2012年2月9日木曜日

米アマゾン「実店鋪」開設か 「キンドル」や書籍販売−【私の論評】これから、eコマースは廃れる?!!

米アマゾン「実店舗」開設か 「キンドル」や書籍販売


   「オンライン小売大手の米アマゾンが実店舗を開設へ」。複数の欧米のメディアが2012年2月9日までに、このように伝えている。引用元となっているのは、電子書籍端末やタブレット型パソコン関連のニュースサイト「Good e-Reader」2月4日付の記事だ。アマゾン関係者の話として、今後数か月のうちに米ワシントン州シアトルに店舗をオープンさせるという。

   シアトルは、アマゾンが本社を構える土地だ。店舗開設は、実際にチェーン店を構えた場合に利益を出せるかを見るためのテスト目的だとしている。電子書籍端末「キンドル」や、多機能情報端末「キンドル・ファイアー」をはじめ、端末のアクセサリーも販売すると記事では触れている。加えて書籍の販売も行われ、利用者は店で紙の書籍を購入したり、電子書籍のサンプル版をダウンロードしたりできるようになるだろうと伝えている。

【私の論評】これから、eコマースは廃れる?!!
私は、いずれAmazonは、物理的な実店舗を構えることもありえると思っていましたが、それが、現実になりそうということです。なぜ、そのようなことになるかといえば、以前私がこのブログにも書いたように、他のeコマースと徹底的に差別化を図るためです。

そもそも、AppleがiPadを開発したり、AmazonがKindle Fireを開発したのは、他のeコマースと差別化を図るためであることは、このブログにも掲載したことがあります。その核心部分を以下に掲載します。


eコマースといえば、従来は楽天、Yahoo、Amazonなどの大手が市場のほとんどを占めていて、これから、参入とか、新しくはじめようと思っても、なかなか難しいところがあったと思います。しかし、O2Oビジネスの興隆により、事情は変わってきたと思います。従来は、スマホ(GPS)がなかったため、物理的店舗を持つチェーンなども、eコマースなどを実施したとしても、結局は、サイトの中でこうした大手eコマースと同じ土俵の上で戦わなければなりませんでした。

せっかく、eコマースを実施したとして、差別化するにしても、サイトの中でしか差別化をつけることができないわけで、結局は、既存のeコマースの勝ちということで、なかなか頭角をあらわすことができませんでした。ところが、ここにきて事情が変わってきました。

そうです。既存の物理的店舗を持つ、チェーン店が、新たなeコマースを実施して、既存のeコマースと対等か、それ以上にやっていける土壌が整いつつあります。このことは、以前IKEAのお泊り会に関するブログにも掲載したことがあります。詳細は、以下の【関連記事】のところに、その記事のURLを掲載するのでそちらを御覧いただくものとして、ここでは、簡単に述べます。

iPad、Kindle Fireはアメリカでは、タブレットPCの市場を二分したようです。これらのタブレットは何のために、導入されたかといえば、eコマースの差別化のためです。ご存知のように、従来のeコマースは、PCのブラウザから行うものです。そうなれば、どのeコマースも、ブラウザというパソコンの窓から、みえるいくつものサービスのうちの一つということになり、多くのサービスの中に埋没してしまいます。

それを防ぐためにも、アップルは、iPadを投入する必要があったのです。これによって、アップルやその関連が提供するeコマースの徹底的な差別化をはかったのです。Amazon Kindle Fireもこれと同じ背景で投入されたのです。

それだけ、既存のeコマースで差別化をつけるということは、それだけ困難なことということです。アップルかアップルストアを設けているというのも、オンラインだけでは、既存の複数あるeコマースの中に埋没することを防ぐという意味もあります。

しかしながら、いわゆる物理的店舗は、様々なやり方で、差別化や統一化を図りやすいです。全く同じにしようとしても、そのに働いている従業員などの個性がでますから、やはり、eコマースよりは、はるかに差別化をつけやすいです。これが、従来は、eコマースとは無縁であったり、実施したとしても、物理的店舗を持っているということが強みにはならず、サイトの中で、他のサービスと紛れていたのです。

しかし、O2Oが普及しつつある今日、これが逆転しそうです。既存の物理的店舗を持っているチェーンが、O2Oでいろいろサービスをやり始めたら、物理的店舗によって、既存のeコマースよりも、はるかに差別優位性を発揮することができます。そうして、さらに、独自のeコマースもやり始めたら、既存のeコマースは、これら物理的店舗を持ち、eコマースも実施するようなチェーンのように、差別化では格段に劣ってしまうことになります。

ただし、既存のeコマースも、社会の基盤としては残っていくでしょうが、今後従来のようには、発展することはないかもしれません。おそらく、今後、物理的店舗を多数持つチェーンで、eコマースも実施し、両者をO2Oを介して上手に統合できるところが、頭角を現していくと思います。

今まさに、こうしたチェーン店の逆襲が始まろうとしているのです。いずれにせよ、O2Oビジネス、これからいろいろ動きがあると思います。何か、新しい動きがあば、またこのブログに掲載させていただきます。 

さて、上の文脈から、私のいいたいことはもうお分かりになると思います。上の事実に、Amzon側もすでに気が付いていたということです。だからこそ、物理的な店舗の設立を急いでいるということです。そうして、物理的な店舗によって、さらなる差別化を目論んでいるのだと思います。


ひとつ、Amazonにとって、安心材料があります。実は、ネットによる物理的な書籍販売をてがけていたのは、アメリカでは、Amazonだけではありません。書籍販売であるバーンズ・アンド・ノーブルを忘れるわけにはいきません。


バーンズ・アンド・ノーブルは、物理的な店舗をアメリカ全土で持つ、書籍販売のチェーン店です。この書籍は、中に入ると喫茶店のようなスペースがあり、顧客は、そこで、店内の書籍をゆっくり読むことができます。この書店も、実は、Amazonが電子書籍を発売しはじめた、直後に電子書籍を販売しはじめました。そうして、電子書籍リーダーを店に持っていくと、店内で電子書籍をダウンロードでき、店内で読むことができる、サービスを提供していました。また、気に入ったらその場で購入ということもできました。これについては、このブログにも掲載したことがあります。


バーンズ・アンド・ノーブルの電子書籍リーダーは、Nook(ヌーク)といい、OSは最初からAndroidを搭載し、しかも、カラーでした。しかしながら、ヌークや電書籍そのものも、完璧にAmazonに水をあけられたせいでしょうか、Barns & Nobleは、電子書籍部門を切り離し他社に売却しようとしています。これに、ついては、詳細は以下のURLをご覧になって下さい。

Barnes & Nobleの店内

http://androwire.jp/articles/2012/01/10/03/index.html

それにしても、バーンズ・アンド・ノーブルは、老舗ですし、アメリカで国内では、物理的な店舗を各地に所有しているわけですから、これとeコマースを統合しうまくやっていくことはできなかったのでしょうか?私としては、Amazonが物理的な書籍だけではなく、他の商品にまで、幅を広げていったにもかかわらず、B&Nは書籍の扱いが重でした。Amazonや、Appleのようにいわゆるビジネス・プラットフォームという考え方が希薄だったのだと思います。ビジネスプラットフォームとは、eコマース(かならずしも、商取引をするサイトでなくても構わない)などを集客装置として、集まった顧客に対して、さらに他の商品も販売していこうという発想です。

こんな状況ですから、今後バーンズ・アンド・ノーブルがAmazonを脅かす存在にはならないと思います。私は、バーンズ・アンド・ノーブルの失敗は、Amazonのベゾズ氏が上記で私が述べたようにiPadの本質を見抜いていたのでしょうが、これを見抜いてはいなかったのだと思います。おそらく、既存の書籍の延長として、電子書籍を見ていたのだと思います。見方一つで、事業も、製品も根本的にその持つ意味が変わってきます。


ひよっとする、バーンズ・アンド・ノーブルでは、Apple Storeの本質も見抜いていなかったかもしれません。なぜ、AppleがApple Storeを設立したかといえば、eコマースだけでは、ユーザーの自宅のパソコンのディスプレイから垣間見るいくつもあるサービスの一つに過ぎなくなってしまうところですが、Appleでは、ジョプズ氏がこのことにはやくから気づいていて、設置したものだと思います。なにしろ、あのアップルの新製品のリリース時のお祭り騒ぎは、無論、Apple Storeで、繰り広げられそれが各地のテレビや新聞などで、報道されるわけです。Amazonでは、いまのところ、そんなことをできる店がないわけです。




しかし、今回のようにAmazonが物理的な店舗を設置するというのなら、今後Amazonが新製品をリリースするときなどは、当然、店舗でお祭り騒ぎがおこるように仕組んでいくのだと思います。バーンズ・アンド・ノーブルでは、物理的な店舗を多数持っていることは当たり前なので、その優位性とか、それらと、eコマースを統合するという考え方ができなかったのだと思います。物理的な店舗を多数構えている、チェーンなどは、このバーンズ・アンド・ノーブルの失敗など真摯に研究し、自らのeコマースがうまくいくように参照すべきと思います。


いずれにせよ、今回のAmazonもショップを構えるということから、私が、このブログで何回か主張してきたように、これからは、物理的な店舗を多数持つチェーン組織で、eコマースも実施し、さらに、O2Oも展開しつつ、それだけではなく、これらをうまく統合したところが、頭角をあらわしてくであろうとの私の読みは、あたっているのだという確信を持つにいたりました。まさに、Amazonはこれを狙っているのだと思います。そうなると、iPadや、Kindle Fireなどのような独自の端末も持たず、さらには、物理的な店舗も持たない既存のeコマースは、廃れていくということになると思います。無論、廃れていくとはいいながら、残るところは、残るでしょうが、これからどんどん伸びていくという業態にはならないと思います。皆さんは、どう思いますか?


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