2011年10月15日土曜日

ジョブズが黒タートルを着た理由が今明らかに。きっかけは日本―【私の論評】私たちは、ジョブズ氏のように、日本的なものを再度見直し、自らの活力としていく姿勢が今こそ必要だ!!

ジョブズが黒タートルを着た理由が今明らかに。きっかけは日本


スティーブ・ジョブズと言えば黒のタートル。

黒のタートルネックを年がら年中着たお陰でジョブズは「世界で最も覚えやすいCEO」になりましたけど、本人は実は最初あれではなくソニーみたいな三宅一生のナイロン製ジャケットを会社の制服にしたかったのだけど提案したら社員たちに却下され、それでしょうがなくひとり寂しく制服を着ていたのだそうな。三宅一生の着ていたタートルをこしらえてもらって...。

スティーブ・ジョブズが日本に来たときに、当時の稲森会長にソニーの制服について尋ねたところ、稲森氏は、次のように答えたそうです。

「戦後はみんな服もロクに持っていなかった。だからソニーのような会社では社員になんか毎日仕事に着ていけるものを用意してやらなくてはならなかった。そのうち制服は会社独自のスタイルに発展していき、特にソニーのような会社では社員を会社に結びつけるものになったんですよ、と。それを聞いたジョブズは「そういう結びつきがアップルにも欲しいものだな、と思った」という。

スタイルにこだわりを持つソニーはあの著名デザイナーの三宅一生に社員の制服のデザインを任せていた。その制服はリップストップ(破れ止め加工)のナイロン製ジャケットで、袖のジッパーを外すとベストになる。ジョブズは早速イッセイ・ミヤケに電話をし、アップルにもいっちょベストをデザインしてくれやと頼んだ。

「それでいくつか見本を持ち帰って全社員集めて、どうだい、みんなでこのベスト着たら最高だろ、な、と提案したら、いや〜ブーイングの嵐でたちまちステージ退場さ。あの案はみんなにえらい不評だった」

が、この一件で三宅と親交を得たジョブズは、それからもちょくちょく定期的に彼の元を訪ねるようになる。そして自分だけ制服作っちゃうのも悪くないな、と思うようになった。制服があった方が毎日便利だし(これはジョブズが言ってたこと)、制服を通して自分だけのスタイルを人に伝えることができる、というのがその理由だ。

自身も、タートルネックの着こなしが素晴らしい、三宅一生氏
「そこでイッセイが着ていた黒タートルネックの中から気に入ったものを選んで、僕用にいくつか作ってくれるよう頼んでみたんだ。そしたらイッセイのやつ百着も作ってくれちゃったのよ」

あまりの話に呆然と驚いていると、それに気付いたジョブズはクローゼットに山積みになってる黒タートルを見せてくれた。「あれを着てるのさ」とジョブズ。「な、あれだけありゃ一生間に合うだろ」・・・・・・・・。

ウォルター・アイザクソン著「Steve Jobs」より、要約。

【私の論評】私たちは、ジョブズ氏のように、日本的なものを再度見直し、自らの活力としていく姿勢が今こそ必要だ!!
上記のように、シンプルないでたち、まさに、スティーブ・ジョブズにびったりだったと思います。派手ないでたちでは、プレゼンテーションには似合いません。スティーブ・ジョブズ氏のあのいでたちのその根底には、何と日本の制服に起源があったということです。確かに、あの制服であらわれた、ジョブズを見ると、そのを見ただけで多くの人が、「さあ、これから、私のプレゼンテーションがはじまりますよ」と語っているようで、かなり効果的です。ジョブズも、Next社創設したばかりあたりまでは、スーツ姿で、原稿を見ながらのプレゼンテーションでした。しかし、Next社でも、後年には、今のスタイルになりました。

Next社の後年になってから、彼の晩年のスタイルが確立されたと思います。ちなみに、Next社の後年あたりで、ジョブズの興味深い逸話が残っています

日刊イトイ新聞にこのときの逸話が掲載されていますので、その部分だけ下にピックアップしておきます。
日本では、NeXTの発表会を、キヤノン販売がぜんぶおぜん立てして、NKホールで、素晴らしいステージをつくって、人間国宝級の人が素晴らしいお花をアレンジして。
ところがリハーサルにジョブスが来て、壇上に置いてある花を見て、いきなり通訳を呼んだ。
「この犬の糞を積み重ねたような醜悪なものをすぐどけろ。
このことを、正しく通訳して、帰ってもらえ」
……帰ってもらえ、はまだしも、犬の糞、を!?
しょうがないから伝えたといいますけどね。
その人はもう、青筋立てて帰っちゃったという。
自分自身のライフスタイルなり、信条と合わないものに対する拒絶反応。それをどういう形で伝えるかというとき、ものすごくストレートなやりかたをする人なんですよね。
 http://www.1101.com/microsoft/10.html

さて、この犬の糞と呼ばれた、生花、私が想象するに、以下のようなドハデなものではなかったのかと思います。


これは、単なる私の類推にすぎないので、このとき実際に現場にたちあった人がいらっしゃったら、是非とも真相を教え頂きたいと思います。

しかし、三宅一生氏のシンプルなフアッションを気に入って、いつもプレゼンに身をまとっていたことから考えると、このジョブズ氏の感性からは、大きく逸脱していたに違いありません。

ジョブズのプレゼンテーションは以前にもこのブログに掲載したように、かなり計算されつくしたものであり、おそらくこの生花は、ドハデであったか、そうでなくても、何らかの理由でその計算をぶち壊してしまうようなものであったに違いありません。もしこれが、日本の"わびさび"を体現するような、シンプルなものであれば、ジョブズ氏も喜んで、プレゼンに用いたかもしれません。

世の中には、いわゆる、プレゼンテーションをするにしても、当初の目的を忘れて、プレゼンテーションのためのプレゼンテーションという、どうしようもないものになっていることがままあります。しかし、ジョブズの場合はプレゼンに命をかけているといっても過言ではないため、生花単体でみた場合には、いくら素晴らしい著名な人が生けたにしても、「犬の糞」にしかみえなかったのだと思います。

さて、スティーブ・ジョブズのプレゼンの凄さそのものについては、以下の動画を見ていただけると良くお分かりになると思います。


ジョブズのプレゼンは、目的意識を強くもち、最大限の効果をあげるように計算されつくしています。ブレゼンの仕方など、悩まれている方は、是非ジョブズのものを参照なさってください。本当に、役にたつことばかりです。以下に、iPhoneのプレゼンをするジョブズ氏のありし日の姿の動画を掲載します。


そうして、ブレゼンに邪魔なものは、「犬の糞」とまで言い放つその胆力はどこからでてくるのかとえば、それは、ジョブズの物の考え方にあると思います。まずは、彼は、いわゆるアメリカ人には、珍しい仏教徒です。それから、おそらく、日本文化にはかなり造詣が深いです。そうして、日本的な考え方にも良く精通していると思います。

皆さんも、ご存知とは思いますが、スタンフォード大学での伝説のスピーチがあります。その中で、ジョブズ氏が「死を意識した生き方」を提唱しています。


これに関しては、私の以前のブログでも述べたように、これは、根本的には、日本の「葉隠」などにも代表される、典型的な武士道のあり方です。本当に、相通ずるところがありますし、ジョブズ氏自身も、武士道精神に関しては、十分熟知していて、その生き方に共鳴して、自らも、このような生き方を選んだと私は確信しています。そうして、メディアがそれを報道しないのは、アメリカは、やはり、ジョブズ氏をアングロ・サクソン系の典型的な経営者であるとしたいと考えているためです。日本のメディアが報道しないのは、やはり、根底には、日本的な良さを否定しているからだと思います。

スティーブ・ジョブズ氏というと、アメリカの経営者であり、外見は、典型的なアメリカ人であり、アメリカ人的なライフスタイルを送り、日本人からは、縁遠いような気がしますが、三宅一生氏デザインの、黒のタートルネットを制服として、プレゼンにのぞみ、しかも、日本の武士道的な精神を持っていたということになると、非常に身近な人に思えてきます。

かつて、ドラッカー氏は、日本の官僚や政治家をみて、「彼らにとって最も重要なのは、経済ではなく社会であり、社会を良くするという観点からものを考え、行動する」と評していました。しかし、現在の日本の官僚や政治家をみていると、そのようにはみえません。かえって、ジョブズ氏のほうが、社会を良くするという観点から行動していたように思います。だからこそ、結果として、経済的に成功できたのだと思います。そう考えると、過去の日本の官僚や政治家も過去においては、まさにそうだったのだと思います。だからこそ、結果として、奇跡の経済発展をすることができたのだと思います。

今の私たちは、政治家、官僚に限らず、多くの人々がこのことを忘れているのだと思います。私は、日本の多くの人が、外見も三宅一生氏デザインのような日本的な装束をまとうように日本的なものを前面に打ち出し、精神的には、日本の武士道的な精神を見なおして、それを自分のものとして、少しでも、ジョブズのように、こうした日本的精神と、アメリカ流の合理的な考えを持ち、社会を変えていくようになればと、願ってやみません。最近日本では、技術的なイノベーションはなされていますが、ジョブズが実践したような社会変革などに結びつく、イノベーションが少なくなったと思います。なぜそうなってしまったかといえば、私は、多くの日本人が、こうした素晴らしい日本由来のものを忘れてしまったことにも大きな原因があると思います。

特に、現在では、日本でも、多くの人が、アメリカ人の中でもかなりユニークだと思われるようなジョブズ氏の本当の姿を見ることなし、アングロ・サクソン的価値観の側面ばかりをみて、それがジョブズ氏の本当の強さと思い込んでいるようでなりません。私たちは、ジョブズ氏のように、日本的なものを再度見直し、自らの活力としていく姿勢が今こそ必要だと思います。そうして、社会を少しでもより良くするように日々努力していく姿勢が不可欠だと思います。

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4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

稲森社長?

山田 豊 さんのコメント...

匿名さまコメント有難うございます。これは、当然、会長の間違いです。そのつもりで書いていたのですが、要約の過程で間違えてしまったものと思います。さっそく、訂正しておきました。これからも、何か間違いなどありましたら、ご指摘よろしくお願いします。
これからも、お気軽にお立ち寄りください。

かせっち さんのコメント...

今回の記事を読み、ジョブズは経営者というよりも芸術家に近かかったのではないか、と思いました。

つまり彼にとって、アップルの社員、もしかすると出世作AppleIIを一緒に(というかほとんど)作り上げた「もう一人のスティーブ」ウォズニアック氏ですら、自分の作品であるアップル製品を作り上げるための「絵筆」に過ぎなかったのかもしれません。

だから自分の美的感覚にそぐわない作品を提示してくる「絵筆」を壁に叩きつけるような真似をしたのでしょうが、それも芸術家の美的追究の発露とすれば合点がいきます。勿論自分の美観にそぐわぬ物も、先方が用意した物であっても「犬のクソ」です(笑)

なので「企業を絵筆とした芸術家」の彼を、経営者として評価すべきではないのかもしれません。これは経営者として失格と言う意味ではなく、経営とは別次元で評価すべきではないか、という意味です。

山田 豊 さんのコメント...

かせっち様いつもコメント有難うございます。ジョブズ氏は、結局、アップルを時価総額で、アメリカで一番にしてしまったということから、経済的にも優れた経営者であることにはかわりはないと思います。それに、経営は、サイエンス(科学)であり、ヒューマニティー(人文科学)でもあり、アートでもあるということだと思います。この三つが揃わなければ、本当に素晴らしい経営は不可能だということだと思います。経済性だけ追求するだけでは、ジョブズ氏のようなことはできないということだと思います。ジョブズ氏は、この三つを体現できた、素晴らしい経営者であったのだと思います。

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