2011年9月23日金曜日

国を挙げた“増税万歳状態”の異常クルーグマン教授の緊縮財政批判に耳を傾けよ―【私の論評】これこそ、万死に値する、政治家のマクロ経済音痴!!いま、増税を叫ぶ政治家、新聞は、ただの馬鹿!!

国を挙げた“増税万歳状態”の異常クルーグマン教授の緊縮財政批判に耳を傾けよ

ポール・クルーグマン
今や日本はもちろん、デフォルトの危機が報じられるギリシャを筆頭に欧州や米国でも、財政赤字と累積債務の削減という財政規律が最優先された経済財政運営がまかり通っています。しかし、そうした財政規律最優先は本当に正しいのでしょうか。

クルーグマン教授の反論

この点について、プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は概要以下のような反論を展開しています。

財政規律を重視する考えは、歳出削減などを通じた財政赤字の縮小によって、政府に対する信頼が回復して経済も再生すると主張します。

しかし、教授は、欧米における過去1年半の緊縮財政によって、企業や消費者は政府に対する信頼を回復するどころか、景気の悪化や失業の増加によって不安を一層大きくしただけであると主張しています。かつ、緊縮財政は今の景気を更に悪化させることも考えると、政府に対する信頼の回復という長期的な観点よりも、収益悪化や失業増加などの短期的な痛みへの対応を急ぐべきと述べています。

そして、教授は、短期的な景気悪化が長期的な展望にも悪影響を及ぼすと強調しています。

例えば、米国の製造業の生産力は、これまで平時において毎年2~3%程度拡大してきました。しかし、現在の生産能力は2007年12月に比べて5%低下していると推計されています。それは即ち、景気が回復を始めても生産能力が通常よりも早く景気拡大のボトルネックとなることを意味します。同様の事態はサービス産業でも起きるでしょう。

即ち、歳出削減も一因となって米国の景気拡大はスローダウンしていますが、それは現在のみならず将来にも禍根を残すのです。

もちろん、教授は財政規律の観点からも緊縮財政は賢くない点にも言及しています。財政赤字を無理に削減すれば、将来の経済成長率も低下することになりますので、当然、将来の税収増も期待できないからです。

従って、結論として教授は、将来よりも今の経済を何とかするための政策が必要と主張しており、具体的には財政拡大と積極的な金融緩和の組み合わせを実行すべきと述べています。

日本はどうすべきか

クルーグマン教授の主張は、欧米における緊縮財政一本やりの風潮への批判として展開されていますが、この議論は欧米以上に日本の経済財政運営に対する批判として的を射ているのではないでしょうか。

それは、欧米と異なり日本経済はもう15年も続くデフレに苦しんでいるからです。政府は復興増税と消費税増税という2つの増税を最優先で行なおうとしていますが、デフレの中で増税を行なったらデフレが更に悪化して、短期的には低い経済成長が続くことになります。

財政再建によって国家に対する信認を回復することももちろん重要ですが、それを急ぐあまり目先のデフレと景気低迷が続いたら、家計や企業の将来期待は更に低下してしまう危険性が大きいと言わざるを得ません。

更に問題なのは、デフレが続く中で増税を行なうと、長期的にも経済成長率が高まらず増収につながらないということです。日本は既に1997年にそれを経験しています。

1997年の段階で日本経済はもうデフレ的な状況にありましたが、その中で消費税の税率が3%から5%に引き上げられたのです。その結果はどうだったでしょうか。1997年度の一般会計税収は約54兆円でしたが、その翌年から現在に至るまで、一般会計税収が97年度を上回ったことは一度もないのです。

消費税の税率を上げれば消費税収が増えるのは当然ですが、デフレと景気低迷が継続すれば法人税や所得税の税収は逆に減少してしまうので、一般会計税収全体は増えていないのです。これは、まさしくクルーグマン教授が指摘していることに他なりません。

そして、デフレと円高で苦しむ日本経済を再生させるために必要な経済政策も、まさに教授が述べているとおり財政拡大と金融緩和の組み合わせになるのではないでしょうか。特に、欧米と比較して日銀の金融緩和がまったく不十分であることがデフレと円高の要因の一つであり、かつ日銀が国債を購入する形で金融緩和を行なえば復興増税が不要となることを考えると、尚更です。

日本は大丈夫か?

このように考えると、日本は本当に大丈夫かと心配になってきます。野田政権は財務省のシナリオ通りに着々と増税を実現しようとしていますし、野党第一党の自民党の執行部も増税に賛成です。

更に言えば、主要な新聞もすべて増税に賛成です。米国ならば、緊縮財政に賛成する論調だけでなく、クルーグマン教授のような異論もちゃんと新聞に掲載されるのに、日本の新聞では増税に賛成の論調やコメントしか出ません。官僚に根回しされているのであろう財界まで、増税に賛成する始末です。この国を挙げた“増税万歳状況”は異常です。

ただ、救いはあります。与野党の双方を通じて、特に若手の政治家の方にはクルーグマン教授の主張に近い真っ当な考えを主張する人が多いということです。ちょうど民主党税制調査会でも増税を巡る議論が始まりましたが、民主党の若手の先生方にはそこで是非頑張っていただかなくてはならないし、野党の若手の先生方にも国会などの場で頑張ることを期待するしかありません。

あとは、私たち国民の側も、大新聞の一面的な増税報道に惑わされることなく、正論を主張して頑張る政治家をもっと強く応援する必要があるのではないでしょうか。みんなで力を合わせて、この異常な状況を何とかしましょう。

【私の論評】これこそ、万死に値する、政治家のマクロ経済音痴!!いま、増税を叫ぶ政治家、新聞は、ただの馬鹿!!
上の記事、ポール・クルーグマン本人がインタビューを受けたり、本人が直接書いているわけではないので、非常に表現がなまぬるくなっています。それに、国内事情、特に、財務省の企みについて、ほとんど書かれていません。だから、かなり物足りないです。  しかし、上の、クルーグマン氏の言ったこととされることは、すべて正解だと思います。 今の状況が続く限り、日本は、バランスシート不況から抜け出せないばかりではなく、他の国も日本のような状況に陥ってしまうことは必定です。

ポール・クルーグマンといえば、ご存知のノーベル経済学賞を受賞した学者であり、オバマが大統領になった選挙の前まで、徹底的にブッシュ前大統領を批判してきました。様々な、雑誌にコラムを書き、徹底的に糾弾していました。その語り口は、かなり辛辣でした。ブッシュは、様々な愚作で、アメリカ社会を壊してきたことを痛烈に批判していました。

この辛らつさは、たとえば、日本の週刊誌のインタビューについてもかわりありません。下は、昨年の週刊現代のクルーグマン氏へのインタビューの中の一節です。
中央銀行の独立性への介入に関しては、もはやあれこれ躊躇すべきではありません。
日本のGDPデフレーター(名目GDPを実質GDPで割った値。経済全体の物価動向を示す)は、ここ13年間、下がりっ放しです。  
それなのに今、日銀が重い腰をあげないというなら、(その責任者たる総裁は)銃殺に処すべきです。 
はっきり、日銀総裁を銃殺刑に処せといっているから、凄いです。この内容も含まれている元の記事は、以下の記事からご覧になることができます。是非ごらんになってください。とにかく、あまりにも愚かであることを強調したいがため、このような表現になっているのだと思います。

独占インタビュー ノーベル賞経済学者 P・クルーグマン 「間違いだらけの日本経済 考え方がダメ」

この記事に対する、私の論評もこのブログに掲載したことがあります。そのURLを以下にコピペしておきます。こちらも、是非ご覧になって、ください。

民主党のハイパーマクロ経済大音痴にはつける薬はない? 

 私は、このブロでは、再三にわたって、デフレのときに、増税したり、緊縮財政策をとることは、全くの間違いであり、そんなことをすれば、景気がさらに落ち込むことを掲載してきました。だから、ここでまた、その詳細を述べることはしません。

それに、関しては、直近の記事のURLを下にコピペしておきます。こちらも、是非ご覧になってください。特に、この記事では、私なりに財務省の企みに切り込んでいます。


復興増税巡り与野党が議論―【私の論評】日本の政治家はなぜかくも、経済に関してピント外れなのか?!!これじゃ、家計のことしか考えない主婦並では?


とにかく、今の増税万歳状態は異常です。緊縮財政を堅持し、金融引き締め策を堅持し、増税をすれば、もう一段日本のGDPがさらに、落ち込み、失われた30年が続くことは明白です。世の中では、多数派が正しいということになりがちですが、ここで、はっきり言わせて頂きますが、今のこの時点で、増税に両手をあげて、賛成する政治家は、ただの馬鹿です。財務省の官僚にただ丸め込まれているだけであって、政治家の資格などありません。

ちなみに、2008年にセンター試験で、出された政治経済の問題を下に掲載します。
中央銀行が行うと考えられる政策として最も適当なものを以下から選べ
1.デフレが進んでいる時に通貨供給量を減少させる
2.インフレが進んでいる時に預金準備率を引き下げる
3.不況期に市中銀行から国債を買い入れる
4.好況期に市中銀行に資金を貸す際の金利を引き下げる 
もちろん正解は3です。ところが、2000年代の現実の日銀は1をやりました。そうして、デフレか震災で、円の需要が高まっている現在でも、なお、増刷拒否の姿勢を崩していません。困ったものです。この問題は普通の高校生はできるのでしょうが、日銀総裁や日銀の御用学者やマスコミには難しいようです。実際に日銀のやったことは、センター試験も落第のデタラメだったので、日本のデータを一見しただけでは、ベースマネーと物価上昇率の関係がよく見えない状況にあります。

現在増税を主張する連中は、上の問題の意味もわからないと思います。結局上の問題で、1.を正解とするような頭なのです。本当に困ったものです。今実施すべきは、大規模な財政出動と、大規模な金融緩和策であり、やりかたや、スケジュールなどに関しては、様々な方法があり、議論百出しても良いですが、方向性としては、こちらが正解であり、増税などもってのほかです。この見方は、ある程度マクロ経済的な見方のできる人であれば、反対する人は誰もいないと思います。 過去のどの国、どの時代であっても、このようなケースのときに増税で対応した国はありません。

こんな、連中は、それこそ、クルーグマンではないですが、すぐに政治家をやめていただいたほうが、日本のためです。

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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

GDPの三面等価を理解していれば、現在の状況で増税はNGだということが自ずと理解できるはずなんですけどねぇ…

最近、三橋貴明氏が指摘したように、税金の原資はGDPなんですよね。つまり、1年間の国全体の稼ぎを民間と政府でどう分配するかという話なんですが、増税は政府の取り分を増やすことに他ならない。

そうなると民間の取り分が減るわけで、取り分が減った民間は次の年のための準備、即ちを投資を減らさざるを得ず、それが次の年の民間部門のGDP減少に直結する。結果、全体のGDPも減少して、それを基にした政府への分配、即ち税収も減少する。

これが1997-1998年に起きたことですね。

「政府よりも民間の方が効率的だ」という規制緩和論者が増税を主張するのを時折見かけますが、そもそも規制緩和と増税は矛盾した話であって、このような主張する輩の言は信用しないことにしています。

山田 豊 さんのコメント...

匿名さまコメント有難うございます。正におっしやる通りだとおもいます。
これからもお気軽におたちよりくでださい。

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