和恐慌)に陥ったときの日本の対処の仕方です。

それまで、世界恐慌の原因につき、陰謀説など様々な説が流布されていましたが、どれも決め手に欠けていいましたが、1990年台の研究により、その原因は深刻なデフレであったことがはっきりしています。

このデフレから当時の日本だけが、世界で一番先に脱却することができました。それは、高橋是清による、金融緩和政策と、積極財政です。デフレやデフレまでいかなくなくても、不況に陥ったときに実施すべきは、金融緩和と積極財政です。これは、マクロ経済の理論からも、過去の歴史からもはっきりしています。

このブログでは、過去に高橋是清による経済対策についても掲載したことがあります。以下のその記事のURLを掲載します。

高橋是清によるデフレ脱却事例
ポール・クルーグマンの新著『さっさと不況を終わらせろ』−【私の論評】まったくその通り!!
この記事では、日本のデフレ脱却成功事例として、江戸時代の「宝永の改鋳」と、高橋是清のデフレ克服策をあげました。

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の締めくくりの部分のみ掲載させていただきます。
現在でも、不況のときに、緊縮財政、金融引き締めをしては、かえって経済が悪くなるということです。不況のときには、財政などあまり気にせずに、積極財政と金融緩和策をしなければならないというのが当たり前の真ん中の常識です。ケインズなんぞまったく知らなかった、江戸幕府や、高橋是清も、この常識に従って成功しているのです。現在の不況は、この常識に従わなかったことが大きな要因の一つです。非常識派は、過去の歴史を振り返ったり、現在の出来事を直視せず、ただただ、自分の頭の中でつくりだした、非常識な常識を唯一正しいものとして、押し付けているだけてあり、思い上がりも甚だしいです。
ブログ冒頭の記事も、デフレ・低成長を所与として、ものごとを考えているという点で全く非常識であると言わざるをません。

高橋是清

政治家の中にもこの非常識を信じて疑わないものが多いです。だから、このブログでも以前から、与野党を政治家の白痴化ということを指摘させていただいているのです。

デフレを放置してそれを前提として物事を考えても、全く意味がありません。上で示したように、いつまでも放置しておけば、社会システムの後退を招くばかりです。

現在日本で大きな問題が10あったとして、デフレを解消すれば、5つから6つくらいの大問題は、他に何をしなくてもそれだけで自動的に解消します。4つから、5つの問題はそれでも解消しないかもしれません。しかし、解決の糸口くらいは期待できるようになります。しかし、デフレを解消しなけば、10の問題すべてが解消できません。

何かをやれば、何かがだめになるというモグラたたきをするだけになります。

はやく、多くの政治家が、白痴常態から目覚めるか、白痴のままであり続けるならやめるべきと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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